• 作成日 : 2024年1月26日

商標使用許諾契約とは?契約書のひな形をもとに書き方や注意点を解説

商標使用許諾契約とは?契約書のひな形をもとに書き方や注意点を解説

商標使用許諾契約とは商標を使う際に、その商標の権利者と締結する契約のことです。この記事では商標使用許諾契約の意味や契約を締結するケースについて解説します。商標使用許諾契約書に含めるべき項目や作成時の注意点についてもまとめました。便利な商標使用許諾契約書のひな形も用意していますので、ぜひこちらを参考に契約書を作成してみましょう。

商標使用許諾契約とは

商標使用許諾契約とは商標のライセンサー(所有者)とライセンシー(使用者)が締結する契約のことです。商標使用許諾契約を締結することでライセンシーは商標を使用する権利を、ライセンサーはその対価として使用料を受け取る権利を得られます。

ちなみに、商標とは自社の商品やサービスを他社のものと区別するために、使用するネーミングや標識のことです。具体的には商品名やサービス名、会社名や店舗名、ロゴ、キャッチコピー、キャラクター、特定の色彩や音、動作などが挙げられます。

商標については下記の記事でさらに詳しく説明しています。

これらの商標は商標法で所有者が独占できる権利(商標権)が定められており、商標登録された商標はライセンサー以外が使用することはできません。商標登録された商標を他者が使用する場合は、ライセンサーと商標使用許諾契約を締結する必要があります。

商標使用許諾契約を結ぶケース

商標使用許諾契約が締結される場面としてまず挙げられるのが、登録された商標を使用するケースです。有名企業や大手企業のブランド名やロゴは認知度が高く、それを使用すれば顧客からの信頼性がアップし購買につながります。ライセンサーの商標を使って商品やサービスを販売する際、チラシやホームページなどの広告媒体に掲載する際などに商標権許諾契約を締結します。

もう一点挙げられるのは、商標に関するトラブルを防ぐために締結するというケースです。自分自身で作成して使用している商標が意図せず他者のものと類似してしまうこともあり得ます。この場合、商標権を巡ってトラブルになるリスクもあるため、商標権許諾契約を締結して禁止権(類似している商標が見つかったときに、商標権の侵害を理由にその商標の利用を禁止する権利)を行使しないよう約束してもらうケースがあります。

商標使用許諾契約書のひな形

本サイトでは商標権許諾契約書を作成される方、作成方法を探されている方のためにひな形を用意しています。自社に合うよう書き換えるだけですぐに使えるようになっているため、実務にお役立ていただけましたら幸いです。

商標使用許諾契約書に記載すべき内容

ここからは商標権許諾契約書に記載すべき項目についてご説明します。少なくとも以下のような内容は盛り込みましょう。また、先ほど紹介したひな形をダウンロードして参照しながら読み進めていただくことで、より一層理解が深まります。

契約当事者名

契約を締結する当事者(ライセンサーとライセンシー)が商標権許諾契約を締結する旨を記載します。当事者名を(以下「甲」という)」(以下「乙」という)と置き換えて、以下の項目を作成するのが一般的です。

定義

ライセンサーがライセンシーに対してどの商標の利用を許諾するのかを明らかにします。使用する地域や範囲、対象の商標の名称、商標を使って販売する商品名などを記載します。

使用許諾

ライセンシーが対象となる商標を使用する際に遵守すべき基本的なルールについて定めます。例えば、ブランド価値を毀損するような使い方はしない、商標を改変して使用してはならない、マニュアルや法律に則って使用する、商標を使用した現物品や広告物はライセンサーにチェックしてもらわなければならない、第三者に再許諾してはならないなどの内容を定めます。

使用料

ライセンシーが商標を利用する対価としてライセンサーに支払う使用料の金額や支払い方法、期限などを定めます。

クレームの対応

ライセンシーが商標権許諾契約を締結後に当該商標を使用することで第三者から商標権侵害をしているのではないかというクレームを受けた際、あるいは第三者から商標権の侵害を受けた場合・受けそうな事態が発生した場合の対処方法について定めます。

使用許諾期間

商標の使用を許諾する期間と更新の方法について定めます。

解約

商標使用許諾契約の解約(途中で契約を終了すること)をする場合の手続きや条件について定めます。

契約解除

商標使用許諾契約の解除(契約をはじめからなかったことにすること)ができる条件を定めます。具体的には相手方が重大な契約違反行為を犯した場合、倒産した場合、信用状況が低下した場合、解散した場合などを条件として設定するのが一般的です。

契約終了後の措置

契約期間が終了した後、あるいは契約の解約や解除後の対応について定めます。商標を使用した商品やサービスの販売を停止する、商標に関する資料をライセンサーに返還するなどのルールを記載します。

損害賠償

両当事者が相手方に損害を与えた場合の賠償義務の有無や賠償の方法について定めます。

反社会的勢力の排除

両当事者が暴力団や総会屋など反社会的勢力の構成員もしくは関係者でないこと、あるいは反社会的な行いをしないことを約束します。また、契約締結後に相手方が反社会的勢力の構成員や関係者であることが発覚した場合、反社会的な行いがあった場合の対応方法についても記載します。

協議

契約書に定められている内容では解決ができない問題が発生した際に、両当事者が話し合って解決を目指す旨を記載します。

合意管轄

両当事者間で協議によって解決できないような紛争が発生した際に裁判を起こす裁判所を指定します。「◯◯裁判所」というように指定することもあれば、当事者どちらかの所在地を管轄する裁判所を指定する場合もあります。

署名押印欄

契約書の末尾に契約を締結した年月日と両当事者名の住所と署名を記載する欄、押印欄を設けます。ここに署名した時点で契約が成立したとみなされます。

商標使用許諾契約書の作成ポイント

以上で商標使用許諾契約書に盛り込むべき内容を記載しました。最後に商標使用許諾契約書を作成する際に気をつけておきたいポイントについて紹介します。

商標の定義を明確にする

特に、上記の項目でも重要となるのは定義の条項です。前述の通り、商標にはネーミングやロゴ、色彩など、さまざまなものが含まれます。また、ブランドや商品、サービスそれぞれに商標があります。どの商標の利用を使用できるのか、どのような使い方ができるのか、いつまで使えるのかを明確にしておきましょう。

商標が適正に使用されるよう・使用するよう注意する

商標が適正に利用されないとライセンサーはブランドの信用毀損や売上の減少などの損害を被るおそれがあります。また、ライセンシーは商標を適正に使用しないとライセンサーや第三者から商標権侵害などのクレームを受けるリスクが高まります。

ライセンシーが適正に商標を使用できるよう基本的なルールを契約書の中でしっかりと定めておきましょう。

収入印紙は必要?

契約書を作成する際には印紙税という税金が課税されることがあります。しかしながら、商標使用許諾契約書は印紙税法上の課税文書にはあたらないため、印紙税が不要です。

なお、商標使用許諾契約書に似たものとして、商標権を譲渡する場合に締結する商標権譲渡契約書は「無体財産権の譲渡に関する契約書」、いわゆる1号文書に該当するため、印紙税の納付が必要となります。

商標使用許諾契約書はあくまで商標権を使用させるための契約書であるため、1号文書にはあたらないのです。

商標使用許諾契約を正しく締結してお互いにビジネスを成長させよう

商標使用許諾契約を締結することでライセンシーは有名企業や大手企業の商標を利用できる、ライセンサーは使用料が得られて自社のブランド拡大も狙えるというように、双方にメリットが得られます。

とはいえ、商標が適正に利用されないとトラブルや損害が生じるおそれもあるため、商標使用許諾契約書の中で範囲やルールを明確にすることが大切です。ぜひ今回の記事を参考にして自社に合った契約書を作成してみましょう。


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