- 更新日 : 2025年1月16日
商標使用許諾契約(商標ライセンス契約)とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
商標使用許諾契約とは商標を使う際に、その商標の権利者と締結する契約のことです。この記事では商標使用許諾契約の意味や契約を締結するケースについて解説します。商標使用許諾契約書に含めるべき項目や作成時の注意点についてもまとめました。
便利な商標使用許諾契約書のひな形も用意していますので、ぜひこちらを参考に契約書を作成してみましょう。
目次
商標使用許諾契約(商標ライセンス契約)とは
商標使用許諾契約とは、商標のライセンサー(所有者)とライセンシー(使用者)が締結する契約のことです。商標使用許諾契約を締結することで、ライセンシーは商標を使用する権利を、ライセンサーはその対価として使用料を受け取る権利を得られます。
そもそも商標とは
商標とは自社の商品やサービスを他社のものと区別するために、使用するネーミングや標識のことです。具体的には商品名やサービス名、会社名や店舗名、ロゴ、キャッチコピー、キャラクター、特定の色彩や音、動作などが挙げられます。
商標については下記の記事でさらに詳しく説明しています。
これらの商標は商標法で所有者が独占できる権利(商標権)が定められており、商標登録された商標はライセンサー以外が使用することはできません。
商標使用許諾契約を締結する場面
商標使用許諾契約を締結する場面としては、商標登録された商標を他者が使用するケースが考えられます。他者が商標登録された商標を使用するには、ライセンサーと商標使用許諾契約を結ぶなど、ライセンサーの承諾を得ることが必要です。例えば、ライセンサーの商標を使って商品やサービスを販売する場合や、チラシやホームページなどの広告媒体に商標を掲載する場合などが挙げられます。
商標使用許諾契約を締結する目的・メリット
商標使用許諾契約を締結する目的・メリットは、以下の2つです。
- 商標のブランド力を活かせる
- 禁止権によってトラブルを防止できる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
商標のブランド力を活かせる
ライセンシー側の商標使用許諾契約を締結することのメリットとして、商標のブランド力を活かせることが挙げられます。特に、大手企業や有名企業など知名度の高い商品名やロゴであれば、顧客からの信頼性がアップし購買につながるでしょう。また、商標を利用することで自社で新たなブランドを立ち上げるよりも短時間で消費者にアピールすることが可能です。
いっぽう、ライセンサー側にもメリットがあります。商標の使用料によって収益を拡大しつつ、ブランド価値のさらなる向上につなげることが可能です。ライセンサーのキャラクターがさまざまな企業に使用されることで、キャラクターの認知度は飛躍的に向上し、関連グッズの売上増加にもつながります。
禁止権によってトラブルを防止できる
商標使用許諾契約を締結する目的・メリットとして、トラブルを未然に防げる点も挙げられます。自分自身で作成して使用している商標が意図せず他者のものと類似してしまうこともあり得るでしょう。
この場合、商標権の侵害と主張されるなど商標権を巡ってトラブルになるリスクも考えられます。その際に、対象となる商標について商標権許諾契約を締結して禁止権を行使しないよう約束してもらう方法があります。
禁止権とは、自分たちの登録商標と類似している商標が見つかったときに、商標権の侵害を理由にその商標の使用を排除できる権利のことです。
あらかじめ商標使用許諾契約を締結して禁止権の行使をしない旨の約束をしておけば、業務にも影響が出ないため安心です。
商標使用許諾契約における使用権の種類
商標使用許諾契約における使用権には、専用使用権と通常使用権の2種類があります。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
専用使用権
専用使用権とは、対象となる特許や意匠、著作物、商標などを独占的・排他的に使用できる権利です。専用使用権をライセンシーに与えた場合は、ライセンサー自身も当該特許等を使用できなくなるため注意しましょう。
例えば、A社が保有する商標に対してB社に専用使用権を設定したとします。その場合、A社自身もその商標を使用できなくなるほか、C社に対して同じ商標の使用を許諾することもできません。
なお、専用使用権は契約書上で専用施用権を設定するだけでは効力が生じないことには注意が必要です。ライセンサー・ライセンシー間で、専用使用権を認める旨の契約を締結後、特許庁に専用使用権設定契約証書を添付して申請を行って設定登録がなされることで効力を発揮します。
通常使用権
通常使用権とは、対象となる特許や意匠、著作物、商標などを第三者が使用できる権利です。専用実施権でないものを指します。
専用使用権とは違い、通常使用権を設定したライセンサーは、引き続き登録商標を使用可能です。また、通常使用権は複数のライセンシーに対して設定できます。
例えば、A社が保有する商標の通常使用権をB社に設定した場合、A社自身も継続して商標を使用できます。また、C社、D社に対しても同じ商標の使用を許諾可能です。
通常使用権は、ライセンサー・ライセンシー間で、通常使用権を認める旨の契約が締結された時点で効力を発揮します。
商標使用許諾契約書のひな形・テンプレート
本サイトでは商標権許諾契約書を作成される方、作成方法を探されている方のためにひな形を用意しています。自社に合うよう書き換えるだけですぐに使えるようになっているため、実務にお役立ていただけましたら幸いです。
商標使用許諾契約書に記載すべき内容
ここからは商標権許諾契約書に記載すべき項目についてご説明します。記載内容は権利の種類や商品展開方法などによって異なりますが、一般的には以下のような内容を盛り込むことになります。
また、先ほど紹介したひな形をダウンロードして参照しながら読み進めていただくことで、より一層理解が深まります。
契約当事者名
契約を締結する当事者(ライセンサーとライセンシー)が商標権許諾契約を締結する旨を記載します。当事者名を(以下「甲」という)(以下「乙」という)と置き換えて、以下の項目を作成するのが一般的です。
定義
ライセンサーがライセンシーに対してどの商標の利用を許諾するのかを明らかにします。使用する地域や範囲、対象の商標の名称、商標を使って販売する商品名などを記載します。
使用許諾
ライセンシーが対象となる商標を使用する際に遵守すべき基本的なルールについて定めます。例えば、ブランド価値を毀損するような使い方はしない、商標を改変して使用してはならない、マニュアルや法律に則って使用する、商標を使用した現物品や広告物はライセンサーにチェックしてもらわなければならない、第三者に再許諾してはならない、専用使用権か通常使用権かどうか、などの内容を定めます。
使用料(ライセンス料)
ライセンシーが商標を利用する対価としてライセンサーに支払う使用料の金額や支払い方法、期限などを定めます。
クレームの対応
ライセンシーが商標権許諾契約を締結後に当該商標を使用することで第三者から商標権侵害をしているのではないかというクレームを受けた際、あるいは第三者から商標権の侵害を受けた場合・受けそうな事態が発生した場合の対処方法について定めます。
具体的には以下のような内容を定めます。
- クレームを受けた際の商標権者に対する報告
- クレーム対応の責任者
- クレーム対応の費用分担など
使用許諾期間
商標の使用を許諾する期間と更新の方法について定めます。更新手続きについては、原則自動更新と当事者の個別合意による2つが考えられます。
また、使用許諾期間中に商標権の存続期間が満了する場合には、ライセンサーによる更新登録の申請についても定めておくとよいでしょう。
解約
商標使用許諾契約の解約(途中で契約を終了すること)をする場合の手続きや条件について定めます。
契約解除
商標使用許諾契約の解除(契約をはじめからなかったことにすること)ができる条件を定めます。具体的には相手方が重大な契約違反行為を犯した場合、倒産した場合、信用状況が低下した場合、解散した場合などを条件として設定するのが一般的です。
契約終了後の措置
契約期間が終了した後、あるいは契約の解約や解除後の対応について定めます。商標を使用した商品やサービスの販売を停止する、商標に関する資料をライセンサーに返還するなどのルールを記載します。
損害賠償
両当事者が相手方に損害を与えた場合の賠償義務の有無や賠償の方法について定めます。
反社会的勢力の排除
両当事者が暴力団や総会屋など反社会的勢力の構成員もしくは関係者でないこと、あるいは反社会的な行いをしないことを約束します。また、契約締結後に相手方が反社会的勢力の構成員や関係者であることが発覚した場合、反社会的な行いがあった場合の対応方法についても記載します。
協議
契約書に定められている内容では解決ができない問題が発生した際に、両当事者が話し合って解決を目指す旨を記載します。
合意管轄
両当事者間で協議によって解決できないような紛争が発生した際に裁判を起こす裁判所を指定します。「◯◯裁判所」というように指定することもあれば、当事者どちらかの所在地を管轄する裁判所を指定する場合もあります。
署名押印欄
契約書の末尾に契約を締結した年月日と両当事者名の住所と署名を記載する欄、押印欄を設けます。ここに署名した時点で契約が成立したとみなされます。
商標使用許諾契約書の作成時に気をつけること
以上で商標使用許諾契約書に盛り込むべき内容を記載しました。最後に商標使用許諾契約書を作成する際に気をつけておきたいポイントについて紹介します。
商標の定義を明確にする
商標が適正に利用されないとライセンサーはブランドの信用毀損や売上の減少などの損害を被るおそれがあります。また、ライセンシーは商標を適正に使用しないとライセンサーや第三者から商標権侵害などのクレームを受けるリスクが高まります。ライセンシーが適正に商標を使用できるよう基本的なルールを契約書の中でしっかりと定めておきましょう。
特に重要となるのは、定義の条項です。前述の通り、商標にはネーミングやロゴ、色彩など、さまざまなものが含まれます。また、ブランドや商品、サービスそれぞれに商標があります。どの商標の利用を使用できるのか、どのような使い方ができるのか、いつまで使えるのかを明確にしておきましょう。
商標使用ガイドラインを作成する
商標の使用に関するルールを定めたガイドラインを作成することも重要です。担当者のみが商標使用に関するルールを理解していても、実際に使用するのは別部署の可能性もあります。ライセンサーとしてはしっかり伝えたはずでも、ライセンシーの社内に行き届かないことも考えて、契約書の一部として添付するか、別途作成してライセンシー全員が参照できる体制を構築しておきましょう。
ライセンシーがガイドラインを遵守することで、商標の適切な使用を促し、ブランドイメージを統一できます。
商標のライセンス料の決め方を確認する
商標使用許諾契約におけるライセンス料の計算方法には、以下のようなものがあります。
- 出来高払い方式(ランニング・ロイヤリティ):売上や販売数量などの実績値に、一定のライセンス料率を乗じて商標使用料額を決定する
- 固定額払い方式(ランプサム・ペイメント):契約期間ごとに固定額の商標使用料を支払う
- イニシャル・ペイメント+ランニング・ロイヤリティ:上記の2つを組み合わせた方式
契約当事者間で協議の上、適切な金額を設定しましょう。類似の商標ライセンス契約の相場を参考にするほか、専門家に相談するのもおすすめです。
商標のライセンス料を無償にすることも可能
商標ライセンス契約の内容は当事者間の合意で確定されるため、商標のライセンス料を無償とすることも可能です。グループ会社で親会社が所有する商標を子会社が無償で使用する場合などに用いられています。
ただし、無償の場合でも商標の適切な管理とトラブル防止のためには、使用条件などを明確化しなくてはなりません。将来的に有償に変更する可能性がある場合は、その条件をあらかじめ規定しておきましょう。
商標使用許諾契約書は収入印紙が不要
契約書を作成する際には印紙税という税金が課税されることがあります。しかしながら、商標使用許諾契約書は印紙税法上の課税文書にはあたらないため、印紙税が不要です。
なお、商標使用許諾契約書に似たものとして、商標権を譲渡する場合に締結する商標権譲渡契約書は「無体財産権の譲渡に関する契約書」、いわゆる1号文書に該当するため、印紙税の納付が必要となります。
商標使用許諾契約書はあくまで商標権を使用させるための契約書であるため、1号文書にはあたらないのです。
商標使用許諾契約を締結してビジネスを成長させよう
商標使用許諾契約を締結することでライセンシーは有名企業や大手企業の商標を利用できる、ライセンサーは使用料が得られて自社のブランド拡大も狙えるというように、双方にメリットが得られます。
とはいえ、商標が適正に利用されないとトラブルや損害が生じるおそれもあるため、商標使用許諾契約書の中で範囲やルールを明確にすることが大切です。ぜひ今回の記事を参考にして自社に合った契約書を作成してみましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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