- 作成日 : 2024年12月24日
株式移転計画書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
株式移転計画書は、企業が行う株式移転の際に必要となる重要な文書です。新設される親会社に関する基本事項や株式の配分、資本構成などを詳細に記載する必要があります。株式移転は、企業間で完全親子会社関係を構築するM&A手法の一つです。本記事では、計画書の基本的な書き方や作成時の注意点について解説します。
目次
株式移転計画書とは
株式移転計画書とは、株式移転を実行する際に作成されるものであり、その具体的な内容が詳しく記載されている文書です。株式移転とは、1社または複数の株式会社が新たに設立する会社にすべての株式を移転し、完全親子会社関係を構築するM&A手法の一つです。株式移転計画書は、手続きを行う会社が自ら作成し、会社法の規定に従い正確に策定されなければなりません。
新設される完全親会社は計画段階では存在しないため、既存の会社だけで移転内容を決定します。株式移転計画書には、移転の目的や新設会社の基本情報、株式配分や資本構成の詳細などが記載されます。
株式移転計画書を作成するケース
株式移転計画書は、株式移転を実施する際に必要となる書類です。以下のようなケースで作成されます。
ケース | 説明 | 例 | 主な目的・メリット |
---|---|---|---|
共同株式移転 | 複数の会社が統合し、新設会社を設立する場合 | A社とB社が統合し、新設のC社を設立する | 各社の独自性を維持しつつ、経営統合を実現 |
単独株式移転 | 1社が株式を新設会社に移転し、完全親会社・子会社関係を構築する場合 | A社が新設のC社に株式を移転 | 親会社が経営戦略を統一的に管理し、子会社は事業運営に専念できる |
グループ企業のホールディングス化 | グループ全体の経営効率化や意思決定の統一を図るために株式移転を実施する場合 | 複数の関連会社を持つ企業がホールディング化する | 経営効率化、統一的な意思決定、子会社の事業運営への集中が可能 |
株式移転計画書のひな形
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株式移転計画書に記載すべき内容
株式移転計画書には、会社法773条にもとづき、特定の項目を記載する必要があります。サービス利用規約に記載すべき内容は、下表のとおりです。先に紹介した「株式移転計画書のひな形」と照らし合わせながら確認すると、より理解しやすくなります。
項目 | 会社法773条1項 | 内容 |
---|---|---|
目的や商号など新設会社の基本事項 | 1号 |
|
新設会社の定款で定める事項 | 2号 |
|
新設会社の取締役等の氏名 | 3号・4号 | |
新設会社の株式数とその割当て | 5号・6号 | |
新設会社の社債等の種類と割当て | 7号・8号 |
|
新設会社の新株予約権の内容と割当て | 9号・10号 |
|
その他、任意的記載事項として、登記事項や株式移転の変更・中止に関する事項を記載することもあります。
株式移転計画書を作成する際の注意点
株式移転計画書を作成する際には、以下の点に注意する必要があります。
まず、会社法で定められた必要事項を漏れなく記載することが重要です。必要事項が一つでも欠けている場合、計画書は法的に有効と認められません。そのため、記載すべき内容を事前に確認し、正確に反映させなければなりません。
次に、株式移転を実施する企業が複数ある場合は、関係するすべての企業が共同で計画を作成する必要があります。一部の企業だけで計画を作成することは許されず、関係者全員の合意が不可欠です。計画段階からすべての当事者が協力して進める必要があります。
これらの点を踏まえ、正確かつ共同で作成された株式移転計画書を作成し、手続きの適法性と信頼性を確保します。
株式移転計画書の印紙税
株式移転計画書は、印紙税が課される文書には該当しません。印紙税は印紙税法における課税文書にのみ課されますが、株式移転計画書は課税文書に含まれていないためです。そのため、この書類を作成する際に収入印紙を貼付する必要はありません。
ただし、文書のタイトルが株式移転計画書であったとしても、その内容によっては印紙税の対象となるケースがあります。例えば、文書内に不動産の譲渡に関する事項が記載されている場合、その部分に関して収入印紙の貼付が必要です。印紙税の適用は文書の内容にもとづいて判断される点に留意しなければなりません。
以上を踏まえ、株式移転計画書を作成する際には記載内容を慎重に確認し、印紙税の課税対象となる事項が含まれていないかといった点に注意が必要です。
株式移転の手続きの流れ
株式移転を実施する際には、以下の手順により手続きを進める必要があります。それぞれのステップには、法的な要件や注意点が存在するため、流れを理解して正確に進めることが重要です。
1. 株式移転計画書の作成
株式移転の最初のステップは、株式移転計画書の作成です。前述のとおり会社法の規定に従い、必要な事項を正確に記載します。株式移転計画書には、新設会社の概要や移転後の権利関係などが含まれるため、詳細かつ慎重に記載します。
2. 事前開示書類の準備と備置
株式移転計画書を完成させた後は、事前開示書類を用意し、本店に備えておきます。この備置き期間は、承認決議を行う株主総会の2週間前や債権者保護手続きの通知日などのうち、最も早い日から6ヶ月間と定められています。
3. 株主総会での承認取得
次に、株式移転計画書を株主総会で承認を得る必要があります。株主総会では特別決議が必要であり、種類株式を発行している場合には、各種類株主総会においても特別決議による承認を得なければなりません。
4. 債権者異議手続きや株式買取請求への対応
株主総会承認後は、債権者異議手続きに対応しなければなりません。官報への公告や債権者への催告を行い、1ヶ月以上の異議申述期間を設ける必要があります。また、株式買取請求があった場合には、その対応も必要です。
5. 新設会社設立の登記申請
こうした一連の手順を踏んだ後、株式移転に関連する必要な登記手続きを実施します。新たな完全親会社を設立するためには、適切な手続きを経て策定された「株式移転計画書」を添えて設立登記を申請します。
株式移転の手続きの相談先
誰に相談すべきかについては、課題やフェーズによって異なります。
弁護士や司法書士は、会社法に精通しているため、株式移転計画書の作成や登記手続きをスムーズに進めるサポートを得たい場合に適しているといえるでしょう。手続きに関する不安や疑問点を解消し、法的な観点から適切なアドバイスを得られます。
公認会計士や税理士は、株価算定や税務に関する専門家です。株式移転計画書において重要な株価算定を依頼できるだけでなく、組織再編税制など、株式移転に伴う税務上の注意点についても相談できます。
M&Aコンサルタントは、経営戦略や組織再編の専門知識を有しています。株式移転以外の選択肢も含めた戦略提案を受けつつ、手続き全体をサポートしてもらうことが可能です。
専門家に相談することで、手続きの負担軽減だけでなくリスク回避や、より有利な条件での株式移転の実現といったメリットが期待できます。株式移転を成功させるためには、それぞれの専門家の知見を効果的に活用することが重要です。
株式移転計画書を理解し、円滑な組織再編をしよう
株式移転計画書は、組織再編を円滑に進めるための重要な文書です。正確な記載が求められるため、会社法にもとづく必要事項を漏れなく含めることが不可欠です。
計画書の作成にあたっては、専門家の助言を受けることで法的なリスクを回避し、手続きをスムーズに進められるでしょう。また、中小企業の場合には、中小企業庁の事業承継の支援策や日本政策金融公庫の事業承継マッチング支援などがあります。
これらを踏まえ、株式移転計画書をしっかりと理解し、円滑な組織再編を実現しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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