- 更新日 : 2024年11月7日
農地売買契約書に印紙は必要?金額や貼り方、不要なケースを解説
農地売買契約書は印紙税法上の課税文書にあたり、収入印紙の貼付が必要です。印紙代は契約金額により異なり、契約書によっては印紙が不要なケースもあります。
本記事では、 農地売買契約書に貼る印紙の金額や貼る場所、印紙代は当事者のどちらが負担するかについて解説します。印紙を貼り忘れた場合の問題も紹介しますので、参考にしてください。
目次
農地売買契約書に印紙は必要?
農地売買契約書とは、農地の売買で締結される契約書のことです。農地は印紙税法別表第一に記載された「不動産・鉱業権・無体財産権・船舶・航空機または営業の譲渡に関する契約書」の「不動産」に該当し、印紙税が必要な課税文書にあたります。そのため、売買契約書には印紙が必要です。
印紙が必要な契約書は、次の記事でも解説しているため、参考にしてください。
農地売買契約書に印紙が不要なケース
農地売買契約書には、印紙が不要なケースもあります。以下のいずれかに該当する場合です。
- 取引金額が1万円未満
- 電子契約で締結する場合
- 契約の成立を証明する目的ではないコピー
印紙税額は、契約書に記載された取引金額に応じて金額が設定されており、取引金額が1万円未満の場合は非課税となります。そのため、契約書に印紙の貼付は必要ありません。
また、電子契約で締結した 農地売買契約書も印紙は不要です。電子契約とは、電子データによりインターネット上で締結する契約のことです。印紙税法上の課税文書は紙で作成したものを指すため、電子契約で締結した農地売買契約書は課税文書に該当しません。そのため、印紙の貼付は必要ありません。
印紙税は契約書の通数ごとに課税されるため、 農地売買契約を締結する当事者が契約書を1通ずつ作成して保管する場合、それぞれに印紙が必要です。しかし、コピーした契約書は契約当事者の署名または押印がなく、契約の成立を証明する文書ではありません。課税事項を証明する目的で作成された文書ではないため課税対象にはならず、印紙は不要です。
農地売買契約書に印紙税が必要な場合の金額
農地売買契約書に添付する印紙の金額は、契約金額ごとに定められています。正し、契約金額が10万円を超え、2014年(平成26年)4月1日から2027年(令和9年)3月31日までの間に作成された農地売買契約書は、軽減措置が設定されています。
本則の20〜50%にあたる税率が適用されているため、契約金額が10万円を超える契約書の収入印紙は、軽減税率が適用された金額を納めるようにしてください。
契約金額ごとの印紙代は、次のとおりです。
契約金額 | 印紙税額(本則) | 印紙税額(軽減税率) |
---|---|---|
10万円以下 | 200円 | ー |
10万円超50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円超100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万円超500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円超1千万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
1千万円超え5千万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5千万円超1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円超5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
5億円超10億円以下 | 20万円 | 16万円 |
10億円超50億円以下 | 40万円 | 32万円 |
50億円超 | 60万円 | 48万円 |
税額をさらに節約したい場合、契約書に消費税額を区分記載するか、税込価格及び税抜価格を記載することで、節税が可能です。
消費税法の改正等に伴う印紙税の取扱いについて、消費税額等が明らかである場合には消費税額等を記載金額に含めないという通達があるためです。
印紙税額を判断する際は消費税を抜いた金額を基準にできるため、金額によっては印紙税額が低くなる可能性があります。
農地売買契約書の印紙税はどちらが負担するか
農地売買契約書に印紙を貼る場合、費用をどちらが負担するか迷うかもしれません。課税文書に貼付する印紙代について、印紙税法第3条では、原則として印紙税の納税義務者を「課税文書の作成者」と定め、共同で作成した場合は両者で印紙税を納める義務があるという規定があります。
そのため、基本的には農地売買契約書を作成した人が印紙代を負担すると考えてよいでしょう。ただし、一般的に契約書は2通作成し、契約当事者がそれぞれ1通ずつ保管するため、自身の保管する契約書に貼り付ける印紙代を各自が負担するというケースが多いでしょう。
農地売買契約書の印紙の貼り方
農地売買契約書の収入印紙を貼る場所は、特に決まりがありません。一般的に、次のいずれかに貼付する方法がとられています。
- 契約書の左上の余白部分
- 署名の横
切手のように裏面にのりが付いているため、水分をつけて貼りましょう。税額が大きく印紙を複数貼り付ける必要がある場合は、上下または左右に並べるようにしてください。
農地売買契約書への消印の押し方
貼付した収入印紙には消印が必要です。消印とは、印紙と文書にまたがるように印鑑を押すことです。一度貼った印紙をはがして再利用されることがないよう、印紙が利用済みであることを証明する目的があります。
消印は、実務上「割印」と呼ばれることもありますが、意味は変わりません。印紙税法上は「消印」が使われ、商慣習上は割印が広く使われています。
消印には正しい押し方があり、間違えるとペナルティで課税される可能性もあるため注意してください。
消印として認められる方法
印紙に正しく消印する方法は、次のとおりです。
- 収入印紙の模様部分と文書に印影がまたがるように押す
- 消印の印影がはっきりわかるようにする
消印に使用する印鑑は、シャチハタやゴム印などでも構いません。印鑑がない場合は、署名も認められています。
消印は、文書の作成者または代理人の印鑑を使って押すのが一般的です。共同して契約書を作成した場合、作成者のうちの1人が代表して押せば良く、全員が押す必要はありません。
消印として認められない方法
次のような方法では消印として認められないため、注意してください。
- 文書と印紙の両方に印影がかかっていない
- 消印の一部が欠けている
- 印影が薄く、不鮮明になっている
- 斜線や二重線を引いている
- 「印」と書いただけの署名
署名をする場合、鉛筆や消せるボールペンなど、簡単に消せる筆記具を使うのもNGです。
誤った消印を訂正するときは、間違えた印鑑に二重線を引き、間違えた印影に訂正印を被せて押しましょう。その上で、正しい印鑑を正しい場所に押し直してください。
農地売買契約書に印紙がないとどうなる?
農地売買契約書に収入印紙の貼付が必要であるにもかかわらず貼らなかった場合、契約自体は無効になりません。しかし、ペナルティが課される可能性があります。
詳しくみていきましょう。
契約内容は無効にならない
農地売買契約書に印紙が貼られてなくても、契約内容が無効になることはありません。印紙が貼られていないことは印紙税法に違反していますが、違反になるのは収入印紙を貼らなかった行為であり、契約の内容とは無関係です。
しかし、印紙税が納められていないことで納税義務が果たされておらず、ペナルティを受けることになるでしょう。
過怠税が発生するリスク
収入印紙の貼り忘れで印紙税を納めていない場合、過怠税(かたいぜい)が発生します。過怠税とは、印紙税を課税文書作成時までに正しく納付しなかった場合に課せられる税金です。納付しなかった印紙税の額と、その2倍にあたる金額の合計額(印紙税額の3倍にあたる金額)が追徴されます。
なお、3倍の金額を徴収されるのは、税務調査で発覚した場合です。調査前に、契約書の作成者が所轄税務署長に対して印紙を貼り忘れたことを申し出た場合は、課税額は軽減されます。追徴額は、貼付し忘れた印紙税の額とその10%にあたる金額との合計額(印紙税額の1.1倍)になります。
契約書に収入印紙が貼られていなかった場合については、以下の記事も参考にしてください。
農地売買契約書の無料ひな形・テンプレート
農地売買契約書を作成する際は、テンプレートを利用すると便利です。以下のURLから無料ダウンロードできますので、ぜひご活用ください。
農地売買契約書の作成については、以下の記事が参考になります。合わせてチェックしてみてください。
電子契約なら農地売買契約書の印紙は不要に
前にも少し触れましたが、電子契約であれば、 農地売買契約書でも印紙の貼付が不要です。
電子契約は、紙を使わずにオンライン上で契約を完結させることです。書面に署名・押印をする代わりに、電子証明書とタイムスタンプで構成される電子署名を使います。
電子契約に印紙が不要なのは、印紙税法上の課税文書に該当しないためです。電子契約を利用すれば、印紙代の節約を図ることができます。
電子契約に印紙が不要な理由については、以下の記事も参考にしてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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