- 作成日 : 2025年3月3日
著作権とは? どこまで保護される?種類、申請方法、期限なども簡単に解説
著作権は、創作物の作者を保護するための法律上の権利です。著作権は音楽や小説などの創作物を作成した際に同時に発生し、日本では著作権法により保護されます。
原則として自然に発生する権利ですが、現在は著作権の登録申請を行うことも可能です。
本稿では、著作権の種類や保護期間、著作権登録申請の方法や、著作権によってどこまでの制限がされるかなどについて、簡単に解説します。
目次
著作権とは
著作権とは、著作物(小説、音楽、絵画、写真、映画など)について、無断使用や複製を制限することで、作者の利益を守る法律上の権利です。
著作権は原則として創作と同時に発生し、特別な手続きを必要としない当然の権利として認められています。日本においては、著作権法によって、作者の権利とその保護について詳細に定められています。
著作権法における著作権の定義
著作権法では、著作者の享受する権利として、著作者人格権と著作権(狭義の著作権)の2つを定義づけています。つまり、著作権法では、著作権は著作者人格権と狭義の著作権の2種類の権利で構成されると記載されています。
著作者人格権は、公表権、氏名表示権、同一性保持権の3種類の権利で構成されます。
狭義の著作権は、次の章「著作権の種類」で説明する財産権としての著作権に該当し、全部で11種類の権利で構成されています。
これらの著作権は著作物の創作と同時に発生し、いかなる手続きも必要とせずに著作者が享受することが、著作権法には明記されています。
著作権と著作隣接権の違い
著作権は、創作活動を行った作者に対して発生する権利です。それに対して、著作隣接権とは、著作権に隣接する権利のことで、著作物を広く伝えていく人に与えられる権利です。
その著作物を放送したり演奏したりすることにより著作物の普及に貢献する人に対して、著作隣接権が発生します。具体的には、実演家、レコード製作者、放送事業者などが著作者隣接権をもつことになります。
例えば、ある音楽CDを販売しようとした場合には、著作権をもつ楽曲の著作者に許可を得て使用料を支払うだけでは足りず、著作隣接権をもつレコード会社にも許可を得て、必要に応じて使用料を支払う必要があります。
著作権の種類
著作権は、「財産権としての(狭義の)著作権」と「著作者人格権」の2つに大きく分類されます。
財産権としての著作権は、著作物を経済的に利用する権利であり、以下の11種類があります。
- 複製権
- 上演権・演奏権
- 上映権
- 公衆送信権・公の伝達権
- 口述権
- 展示権
- 頒布権
- 譲渡権
- 貸与権
- 翻訳権・翻案権など
- 二次的著作物の利用権
財産権としての著作権は、著作物を使用して経済的な利益を得るための権利です。それに対し、著作者人格権は著作者の名声や作品のオリジナリティを尊重し保護するための権利です。
財産権としての著作権は、権利を他の人に譲ったり、許可を得た人にだけ著作物を使わせたりできます。
一方、著作者人格権は、著作者の人格的利益を保護するための権利であり、公表権、氏名表示権、同一性保持権の3つから構成されています。内容としては、著作物を公開するかどうかや、どのような氏名で公開するかなどを決定できる権利です。著作者人格権は著作者の名声や人格を守るための権利であり、著作者自身と密接に結びついているため、譲渡できません。
このように、財産権としての著作権と著作者人格権は、どちらも著作者を守る上で重要な役割を担っています。前者は経済的な利益を守る側面、後者は人格的・精神的な利益を守る側面から、著作者の著作物に対する権利を保護しています。
著作権の保護期間
著作権の保護期間は、70年です。従来は50年間とされていましたが、2019年1月の改正法の施行によって、70年間に変更されました。
原則として著作者の死後から保護期間となりますが、映画作品・匿名作品・団体名義の作品の場合は、公表後から70年がカウントされます。複数人の共同により作られた作品の場合は、その著作物の著作者の中で最後に死亡した人の死亡時から70年間で計算します。
保護期間の計算は、計算を簡便にするため、死亡、公表、創作の翌年の1月1日から起算することとされます。
著作権の保護期間が経過すると、その著作物は社会全体の共有財産として自由に利用できるようにすべきである「パブリックドメイン」という考えのもと、誰でも自由に利用できるようになります。
ここで説明した著作権とは、財産権としての著作権です。著作者人格権については、条文により基本的に死亡後も侵害は認められないとされた上で、著作者の意を害しないと認められる場合には、著作物の公表などが認められます。
著作権の登録申請手続き
著作権は、創作物を完成させた時点で自動的に発生するため、原則として登録や申請などの手続きは必要ありません。
しかし、著作物を最初に公表した年月日を公示したり、著作権が移転したりした場合の取引の安全を確保する観点から、著作権を登録するための申請制度が用意されています。
これにより、著作物に対する実名の登録をしたり、権利の所在を明らかにしたりすることができます。
著作権登録制度は文化庁の管轄であり、登録により著作物の創作事実や権利関係を公的に記録・証明する制度です。これにより、著作物に対する著作者の法律効果を付与し、権利行使を円滑に行えるようになります。
著作権登録申請手続きの流れ
著作権登録申請手続きの基本的な流れは、下記の通りです。
- 申請書類の準備
- 文化庁のウェブサイトから申請書類をダウンロード
- 申請書類に必要な情報を記載し、必要書類を用意
- 最終的な提出書類とする前に、文化庁による事前確認が行われる
- 申請書類の提出
- 申請書に必要な登録免許税分の収入印紙を貼付
- 作成した申請書類一式を、文化庁へ郵送により提出
- 審査
- 文化庁は提出された申請書類に基づき、登録要件を満たしているか審査が行われる
- 登録
- 審査を通過すると、文化庁から著作権登録証が発行され、著作権登録が完了
- 却下
- 申請書等に不備が発見された場合、補正ができる場合を除いて申請は却下される
- 却下された場合、申請した書類一式が返却され、登録免許税の還付を受ける
申請書等が審査を経て登録または却下されるまでの標準処理期間は 30 日です。
著作権はどこまで制限される?
著作権は、著作者の作品に対する権利を守るためのものです。しかし一方で、学術研究、教育、報道などにおいては、著作物を自由に利用することが公益のために必要であるという観点から、著作物の使用を認める規定が設けられています。
次に、著作権法で定められた、一定の条件下で著作物を自由に利用できる「著作権の制限規定」を紹介します。
ただし、ここでいう著作権には、著作者人格権は含まれないため、以下の場合であっても著作者人格権を侵害することは認められません。
私的使用のための複製
著作物は、個人が楽しむなど私的に使う場合には、原則として自由に複製ができます。例えば、購入したCDを個人が楽しむためにダビングすることは問題ありません。
しかし、レンタルしたCDを複製して他人に配布する行為などは、私的使用の範囲を超えるため、著作権侵害となります。
また、セキュリティがかかっている動画などの保護機能を解除してダウンロードをするなどの行為も、認められていません。
付随対象著作物の利用
付随対象著作物とは、写真やビデオを撮影する際に、意図せず背景に写り込んでしまった著作物の利用について認めたものです。
付随対象著作物は、以下の条件を満たせば使用が認められます。
- その著作物を避けて撮影することが困難である
- 写り込んだ著作物が作品の中で軽微な部分である
- 著作権者の利益を不当に害さない
例えば、街の風景を撮影した際に、背景に小さくポスターが写り込んだ写真をブログに掲載することは問題ありません。一方、意図的にポスターを撮影して利用する場合は、この規定の対象外となります。
引用・転載
公表された著作物は、引用して利用することが認められています。ただし、引用をする際は、公正な慣行に合致するものであり、研究や報道など、その引用の目的上正当な範囲内にとどめる必要があります。
具体的には、下記の条件を満たす必要があります。
- すでに公表されている著作物であること
- 引用を行う必然性が明らかなど、公正な慣行によるものであること
- 引用が必要最小限度であること
- 出所の明示をすること
また、政府や国が公開している情報は、転載禁止の表示がない限り、一般に周知するための資料として引用するのであれば、使用することが可能です。
著作権侵害の事例
著作権侵害とは、著作者の許可を得ずに著作物を利用することにより、著作者の権利を侵害する行為です。著作権は一般に考えられている以上に広い範囲に及ぶため、自分でも気がつかないうちに、誰かの著作権を侵害している可能性があります。
以下に、代表的な著作権侵害の例を紹介します。今回紹介する事例は、すべて著作者に「無許可」で行った場合を前提としています。
海賊版の制作・販売
著作権で保護される著作物を、著作権者の許諾なしに複製・出版等する行為(海賊版の作成・販売)は、著作権の明確な侵害です。例えば、映画や音楽の海賊版DVDを制作または販売する行為は、著作権者の収入を不当に奪うことになり、法律で厳しく規制されています。
違法にインターネット上に掲載された著作物のダウンロード
作者の許可なく違法にアップロードされたコンテンツが掲載されたサイト(海賊版サイト)から、海賊版であることを知りながらダウンロードをした場合、その行為は著作権侵害にあたります。
著作権のある音楽を、店舗やイベントでBGMとして無許可で使用
店舗やイベントでのBGMとして、著作権で保護されている音楽を無許可で流すことも著作権侵害に該当します。この場合、著作権管理団体からの許諾を得て料金を支払う必要があります。
ダウンロードした動画や画像をSNSやホームページにアップロード
他人が作成した動画や画像をダウンロードした際に、個人のパソコン上の保存であれば私的利用となります。しかし、それを ホームページやSNSへのアップロードなどにより公衆に公開したり、販売目的で使用したりすることは、私的利用の枠を超えた使用として著作権侵害となります。
漫画や雑誌の撮影画像をSNSで投稿
漫画や雑誌の一部をスマートフォンなどで撮影してSNSに投稿することも、著作権の侵害行為にあたります。
SNSのアカウントが営利目的ではなく、個人的に運営しているものであったとしても、投稿は不特定または多数の人々に閲覧される可能性があるためです。
「漫画の1コマだけ」や「雑誌の表紙だけ」といった部分的な投稿だとしても、基本的にそのすべての箇所において著作権が発生しています。そのため、たとえ一部分であっても、著作者の許可なく投稿をすると著作権侵害行為となります。
CDやDVDをコピーして配布
購入やレンタルしたCDやDVDを複製し、友人などに配布する行為も、私的使用の範囲を超えており、著作権侵害に該当します。
また、社内で使用をするために資料として配布をすることも、著作者の許可なく行った場合には一般的に著作権侵害に該当するため、著作者の了解を得る必要があります。
他人の描いたイラストを自分のSNSアイコンとして使用
他人が描いたイラストを、許可なく自分のSNSのアイコンとして使用することは、著作権侵害に該当します。たとえ営利目的ではなくても、著作者の許可を得ていない場合は問題となり得ます。
また、フリーイラストなどであっても、勝手に加筆をしたり、ロゴを消したりしたりして加工をした場合には、著作権侵害となる可能性があります。フリーイラストであっても、どこまでが認められているかをしっかりと確認することが必要です。
正しいルールに則らない引用
著作物を引用する際には、出所の明示や量の制限といった正しい引用のルールに従う必要があります。ルールを守らずに必要な範囲を超えて大量の引用をしたり、出所を全く示さないで引用をしたりした場合は、著作権侵害になることがあります。
本や映画の翻訳や翻案
著作権者の許可なしに、本や映画を翻訳することは著作権侵害となります。また、著作物を翻訳などにより一部内容を改変して新しい形で発表することも禁じられています。著作物と同一のものではなくても、一定以上の類似性が認められる場合、著作権が適用されて権利の侵害となる可能性があるため、注意が必要です。
著作権侵害が発覚した場合のリスク
著作権侵害が発覚した場合、相手からの訴えにより民事責任を問われるだけでなく、著作権法上の刑事罰も科される可能性があります。
民事上の請求
民事上の請求は、相手が何を求めているかにより異なりますが、代表的なものとして次のようなものが挙げられます。
損害賠償請求
侵害によって著作権者が被った損害の賠償を支払います。賠償額は、侵害行為によって著作権者が失った利益が算定されます。
不当利得返還請求
著作権侵害により不当に得た利益を返還することを求められます。
差止請求
実際に行われている侵害行為の停止をする必要があります。
名誉回復等措置請求
著作権の侵害をしたことに対する謝罪文の公表などにより、著作者の名誉を回復する措置を求められる場合があります。
刑事上の罰則
著作権侵害は、親告罪であるため、著作権者からの告訴・告発があった場合に刑事罰は科せられます。
刑事罰の罰則は著作権法に規定されており、条文では個人に対して「著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者に対し、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」とされ、法人の場合は「三億円以下の罰金刑」を科することとされています。
具体的な罰金額や懲役期間については、行為に対する反省や、前科の有無などが考慮されて決定されます。
著作権侵害にならないための注意点
著作権は、そのつもりがなくても知らないうちに侵害行為をしてしまう可能性があります。
次に、侵害行為とならないためのポイントを解説します。
引用のルールを守る
他人の著作物を自分の作品内で引用する場合、公正な慣行に合致し、報道・批評・研究などの目的上正当な範囲内であること、そして出所の明示をすることが求められます。
【具体的なアドバイス】
- 引用部分は明確に区別する(「 」で囲む、字下げするなど)
- 引用元の著作物名、著者名、出版社名などは必ず明記する
- 引用する分量は必要最小限にとどめる
商業利用には特に注意する
著作物を商業目的で利用する場合、私的利用をするよりも厳しい制限があります。商業目的で使用する場合は、たとえ一部の利用であっても、必ず著作権者の許諾を得ることが必要です。
「フリー素材・商用可」と書かれているコンテンツであっても、利用についてルールが決められている場合もあるため、注意が必要です。
【具体的なアドバイス】
- 利用規約を確認して正しい使い方をする
- 著作権者の許諾を、書面など記録に残るものでもらう
フリー素材や音楽も利用規約を確認する
「フリー素材」「著作権フリー」と表記されている場合でも、完全に自由に使用できるわけではないことがあります。利用規約をよく確認し、著作者表示の有無や商用利用の可否、加工の範囲などを把握しておくことが重要です。
【具体的なアドバイス】
- ダウンロードサイトの利用規約をよく読み、利用条件を確認する
- 疑問に思うことがあれば、勝手に推測をせずに素材提供者やサイト運営者に問い合わせる
インターネット上の著作物に注意する
インターネット上にあるからといって、自由に使用できるわけではありません。著作権で保護されている著作物は、インターネット上でも同様に保護されています。ブログやSNSで画像や動画を共有する際にも、著作権侵害にならないよう注意する必要があります。
【具体的なアドバイス】
- 出典不明の画像や動画は使用しない
- 著作権者の許可なく、他人のブログ記事や写真などを無断で転載しない
著作権トラブルは至る所に潜んでいるので注意
著作権は創作物の無断使用を防ぎ、著作者の利益を守る権利です。原則として、申請や登録なしに自動的に発生しますが、日本においては著作権登録を行うことにより、一層強固に著作者としての権利を主張できます。また、一定の条件を満たせば、許可なく著作物を使用することを可能とする著作権の制限規定も存在します。
一方で、誰でも簡単に著作物を使用する機会が増えた昨今、著作権侵害を犯すリスクは至る所に潜んでいます。
著作者と利用者の双方が著作権に対する理解を深め、お互いの適正な権利の範囲を守ることで、著作権に関するトラブルを回避できるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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