• 作成日 : 2024年5月10日

請求権とは?請願権との違いや代表例も簡単に解説!

請求権とは、個人の人権が侵害された場合に救済を求めることを保障している権利です。請求権には国家賠償請求権や刑事補償請求権があり、裁判所へ訴えるなどして請求できます。

今回は、日本国憲法で保障されている基本的人権の1つである請求権(受益権)の基礎知識と代表例、また似た用語である請願権との違いについて解説します。

請求権とは

請求権(受益権)とは、基本的人権が侵害された際に、その救済を国や地方公共団体に対して求めることができるとして、日本国憲法が保障している権利です。国務請求権ともいい、請求権は裁判所に訴えるなどして行使することができます。

代表的な例として、国家賠償請求権(第17条)、裁判を受ける権利(第32条)、刑事補償請求権(第40条)があります。

請求権と直接請求権との違い

請求権に似た用語として直接請求権がありますが、まったく別の権利です。請求権が個人の権利の保護・救済を目的としているのに対して、直接請求権は地方自治の確立や住民の権利保護を目的としている点に違いがあります。

直接請求権は地方自治の実現のために必要な権利であり、有権者の一定割合の署名を集めることで請求できます。直接請求権でできるのは、条例の制定・改廃の請求、議会の解散請求、首長・議員の解職請求(リコール)、監査請求などです。

通常、地方自治体は知事または市町村長と地方議会議員で構成される議会、および執行機関である行政職員などによって運営されています。住民は、選挙権こそありますが、地方自治の運営自体に直接関与する機会は少ないといえます。

そこで、直接請求権を行使することにより、住民が地方自治体の運営に対して直接意思表明をすることができるのです。

請求権と請願権の違い

請願権も請求権と似ていますが、別の権利です。
請求権は、個人の権利が侵害されたときに、国や地方公共団体などに救済を求める権利であり、裁判所に訴えることで請求できます。

一方の請願権は、請求権と同じく国や地方公共団体に対して行使できる権利で、自然災害による損害の救済、法律の制定・廃止、公務員の罷免など、政治・行政の運営に対して要望や意見を出せる権利です。行使する際は裁判所ではなく、国ならば国会議員、地方公共団体であれば地方議会議員を通じて行います。

請願権は日本国民だけではなく、参政権を持たない外国人にも認められています。

請求権の代表例

次に、日本国憲法で認められている請求権の代表例について解説します。

裁判を受ける権利

日本国憲憲法第三十二条「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」

裁判を受ける権利とは、法律上の争いが生じた際、裁判所に訴えて係争を解決してもらう権利です。裁判を受ける権利には、「訴えを拒否されない」という意味だけでなく、「公正な裁判を受けられる」という意味も含まれています。

日常生活や企業活動においては、個人間・団体間でさまざまなトラブルが起こり得ますが、間に入って判断を下す人は公平な立場でなければなりません。そこで、公平公正な第三者である裁判所に判断をしてもらうことにより、平和的決着を図れるのです。

裁判には民事と刑事がありますが、いずれも憲法第三十二条により裁判を受ける権利が保障されています。

国家賠償請求権(損害賠償請求権)

日本国憲憲法第十七条「何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。」

国や地方公共団体、またはそこに属する職員が、行政行為の中で個人に対して私権を損害した場合に、被った損害について裁判所を通じて損害賠償請求を行うことが憲法により保障されています。これを国家賠償請求権といいます。

どういったケースであれば賠償請求が認められるかはケースバイケースではありますが、国や自治体を相手取っての訴訟は大変難しい裁判となりますので、弁護士に依頼して臨むことがおすすめです。

刑事補償請求権

日本国憲法第四十条「何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。」

刑事補償請求権とは、逮捕や勾留などで一定期間拘束を受けた者が、裁判で無罪判決となったときに、拘留されていた期間に応じて国にその補償を求めることができる権利です。

ただし、金額としてはそこまで大きなものではなく、上限で1日1万2500円とされています。また、刑事補償は実際に身柄が拘束されていた期間の補償となるため、保釈されていた期間の分の補償は受けられません。

事業者がおさえておくべきポイント

請求権の保障は、私人としての個人だけではなく、法人や個人事業主などの事業者にもおよびます。事業者が営利活動を行う中で、国や地方公共団体から何らかの損害を被る可能性は捨てきれません。

ただし、行政機関では行政行為の執行までに多くの職員のチェックや決裁を経ているため、不法行為を個人で立証するのは容易ではありません。国や地方公共団体を相手に請求権を行使する際は、時間や費用面でのコストがかかる可能性も考慮する必要があります。

そこで、事業者が請求権を行使する上でおさえておくべきポイントについて解説します。

証拠書類をそろえておく

国や地方公共団体の行為により何らかの損害を被った場合は、請求権を行使するための証拠書類をそろえておくことが重要です。行政機関と交わした契約書や覚書、損害に関する証憑、メール、現場写真など、行政行為によって損害を受けたことを示す証拠を、できるだけ早く保全しておくことが大切です。

時効の確認

請求権には消滅時効があります。
例えば、国家賠償請求では民法の規定に基づき、損害および加害者を知った 時から3年間、請求権を行使しないときは、時効によって消滅します。損害を受けた不法行為が3年近く前の場合は、正確な期日を確認し、速やかに弁護士などの専門家に相談しましょう。

専門家に相談

損害賠償請求は、自社で裁判所を通じて行えます。しかし、国や地方公共団体に対する請求権の行使は専門性の高い知見を要するため、専門家に相談なく進めるのは困難です。必ず行政事件に詳しい弁護士などの専門家に依頼することをおすすめします。

自社が訴えの対象となるケースも

民間事業者であっても、国や地方公共団体から受託した業務のために、個人から損害賠償請求の対象となるケースもあります。

民間事業者の社員は公務員ではありませんが、行政機関から委託を受けた行政任務を遂行する中で、一般市民などに損害を与えた場合に「公権力の行使に当たる公務員」とみなされ、その責任を問われる可能性があります。

行政機関から業務を請け負う企業は、事故などのトラブルが起きた場合の責任の所在を明確にしておくことが重要です。

請求権は事業者にも認められた基本的権利

請求権は、憲法で国民が保障されている基本的な権利の1つです。国や地方公共団体から何らかの損害を受けた場合は、請求権を行使することで自身の権利・利益を守れます。

請求権には国家賠償請求権、裁判を受ける権利、刑事補償請求権があり、いずれも日本国憲法で保障されている重要な権利です。
請求権は、私人だけではなく企業や個人事業主などの事業者にも認められています。行政行為などによって何らかの損害を受けた場合は、証拠書類の保全や専門家への相談など、適切な手順で請求権を行使することが大切です。


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