• 作成日 : 2023年11月2日

電気通信事業法とは?概要や対象事業者、禁止行為などを解説

電気通信事業法とは、電気通信事業者が事業を営む上で守るべき規則について定めた法律です。電話会社やプロバイダ、インターネットサービスやWebサイトの運営者などの電気通信事業者は、電気通信事業法に従って業務を行わなければなりません。

今回は電気通信事業法の内容、違反事例や2023年6月に施行された改正のポイントについてご紹介します。

電気通信事業法とは?わかりやすく解説

まずは電気通信事業法とはどのような法律なのか、その概要や対象となる事業者について見ていきましょう。

そもそも電気通信事業とは?

電気通信事業法とは、その名の通り電気通信事業者が事業を営む上で守るべき規則について定めた法律です。具体的には新規参入時の条件や利用料金の設定、消費者保護などに関するルールが盛り込まれています。

電気通信事業法の目的は電気通信事業法第1条に記載されています。

(目的)

第一条 この法律は、電気通信事業の公共性に鑑み、その運営を適正かつ合理的なものとするとともに、その公正な競争を促進することにより、電気通信役務の円滑な提供を確保するとともにその利用者等の利益を保護し、もつて電気通信の健全な発達及び国民の利便の確保を図り、公共の福祉を増進することを目的とする。

引用:電気通信事業法|e-Gov法令検索

一言でいえば、電気通信事業法は利用者の利益を保護する目的で制定されました。電気通信は我々にとっては非常に重要なインフラの一つです。電気通信事業者が電気通信事業法を守って事業を行うことで、利用者が電話やインターネットなどのインフラを、適正な価格で誰もが利用できるようになります。

電気通信事業法は1985年に施行された法律ですが、技術の発達や市場の変化などによって電気通信の分野は非常に変化が目まぐるしく、そのときどきの社会情勢によってこまめに改正がなされてきました。

電気通信事業者については電気通信事業者法第2条に定義がなされています。

(定義)

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

一 電気通信 有線、無線その他の電磁的方式により、符号、音響又は影像を送り、伝え、又は受けることをいう。

二 電気通信設備 電気通信を行うための機械、器具、線路その他の電気的設備をいう。

三 電気通信役務 電気通信設備を用いて他人の通信を媒介し、その他電気通信設備を他人の通信の用に供することをいう。

四 電気通信事業 電気通信役務を他人の需要に応ずるために提供する事業(放送法(昭和二十五年法律第百三十二号)第百十八条第一項に規定する放送局設備供給役務に係る事業を除く。)をいう。

五 電気通信事業者 電気通信事業を営むことについて、第九条の登録を受けた者及び第十六条第一項(同条第二項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定による届出をした者をいう。

六 電気通信業務 電気通信事業者の行う電気通信役務の提供の業務をいう。

引用:電気通信事業法|e-Gov法令検索

具体的には電話会社、携帯電話会社、電話転送サービス、インターネットのプロバイダ、オンライン決済代行業者、メールサービスの提供事業者などがこれに当たります。また、ECモールやポータルサイト、ニュースサイト、掲示板、チャット、SNSプラットフォームの運営者なども電気通信事業者にあたります。

対象となり得る電気通信事業者の例

以上のように幅広い事業者が電気通信事業者に該当します。しかし、全ての電気通信事業者が電気通信事業法の規制対象となるわけではありません。以下の全ての項目に該当する事業者は、電気通信事業法が適用されます。

  • 他人のために電気通信役務を提供している
  • 電気通信設備を用いて反復継続して電気通信役務を提供している
  • 電気通信役務を提供する対価として料金を徴収するなどして利益を得ている

適用除外となる電気通信事業の例

例えば、自社を宣伝するためにWebサイトを作成・運営する行為は「他人のために電気通信役務を提供している」とはいえないため、電気通信事業法の対象外となります。同様に社内ネットワークを構築・運用するケースも対象外です。

あくまで商売として電気通信役務を他人に提供している事業者が対象となります。

電気通信事業法の主な3つのポイント

電気通信事業法の規制内容の主なポイントは以下の3点です。

公正な競争を促進

電気通信は私たちの生活に欠かせない重要なインフラであるため、誰もが使いやすいものである必要があります。適正な価格で多様なサービスを使えるよう、特定の事業者(大規模なネットワークを保有するNTTや携帯電話各社)に対し、ネットワークを利用する事業者が公平な条件でサービスを利用できるようなルールが定められています。

一方で、一般の事業者に対しては参入規制や利用者料金の規制が緩和されているので、国民は廉価でかつ多種多様な電気通信サービスを受けることができるのです。

電気通信役務の円滑な提供を確保

電話やインターネットが途切れると仕事や日々の生活に大きな支障をきたします。また、特に災害時や緊急時に電気通信が遮断されると生命に関わる事態にもつながりかねません。電気通信サービスが中断しないよう、電気通信事業法では安全・信頼性確保のためのルールや通信障害、自然災害への対応についても定められています。

利用者利益の保護

国民が電気通信サービスを安心して利用できるようにするために、苦情や相談への対応、消費者トラブル防止などのルールについても定められています。また、憲法第21条第2項の「検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない」という規定に基づき、電気通信事業法では通信の保護についても盛り込まれています。

電気通信事業法の規制対象、通信の秘密とは?

通信の秘密とは個人間の通信の内容や、これに関連した全ての事項のことを指します。例えば、電話で話した内容や電子メールに記載された内容はもちろん、通信当事者の氏名や住所、電話番号やメールアドレスなどの個人情報、通信日時、発信場所など情報も含まれます。

電気通信事業者には情報通信を知得(通信事業者自身が知り得る状態に置くこと)、漏えい(他人が知り得る状態に置くこと)、窃用(本人の意思に反して利用されること)がなされないよう対策をし、個人の秘密が侵害されないよう防止する義務があります。

電気通信事業法の禁止行為とは?

電気通信事業法では前述のとおり公正な競争を促進しています。市場を支配するだけの高いシェアを占める市場支配的事業者、具体的には固定通信市場で回線シェアが50%を超える電気通信事業者(NTT)や移動通信市場で端末シェアが10%を超える電気通信事業者のうち特にシェアが高い事業者(NTTドコモ)に対し、不当な競争を引き起こす恐れがある以下の行為を禁止しています。

  1. 接続の業務に関し知り得た情報の目的外利用・提供
  2. 特定の事業者に対する不当な優先的・不利な取扱い
  3. 製造業者などへの不当な規律・干渉(一種指定事業者のみ)

例えば、他の事業者との接続に関する業務の情報を、むやみやたらに社内外に漏らす行為は①に該当し、特定の事業者のみを優遇し、他の事業者を排除する行為は②に該当します。端末の製造業者やコンテンツの制作会社に対し、他の事業者と取引をしないよう強要する行為は③に当てはまります。

電気通信事業法の違反事例

電気通信事業法違反であり得るのが、通信の秘密の保護に関することです。例えば、電気通信事業者が第三者に利用者の電話の通話内容を漏らしたり、電子メールを閲覧させたりする行為、通話記録などが閲覧できる状態にして放置するなどの行為などが挙げられます。

また、携帯電話会社が無秩序に携帯端末を値引きして販売するような行為も、公正な競争を妨げるとして電気通信事業法違反に該当する可能性があります。実際に対象者以外のユーザーに対しても端末を値引きして販売したとして、総務省が大手携帯電話会社に対して行政指導を行ったという事例がありました。

他にも回線を契約していない人に対する端末の販売拒否、端末購入サポートプログラムの提供拒否、契約の乗り換え者に対して2万円以上の利益を提供する行為なども電気通信事業法違反に該当する恐れがあります。

電気通信事業法の改正ポイント(2023年6月施行)

前述のとおり、電気通信の形態や内容は技術の発展や社会情勢によって目まぐるしく変化しており、それに応じて電気通信事業法も改正されてきました。2023年6月にも改正電気通信事業法が施行されています。今回の改正のポイントは主に3つです。

届出の対象となる業種の追加

電気通信事業者は総務省に届出をしなければなりません。今回の改正では「検索情報電気通信役務」や「媒介相当電気通信役務」を提供している事業者も対象となりました。ちなみに検索情報電気通信役務とは、GoogleやYahoo!などの検索エンジンサービスを提供することです。媒介相当電気通信役務とはX(旧:Twitter)やFacebook、Instagramに代表されるSNSプラットフォームの提供が当てはまります。

特定利用者情報の取り扱いに関する規定の追加

今回の改正で事業者が保護すべき情報として「特定利用者情報」というものが追加されました。特定利用者情報とは「通信の秘密に該当する情報」「利用者を識別することができる情報であって総務省令で定めるもの」のいずれかに該当する情報です。前者は電話やメールの内容などが、後者は利用者に付与されるIDや番号などが該当します。

電気通信事業者は特定情報の取り扱いに関して以下の義務を負います。

  • 情報取扱規程の制定と総務大臣への届出
  • 情報取扱方針の作成と公表
  • 特定利用者情報の取扱状況の評価
  • 特定利用者情報統括管理者の選任と総務大臣への届出
  • 特定利用者情報が漏えいした際の総務大臣への報告

Cookie規制の新設

CookieとはWebサイトの閲覧者の行動履歴や入力したデータ、利用環境などが記録された電子ファイルです。Cookieを活用することで、ログイン時やフォームでの申込みの際などに入力する手間が省ける、必要な情報が得られるなどのメリットがありますが、一方で個人情報の漏えいリスクもはらんでいます。

そこで、今回の改正では「外部送信規律」が追加され、Cookieの取り扱いについても規制が新設されました。サイトやSNS、その他インターネットサービスを提供する事業者は、Cookieを用いて利用者の情報を取得する際には、「送信されることになる利用者の情報」「情報の送信先の名称や氏名」「収集した情報の利用目的」を利用者に開示し、同意を得なければなりません。「Cookieの取り扱いについて」というポップアップなどが表示されるサイトが増えてきましたが、これにはCookie規制の新設が背景にあるのです。

電気通信事業法があるからこそ、私たちは安心して電話やネットが使える

今回は電気通信事業法の概要や対象者、禁止行為や2023年の法改正の内容についてご紹介しました。国民が皆電話やネットというインフラを適正価格で安心・安全に使うためには、電気通信事業法はなくてはならない存在です。

電話やインターネット関連の事業を行う電気通信事業者の方はもちろん、一般の方も情報漏えいなどのリスクから身を守るため、概要をしっかりと把握されることをおすすめします。


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