• 作成日 : 2024年9月3日

交通事故の示談書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説

交通事故の示談書は、事故の解決方法についての合意を証明する書類です。事故の内容や賠償額、その支払方法などが記載され、これが作成されていることによって当事者間のトラブルを未然に防ぐことができます。

当記事では示談書の作成方法について、ひな形を用いて具体例を示しながら解説していきます。作成を検討している方、示談交渉中の方は、ぜひ参考にしてください。

交通事故の示談書とは

交通事故の示談書とは、交通事故の当事者間で、事故に関する賠償について合意した内容を記した書面です。
ここには交通事故の発生日時や場所、当事者の情報、過失割合、損害賠償額、支払方法、支払期限、今後の請求権放棄など、示談に関する詳細な情報が記載されます。

示談が成立すると、当事者間で合意した内容に基づいて解決が図られ、原則として、その後は互いに追加の請求や請求内容の変更はできなくなります。

いったん成立した内容を覆すことは困難であることから示談書作成には慎重に取り掛かるべきであり、不明点や疑問点があれば専門家に相談するようにしてください。

交通事故の示談書を作成するケース

交通事故が起きて「お金のやり取りや責任の所在などを明確にするべき場合」において示談書を作成します。口頭での合意も可能ですが、後日のトラブルを避けるため、示談内容は通常書面に残しておきます。

とはいえ実際のところ、加害者側が加入している保険会社が示談交渉を行い、示談書を作成・送付します。そのため、当事者自身が示談書を作成する機会は多くありません。
しかし、加害者が任意保険に加入していない、あるいは被害者が保険会社の提示額に納得できないなどの理由で、当事者間で直接交渉を行うケースも存在します。このような場合には、当事者自身で示談書を作成するか、または弁護士などの専門家に依頼して作成します。

示談書の作成主体はケースバイケースですが、基本的には支払義務を負う加害者側が作成することが多いでしょう。被害者側が作成することも可能ですが、法的知識が必要となるため、専門家に相談しながら進めることが望ましいでしょう。

交通事故の示談書のひな形

交通事故の示談書を作成するのは簡単な作業ではありません。そのため通常は弁護士に依頼することになりますが、複雑な事案でなければひな形を使って作成することもできます。

こちらのページからダウンロードできますので一度ご確認いただければと思います。

※死亡事故に関するテンプレートはこちら。

もちろん、そのまま使えるものではないので適宜書き換えが必要となりますが、0から作成するより効率的に、ミスなく作成しやすくなるでしょう。

交通事故の示談書に記載すべき内容

上記のページからダウンロードできるひな形を参照しながら、示談書に記載すべき内容を紹介していきます。

交通事故の示談書に記載する基本事項
交通事故の特定
  • どの事故に関する示談なのかを明確にする。
  • 事故発生日時、事故発生場所、事故の状況(どのようにして事故が起こったのか)など。
示談金の額と内訳
  • 「乙は、甲に対し、金○○円の支払義務があることを認める。」などと金額を明記する。
  • 治療費、慰謝料、休業損害などの各金額も明記して内訳がわかるようにしておく。
示談金の支払い方法と遅延損害金
  • 「〇年〇月〇日までに、甲の指定する銀行口座に振り込んで支払う。」などと支払方法について指定する。
  • 支払方法に併せて、銀行名や口座番号なども記載。
  • 振込手数料の負担者や、支払いを遅延したときの遅延損害金についてのルールも記載しておく。
清算条項
  • 「甲及び乙は、本示談書に定めるもののほか、本件に関し、甲と乙との間に何らの債権債務関係が存在しないことを相互に確認する。」などと、今後のさらなる請求トラブルが起こらないように清算条項を定める。
  • 主に加害者側にとって重要な条項。
  • 被害者側としては後遺障害が発覚した場合に備え、「本示談締結後、後遺障害が認定された場合、当該後遺障害に関する損害賠償請求権は、第〇条の示談金に含まれないものとする。」として請求の余地を残しておくことが望ましい。
作成年月日と当事者の特定
  • 示談書の作成年月日を明記。
  • 甲乙の氏名および住所を記載し、当事者を特定する。

なお、ここで紹介したのはごくシンプルな事案で使える示談書です。あらゆるトラブルに対処できるものではないので、不安のある方は一度作成した示談書の内容を弁護士にチェックしてもらいましょう。

交通事故の示談書を作成する際の注意点

示談書の作成にあたっては、被害者側と加害者側、それぞれが注意すべき点があります。特に大事なポイントをピックアップしましたのでご確認ください。

被害者側の場合

交通事故被害者の方は、安易に示談に応じることなく、以下の点に注意して示談書作成に臨みましょう。

  • 損害が確定してから作成する
    → 治療費や休業損害の大きさなど、治療期間が終わらないと具体的な額が判定できないものも多い。損害が確定する前に示談書を作成してしまうと十分な賠償を受けられない可能性があるため注意。
  • 示談金の詳細・内訳を確認する
    → 示談金全体の額だけでなく、治療費や慰謝料、休業損害などの内訳までチェックし、計算に誤りがないか確認すべき。
  • 後遺障害の可能性を考慮する
    → 後遺障害が残るときは後遺障害慰謝料や逸失利益などの請求もできる。後々後遺障害の存在が発覚した場合に備えて示談書でも将来的な請求を留保する条項を盛り込むか、後遺障害の等級が確定してから示談交渉を行う。

適正な賠償を受けるため、上記の注意点を踏まえて後悔のないように示談書作成を行いましょう。

加害者側の場合

加害者側にとっては示談書の作成が責任の範囲を確定させる重大な行為となります。任意保険に加入していれば作成作業には関与しませんが、もし直接作成に関わるのであれば以下の点に注意して慎重に進めるようにしてください。

  • 示談金の支払方法の見極め
    → 保険未加入の場合、一括で支払えないときは分割払いに応じてもらえないか交渉し、無理のない支払計画を立てることが大事。
  • 清算条項を設けること
    → 「○○の分を請求できていなかった」などと追加で請求を受けるリスクを排除するため、ここに記載されたもの以外に債務が存在しないことを明記しておく。
  • 誠意ある対応を心がける
    → 紛争を長期化させず穏便に終わらせるためにも、被害者との対応には配慮が必要。誠意ある対応を心がけ、被害者の心情に配慮しながら交渉を進める。

交通事故の示談書はいつ届く?

治療期間が終わらないと損害額が明らかにならないため、「治療が終わってから」示談交渉が始まります。

そして示談が成立してからでなければ示談書は作成できないので、「示談が成立してから」示談書が作成されます。

ここまでの期間としてトータル数か月かかることもあれば半年以上、場合によっては1年以上かかることもあります。特に長い期間を要するのは後遺障害を負った場合です。症状固定までに最低でも半年ほどはかかりますし、そこから後遺障害等級の認定手続などが必要となります。一方で物損事故であれば治療期間が発生しないため比較的早い時期に示談書のやり取りが行われるでしょう。

示談書と免責証書の違い

示談書に代わって「免責証書」「承諾書」と呼ばれる書類を取り交わすケースもあります。これは示談書の一種であり、示談書を簡略化したものと説明することができます。

示談書だと、契約書のように双方が署名捺印して合意を証しますが、免責証書では被害者側のみが署名捺印します。過失割合が一方にしか存在しない場合など、争いの少ない事案で用いられることが多く、これによって効率的に和解を目指すことができるのです。

ただし効力自体は示談書と変わりありませんので、もしこれを受け取ったときは、示談書同様に安易にサインしないよう注意してください。

公正証書を作成したほうがよいケース

示談書の作成で、示談金の支払いについての約束が確立されますが、支払いが保証されるわけではありません。そこで次のようなケースでは公正証書として示談書を作成しておきましょう。

  • 加害者が任意保険に加入していない
  • 示談金が長期分割で支払われる
  • 示談金が高額
  • 加害者側の態度に不信感がある

「もし約束通りの支払いをしなければ強制執行を受け入れます」との記載を盛り込んで公正証書を作成しておけば、万が一支払いが滞ってしまっても、相手方の財産を差し押さえて強制的に金銭を回収できます。そのため上記のようなリスクが大きいと思われるケースでは公正証書を作成しておくことも検討しましょう。

交通事故の示談書作成・サインは慎重に

交通事故の示談書は、示談を目指すうえでは作成が欠かせない重要な文書です。保険会社が作成してくれるケースがほとんどですが、もし当事者自身で作成することになればここで説明した内容を踏まえ、ひな形も参考にしながら作成を進めていくとよいでしょう。

相手側から示談書を受け取った場合も、安易にサインすることなく、内容をよく精査してから署名捺印を行うようにしてください。その際は弁護士も活用することが推奨されます。


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