- 作成日 : 2024年4月12日
法律行為とは?定義や種類、事業者が注意すべき点などをわかりやすく解説
「法律行為」は、意思表示を通じて法的な効果を生じさせることを目的とした行為のことです。法律行為は、「契約・単独行為・合同行為」の3つにわけられます。本記事では、法律行為の基本的な定義やその種類、そして事業者の注意すべき点などについて解説します。
目次
法律行為とは?
法律行為とは、意思表示によって法律上の効果を生じさせることを目的とした行為のことです。契約や遺言などがこれに該当します。
個人や団体が特定の法律効果を意図して行う意思表示が必要であり、その効果は法律によって保障されます。法律行為は、その成立・効力・変更・消滅などに関して法律の定めに従う必要があり、適法な手続きと形式を要求されることが一般的です。
一方で準法律行為とは、法律行為には分類されないが、その効果が法律行為に類似している行為を指します。なにかを伝えたり通知したりする行為があるものの、それらの行為自体が法律効果を生むものではありません。
法律行為と同様に適法行為であるものの、意思表示が必要ないという点で法律行為とは異なります。法秩序を保つために、当事者の意思に関係なく法的効果が生じるものです。また、準法律行為は法律行為とは異なり、行為能力・錯誤・代理などの通則は基本的に適用されません。
法律行為の種類
法律行為には、以下の3つの種類があります。
- 契約
- 単独行為
- 合同行為
それぞれの内容について、詳しくみていきましょう。
契約
契約とは、2人以上の当事者間で意思の合致をもって成立する法律行為の一種です。当事者は互いに権利と義務を定め、これに合意します。契約の成立には、申込みと承諾の過程が必要であり、これによって法的に拘束力を持つ約束が生じる点が特徴です。
契約の内容は多岐にわたり、たとえば売買契約、賃貸契約、業務委託契約、秘密保持契約などがビジネスの場面で広く用いられます。契約を通じて、当事者間の取引が明確になり、互いの権利と義務が保護されます。
単独行為
単独行為は、1人の当事者によって行われる法律行為のことです。これは、当事者の一方的な意思表示によって法律上の効果を生じさせます。たとえば、遺言や契約の解除、契約の取り消しなどです。
単独行為は、契約など複数の当事者の合意に基づく法律行為とは異なり、1人一人の当事者の意思のみで成立し、効力を発揮します。このような行為は、個人の自由な意思決定を尊重し、その結果として生じる法的効果を認める法理に基づいています。
合同行為
合同行為とは、2人以上の当事者が共同で1つの法律行為を行うことです。この行為は、当事者全員の意思表示が一致して初めて成立します。合同行為の典型例としては、法人の設立や法人の総会決議などです。
合同行為は、全員の合意が必要であり、1人でも合意しなければ、その行為は成立しません。合同行為は、当事者間の密接な協力と信頼関係を要求し、その効果は全員に等しくおよびます。
準法律行為の種類
準法律行為には、以下の2つがあります。
- 表現行為
- 事実行為
それぞれの内容について、詳しくみていきましょう。
表現行為
表現行為の種類は、観念の通知、意思の通知、そして感情の表示の3種類です。
観念の通知は、特定の行動を起こす意思表示がなく、単に事実を伝える行為を指します。たとえば、社員総会の通知、代理権授与の通知、債権譲渡の通知などです。
次に、意思の通知は、特定の意思を伝達する行為であり、その意思が直接的に法的効果を生じさせることを目的としていない行為です。これには、相手方への催告、受領の拒絶、請求などが該当します。
最後に、感情の表示は、感情を表現する行為のことです。これには、民法旧規定により認められていた離婚原因に対する宥恕(寛大な心で許すこと)などが含まれます。
事実行為
事実行為とは、意識的な意思がなくても法的な結果を引き起こす行為のことです。民法の一定の要件に適合する行動をとると、そこに法的効果を発生させようとする意思がなくても法的な影響が生じます。具体的には、以下のようなものです。
- 加工(246条~248条)
- 無主物先占(239条)
- 遺失物の拾得(240条)
- 埋蔵物発見(241条)
- 事務管理(697条~702条)
- 住所の設定
法律行為自由の原則とは
法律行為自由の原則は、法律行為が当事者の自由意思によって行われるという考え方です。つまり、「誰と」「どのような方法で」「どのような契約内容を結ぶか」などは、当事者が自由に選択できます。
これは民法の基本原理である「私的自治の原則」(国家の介入を受けずに、個人間の法的関係を自由に形成できるという考え方)から派生しています。民法521条によって「契約をするかどうかを自由に決定することができる」「契約の内容を自由に決定できる」として、法律行為自由の原則が明文化されています。
しかしながら特定の状況では、この自由が制限されたり、修正されたりすることがあるため注意は必要です。
たとえば、法律行為が法律の規定や公序良俗に反する場合、その契約は無効になったり、取り消されたりする可能性があります。これらの例外が設けられているのは、契約自由の原則を無条件に適用すると、社会的な問題や不公平が生じる可能性があるためです。
法律行為の効力が制限・修正される例外について、これから詳しくみていきましょう。
例外1:公序良俗に違反している場合
公序良俗に違反する法律行為は、たとえ当事者間の合意があったとしても無効です。公序良俗とは「公の秩序」と「善良の風俗」の略称です。具体的に「公の秩序」とは、国家や社会の秩序、または一般的利益を指します。一方で「善良の風俗」とは、社会の一般的道徳観念を指すものです。
公序良俗に反する行為は、社会全体の利益や倫理に反するため、民法第90条により、法的に認められません。たとえば、以下のようなものが公序良俗に違反する契約に該当します。
- 暴利行為(高利貸し)
利息制限法に定められた上限金利を大幅に上回る条件での金銭貸借契約など
- 差別的な内容の契約
人種、性別、宗教などに基づく差別的な条項を含む契約など
- 一方の当事者にとってあまりにも不利益な内容の契約
過度に高額な違約金を規定する条項や、消費者の知識不足を利用して極めて不公平な条件で商品やサービスを購入させる取引など
この原則は、個人の自由を尊重しつつも、社会全体の秩序や道徳を守るための重要な制約となっています。
例外2:要式・要物契約の場合
法律行為自由の原則の例外として、要式契約と要物契約があります。要式契約とは、法律で定められた一定の方式に従わなければ、契約の効力が生じない契約のことです。たとえば、保証契約(民法第446条第2項)や定期建物賃貸借契約(借地借家法38条)などは、書面で契約をする必要があります。
一方、要物契約とは、契約対象となる物の引き渡しがなければ、契約の効力が生じない契約です。たとえば、消費貸借(民法第587条)や動産に対する質権設定契約(民法344条)などが、これに該当します。
これらの契約では、当事者の意思表示だけでは不十分であり、法律で定められた方式や契約対象の物の引き渡しが必要です。
参考:民法 | e-Gov法令検索
参考:借地借家法 | e-Gov法令検索
例外3:書面作成が義務づけられている場合
法律行為自由の原則の例外として、書面作成が義務づけられている場合があります。たとえば、不動産売買契約(宅地建物取引業法第37条)、保証契約(民法第446条第2項)、遺言の作成(民法968条)では、書面による契約締結が義務づけられています。
書面作成の義務を怠った場合、契約が無効となるため注意が必要です。この例外は、法律行為の内容や効果が重大であるため、当事者の意思を明確にし、後日のトラブルを防止する目的で設けられています。
参考:民法 e-Gov法令検索
参考:宅地建物取引業法 | e-Gov法令検索
例外4:強行規定に違反している場合
強行規定に違反している場合、法律行為自由の原則にもかかわらず、その行為は無効とされます。強行規定とは、当事者が自由に変更や除外できない法律規定のことです。これらは通常、公序良俗にかかわる事項や、当事者間の公平を守るために設けられています。
たとえば、最低賃金法に違反する労働契約や、消費者保護を目的とした特定商取引に関する法律に反する契約などが該当します。このような契約は、法律によって保護されるべき基本的な価値や秩序を守るため無効です。
法律行為を行う際に事業者が気を付けるべきポイント
企業が法律行為をするときには、以下のような点に気を付ける必要があります。
- 法律行為の内容を明確に確認する
- 法律行為に影響がある法的規定を確認する
- 意思表示以外に必要な手続きがあるかどうかを確認する
それぞれの内容について、1つずつ詳しくみていきましょう。
法律行為の内容を明確に確認する
法律行為を行う際、事業者はその内容を明確に確認することが重要です。契約の条項・義務・権利・期限など、具体的な詳細を正確に理解し、双方の合意が正しく文書に反映されていることを確認する必要があります。
もし自社にとって不利な条項を見過ごして契約を結んでしまった場合、それは大きな損失を招く可能性があります。不明瞭な点や疑問があれば、事前に解消することで、将来的なトラブルを避けることが可能です。
また、法的な用語や表現についても、弁護士などの専門家の助言を求めるとよいでしょう。
法律行為に影響がある法的規定を確認する
法律行為を行う際、事業者はその行為に影響を及ぼす可能性のある法的規定を事前に確認することが重要です。たとえば、法律行為には、「借地借家法の規定に反する特約で、借主に不利なものは無効」(同法9条・16条・21条・30条・37条)といった、法律上の強行規定により修正されるものが存在します。
法律行為に対する法規制を見落とすと、法律行為の内容が意図せずに変更されたり、業法違反により罰せられたりする可能性があります。このような状況を避けるためには、とくにイレギュラーな法律行為を行う際には、適用される法規制について十分に調査することが重要です。法的トラブルを未然に防ぐためにも、これらの規定を正確に理解し、遵守しましょう。
意思表示以外に必要な手続きがあるかどうかを確認する
業者が法律行為を行う際、単に意思表示をするだけでは不十分な場合があります。契約成立のためには、特定の手続きが必要なケースが存在するためです。
書面での契約締結が法律で義務づけられている場合や、公証人による認証が必要な取引などが挙げられます。また、特定の業種では、行政機関への届出や許可が必要となることもあります。
具体的に金融商品取引法29条には「金融商品取引業に関する契約を結ぶ際には、内閣総理大臣の登録が必要」と示されており、事前に公的な許可を得なければなりません。意思表示以外の成立要件が設けられている場合、それらを満たさないまま契約を締結すると、その契約は無効になります。
そのため、事業者は意思表示を行う前に、その法律行為に特有の手続きが必要かどうかを確認し、適切に対応することが重要です。これにより、法律行為の有効性を確保し、将来的なトラブルを避けられます。
法律行為についての正しい理解を身に付けよう
本記事では、法律行為の定義や種類、事業者の注意すべき点などについて解説しました。法律行為とは、意思表示によって法律上の効果を生じさせることを目的とする行為のことです。法律行為には契約、単独行為、合同行為の3種類があります。
法律行為は自由な意思に基づくことが原則ですが、一定の場合に例外が認められています。意思の欠缺、詐欺・強迫、制限行為能力者の行為、強行法規違反などが例外事由です。
事業者は法律行為を行う際、内容を正確に確認し、関連法規を遵守する必要があります。また、意思表示以外に必要な手続きがないか確認することが重要です。こうした点に気を付けることで、有効な法律行為を行い、将来的なトラブルを避けられます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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