• 作成日 : 2024年9月26日

不動産死因贈与契約書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説

不動産死因贈与契約書とは、贈与者の死亡により不動産贈与の効力が生じる契約書のことです。口約束でも贈与契約は成立しますが、トラブルを回避するためにも契約書を作成しておくほうがよいでしょう。不動産死因贈与契約書の具体例や書き方のポイント、死因贈与と遺言の違いについて解説します。

不動産死因贈与契約とは

不動産死因贈与契約とは、贈与者の死亡によって効力が発生する不動産贈与についての契約です。贈与者はあらかじめ受贈者に贈与の意思を伝え、受贈者が受け取る意思を示してから贈与契約書を作成します。

本来、贈与契約は口頭でも成立します。しかし、死因贈与の効力は相続と同時に発生するため、本当に贈与が生じていたのかを証明する書類がないと、相続人を巻き込んでトラブルになるかもしれません。贈与と相続をスムーズに進めるためにも、契約当事者と贈与対象となる不動産を明確に記載した不動産死因贈与契約書が必要です。

不動産死因贈与契約を締結するケース

不動産死因贈与契約は、以下のケースで締結することがあります。

  • 受贈者に受け取る不動産について理解してほしい場合
  • 条件付きで不動産を贈与したい場合
  • 受贈者を特定したい場合
  • 法定相続人以外に不動産を贈与したい場合

贈与契約を締結するためには、受贈者の意思を確認しなくてはいけません。どの不動産を受け取ることになるのか受贈者に理解してほしいときは、不動産死因贈与契約を締結し、対象不動産を明確にしておきましょう。

また、「介護をしてくれたら」「会社を引き継いでくれたら」のように、条件付きで不動産を贈与したいときも、不動産死因贈与契約が適しています。贈与者の死亡時にどの不動産を受け取れるか明確になっていると、受贈者が条件を実行しやすくなるかもしれません。

財産ごとに相続人を決めておきたい場合も、不動産死因贈与契約が適しています。贈与契約を生前に締結しておくことで、「あの財産は誰が相続するのだろう」と不安にならずに済みます。

事実婚の相手やパートナーなどの法定相続人以外に財産を遺したいときも、死因贈与契約を検討してみましょう。遺言書でも特定の財産を遺せますが、死因贈与契約書のほうが要件は少なく、比較的容易に作成できます。

不動産死因贈与契約書のひな形

大切な財産を正確に贈与するためにも、必要事項を網羅して不動産死因贈与契約書を作成する必要があります。弁護士に相談して作成する方法もありますが、要点を押さえて自作するのもおすすめです。

抜け漏れのない契約書を作成するためにも、ひな形を活用してみてはいかがでしょうか。ぜひ以下からダウンロードしてご利用ください。なお、ダウンロードは無料です。

不動産死因贈与契約書に記載すべき内容

不動産死因贈与契約書には、対象となる不動産や契約当事者についての情報を過不足なく記載しておきましょう。契約書に含める内容を紹介します。

契約当事者

まずは契約当事者を明記します。

贈与者〇〇(以下、甲とする)と受贈者△△(以下、乙とする)は、甲が乙に対して土地を死因贈与することに関し、次のとおり不動産死因贈与契約(以下、本契約とする)を締結する。

死因贈与の合意

次に、死因贈与の合意を得ていることを明記します。

甲は乙に対し、甲が所有する別紙物件記載の土地(以下、本件不動産とする)を、甲の死亡により効力を生じ、死亡と同時に本件不動産の所有権が乙に移転すると定めて、本件不動産を贈与することを約し、乙はこれを承諾した。

不動産の滅失

不動産が贈与者死亡までになくなる可能性もあります。万が一に備えて、不動産滅失時の対応についても記載します。

甲の死亡時において本件不動産が滅失していたときは、本件死因贈与の効力は生じない。

受贈者の死亡

贈与者よりも先に受贈者が死亡する可能性もあります。万が一に備えて、受贈者死亡時の対応も記載しておきます。

甲の死亡時において乙が死亡していたときは、本件死因贈与の効力は生じない。

所有権の移転と仮登記

対象不動産の所有権について明記します。

本件不動産の所有権は、甲の死亡時に甲から乙に移転する。

また、死亡時までに仮登記手続きをしておくと、より所有権移転手続きがスムーズに進みます。

甲は乙に対し、本契約締結の日から〇日以内に、本件不動産の所有権移転請求権保全仮登記手続きを行う。甲は、所有権移転請求権保全仮登記手続きを行うに際し、必要な一切の書類を乙に交付するとともに乙に協力する。

費用負担

不動産の所有権移転時には費用が発生します。費用の負担についても契約書内で定めておきましょう。

本件不動産の死因贈与についての諸経費(登記費用、管理にかかる費用など本契約に基づく取引に関し発生する一切の費用)は、乙が負担する。

執行者

贈与者死亡時に贈与が発生するため、贈与者自身は契約を執行できません。適切と思われる人物を契約執行者として指定しておきましょう。

甲は、乙を本件死因贈与の執行者に指定する。乙は甲の死亡後、本件死因贈与を原因とする本件不動産の所有権移転登記手続きを行う。

損害賠償

本来、贈与は無償で財産を与える・受け取る行為ですが、損害賠償が発生する可能性もあります。万が一に備えて、損害賠償責任についても記載しておきましょう。ただし、贈与者は対価を得ないため、故意または重過失に起因する損害でない限り責任を負わないとするのが通常です。

甲および乙は、本契約の規定に違反し相手方に損害を与えた場合は、相手方に対しその一切の損害の賠償を行うものとする。

契約の解除

将来的に贈与の意思が変わる可能性もあります。契約解除の条件と解除時の手続きについて定めておきましょう。

甲は、甲の生存中はいつでも乙に対する意思表示によって本契約を解除できる。本契約が解除された場合、乙は、速やかに所有権移転請求権保全仮登記の抹消登記手続きを行う。手続きにかかる費用は乙の負担とする。

合意管轄と協議

トラブルが訴訟に発展した場合に備え、管轄裁判所を決めておきます。 

本契約に関して訴訟の必要が生じた場合には、〇地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

トラブルを協議により解決する可能性もあります。その場合の信義誠実の原則も明記しておきましょう。

本契約に関して、疑義が生じた場合または定めのない事由が生じた場合には、両当事者は信義誠実の原則に従い協議を行う。

契約書の保管についても記載します。

本契約の締結を証するため、本書の電磁的記録を作成し、甲乙が合意の後電子署名を施し、各自その電磁的記録を保管する。

不動産死因贈与契約書を作成する際の注意点

不動産死因贈与契約書を作成するときは、次の点に注意が必要です。

  • 公正証書にする
  • 当該不動産の仮登記を済ませておく
  • 契約執行者を指定する

口頭での死因贈与は成立しますが、トラブルを回避するためにも、契約書を作成し、公正証書としておきましょう。仮登記と本登記の手続きがスムーズに進みます。

当該不動産の仮登記日を決め、不動産死因贈与契約書に記載しておくことも大切です。公正証書として作成している場合は、贈与者の意思が明確なため、登記時に贈与者の承諾書や印鑑証明書の提出を省略できます。

また、契約執行者についても契約書内に記載しておきましょう。受贈者を執行者と指定すると、受贈者一人で契約を完遂できます。

死因贈与と遺言の違い

死因贈与と遺言は、いずれも当事者の死亡により財産の受け渡しが実行されるという点では同じです。しかし、受贈者の事前承諾や遺産内容の開示、相続放棄の3点において異なります。どちらで財産を遺すか迷ったときは、以下を参考にしてください。

死因贈与遺言
受贈者の事前承諾必要不要
遺す資産内容の開示必要不要
相続放棄不可可能

死因贈与と税金

不動産を死因贈与すると、税金が発生することがあります。主な税金について解説します。

死因贈与は相続税の対象

死因贈与により受け取った財産は、贈与税ではなく相続税の課税対象となります。そのため、死因贈与が発生(贈与者の死亡)してから10ヶ月以内に相続税の申告と納付をしなくてはいけません。

受贈者が贈与者の配偶者か1親等の血族でない場合は、相続税が2割加算される点にも注意が必要です。また、相続税の手続きは法定相続人全員と協力して進めていく必要があるため、受贈者が個人で申告・納付はできません。

不動産取得税と登録免許税が発生する

遺贈により不動産を受け取る場合、不動産取得税は非課税ですが、死因贈与により受け取る場合は課税対象となる点に注意が必要です。

また、遺贈の場合、法定相続人が受贈者のときは0.4%の登録免許税、法定相続人以外が受贈者のときは2.0%の登録免許税が課税されます。しかし、死因贈与の場合は、法定相続人かどうかにかかわらず一律2.0%の登録免許税が課せられます。そのため、死因贈与を選択すると、受贈者の税負担が増えることが多いです。

参考:No.7191 登録免許税の税額表|国税庁

受贈者を決めている場合は死因贈与を検討してみよう

大切な不動産を特定の人に確実に渡したいときは、不動産死因贈与契約を検討してみましょう。相手の意思を確認してから贈与契約を締結するため、相続人同士の話し合いに任せるよりも確実に不動産を引き渡せます。

しかし、遺贈や相続と比べると、受贈者の税負担が大きい点に注意が必要です。各手法のメリットとデメリットを比較し、適切な方法で財産の引渡しを実行してください。


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