- 更新日 : 2024年9月9日
店舗賃貸借契約書とは?ひな形と合わせて記載事項や注意点を解説
コロナ禍で、独立・開業に興味を持つ人が増えているようです。実店舗を持つのであれば、物件を探して店舗賃貸借契約を締結しなければなりません。
一方、店舗物件の賃貸業は利回りが比較的安定しているといわれており、投資目的の人にも注目されています。
今回は店舗賃貸借契約書の雛形を紹介し、トラブルを防ぐ書き方のポイントを説明します。
目次
店舗賃貸借契約書とは?
店舗賃貸借契約書とは、事業用の店舗を借りる際の契約書のことです。
契約の一般法である民法では、賃貸借契約の当事者双方は対等・平等の立場であることが前提であるため、一方にとって不利な内容であっても、合意して契約が成立した場合は原則として適法となります。
しかし、建物や土地の賃貸借契約では一般的に借主が弱者、貸主が強者という力関係になるため、特別法で借主を保護しています。
これが借地借家法(しゃくちしゃっかほう)で、住居として借りる場合、借主は法的に手厚く保護されます。
ただし、事業用の店舗は事業者同士の取引となるため、賃借人の保護は手厚くありません。
例えば、居住用では通常の使用による損耗について賃借人に回復義務はありませんが、事業用ではクロスの張替費用などの回復費用を賃借人に負担させる契約上の特約が有効とされることがあります。
いずれにせよ、店舗賃貸借契約書に記載されている内容には注意が必要です。
契約当事者の双方が、話し合って契約内容を変更する可能性があることも覚えておきましょう。
店舗賃貸借契約書の雛形
店舗を借りる際の契約書が、店舗賃貸借契約書です。
ここでは簡易的な雛形(テンプレート)を紹介しますが、あくまでも一般的なものであり、実際の契約内容によって盛り込む条項は変わります。
店舗賃貸借契約書に記載する主な項目
一般的に店舗賃貸借契約書に記載される事項の中で、特に問題になりやすい項目について解説します。
店舗の表示
賃貸借契約の対象となる物件を特定するための事項です。不動産登記簿謄本の記載事項である所在、地番、家屋番号、種類、構造、床面積を記載します。
使用目的
店舗、事務所、倉庫、住宅兼事務所など、物件の使用目的を記載します。テンプレートでは、店舗の用途を特定の物品の販売に制限しています。
賃貸借期間及び契約の更新
一般的な賃貸借期間は2~3年です。1年未満とすると「期間の定めのない賃貸借」と見なされ、いつでもどちらからでも解約の申し入れができます。
契約期間が満了すると、当事者双方が更新を希望する場合は契約の合意更新の手続きを行います。
借地借家法では合意更新をせずに契約期間が満了しても、契約期間が満了する6ヶ月前までに「期間満了後は契約を更新しない」、または「条件を変更しない限り契約を更新しない」という内容の通知をしなかった場合、契約は自動的に更新(法定更新)されるとされています。
通知の有無についてトラブルになることを避けるため、テンプレートでは書面で通知するよう定めています。
賃料
賃料については、周辺の相場に照らして妥当な金額かどうかを調べておくことが大切です。
テンプレートでは賃料と振込手数料しか記載されていませんが、賃料を滞納した場合の遅延損害金について記載してもかまいません。
居住用の場合は、消費者契約法によって年利14.6%以上は無効となりますが、事業用の場合はその制約がありません。
ただし利息制限法に従うことになるため、上限は以下のようになります。
- 元本が10万円未満の場合は20%
- 元本が10万円以上100万円未満の場合は18%
- 元本が100万円以上の場合は15%
契約書で遅延損害金が定められている場合は、上記の利率よりも低いことを確認する必要があります。
保証金
一般的に店舗賃貸借契約の保証金は居住用よりも高額になるため、後でトラブルにならないように保証金の額を明記するのが通例です。
店舗の経費
共益費や水道光熱費などについての規定です。支払期日や支払方法などについても、明確にしておきましょう。
解除
賃貸人が無催告解除をできる事由が列挙してあります。テンプレートにあるように、一定期間賃料を滞納しても、法的には直ちに解除が認められるわけではありません。
テンプレートにある「無断転貸」のように、当事者間の信頼関係を破壊するような事由がある場合に解除が認められた判例があります。
借主が店舗賃貸借契約で注意すべき点
店舗賃貸借契約書の記載事項のポイントを紹介しましたが、契約に際し、借主と貸主の双方はその他にどのようなことに注意すべきなのでしょうか。
まず、借主が注意すべき点について見ていきましょう。
法令上の制限などを受けないか
物件を選定する際に立地や外観などを気に入り、「すぐに借りたい」と思うことがあるかもしれません。
しかし、業種によっては都市計画法の用途地域の制限や建築基準法、消防法などによる制限によって、店舗として営業できないケースがあります。
またマンションの一室を借りる場合に、管理組合の規約で事業目的の利用が禁止されているケースもあります。
このような制約の有無を調べておくことも大切です。
居抜き物件の設備は残るのか
借りる時点での物件の状況にも注意が必要です。前の借主が設備や内装を残した状態で借りることを「居抜き」といいますが、実際に入居する時には設備が売却されている可能性があります。
「利用する予定だった設備がなくなっている」といったことにならないように、設備の残置については内覧の際に確認しておきましょう。
スケルトン物件の注意点とは
柱や壁、床、天井など、建物の躯体だけの状態の物件をスケルトン物件と呼びます。
費用はかかりますが、前のテナントのイメージが残らず、自分の理想の店舗を作れるというメリットがあります。
ただし、退出時にスケルトンの状態に戻す必要があるか、戻す必要がない場合は造作物の買取請求が可能かどうかを確認しておきましょう。
貸主が店舗賃貸借契約で注意すべき点
次に、貸主の注意点について見ていきましょう。
中途解約の場合の事前通知
店舗賃貸借契約書には賃貸借期間が記載されていますが、実際には経営が思うようにいかず、中途解約を余儀なくされるケースもあります。
テンプレートにはありませんが、このような場合を想定し、「中途解約を行う場合は~ヶ月前までに通知するものとする」と定めておくとよいでしょう。
事業用物件では「6ヶ月前」など長めに設定するのが一般的ですが、契約時に事前通知の期限について協議し、契約時に明記しておくことをおすすめします。
原状回復義務を明確にする
「退去時に原状回復義務を負うのは借主」とするのが一般的です。
原状回復を適切に行わなかった場合の対応についても、定めておいたほうがよいでしょう。
例えば、賃貸人が原状回復を行わなければならないケースを想定して「賃貸人が原状回復を行った場合、賃貸人は賃借人に原状回復費用を請求できる」という条項を契約書に盛り込んでおきます。
店舗賃貸借契約書を作成する際の注意点を知っておこう!
店舗を借りてお店を経営するために不可欠な、店舗賃貸借契約書のポイントについて解説しました。
借主、貸主のどちらであっても、契約事項は事前にしっかり確認しておくことが大切です。
一般的に事業用物件は居住用よりも賃料や保証金が高額になるため、店舗賃貸借契約書を作成する際は専門家にチェックしてもらうことをおすすめします。
よくある質問
店舗賃貸借契約書とは何ですか?
店舗賃貸借契約書とは、事業用の店舗を借りる際の契約書のことです。 詳しくはこちらをご覧ください。
店舗賃貸借契約書にはどのような事項を記載しますか?
店舗の表示や使用目的、賃貸借期間、契約の更新、賃料などです。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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