- 作成日 : 2024年12月2日
個人情報の第三者提供とは?同意の取り方や例文、提供の方法(ひな形付き)
事業者が顧客の個人データを第三者に提供する場合、その顧客から同意を得なければなりません。この記事では個人データの第三者提供に関する基礎知識から同意の取り方、「個人情報の取り扱いに関する同意書」の書き方や盛り込むべき内容についてご紹介します。
▼個人情報の同意書のテンプレートは以下よりダウンロードいただけます。
目次
個人情報の第三者提供とは?
個人情報の第三者提供とは個人が特定できる情報を自社以外の会社や機関、人に提供することです。個人情報の取り扱いに関しては個人情報保護法(個人情報の保護に関する法律)に定められており、個人情報の第三者提供については第27条に規定されています。
第二十七条 個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。
特定のケースを除き、個人情報取扱事業者が個人データを第三者に無断で提供する行為は違法行為にあたりますので、十分注意しましょう。ちなみに個人情報取扱事業者とは事業のために顧客や従業員などの個人情報を利用する事業者のことを指し、ほとんどの会社や機関は全てこれに該当します。
個人情報の第三者提供に該当しないケース
例えば事件や事故、災害が発生したときに必要な情報を行政機関や医療機関、家族の勤め先などに提供するケース、児童虐待の恐れがある家庭の情報を児童相談所や警察などに提供するケース、税務調査で顧客の情報を求めてきたケース、大学の研究調査に協力するケースなどが挙げられます。
個人データの内容
個人データとは個人情報が含まれているデータのことを指し、例えば顧客リストや名簿などがそれにあたります。個人情報とは生存する個人に関する情報のうち、特定の個人を識別できる情報のことを指し、氏名や住所、勤務先、生年月日、電話番号、メールアドレスなどが挙げられます。
第三者の具体例
第三者の具体例としては、例えば外注先や業務提携先の企業、フランチャイズ本部・フランチャイズ加盟者などの自社以外の会社や事業者などが挙げられます。また、親会社・子会社、グループ会社なども別の事業者と見なされるため、第三者に該当します。つまり自社以外の事業者に個人データを提供する場合は、あらかじめ当該個人の同意が必要ということになるのです。
個人情報の第三者提供の同意の取り方
個人情報の第三者提供に関する同意を得る手段としては口頭で意思表示をしてもらう、書面を発行して同意してもらう、同意する旨をメールで連絡してもらう、契約書の確認欄にチェックを入れてもらうなどがあります。
しかし、口約束では相手方が個人情報の第三者提供に同意したという証拠が残りませんので、可能な限り書面や電子データなどで同意したという記録を残しておくのが望ましいでしょう。
本人の同意なく個人情報の第三者提供ができる場合
原則として自社以外の第三者に個人情報を提供する場合は本人の同意が必要ですが、先述の個人情報保護法第27条では以下のように規定されています。
第二十七条 個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。
一 法令に基づく場合
二 人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
三 公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
四 国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき。
五 当該個人情報取扱事業者が学術研究機関等である場合であって、当該個人データの提供が学術研究の成果の公表又は教授のためやむを得ないとき(個人の権利利益を不当に侵害するおそれがある場合を除く。)。
六 当該個人情報取扱事業者が学術研究機関等である場合であって、当該個人データを学術研究目的で提供する必要があるとき(当該個人データを提供する目的の一部が学術研究目的である場合を含み、個人の権利利益を不当に侵害するおそれがある場合を除く。)(当該個人情報取扱事業者と当該第三者が共同して学術研究を行う場合に限る。)。
七 当該第三者が学術研究機関等である場合であって、当該第三者が当該個人データを学術研究目的で取り扱う必要があるとき(当該個人データを取り扱う目的の一部が学術研究目的である場合を含み、個人の権利利益を不当に侵害するおそれがある場合を除く。)。
以上のようなケースでは本人の同意がなくとも第三者に個人情報を提供することが可能です。
個人情報の第三者提供に関する同意書の必要項目
個人情報の第三者提供に対する同意を取り付ける際には同意書で本人が合意した証拠を残しておくことが重要です。ここからは個人情報の第三者提供に関する同意書に盛り込むべき内容について見ていきましょう。
利用目的
同意を取ったからといって、どのような場合でも個人情報を提供していいということにはなりません。同意書にはどのような目的で個人情報を第三者に提供するのかを明記しておきましょう。
「本サービスの実用化検証実験のため」「本サービスの利用に関する統計データを作成するため」「本サービスに関するお問合せのため」というように、簡潔かつ具体的に箇条書きすることで、目的がわかりやすくなり、本人からの信頼性も向上します。
第三者提供
本人が第三者提供に合意する旨について記載します。また、前述の通り同意を得ないまま個人情報を第三者に提供できるケースもあります。どのような場合に同意を得ずに第三者提供できるのか・できないかについて明らかにしておきましょう。
開示請求
開示請求とは自分が保有されている個人情報を個人情報取扱事業者に対して開示を求めることです。これによって自身のどのような情報が保有されているか、それらがどのように扱われているかを知ることができます。本人が開示請求できる旨とその方法についても合意書に記載しましょう。
個人情報相談窓口
相手方が個人情報の取り扱いに関する問い合わせをしたり苦情や意見を伝えたりするための窓口を記載します。窓口の住所や部署名、担当者名を明示しておきましょう。
個人情報の第三者提供に関する同意書の例文、テンプレート
個人情報の第三者提供に関する同意書は抜け・漏れがないよう、さまざまなケースを想定して作成する必要があります。特にはじめて同意書を作成される方は大変に感じられるかもしれません。そこで、当サイトではすぐに使えるテンプレートをご用意しました。こちらも参考にして同意書を作成してみましょう。
個人情報を第三者に提供する場合のやり方
個人情報を第三者に提供する際には、まず本人の同意を得ましょう。
個人情報を第三者に提供する方法としてはデータが印刷された紙を手渡す、データが入ったUSBメモリやCD-ROMなどの記憶媒体を渡す、クラウドシステムにアップロードするなどの手段がありますが、いずれにしてもファイルにパスワードをかける、セキュリティ対策を万全にするなど、漏洩がないよう管理する必要があります。
また、個人情報を第三者に提供する場合はその記録を作成することが個人情報保護法で規定されています。
第二十九条 個人情報取扱事業者は、個人データを第三者(第十六条第二項各号に掲げる者を除く。以下この条及び次条(第三十一条第三項において読み替えて準用する場合を含む。)において同じ。)に提供したときは、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、当該個人データを提供した年月日、当該第三者の氏名又は名称その他の個人情報保護委員会規則で定める事項に関する記録を作成しなければならない。
個人情報を第三者に提供した場合、提供者は提供した年月日、本人の氏名、同意の有無、受領者は提供を受けた年月日や確認に係る事項などを3年間保管しなければなりません。
個人情報を第三者に提供する場合は書面で同意を得ましょう
事業で得た個人情報を第三者に提供するのであれば、例外を除き本人の同意が必要です。提供する情報や提供目的などを明らかにし、証拠が残るよう極力個人情報の第三者提供に関する同意書などの書面で同意を形成しましょう。
もし同意がないまま個人情報を第三者に提供すると、個人情報保護法違反に該当する恐れがあります。また、顧客との間にトラブルが発生する、社会的信用が低下するといった事態も考えられますので、個人情報の取り扱いには十分注意しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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