• 更新日 : 2022年10月13日

債権譲渡通知書とは?作成方法についても解説

債権譲渡通知書とは?作成方法についても解説

債権者は、原則として債権を第三者に譲渡することができます。ただし、債務者がその事実を知らないことで不利益を被るおそれがあるため、法は債権譲渡があったことを譲渡人が債務者に通知することを求めています。
ここでは、債権譲渡の基礎知識や債権譲渡通知書の書き方などを雛形とともに紹介します。

債権譲渡とは

債権譲渡とは、債権者が持つ債権を、その内容をまったく変えずに第三者に移転する行為のことです(民法(以下同)第466条1項)。債務者にとっては、債務の弁済相手がこれまでの債権者(債権譲渡人)から、直接取引を行っていない第三者(譲受人・新債権者)に変わることになります(下図参照)。
債権譲渡
債権譲渡は、例えば喫緊で資金を必要とする会社が、弁済期が到来していない自社の売掛金債権を売却して資金を調達する、あるいは別の会社に対する債権を譲渡することで自社の弁済期日が迫った債務を弁済するといったように、広く行われています。

しかし、かつては債務者保護の観点から、債権者と債務者間の契約で債権の「譲渡禁止特約」が交わされていれば、債権者が勝手に債権譲渡しても無効とされていました(旧民法第466条2項)。
その後、社会情勢の変化に伴い、資金の流通を円滑にして社会経済を回すためには債権譲渡をもっと自由に行うことができるようにしたほうがよいという考え方が主流になりました。そこで、2020年の民法大改正において、前述の第466条2項は当事者が債権譲渡禁止(制限)特約をした場合であっても「債権の譲渡は、その効力を妨げられない」と大幅に変更されたのです。

せっかく取り決めた債権譲渡禁止の約束が民法改正で効力を失い、突然債権者が変わる可能性があることは、債務者にとっては不安かもしれません。支払いの取り決めの再考など、実務上の面倒も生じるでしょう。
しかし、弁済期や支払方法など債務に関する内容はそのままですし、譲受人に故意または重過失が認められれば、債務者は弁済を拒めます。また「契約上の地位の移転(第539条の2)」と違い、契約そのものの取消権や解除権などは譲渡されず、債権者との契約関係は維持されるので、実は債務者に大きな負担がかかるわけではありません。

債権譲渡自体は譲渡者と譲受者の二当事者間での契約で成立しますが、債務者は完全に蚊帳の外というわけではありません。債権譲渡契約では債務者に対し、対抗要件を備えるために「債権譲渡通知書」を送付する必要があるからです。

参考:民法|e-Gov法令検索

債権譲渡通知書とは

債権譲渡通知書は、債権者が第三者に変更されたことを債務者に対して知らせる通知書類です。譲渡人は債権を譲渡した旨を債務者に通知(または債務者が承諾)しなければ、譲渡を債務者に対抗できません。また、確定日付のある証書によって債務者に通知(または債務者が承諾)しなければ債務者以外の第三者に対抗できません(第467条)。これは、通知を行うことで債務者に新たな債権者を認識させるとともに、債務者が二重弁済などの危険を回避できるようにするためです。

「確定日付のある証書」とは、郵便局が扱う内容証明郵便や、公証役場において公証人が日付印を押捺した文書のように、公的な立場にある第三者が、その書類が確かに確定された日に存在していたことを証明する書類のことです。確定日付があることで、仮に債権の二重譲渡が行われても、譲受者の優劣が債務者や各譲受者に明らかになります。
なお、令和3年に施行された「産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律」により、債権譲渡の通知が、同法に基づく認定を受けた事業者が提供する情報システムを利用してなされた場合は、確定日付のある証書による通知等とみなされることになりました。

この第三者への対抗要件ですが、債権譲渡登記制度を利用して具備することもできます。詳細は後ほど説明します。

債権譲渡通知書は、譲渡人が債務者に対して出さなければなりません。まったく関係のない譲受人から通知書を受け取っても、債務者は本当にその内容の債権譲渡が行われたかどうかが分からないからです。ただし、譲渡人から委任された場合は、譲受人が譲渡人の代理として通知を出すことができます。

参考:債権譲渡の通知等に関する特例に係る新事業活動計画の認定|経済産業省

債権譲渡通知書の雛形

ここでは、一般的な債権譲渡通知書の記載例を紹介します。
以下のテンプレートでは、会社同士の売買契約で生じた譲渡人の有する売掛金債権の他社への譲渡を、売買契約の相手方である債務者に通知しています。
確定日付が必要な書類に用いられることの多い、内容証明郵便の書式で作成しています。

債権譲渡通知書のテンプレートは下記のページからダウンロードできます。

債権譲渡通知書の作成方法

「通知」はその行為によって直接法的効力が発生するわけではありませんが、一定の意味や効果を得られる「準法律行為」と解されています。債権譲渡の通知は、それを受け取った相手に何らかのアクションを求めるものではなく、単に一定の事実を一方的に相手方に伝えるものであり、「観念の通知」と呼ばれる準法律行為と認識されています。
通知書には当該債権譲渡について債務者に必要な、以下の情報を記載します。
譲渡された債権の特定
債権者と債務者間には複数の契約が存在しているケースも多いので、いつ、どの契約で生じた債権かを明らかにします。また、債権の額や弁済期も記載しておきましょう。

譲受人の情報
新たに債権者となる者の住所・氏名(会社の場合は会社名と代表者名)を記載します。

債権譲渡がなされた日
確定日付と同じ日でも、実際に譲渡契約を交わした日(確定日付以前)でも構いませんが、第三者に対する対抗要件を取得するのは確定日付以降になります。

最後に、譲渡人および被通知人(債務者)の住所・氏名を記載します。

債権譲渡登記制度とは

平成10年10月に始まった債権譲渡登記制度は、譲渡人が法人の場合に、登記により債権譲渡の第三者への対抗要件を備えることができる制度です。平成17年10月以降は将来債権(継続的取引などにより将来も定期的に発生する債権)の譲渡においても登記が可能になりました。

登記の対象となるのは、金銭債権の譲渡のみです。譲渡人は登記申請書、取下書、譲渡人および譲受人の資格証明書(法人の登記事項証明書など)、譲渡人代表者の印鑑証明書などの必要書類を揃え、債権譲渡登記所(東京法務局が指定されています)に送ります。
ちなみに、債権の存在の証明や実際に債権譲渡があったことを証明する書類は登記申請時には求められないため、債権譲渡の登記によって債権の存在や譲渡の内容が真正なものであることの公的な証明は受けられません。
債権譲渡登記の登録免許税は1件につき7,500円かかるため、多くの債権を一括で譲渡するような場合に、全債務者に通知をする手間や費用を省く目的であれば、利用する価値があるといえるでしょう。

債権譲渡通知書に印紙税は必要?

前述のとおり、債権譲渡通知書は譲渡人が一方的に「観念の通知」を行うもので、契約書とは性質が異なる書類です。従って、印紙税法基本通達別表第一15号文書の4(債権譲渡に関する契約書)」には該当せず、印紙税はかかりません。

債権譲渡通知書は確定日付のある証書で送ろう

債権譲渡自体は債権者と譲受人の間の契約で成立しますが、債務者保護の観点から、債権者は債務者にその旨を通知して初めて、譲渡の事実を債務者に対抗できるようになります。
後々のトラブルを防ぐために、債権譲渡通知書を確定日付のある証書で作成し、債務者以外の第三者にも対抗できるようにしておきましょう。

よくある質問

債権譲渡通知書とは?

債権者が第三者に変更されたことを、債務者に対して知らせる通知書類のことです。詳しくはこちらをご覧ください。

通知を確定日付のある証書で送る意味は?

その日付に債権譲渡がなされたことを、債務者だけでなく第三者にも対抗できるようにするためです。詳しくはこちらをご覧ください。

債権譲渡登記制度とは?

譲渡人が法人の場合に、登記により債権譲渡の第三者への対抗要件を備えることができる制度のことです。詳しくはこちらをご覧ください。


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