• 作成日 : 2025年1月31日

担保とは?被担保債権の意味や使い方、種類、注意点などを簡単に解説

担保とは、融資や契約の安全性を確保するために、債務者が提供する資産や権利を指します。

担保には不動産が設定されることが多いですが、借入時や契約を結ぶ際の保証人も担保の一種です。担保の設定により、債権者は債務不履行でも回収できる財産を確保できます。

本記事では、担保の意味や種類、メリット・デメリットについて詳しく解説します。

担保とは

担保とは、債務不履行時に債権者が損害を回収する手段として利用できる保証の仕組みであり、債務者が債権者に提供する経済的価値をもつもののことです。

まずは、担保の意味や目的、被担保債権について確認していきましょう。

担保の意味

担保という言葉は、将来発生するかもしれない不利益に備えて、損失の補いとなるものを用意しておくこと、もしくは補いとなるもの自体を意味します。

法律上の用語として、債権を回収できないリスクに備える手段を意味するほか、日常用語として、将来の結果を保証する意味合いで使われることもあります。

融資や取引の場面で担保を設定するのは、債務や契約が履行されない場合にも債務を回収できるように、債務者の財産や保証人を確保しておくことが目的です。債権回収の確実性が高まるため、債権者と債務者の信頼が強化されます。

被担保債権とは

被担保債権とは、担保として提供された資産によって、返済が保証される債権のことです。

たとえば、1,000万円の融資を受ける債務者が、返済不能となる事態に備えて自身が所有する土地を担保に設定したとします。この場合、担保される対象である被担保債権は「1,000万円の債権」であり、債権者は債務不履行時に担保の土地を売却して1000万円まで債権の回収が可能です。仮に土地が1000万円以上で売却できた場合には債務は消滅し、その差額は債務者側に戻されることになります。他方で1000万円に満たなかった場合には全額が当該債権者への返済に充てられ、その差額は当該債権者から債務者への債権(残債権)として残ることになります。

被担保債権は、債務者の立場からみて被担保債務と呼ばれる場合もあります。

担保のビジネスシーンでの使い方

担保は、ビジネスシーンや日常会話においてもしばしば使われる用語です。

ここでは、「品質を担保する」「土地を担保に入れる」の2つの例文において、担保という言葉がどのように使われているのかを解説します。

品質を担保する

ビジネスシーンにおいて「品質を担保する」というと、将来において問題が起きないように、製品やサービスの品質を維持するための取り組みが行われていることを意味します。

自社の製品やサービスが仕組みや制度により問題なく提供されており、品質を保証することを表したいときに使われる表現です。問題が起こらないよう手段を講じる「保障」や、品質に問題がないと責任をもつ「保証」の両方の意味合いを含んで用いられます。

土地を担保に入れる

「土地を担保に入れる」という表現は、法律用語としての「債務不履行の際に損失を補うもの」としての使われ方です。融資を受ける際に、自分が所有する土地を担保に設定することを意味します。

お金を借りる際に土地を担保に入れると、返済が滞ったときの債権者に与える損害の埋め合わせを用意できるため、債権者からの信頼が高まります。

担保の種類

担保になるものは、大まかに以下の2種類に分けられます。

  • 不動産をはじめとする物的担保
  • 保証人や連帯保証人などの人的担保

それぞれの内容や特徴を詳しく解説します。

不動産をはじめとする物的担保

物的担保とは、特定の財産で債権を担保することを指します。

物的担保には、債務者や債務者以外の第三者が所有する不動産や動産が設定されます。債務不履行の際には、その財産を競売手続きすることで債権の回収が可能です。

物的担保となる財産の例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 不動産(土地や建物など)
  • 有価証券、金銭債権
  • 車両、製造機械設備、在庫商品

物的担保から債権回収を図るためのさまざまな権利は、総称して担保物権と呼ばれます。財産に担保物権が設定されると、他の債権者に先立って自らの債権を回収できる優先弁債権が認められます。

保証人や連帯保証人などの人的担保

人的担保は、債務者以外の第三者がもつ財産全体を担保とすることです。

債務者の弁済不能に備えて、債務者に代わって弁済する保証人を設定し、債権回収を保証する仕組みです。

債務者は、自身の人間関係から債務を保証してくれる第三者に保証人を依頼します。債務者が弁済を果たせなかった場合には、保証人にも債務者と同様の債務履行が求められることになります。

物的担保のメリット・デメリット

物的担保には、債権回収の確実性を高められるメリットがある一方で、対象の財産が担保として適切かどうかを判断する手間がかかるデメリットもあります。

物的担保のメリットとデメリットを詳しくみていきましょう。

物的担保のメリット

物的担保によって、債権者は債務不履行時にも確実な債権回収が見込めます。

物的担保は、人的担保にくらべて目的物の価値が大きく変動しにくいものです。たとえば、物的担保の代表例である土地は、経年によって価格が暴落する可能性は低いため、債務不履行時のリスクを軽減できます。

また、担保物権が設定された財産は優先弁債権が認められるため、ほかの債権者よりも優先された債権回収が可能です。

債務者にとっては、より有利な条件で融資を受けやすくなるメリットを得られます。物的担保となる目的物の価値が高いほど、高額の融資が可能となり、金利や借入期間の面でも優遇されやすくなるでしょう。

物的担保のデメリット

物的担保を設定した融資の場合、物的担保の目的物を審査したり、抵当権を設定したりといった手間やコストがかかります。

債務者にとっては、返済が滞った場合には担保に預けていた財産を失うリスクがあります。たとえば、ローンを組んで購入した土地と建物を担保に入れる住宅ローンでは、返済が不能になると土地と建物が競売されて第三者のものとなってしまうため、最終的には自宅から退去しなければなりません。

物的担保の種類

物的担保は、民法において以下の4つの権利が定められています。

  • 留置権
  • 先取特権
  • 質権
  • 抵当権

それぞれの詳しい内容を順に説明します。

留置権

留置権は、債務者の所有物を占有して担保にできる権利です。

他人の所有物を占有している状態で、その物にかかわる債権をもっているときに、その債権の弁済を受けるまでその物を手元に留めておけます。

たとえばスマートフォンを修理に出した際、依頼した修理が完了したにもかかわらず、依頼者は修理費を支払わなかったとします。その場合、修理業者は留置権を行使して、修理代金が支払われるまで依頼者のスマートフォンを返却せずに手元に残しておくことが可能です。

参考:e-Gov法令検索 民法第295条第1項

先取特権

先取特権とは、特定の債権をもつ債権者に対して、ほかの債権者よりも優先して債権回収できる権利のことです。

先取特権は、債務者のすべての財産から優先的に弁済を受けられる「一般の先取特権」と、債務者の特定の財産からのみ弁済を受けられる「特別の先取特権」に分けられます。

種類先取特権の対象例具体的な事例
一般の

先取特権

  • 共益の費用
  • 雇用関係
  • 葬式の費用
  • 日用品の供給
Aを雇用していたBの経営が悪化し、給料が未払いに。Aは給与を受け取る債権を有し、ほかの債権者に優先して弁済を受けられる。
特別の

先取特権

  • 不動産の賃貸借
  • 旅館の宿泊
  • 動産の保存、売買
  • 農業の労務
  • 不動産の保存、工事、売買など
不動産の賃料未払いによって、賃借人に債務が発生。賃貸人は、賃借人が建物に持ち込んだ動産を差し押さえて、優先的に弁済を受けられる。

先取特権に該当する債権を有する人は、債務者の財産からほかの債権者よりも優先的に弁済を受けられます。

参考:e-Gov法令検索 民法第303条

質権

質権は、債権者が担保目的物を債務者または第三者から受け取って占有し、債務不履行に備える権利です。債務者の返済が滞った場合は、債権者が担保目的物の所有者となったり、担保目的物を売却したりして、債権回収を図れます。

質権を設定するには、担保となる財産を債権者に占有させる必要があります。つまり、債務を完済させるまで、債務者は担保目的物を使用できません。

質権は、動産や不動産、債権などを担保目的物として設定できます。

参考:e-Gov法令検索 民法第342条

抵当権

債務者または第三者が提供した財産に対して、債権者が占有することなく担保目的物として設定できる権利が抵当権です。債務不履行となった場合には、担保目的物を競売にかけて債権の弁済が受けられます。

担保目的物としては主に不動産が用いられ、そのほか自動車のように登記や登録制度がある財産の設定が可能です。住宅ローンのような不動産購入に使われる融資において、抵当権の利用が多くみられます。

質権と異なるのは、債権者が担保目的物を占有する必要がない点です。担保目的物の所有者は、抵当権を設定した財産をそのまま使用し続けられます。

参考:e-Gov法令検索 民法第369条第1項

物的担保を設定するための手続き

物的担保の設定について、留置権や先取特権のように当事者間の設定行為がなくても発生する法定担保物権と、抵当権や質権のように当事者間の設定行為が必要な約定担保物権があります。抵当権などの約定担保物権を設定するには、債権者と担保目的物の所有者とのあいだで、担保権設定契約を締結する必要があります。

担保権設定契約書には、以下のような項目を記載します。

  • 担保目的物の情報(所在地、品名、型式、範囲など)
  • 担保権の内容
  • 被担保債権の特定
  • 債権の回収方法

また、担保権設定契約とあわせて、担保権の取得を公にして対抗要件を備える手続きを行うのが一般的です。不動産に抵当権を設定する場合であれば、法務局で行う抵当権設定登記が第三者に対する対抗要件となります。

人的担保のメリット・デメリット

人的担保は、債務者以外の第三者がもつ財産を担保に設定できるのが特徴ですが、人がもつ財産はそのときどきで変動するため、物的担保よりも回収の確実性は低いといえます。

人的担保のメリットとデメリットを確認していきましょう。

人的担保のメリット

債権者にとっての人的担保のメリットは、債務者の資産背景に左右されない第三者の財産から債権回収が図れる点です。債務者の家計状況が悪化していても、保証人がその影響を受けるとは限らないため、保証人の財産から弁済を受けられます。

また、債務者にとって保証人の存在は、「保証人に弁済の義務を負わせたくない」という心理が働くものであり、弁済を促す効果も期待できるでしょう。

債務者側のメリットとしては、人的担保の設定により自身の信頼が高まり、融資が受けやすくなる点が挙げられます。

人的担保のデメリット

一方で、保証人の資産状況が悪化するリスクがあるのが人的担保のデメリットです。

保証人の設定時には豊富な資産をもっていた保証人であっても、事業の失敗などにより多額の財産を突然に失ってしまう可能性もあります。信頼できる保証人を立てていても、将来にわたって債権を確実に回収できるわけではないため注意が必要です。

債務者にとっても、借入の可否や条件が、担保となる保証人の支払い能力に左右されるため、希望どおりの融資が受けられない可能性もあります。

人的担保の種類

人的担保は、以下の3種類に分けられます。

  • 単純保証
  • 連帯保証
  • 根保障

どの保証であっても、主たる債務者が債務を履行しない場合に、保証人は債務を代わりに支払う責任を負います。それぞれの保証を詳しくみていきましょう。

単純保証

単純保証とは通常の保証を意味し、保証人が債務者に代わって債務を弁済する義務を負う保証です。

ただし、単純保証の保証人には以下の権利が認められています。

催告の抗弁権債権者から弁済を請求されても、「先に主たる債務者から催告してほしい」と請求できる
検索の抗弁権主たる債務者に資産があると証明できる場合には、「先に主たる債務者の財産から執行してほしい」と請求できる

また、複数の保証人が単純保証している場合には、それぞれの保証人は保証人の数に応じて分割した債務額のみに弁済義務を負います。

連帯保証

連帯保証は、債務の履行に対して主たる債務者と同様の責任を負う保証です。

単純保証と異なり、連帯保証には「催告の抗弁権」と「検索の抗弁権」が認められていません。

債務不履行が起きた際、債権者は主たる債務者よりも先に連帯保証人へ請求することも可能です。債権者から請求を受けた連帯保証人は、直ちに債務全額を弁済する義務を負うことになります。

根保証

根保証とは、一定の範囲に属する複数の債務を包括して保証するものです。

通常の保証契約では、担保される対象である被担保債権が特定されています。一方、繰り返し継続的に行われる取引で発生するすべての不特定の債務を保証するような場合には、根保証が使われます。

たとえば、不動産の賃貸借契約における個人の保証人契約も根保証です。ただし、個人根保証は、保証債務の上限額を定めなければ効力がありません。

人的担保を設定するための手続き

人的担保を設定するには、債権者と保証人との保証契約の締結が必要です。保証契約は、書面もしくは電磁的記録(電子文書)で締結しなければなりません。

保証契約書の主な記載事項は、以下のとおりです。

  • 被担保債権の内容(元金額、保証期間など)
  • 保証の種類(単純保証、連帯保証、根保証)
  • 債務の請求手続き

また、保証契約を結ぶ際には、保証人保護を目的とした以下のような規制を守らなければなりません。

極度額の定め当事者間が合意した債務の限度額を定めなければならない(個人の根保証契約の場合)
公正証書による保証の意思確認保証人になる人の意思を確認するための公正証書を作成しなければならない(事業用融資への個人保証の場合)
保証人への情報提供義務
  • 主たる債務者は、保証人引き受けの依頼にあたり、財産や収支、債務状況の情報を提供しなければならない
  • 債権者は、保証人から請求を受けた場合や期限の利益が喪失した場合に、情報提供しなければならない

なお、債権者と保証人が保証契約を結ぶ際に、主たる債務者に報告したり同意を得たりする必要はありません。

参考:法務省 2020年4月1日から保証に関する民法のルールが大きく変わります

担保権を行使するときの注意点

債権を回収するために担保権を行使するには、まず前提として被担保債権の弁済期が到来していなければなりません。

担保として設定されることが多い不動産からの債権回収において、担保権を行使するときの注意点を押さえておきましょう。

競売は売却価格が安くなる

担保である不動産から債権回収を図る場合、競売による売却金額は市場価格よりも低くなるケースが多い点に注意が必要です。

抵当権の行使は、抵当権が設定されている不動産の競売を裁判所に申し立て、強制的に売却する流れになります。しかし、競売では相場価格の5割~7割程度の売却価格で落札されることが多く、競売の申立費用や税金の支払いも必要です。債権者の手元に入るお金は、債務の残額より少なくなってしまう可能性もあります。

そのため、担保とされた不動産から債権回収をする場合には、債務者に任意売却を要請する方法が取られることが多いです。一般市場で取引するため競売よりも売却価格が高くなり、売却までの期間も短く済むため、双方にとってメリットが大きいでしょう。

物上代位は引き渡しの前に差し押さえる

物上代位とは、担保物権の目的物が金銭など別の価値に変化した場合に、変化した代わりのものに担保権の効力がおよび、債権の回収が図れる制度です。

物上代位を行うには、担保目的物の代わりとなるもの(金銭など)が、債務者の手元に引き渡される前に差し押さえなければならない点に注意しましょう。

物上代位の具体例としては、担保物件の目的物が賃貸アパートのような収益物件だった場合が挙げられます。債務不履行の際には、賃料債権が物上代位の対象とみなされ、物件を売却するまで賃料から債権を回収できます。

また、抵当が設定された物件が火災で焼失した場合には、火災保険の請求権を物上代位として差し押さえることが可能です。

賃料や火災保険料といった対象物が、債務者に引き渡されたあとには物件上位が認められないため注意が必要です。

適切な担保で融資や契約の安全性を高めよう

担保とは、債務が履行されない場合に備えて、債権者の損失を回避するために、債務者が財産や権利を提供する保証の仕組みです。

担保は、おおまかに物的担保と人的担保の2つに分類されます。不動産や動産などの特定財産を担保の目的物とする物的担保は、担保の客観的な価値が保たれやすく、債権者の回収リスクが軽減できます。

一方の人的担保は、保証人の支払い能力や経済状況に依存した保証です。物的担保とくらべると、債権回収の確実性は低いといえるでしょう。

物的担保と人的担保にかかわる権利や規制、手続きなどを理解したうえで、適切な担保を設定し、融資や契約の安全性を確保しましょう。


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