- 作成日 : 2024年9月27日
訪問販売のクーリングオフ通知書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
クーリングオフ通知書とは、訪問販売など特定の販売方法により契約を交わした場合に、これを取り消すために相手方事業者へ送付する文書のことです。
特定商取引法で整備された消費者保護の仕組みですが、本業とは別の部分で一般消費者と変わらず契約を交わすときには、法人でもクーリングオフの権利を行使できる可能性があります。通知書の書き方などについて当記事で解説していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
訪問販売のクーリングオフ通知とは
訪問販売におけるクーリングオフの通知とは、「事業者からの訪問を受けその場で商品の販売などを行う取引」である訪問販売に対し、クーリングオフの制度に則り契約解除をしたいと伝えることを意味します。
相手方事業者の店舗に類似するとはいえない場での契約、あるいはその事業者の営業所であってもキャッチセールスにより呼び込んで契約をした場合なども訪問販売に該当します。訪問販売の特徴は「自ら求めていないのに販売の勧誘を受ける」という点にあり、落ち着いて冷静な判断ができないまま契約を交わしてしまうリスクがあるため、後日のクーリングオフを認めているのです。
行政による処分件数も他の取引類型に比べて多く、訪問販売は受ける側もする側も十分に注意をしなくてはなりません。
訪問販売のクーリングオフ通知書を作成するケース
訪問販売にも多種多様なパターンがあります。例えば、ある業者が突然訪問してきて「昨日の台風により建物に傷みがあるかもしれません。まずは点検だけでもどうですか」などと勧誘を受けるケースが考えられます。
他にも次のような例を挙げられます。
- 無料点検を口実に訪問し、シロアリ駆除のサービスについて勧誘をしてくる
- 不用品の買い取り口実に訪問し、貴金属やブランド品などを安く買いたたく
- 街頭や駅前でのアンケート、無料体験で誘い込み、その後店舗や事務所などに連れて行って商品・サービスの勧誘をする
- 電話やメールで事前にアポイントメントを取り、その後訪問してきて商品やサービスの契約を誘ってくる
訪問販売自体違法ではありませんが、最初の口実が消費者側に特にお得なときは慎重に対応すべきです。もし契約を交わした後で「やっぱりやめておこう」という結論に至ったときはクーリングオフ通知書を作成して相手方に差し出しましょう。
訪問販売のクーリングオフ通知書のひな形
訪問販売を受け、クーリングオフ通知書を作成するときは、こちらのひな形をご活用ください。事業者名や契約内容のことなど、書き換えが必要な箇所もありますが、骨格部分は出来上がっているため、作業がスムーズに進められるでしょう。
訪問販売のクーリングオフ通知書に記載すべき内容
訪問販売により交わした契約に関してクーリングオフをするときは、下表の記載事項に留意して通知書を作成していきましょう。
記載事項 | 書き方 |
---|---|
表題 | 「クーリングオフ通知書」など、特定商取引法の規定に基づく権利行使に関わる文書であるとわかるように記載。 |
解除の旨 | 「本書面をもちまして、貴社との上記売買契約を解除いたします」など、申し込んだ・締結した契約を解除したい旨を明記する。 |
解除の対象となる契約 | 「〇年〇月〇日に、貴社の販売する商品○○を、代金○○円で購入することを承諾し・・・」など、解除の対象となっている契約を特定する情報を記載。 |
根拠の提示 | 「貴社の販売員が訪問し・・・」や「特定商取引法第9条の規定に基づき・・・」など、契約解除等の根拠およびクーリングオフの適用対象であることを示す。 |
作成年月日 | 「〇年〇月〇日」など、通知した日を特定するように記載。 |
事業者の情報 | 相手方事業者の会社名や住所を記載。 |
差出人の情報 | 差出人の氏名または名称、住所を記載し、捺印。 |
訪問販売のクーリングオフ通知書を作成する際の注意点
特定商取引法では下記6つの取引類型についてクーリングオフを認めていますが、一定期間内の通知をしないとその権利は行使できなくなってしまいます。取引類型別に「8日間」と「20日間」の期間が設定されており、訪問販売については「8日間」という比較的短い期間が適用されます。
《 クーリングオフの対象となる取引類型とその期間 》
- 訪問販売・・・8日間
- 訪問購入・・・8日間
- 電話勧誘販売・・・8日間
- 特定継続的役務提供・・・8日間
- 連鎖販売取引・・・20日間
- 業務提供誘引販売取引・・・20日間
この期間内に通知書を作成し、相手方に送らなければいけません。また、その期間を過ぎていないことを示すために、通知書には契約締結日や契約に際して相手方から書面を受け取った日を記載しましょう。
なお、期間が進行し始める起算日は「相手方から法定書面(契約書など)を受け取った日」です。初日も含めて算定するため、この点にも注意してください。
訪問販売のクーリングオフ通知書の送付方法
相手方事業者とのトラブルをこじらせないためには、クーリングオフ通知書の作成方法だけでなく、通知書の送付方法にも意識を向ける必要があります。送付に関するルールや留意すべき点を以下で簡単に紹介します。
2022年6月1日よりメールやファクスでの通知が可能になった
2022年6月1日より、特定商取引法の改正を受け、訪問販売におけるクーリングオフの通知方法として従来の「書面による通知」に加え、「メールやファクスでの通知」も可能になりました。
この改正により、迅速かつ手軽にクーリングオフの手続きを行うことができるようになりました。無理に書面を届ける必要はありません。
メールで送付する場合
メールでの送付であれば手軽でコストもかかりませんが、必ず送信したという事実の記録を残しておきましょう。また、送りっぱなしではなく相手方からの返信をチェックしたり、届いたことの確認をしたり、その後のやり取りも丁寧にしておくともめ事も避けやすくなります。
書面で送付する場合
書面で送るときもメールと同じく記録を残すことが大事です。郵送をするときは簡易書留や特定記録郵便などを利用すると、送付したことの証明とできるため、安心でしょう。
「相手方に到着する具体的な日付がわからない」と不安に感じるかもしれませんが、郵便局が書面を受理した日付で判定するため、問題はありません。
訪問販売にも冷静に対応しよう
クーリングオフが適用される取引類型とはいえ、訪問販売を受けたとき安易に契約を交わすべきではありません。一般個人ではなく会社(法人)として営業を受けたときはクーリングオフの適用対象とならない可能性もあり、まずは契約に対して慎重になりましょう。
もし訪問販売のことやクーリングオフの制度について疑問があるときは弁護士に相談するか、消費者ホットラインの利用もご検討ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
契約の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
転貸承諾書とは?ひな形や例文、書き方、承諾料の相場を解説
「転貸承諾書」は、賃借人が第三者に物件を転貸する際に賃貸人から得た承諾を文書化したものです。転貸の有効性を示すとともに、転貸の条件や各当事者の権利義務関係を明確にするために使われます。 本記事ではこの転貸承諾書について知っておきたい基礎知識…
詳しくみる雇用契約書の保管期間は5年!起算日や正しい保管方法を解説
企業が従業員を雇用する際に取り交わす「雇用契約書」。これは、労働条件や双方の権利・義務を明確にするための非常に重要な書類です。そして、この雇用契約書をはじめとする労働関係の重要書類には、法律で定められた「保管期間」があることをご存知でしょう…
詳しくみる請負契約とは?委任契約の違いやメリット、収入印紙などをわかりやすく解説
請負契約は、仕事の完成を目的とする契約です。請負契約をスムーズに締結し、当事者間でトラブルの発生を防ぐためには、請負契約がどのような契約形態かをしっかり理解し、業務委託契約や他の形態である委任契約、準委任契約との違いを押さえておくことが重要…
詳しくみるドメイン譲渡契約書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
ドメイン譲渡契約書とは、Webサイトのドメインを譲渡し、または譲り受ける際に締結する契約書です。ドメインを特定する情報、譲渡対価、譲渡の手続き、表明保証などを定めます。契約条件が明確になるように、必要な事項を漏れなく定めましょう。本記事では…
詳しくみる雇用契約の更新手順をケース別に解説!契約書の作り方や注意点は?
有期雇用で従業員を雇っている場合、一定期間を経過するたびに契約更新の判断を行います。無期雇用の労働者に関しても、労働条件の変更などを求めて更新を行うことがあります。その際の更新は会社が自由にできるものではなく、各種法令に従わないといけません…
詳しくみる取引基本契約書はどちらが作成する?構成案やチェックポイントも解説
企業間取引における取引基本契約書は、一般的に売主側が原案を作成しますが、互いの立場や関係性に応じて慎重に判断すべきです。この記事では、売買契約書との違いや基本的な構成要素、作成する際のチェックポイントを詳しく解説していきます。また、印紙税の…
詳しくみる