- 作成日 : 2025年5月7日
電子署名と電子サインの違いは?仕組みや法的効力、無料の作り方なども解説
電子署名と電子サインは似て非なるもので、仕組みや法的効力、本人確認の有無などに明確な違いがあります。本記事では、それぞれの定義と特徴、代表的な利用シーンを解説するとともに、改ざん防止機能や第三者による証明の有無についても比較します。また、手書き画像やAdobeを使った無料の電子サインの作り方、利用時に注意すべきポイントまで網羅的にご紹介します。
目次
電子署名とは
電子署名とは、電子文書に対して作成者や送信者の本人性を証明し、内容が改ざんされていないことを保証する技術です。紙の契約書における手書きの署名や押印と同様の役割を果たし、電子取引の信頼性を高めるために用いられています。
電子署名の特徴
電子署名の特徴は、本人確認と改ざん防止の機能を技術的に担保している点にあります。署名者ごとに秘密鍵を用いて文書に署名を行い、その後、誰が署名したのか、またその内容が変更されていないかを検証できます。また、第三者による証明(認証局など)を組み合わせることで、署名の信頼性をより高めることも可能です。
電子署名の主な利用シーン
電子署名は、主に企業間取引や契約締結時の本人確認手段として利用されています。例えば、業務委託契約書、秘密保持契約書、雇用契約書、取引基本契約書などに導入されることが多く、電子契約サービスを通じて迅速かつ安全に締結できます。
また、金融機関や官公庁への申請書類、入札関係の手続きなど、正確性や真正性が強く求められる文書にも適しています。
詳しくは以下の記事もご参照ください。
電子サインとは
電子サインとは、電子文書に対して署名や押印の代わりとなるマークや画像、タイピングされた名前などを付与する行為を指します。一般的には、手書きサインを画像として貼り付ける、あるいは専用ツールを使ってクリック操作で同意を示すなど、比較的簡易な方法で行われるケースがほとんどです。
電子サインの特徴
電子サインの特徴は、導入の手軽さと操作の簡単さにあります。専用のソフトウェアやアプリを使えば、メールで受け取った契約書にそのままサインできるため、紙への印刷や郵送の手間が省けます。
また、法的な要件を厳密に満たす必要がないケースでは、電子署名よりもコストや時間の負担が少なく、業務効率化に貢献する手段として多くの企業に活用されています。
電子サインの主な利用シーン
電子サインは、社内稟議書への承認、業務報告書への確認、簡易な業務委託契約、非機密性の高い同意書など、日常的なビジネスシーンで広く利用されています。重要度が比較的低い文書や、関係者間の同意が明確である場合に適しています。
近年では、リモートワークの拡大に伴い、社内文書の電子化が進む中で、電子サインの活用機会も増加しています。
詳しくは以下の記事もご参照ください。
電子署名と電子サインの違い
電子署名と電子サインは、どちらも電子文書に対して「同意」や「確認」の意思を示す手段ですが、仕組みや法的効力には大きな違いがあります。簡単に言えば、電子署名は厳格で信頼性の高い技術的基盤に支えられた方法であり、電子サインは手軽で柔軟に使える手段です。
電子サインが広義の意味での「電子的な署名」を指すのに対し、電子署名は電子署名法に定められた条件を満たすことで、法的にも高い効力を持つものとされています。
以下では、両者の具体的な違いを項目別に比較していきます。
仕組みの違い
電子署名は、主に公開鍵暗号技術を使って本人確認と文書の信頼性を担保します。文書に署名する際には、本人しか持たない「秘密鍵」で署名を行い、受信者は「公開鍵」でその署名が正当なものであるかを検証します。
一方の電子サインは、手書きサインの画像やクリック操作による同意ボタンなど、技術的な制約がなく、自由な形式で署名を行えます。そのため導入は容易ですが、証明力やセキュリティは使用するツールに依存します。
本人確認の違い
電子署名は、認証局が発行する電子証明書と組み合わせることで、署名者の本人確認を行います。認証プロセスにより、誰が署名したかを特定できる点が大きな強みです。
電子サインは、サイン画像やメール認証など比較的簡易な確認手段が用いられます。本人確認の精度は導入方法によって異なり、万全な確認とはいえないケースもあるため注意が必要です。
改ざん防止の違い
電子署名には改ざん防止機能が組み込まれており、文書が署名後に変更された場合は検知できる仕組みになっているため、文書の真正性が保証されます。
一方、電子サインには技術的な改ざん検知の仕組みがないことが多く、画像やサインが貼られたPDFファイルを第三者が後から編集できてしまうケースも存在します。
第三者の証明の違い
電子署名は、認証局などの第三者が発行する電子証明書を利用することで、署名の信頼性を高めているため、当事者以外にも署名の有効性が証明されます。
一方で、電子サインは基本的に第三者による証明が前提とされておらず、当事者間での合意に基づいて効力が判断されます。したがって、外部に向けた証明力が必要な契約などには適さない場合があります。
法的効力の違い
電子署名は、電子署名法により法的効力が認められており、真正な署名とみなされる要件を満たすことで、紙の契約書と同様の効力を発揮します。
電子サインも、本人の意思が明確に示されていれば一定の法的効力を持ちますが、効力の強さはケースバイケースです。例えば、メール認証による本人確認は一般的ではあるものの、信頼性の高い証明とは言い切れません。
無料の電子サインの作り方
電子サインは有料サービスを利用せずとも、手軽に無料で作成・利用することが可能です。
ここでは、特別な知識がなくても使える「手書きサインの画像利用」と「Adobe Acrobat Readerの電子署名機能」の2つの方法をご紹介します。それぞれの特徴を理解し、用途に合わせて使い分けましょう。
手書きサインを画像として使用する方法
もっとも手軽な電子サインの方法の一つが、手書きのサインを画像として使用するやり方です。まず、紙にサインを記入し、それをスマートフォンやスキャナーで取り込み、画像データ(PNGやJPEG)として保存します。
保存した画像をPDFファイルやWord、Excelなどに貼り付ければ、簡易的な電子サインとして利用可能です。契約当事者の間で同意が取れているケースや、厳格な本人確認が不要な場面であれば、十分に活用できます。
ただし、この方法には改ざん検知機能や本人認証機能がないため、重要な契約や外部とのやり取りには不向きです。あくまで簡易的な用途に限定して使用するのが望ましいでしょう。
Adobe Acrobat Readerの電子サイン機能を使用する方法
Adobe Acrobat Readerには電子サイン機能があります。無料で利用可能なAdobe Acrobat Readerには、「デジタルIDの作成」と「PDFへの電子署名」の機能が備わっており、信頼性を持ったサインを作成できます。
まず、Adobeの設定画面から「署名」メニューを開き、デジタルIDを新規作成します。名前やメールアドレス、パスワードを入力すれば、自分専用の署名情報が生成されます。続いて、PDFファイルを開き、「証明書を使用」→「デジタル署名」を選択し、署名位置を指定して署名を追加します。
この方法では、作成された署名が改ざん防止の機能を持つため、画像を貼り付けるだけの方法と比べて信頼性が高くなります。無料ながらも、ある程度の証拠力を確保したい場合には特におすすめです。
無料の電子サインを使用するときの注意点
無料の電子サインは手軽に導入できる一方で、利用にあたって注意すべき点があります。使い方を間違えてしまえば、契約の無効や情報漏えいといった重大なトラブルにつながりかねません。ここでは、特に意識すべき2つの注意点を解説します。
契約によって無料の電子サインは使えない
無料の電子サインは多くの契約で有効に使える手段ですが、すべての契約に対応しているわけではありません。例えば、事業用定期借地契約や任意後見契約、公正証書を必要とする農地の賃貸契約など、書面の提出や公的手続きが求められる契約には、電子的な手段が適さないケースがあります。
こうした契約については、あらかじめ法的な要件を確認し、必要に応じて弁護士といった法律の専門家のアドバイスを受けることが大切です。安易に電子サインを使ってしまうと、契約自体が無効になるおそれもあります。
セキュリティ管理が不十分だとリスクが高まる
無料の電子サインを用いる際に見落とされがちなのが、署名に使用する情報(IDや秘密鍵など)の管理です。例えば、AdobeのようなツールではデジタルIDを使って署名を行いますが、このIDやパスワードが第三者に漏れると、不正に署名されるリスクが生じます。
企業で導入する場合は、誰がどの権限で署名できるかを明確にし、アクセス制限や定期的なパスワード変更などの対策を講じるべきです。個人で利用する場合も、端末やサインデータの取り扱いには十分注意を払いましょう。
電子サインと電子署名は目的に応じて使い分けよう
電子署名と電子サインは似ているようで異なる性質を持つため、用途や契約の重要度に応じて適切に使い分けることが重要です。電子署名は本人確認や改ざん防止などのセキュリティ機能が備わっており、法的効力が求められる場面で有効です。一方、電子サインは導入のしやすさや手軽さが魅力で、社内文書や軽微な契約などに適しています。
また、無料で利用できる電子サインの方法も複数存在しますが、法的に認められない契約がある点や、日付の変更ができない点など、注意すべきポイントも多くあります。
本記事を参考に、契約書の内容や業務の性質に合わせて、最適な電子署名・電子サインの方法を選び、安心かつ効率的な契約業務の実現につなげてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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