• 更新日 : 2026年7月13日

民法601条とは?使用収益させる義務や借主の権利をわかりやすく解説

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Point民法601条の「目的物を使用収益させる義務」とは?

民法601条は、貸主が借主に目的物を適切に使用・収益できる状態で提供し続ける義務を定めた規定で、違反すれば民法606条・611条・541条などに基づき、修繕請求・賃料減額・契約解除等が認められる場合があります。

  • 義務は引き渡し時だけでなく、引き渡し後の継続的な維持管理にも及ぶ
  • 義務違反があれば、修繕請求・賃料減額・契約解除などを求められる
  • 違反を防ぐには、引き渡し前の確認と入居後の迅速な対応が求められる

貸主・借主ともにこの義務の内容を正確に理解しておくことが、トラブルを防ぐうえで役立ちます。

民法601条は、賃貸借契約の効力を定めた規定で、貸主には借主に対して「使用収益させる義務」が課されています。この義務には、物件の引き渡し時の状態管理だけでなく、契約期間中の継続的な維持・対応も含まれます。

同条に違反した場合は、借主に修繕請求や賃料減額、契約解除といった権利が発生するため、貸主・借主ともに正確な理解が求められます。本記事では、民法601条が定める「使用収益させる義務」の内容と違反するケース、借主の権利などを解説します。

民法601条(賃貸借)とは?

民法第601条は、賃貸借契約における貸主と借主の基本的な義務を定めた規定です。貸主がある物の使用および収益を借主にさせることを約束し、借主がその対価として賃料を支払うこと、および契約終了時に目的物を返還することを定めており、これらの合意によって賃貸借契約は成立します。

ここでは、民法601条の概要に加えて、借地借家法との違いや「使用収益させる義務」の意味を解説します。

民法601条と借地借家法の違いは?

民法第601条は賃貸借契約に適用される一般的なルールであり、建物の賃貸借には特別法である借地借家法が優先されます。

民法第601条は、動産・不動産を問わずあらゆる賃貸借契約に適用される一般法です。一方、借地借家法は建物の賃貸借を対象とする特別法にあたります。

このため、借地借家法が適用される場合には、民法よりも借地借家法の規定が優先されます。借地借家法に明文の規定がない事項については、補完的に民法が適用されるという関係です。たとえば、建物賃貸借の更新や解約については借地借家法が優先されますが、貸主の修繕義務など借地借家法に規定がない部分は民法601条等が補完的に機能します。

民法601条の「使用収益させる義務」とは?

民法第601条にいう「使用収益させる義務」とは、貸主が借主に目的物を適切に使用・収益できる状態で提供し、引き渡し後もその状態を維持し続ける継続的な義務を指します。

「使用」とは借主がその物を自由に利用できることであり、「収益」とは借主がその物から経済的な利益を得られることです。貸主の義務はこの両方を可能にする状態を保つことにあります。

この義務には、目的物を使用収益に適した状態にして引き渡すことはもちろん、引き渡し後も借主が目的物を適切に使用・収益できるよう配慮するという、継続的かつ積極的な義務が含まれると解されています。たとえば、入居後に発生した設備の故障や建物の不具合についても、民法606条の修繕義務に基づき貸主には対処する義務があります。

参考:民法 | e-Gov 法令検索

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民法601条の「使用収益させる義務」に違反するケースは?

民法第601条の使用収益させる義務に違反するケースとして、物件の引き渡しができない場合と、重大な瑕疵がある場合が挙げられます。それぞれの内容を詳しく解説します。

物件の引き渡しができない場合

賃貸借契約が成立した以上、貸主は民法601条にもとづき、借主が使用・収益できる状態で目的物を引き渡す義務を負っており、正当な理由なく引き渡しを行わない場合は同条違反となりえます。

この義務には、単に物件を引き渡すだけでなく、契約上の用途(居住・営業等)に応じて適切に利用可能な状態であることが求められます。たとえば、居住用として契約したにもかかわらず、前の入居者の荷物が残ったままであったり、建物の基本的な安全性が確保されていない状態での引き渡しは、この義務を満たさないと判断されるケースがあります。

契約が締結されているにもかかわらず引き渡しがなされない場合、借主は履行の催告、損害賠償請求、場合によっては契約解除を求めることができます。

重大な瑕疵がある場合

物件に雨漏りや配管の故障、害虫の蔓延といった重大な瑕疵があり借主の使用・収益が妨げられている場合、貸主は民法601条の義務にもとづきこれを是正する責任を負います。

「使用収益させる義務」は引き渡し時だけでなく、契約期間中も継続します。物件に雨漏りや配管の故障、カビの発生、害虫の蔓延といった問題が生じた場合、貸主はこれを是正する対応が必要です。

また、賃借人にとって居住に適さない状態が生じたときは、貸主がそれを解消して居住可能な状態にする義務を負っています。たとえば、同じ物件内に居住する他の賃借人が迷惑行為をしている場合には、その行為をやめさせる措置を講じることも「使用収益させる義務」の一環として対応義務が認められることがあります。

民法601条に違反した場合の借主の権利は?

貸主が民法第601条に違反した場合、借主には違反の内容に応じて法律上の権利が発生します。以下では、借主に認められる主な権利を解説します。

自己修繕権(民法607条の2)

自己修繕権とは、貸主が修繕義務を履行しない場合に借主が自ら修繕を行い、その費用を貸主に請求できる権利で、2020年の民法改正で明文化されました。

この権利が認められるのは、以下のような状況です。

  • 借主が修繕の必要性を貸主に通知したにもかかわらず、貸主が相当な期間内に修繕を行わない場合
  • 貸主による修繕を待てないほどの「急迫の事情」がある場合

上記の条件のもとで借主が自ら修繕を行った場合、民法608条1項にもとづき、貸主に対して修繕費用の償還を請求することが可能です。なお、弁護士などの専門家に相談のうえ、修繕の必要性と手順を記録に残すことが後のトラブル防止に役立ちます。

修繕請求(民法606条)

民法606条1項にもとづき、賃貸借契約中に賃貸物が損傷した場合は原則として貸主が修繕責任を負うため、借主は修繕の実施を求めることができます。

ただし、損傷の原因が借主自身の不適切な使用や管理にある場合には、借主に落ち度があるとして貸主に修繕義務が発生しないことが2020年の法改正で明記されています。損傷の責任が借主にある場合には修繕の要求を行うことはできず、自らの費用で対応する必要があります。

賃料の減額(民法611条)

民法611条では、借主の責によらず物件の一部が使用不能となった場合、借主が個別に請求しなくても使用不能となった時点から当然に賃料が減額されると定めています。

この制度により、借主が改めて減額請求の手続きを取らなくても、使用できなくなった部分に相当する賃料は自動的に減少します。

旧民法にも賃貸物の一部滅失時に賃料を減じる規定は存在していましたが、設備の機能停止や劣化など物理的な「滅失」以外で利用が困難になるケースについては規定が不明確でした。この点が、2020年の法改正で新たに明文化されています。

契約解除(民法541条・542条・611条2項)

貸主が義務を履行しない場合、借主は相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がなければ民法541条にもとづき契約を解除できます。

ただし、債務不履行が契約や取引上の社会通念に照らして軽微である場合には解除できません。また、民法542条では、債務の全部の履行が不能な場合や貸主が履行を拒絶する意思を明確に示した場合、催告なしで契約を直ちに解除できることが規定されています。

さらに、民法611条2項では、賃貸物の一部が滅失その他の事由により残りの物件では借主が契約の目的を達成できない場合に契約を解除できることを定めています。これも2020年の法改正で新設された規定です。

損害賠償請求(民法415条)

貸主が義務を契約どおりに履行しない場合、借主は民法415条にもとづき損害の賠償を求めることができます。

ただし、契約内容や取引の社会通念などをふまえ、貸主に責任がないと判断される場合には損害賠償を請求できません。地震や洪水といった自然災害、または法改正による規制強化など、予測が難しい事象によって義務の履行が不可能になった場合は、賠償請求が認められないケースもあります。

民法601条に関する判例は?

民法601条の「使用収益させる義務」をめぐっては、貸主の対応が問われた裁判例があります。代表的な事例を紹介します。

建物に重大な瑕疵があった事例

衣料品販売店舗の賃貸借において、同じビル内のテナントから発生する悪臭が借主の営業活動に支障をきたした事例で、裁判所は貸主にその状況を改善する措置を講じる義務があると判断しました。

貸主は借主に目的物を使用・収益させる義務があり、借主の使用に支障が生じた場合にはその原因を取り除かなければならないというのが裁判所の見解です。悪臭の発生源が同じビル内の他テナントであっても、ビルの管理権限を持つ貸主には対応する義務があると判示されました。

騒音トラブルがあった事例

集合住宅の騒音トラブルに関する裁判例では、騒音が「社会通念上の受忍限度」を超えているかどうかを一般人の平均的な感覚を基準に判断するという考え方が示されています。

上階や隣室の生活騒音により居住に適した状態ではなくなっている場合、貸主には「使用収益させる義務」にもとづき、生活騒音の発生をやめさせるなどして建物を居住に適した状態に回復させる義務があります。

集合住宅ではある程度の音は避けられず、一定レベルまでは相互に我慢が必要とされます。しかし、その限度を明らかに超える騒音や振動が他人の生活を著しく妨げる場合、不法行為として損害賠償などの対象となりうるとされています。貸主がこのような状況を放置した場合、民法601条の義務違反として法的責任を問われる可能性があります。

2020年の民法改正で整備された関連規定は?

2020年(令和2年)の民法改正では、民法601条に関連する賃貸借ルールが大きく整備されました。借主の権利保護を強化する規定が新設・明文化されており、貸主・借主ともに改正内容を把握しておくことが求められます。

自己修繕権の明文化(民法607条の2)

旧民法では借主が自ら修繕を行う権利は明文化されておらず、2020年の改正により「一定の条件のもとで借主が修繕できる」旨が条文に初めて盛り込まれました。

改正前は、貸主が修繕を怠った場合の借主の対処方法が不明確でした。改正後は「借主が貸主に通知しても相当な期間内に修繕がなされない場合」または「急迫の事情がある場合」に、借主が自ら修繕を行い費用を請求できることが明記されました。

賃料減額の自動発生(民法611条の改正)

改正前は物件の「一部滅失」の場合のみに賃料減額が適用されていましたが、改正後は設備の故障や使用障害など「その他の事情」による使用不能の場合にも当然に賃料が減額される扱いとなりました。

この改正により、物理的な滅失には至らない設備の機能停止や重大な使用障害についても賃料の自動減額が適用されます。さらに、改正前は借主からの「減額請求」が必要とされていましたが、改正後は使用不能となった時点から当然に賃料が減少するため、借主の手続きの負担が軽減されています。

改正民法と旧民法の主な違い(賃貸借関連)

項目 旧民法 改正後(2020年〜)
自己修繕権 明文規定なし 条件付きで明文化(607条の2)
賃料減額の発生 借主の減額請求が必要 使用不能時から当然に減額(611条)
修繕義務の範囲 物理的滅失が対象 設備障害・使用障害も対象

民法601条に違反しないための実務上のポイントは?

民法601条の「使用収益させる義務」に違反しないためには、貸主が借主の適切な使用・収益を可能にする状態を継続して維持することが求められます。具体的なポイントを確認しましょう。

賃貸物件の引き渡し時の状態を確認する

引き渡し時点で借主が契約上の目的(居住や営業など)を達成できる適切な状態にあるかどうかを、貸主が責任をもって確認することが出発点となります。

雨漏り、建物の破損、設備の不備、害虫の発生などがないかどうかを引き渡し前に十分に確認しておく必要があります。目的の達成が困難な状態での引き渡しは「使用収益させる義務」を果たしていないとみなされるおそれがあります。

引き渡し時の状態は写真や書面で記録しておくことで、後に発生した損傷の原因をめぐるトラブルを防ぐことにつながります。

継続的な維持・管理を行う

賃貸物件の引き渡し後も、貸主は必要に応じて修繕や是正措置を講じ、借主が支障なく使用できる状態を維持し続ける義務を負っています。

設備の故障、騒音、悪臭、カビ、漏水など、使用や収益の妨げとなる問題が発生した場合には速やかに対応する必要があります。特に、借主からの通知を受けた後に「相当な期間内」に対応しなかった場合、前述の自己修繕権が行使される条件を満たすことになります。

他の入居者の迷惑行為に対応する

他の入居者の騒音や悪臭などで借主の使用が妨げられている場合、貸主はその問題を是正する義務を負い、放置すると民法601条違反として法的責任を問われることがあります。

裁判例においても、貸主がこの義務を怠った場合に法的な責任を問われることが認められています。迷惑行為を確認した場合は当事者への注意、管理会社を通じた対応、場合によっては賃貸借契約の解除手続きなどを検討することが求められます。

民法601条の「使用収益させる義務」を正しく理解しよう

民法601条は、賃貸借契約全般に適用される基本的なルールであり、貸主は借主に「使用収益させる義務」を負っています。この義務には、単に物件を引き渡すことにとどまらず、引き渡し後も借主が契約の目的を達成できるよう適切な状態を維持する継続的な責任が含まれます。

義務に違反した場合、借主には修繕請求・賃料減額・契約解除・損害賠償請求などの権利が発生します。2020年の民法改正では自己修繕権の明文化や賃料自動減額など借主保護が強化されており、貸主はこれらの改正内容も踏まえて義務を履行することが求められます。

賃貸物件の管理においては、引き渡し前の状態確認、入居後の維持管理、他の入居者とのトラブルへの対応といった一連の取り組みが「使用収益させる義務」の履行につながります。具体的な対応に迷う場合は弁護士などの専門家に相談することも選択肢のひとつです。

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