- 作成日 : 2024年12月25日
かかりつけ薬剤師同意書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
薬局がかかりつけ薬剤師を患者につけるためには、かかりつけ薬剤師同意書を作成する必要があります。かかりつけ薬剤師制度によって、患者は薬局においてよりきめ細かいサービスを受けることが可能となります。この記事では薬局の担当者、患者双方を対象に、かかりつけ薬剤師の制度の概要や同意書の書き方、注意点についてご説明します。
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目次
かかりつけ薬剤師同意書とは
かかりつけ薬剤師同意書とは、薬局がかかりつけ薬剤師をつける際に患者と取り交わす同意書のことです。
そもそもかかりつけ薬剤師制度とは、患者が薬剤師を指名し、その薬剤師から毎回薬を調剤してもらったり、相談に乗ってもらったりする制度です。
患者にかかりつけ薬剤師をつけることで、自分の健康状態やほかの薬との飲み合わせを考慮した薬の調剤、服薬管理、指導などのきめ細かいサービスを受けられるようになるというメリットが得られます。服薬に関する相談や健康に関する不安なども相談することが可能です。
一方、薬局側には患者に対してより安全でかつ効果が高い薬を提供できるようになる、患者からの信頼度が上がる、調剤報酬のアップにつながるなどのメリットが得られます。
ただし、かかりつけ薬剤師を患者につける場合は、かかりつけ薬剤師同意書を用いて同意を得る必要があります。
かかりつけ薬剤師同意書を作成するケース
薬局が新しく患者に対してかかりつけ薬剤師をつける際に、かかりつけ薬剤師同意書を作成する場合があります。
かかりつけ薬剤師をつけてもらうために、患者は指導料を支払わなければなりません。
また、より的確なサービスを提供するために、薬剤師や薬局は医療機関や医師と情報を共有することがあります。これらを患者が同意して、初めてかかりつけ薬剤師はサービスを提供できるようになるのです。
かかりつけ薬剤師同意書のひな形
特に新しく薬局を開業された場合、かかりつけ薬剤師同意書のフォーマットを一から作成しなければなりません。当サイトではすぐに使えるひな形をご用意しましたので、ぜひご活用ください。
かかりつけ薬剤師同意書に記載すべき内容
ここからはかかりつけ薬剤師同意書に盛り込むべき内容について項目別にご紹介します。ひな形をもとに解説を進めていきますので、ダウンロードしてひな形を見ながら読み進めると、より理解が深まるはずです。
表題
まずは書類の表題(タイトル)を分かりやすいように記載します。一番うえに大きな文字で「かかりつけ薬剤師指導料について」などと記載し、同意書部分には「かかりつけ薬剤師同意書」と表記しましょう。
かかりつけ薬剤師が提供するサービスの説明
かかりつけ薬剤師が薬の飲み合わせの確認や説明などのサービスを提供する旨を記載します。また、担当薬剤師の氏名を明らかにしたうえで、具体的なサービスの内容(薬の情報の管理、飲み合わせの確認や説明、お薬手帳への情報の記入、処方医との情報の連携など)について盛り込みましょう。
かかりつけ薬剤師への要望
患者がかかりつけ薬剤師に希望することを記載できる欄を設けます。「薬の飲み合わせなどのチェック」「薬に関する丁寧な説明」「時間外の相談」というように箇条書きで記載し、患者が自由に要望を書き込めるスペースも設けましょう。
かかりつけ薬剤師同意書
患者が薬剤師による説明や服薬指導を受けること、そして服薬情報が医療機関や医師に共有されることを同意する旨を記載します。
その下に患者が同意した日時と患者の住所、氏名を設け、患者にこれらを記入してもらいます。
かかりつけ薬剤師同意書を作成する際の注意点
ここからは薬局の担当者の方に向けて、かかりつけ薬剤師同意書を作成する際の注意点について記載します。また、患者の立場でも以下の点はしっかりと確認しておきましょう。
かかりつけ薬剤師のサービス内容を明らかにしておく
まずはかかりつけ薬剤師が患者に対してどのようなサービスを提供するのかを具体的にしておきましょう。
薬剤師の業務は薬の調剤から説明、服薬指導、服薬状況の確認、副作用や飲み合わせの確認、薬や健康に関する相談の対応など非常に多岐にわたります。
例えば細かい服薬指導や管理までは必要ない、プライベートにまで踏み込まれたくないと考える患者もいるかもしれません。同意書にサービス内容を明らかにし、口頭でも説明することで、後々のトラブルやクレームの防止につながります。
個人情報の取り扱いに関して明記しておく
かかりつけ薬剤師は医療機関や医師と情報を共有しながら、より的確な薬の調剤やきめ細かいフォローを患者に実施しますが、個人情報は個人情報保護法に基づいて適切に扱わなければなりません。
個人情報を取得する際に同意を得る際には本人の同意が必要である旨が個人情報保護法第20条に規定されています。
(適正な取得)
第二十条 個人情報取扱事業者は、偽りその他不正の手段により個人情報を取得してはならない。
2 個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、要配慮個人情報を取得してはならない。
薬局も個人情報を取り扱う以上、個人情報取扱事業者に規定されます。
とりわけ病歴や診療歴、服薬歴など健康に関する事柄はセンシティブな個人情報であり、要配慮個人情報に該当します。第三者と共有する場合は必ず患者の同意を得なければならず、漏えいしないような対策も必要です。
いつ・誰が同意したのかが分かるようにする
同意書は相手方が署名をした時点で成立したと見なすことができます。いつ・誰が同意したのかが分かるよう、必ず日付と署名欄を設けるようにしましょう。
かかりつけ薬剤師指導料の算定は次回の調剤から
かかりつけ薬剤師として患者にサービスを提供することで、かかりつけ薬剤師指導料や包括管理料が算定できます。ただし、これは患者の同意を得た後、次回処方箋受付時以降となり、その日の調剤時には算定することはできません。
かかりつけ薬剤師を持つメリット
かかりつけ薬剤師をつけなくても、薬局に行けば薬剤師から薬を調剤してもらうことは可能です。それにも関わらず、わざわざかかりつけ薬剤師をつける必要はどこにあるのでしょうか。ここからは患者視点でかかりつけ薬剤師をつけるメリットについて考えてみましょう。
服用中の全ての薬の飲み合わせや副作用を確認してくれる
薬は飲む人の体質によって効果が出たり出なかったり、あるいは副作用が出るなど個人差があります。特に複数の薬を飲んでいると飲み合わせによって副作用が出て健康に悪影響をおよぼすリスクも高くなります。
患者の服薬情報を把握している、かかりつけ薬剤師であれば、現在飲んでいる薬と飲み合わせができるか、副作用が出るリスクがないかを確認したうえで調剤してくれるので、安全性が高まります。
薬局の営業時間外でも対応してくれる
薬剤師に相談したいのであれば薬局の営業時間中に出向くか電話するなどして相談するのが一般的です。また特にドラッグストアでは、店舗は営業していても薬剤師が不在であるケースもあります。
薬局によってはかかりつけ薬剤師をつけてもらった場合、夜間や薬局の休業日などでも担当薬剤師が対応してくれるケースがあります。
特に薬を飲んでいる場合、症状の悪化や副作用で急に体調が悪くなる、調剤された薬の効果が出ず症状が治まらないといった緊急事態もあり得ます。時間外にも対応してくれるのは非常に大きな安心感が得られ、万が一の際にも冷静に対応できるようになります。
市販薬や健康食品についても相談できる
かかりつけ薬剤師には調剤してもらっている薬に関することだけでなく、健康に関する全般的な事柄も相談することができます。例えば不調が出た時におすすめの市販薬や健康食品などをアドバイスしてもらう、医師に診てもらうべきかどうか意見をもらうといったことも可能です。
不安だけど病院に行くまでもない、あるいは病院に行くべきかどうか迷っているようなケースで、身近な相談役としてかかりつけ薬剤師の力を借りることができます。また、かかりつけ薬剤師として関係ができれば、気軽に相談しやすくなります。
かかりつけ薬剤師のサービス費用
かかりつけ薬剤師から薬を調剤してもらう場合、「かかりつけ薬剤師指導料」という費用を支払わなければなりません。これは健康保険料が適用され、自己負担額は1~3割です。
費用は薬局によって異なりますが、3割負担の場合は1回当たり50~100円程度が相場のようです。なお薬を調剤してもらう際の「調剤基本料」「薬剤調整料」などの費用は変わりません。
かかりつけ薬剤師を薬局ごとに選定できる?
かかりつけ薬剤師は患者1人当たり1人の薬剤師のみを指名することができます。すでにある薬局でかかりつけ薬剤師がいる場合、ほかの薬局でかかりつけ薬剤師をつけてもらうことはできません。ただし、ほかの薬局でもなんら問題なく薬を調剤してもらうことは可能です。
かかりつけ薬剤師と患者の関係は書面による合意から
かかりつけ薬剤師は患者にとっても薬局にとってもメリットがある制度です。しかし事前に双方が納得して合意を形成しないと、後でトラブルに発展する恐れもあります。
薬局や薬剤師としては、同意書の内容に抜け漏れがないかを確認して患者に渡し、サービスの内容や注意点について口頭でもしっかりと説明しましょう。患者はどのようなサービスをかかりつけ薬剤師が提供してくれるのか、ご自身の希望するサービスを受けられるか、個人情報がどのように扱われるかなどを確認して同意書に署名しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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