• 更新日 : 2026年7月13日

民法545条(解除の効果)とは?ただし書の第三者の定義もわかりやすく解説

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Point民法545条の内容は?

民法545条は、契約解除の効果として原状回復義務を定めた条文です。2020年改正で果実の返還(3項)が明文化されました。

  • 解除により各当事者が原状回復義務を負う
  • 受領した金銭には受領時からの利息が付く
  • 解除前に権利を取得した第三者の権利は保護される

解除後に権利を得た第三者との関係は「対抗関係」となり、登記の有無が優劣を左右します。

民法545条は、契約が解除されたときの法律効果を定めた条文です。解除権の行使によって生じる原状回復義務の内容や、解除前に権利を取得した第三者の保護、利息・果実の返還義務など、不動産取引や売買契約で問題になりやすい論点が集約されています。

2020年の民法改正によって果実の返還義務(3項)が明文化されるなど、改正前後で実務上の取り扱いが変わった点があります。本記事では、民法545条の各項の内容と、判例・実務上の注意点を解説します。

民法545条(解除の効果)とは?

民法545条は、解除権が行使されたときに生じる法律効果を規律する条文です。2020年の民法改正によって原状回復義務の内容が明文化され、現在は次の4項から構成されています。

民法545条1項(原状回復義務)

民法545条1項では、当事者の一方が解除権を行使したとき、各当事者は原状回復義務を負うと定められています。

契約の解除は、有効に成立した契約の効力を遡及的に消滅させるものです。そのため、契約によって給付が行われていた場合には、それがなかった状態に戻す必要があります。物を給付していた場合はその物自体を返還し、返還が不可能なときは原則として解除当時の価格での金銭補償が求められます。

なお、対象物がすでに第三者に転売されているような場合には、解除によってその所有権を奪うことはできないとする但書があります。この「第三者」の範囲については後述します。

民法545条2項(利息の返還)

民法545条2項では、契約解除によって金銭を返還する場合に、受領時からの利息を付けて返す義務が定められています。

契約解除によって受け取った金銭を返す際には、元の金額に加えて、受領日からの利息も支払わなければなりません。これは、相手方が一定期間その金銭を使えなかったことへの補償です。売買代金を受け取った後で解除となった場合には、その金額に利息を加えた合計額を返す必要があります。

利率は、特約がない限り民法404条に基づく法定利率が適用されます。2020年改正後の現行法では年3%であり、3年ごとの見直し制度が設けられています。

民法545条3項(果実の返還)

民法545条3項では、金銭以外の物を返還する場合、受領後に生じた果実も返還しなければならないと規定されています。

この規定は2020年の改正で新設されたもので、改正前には明文がありませんでした。「果実」とは物から生じる経済的収益のことで、農作物や子畜のような天然果実と、賃料や利子のような法定果実があります。

たとえば、土地の売買契約が解除された場合、買主は土地自体を返還するとともに、その土地を賃貸していれば賃料収入(法定果実)も、農作物を収穫していれば農作物(天然果実)も返す必要があります。物の返還だけでなく、その物から得た利益まで清算しなければ公平な原状回復とはいえないためです。

民法545条4項(損害賠償との併存)

民法545条4項は、解除をした場合にも、なお損害があれば別途損害賠償を請求できると定めています。

契約相手方の債務不履行によって損害を受けた場合、解除による原状回復だけでは補えないことがあります。そのため、法は解除と損害賠償請求の並立を認めています。解除によって原状回復を受けながら、残る損害(機会損失・価値下落・付随費用等)について賠償を求めることができます。

たとえば、中古車の売買契約で買主が代金を支払わなかったために売主が解除した場合、車の返還を受けながら、その間の価値下落や再販機会の喪失に対する損害賠償も請求できます。

参考:民法 | e-Gov 法令検索

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民法545条1項ただし書における「第三者」とは?

民法545条1項の但書では、解除の遡及効があっても「第三者の権利を害することはできない」と定めています。

「第三者」とは、解除された契約の当事者以外であって、その契約に基づき目的物に関する権利を取得した者を指します。契約が遡及的に無効とみなされても、第三者がすでに取得した権利には解除の効果が及びません。

判例上、保護される「第三者」は解除より前に目的物の権利を取得した者に限られます。また、不動産の場合は登記などの権利保護要件を備えていることが求められており、無登記の第三者は545条1項但書の保護を受けられないとするのが裁判所の立場です。単に権利を取得したというだけでなく、権利保護要件の具備が保護の前提となる点に注意が必要です。なお、解除の後に目的物の権利を取得した者については、民法177条により対抗要件を備える必要があります。

民法545条に関する判例と実務上の解釈は?

民法545条をめぐっては、解除前後の第三者保護に関する裁判例が積み重ねられています。解除前の第三者と解除後の第三者では、保護の根拠と優劣の決め方が異なります。

解除前の第三者

解除前に目的物の権利を取得した第三者は545条1項但書で保護される可能性がありますが、登記を備えていなければ保護されないとするのが判例の立場です。

不動産売買が合意解除された事案で、解除前に不動産を譲り受けた第三者が登記をしていなかった場合に、債権者代位によって登記請求ができるかが争点となったケースがあります。裁判所は、特段の事情がない限り、無登記の第三者は買主に代位して登記請求をすることはできないとしました。

この理由は、登記のない第三者は民法177条の「第三者」として保護されないため、所有権の主張自体が認められないからです。解除前の第三者であっても、登記などの権利保護要件を備えることが保護の条件となります。

解除後の第三者

解除後に目的物の権利を取得した者は545条1項但書の「第三者」に含まれないとするのが、裁判所の一貫した見解です。

解除後に目的物を取得した者との法律関係は「対抗関係」として整理されます。解除によって売主に復帰的に所有権が戻る場面では、その売主と解除後の取得者との間に民法177条が適用されます。どちらが先に登記などの対抗要件を備えたかによって優劣が決まります。

したがって、契約を解除した側は、解除後できるだけ速やかに登記名義の回復手続きを進めることが権利保全の観点から重要です。

民法545条と関連条文(541条・542条・177条)の関係は?

民法545条は解除の「効果」を定めた規定であり、解除の「原因」を定める541条・542条や、対抗要件を規律する177条と密接に関わっています。

民法541条は催告による解除(債務不履行があった場合に相当期間を定めて催告し、それでも履行がないときに解除できる規定)、542条は催告なしに直ちに解除できる場合(履行不能・全部の履行拒絶等)をそれぞれ定めています。これらが解除権の「発生根拠」であるのに対し、545条はその解除権が行使されたときの「法律効果」を定めています。つまり、解除が有効に成立するには541条・542条の要件を満たす必要があり、そのうえで545条の効果が生じる関係にあります。

民法177条は不動産物権変動の対抗要件(登記)を定めた規定です。解除後の第三者との関係では545条の但書は適用されず、177条による優劣判断に移行することは前述のとおりです。また、解除前の第三者が545条の保護を受けるためにも177条の登記が必要とされており、両条文は連動して機能します。

参考:民法 | e-Gov 法令検索

民法545条に関して注意すべきポイントは?

民法545条に関して注意すべきポイントを、条文の解釈と実務上の対応に分けて整理します。

条文で注意すべきポイント

民法545条では、原状回復義務の範囲が「物の返還」にとどまらない点に注意が必要です。

解除により契約は遡及的に消滅し、当初の状態に戻すことが原則です。このとき返還すべきものは物そのものだけではありません。金銭の場合は受領時からの法定利息が加わり、物の場合はそれから得た果実(賃料・農作物等)まで含まれます。原状回復が単純な物の返還にとどまらないことを前提に、返還すべきものの全体像を把握することが求められます。

また、解除前に権利を得た第三者の権利は保護されますが、その保護を受けるには登記などの権利保護要件を備えていることが条件とされています。登記の状況が権利関係の帰趨を左右するため、取引に関わる登記を常に確認することが大切です。

実務上で注意すべきポイント

契約書の作成段階で、解除に伴う取り扱いをあらかじめ明確に定めておくことが、後のトラブル防止につながります。

解除時の損害賠償額の算定方法、利息免除の有無、解除後の権利関係の整理手順などを契約書に具体的に明記しておくと、実際に解除が発生した際の対応がスムーズになります。また、合意解除を行う場合は、精算内容を合意書として書面化しておくことが後日の紛争予防につながるでしょう。

不動産取引では、解除を行う前に第三者による登記の有無とその内容を慎重に確認することが欠かせません。解除の通知は書面で行い、日付・内容・到達の事実を証拠として残しておくことも大切です。内容証明郵便を利用すると、通知の日時と内容を公的に証明できるため、一般的な方法として活用されています。

民法545条における契約解除と原状回復のポイントを理解しよう

民法545条は、解除権の行使によって生じる原状回復義務の内容を定めた条文です。2020年の民法改正で果実の返還義務(3項)が明文化され、解除に伴う清算関係がより明確になりました。解除前に権利を取得した第三者は保護されますが、対抗要件の具備が前提となることにも注意が必要です。

実務では、解除の通知を書面で行うこと、解除前後の登記状況を速やかに確認すること、契約書に解除時の取り扱いを明記することの3点が重要です。特に不動産取引や高額な売買契約では、早期に弁護士へ相談することで思わぬ権利喪失を防げるでしょう。

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