- 作成日 : 2024年12月25日
IT重説実施に関する同意書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
宅地建物取引業者などが「IT重説」を行う際には、相手方から同意書を取得する必要があります。法律の規制内容を踏まえて、ひな形をもとに、適切な形式の同意書を準備しましょう。本記事では、IT重説の実施に関する同意書の書き方や、同意書を作成する際の注意点などを、文言の具体例を示しながら解説します。
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目次
IT重説実施に関する同意書とは
「IT重説」とは、宅地建物取引業者などが相手方に対する重要事項説明をオンラインで行うことをいいます。
宅地建物取引業法や建築士法では、事業者が不動産に関する一定の取引に関与する際、相手方に対して重要事項説明を行うことを義務付けています。
重要事項説明は対面で行うのが通例でしたが、2017年からIT重説が解禁され、2021年3月30日から本格的な運用が開始されました。
事業者がIT重説を実施するにあたっては、相手方から同意書を取得する必要があります。オンライン上で重要事項説明を見聞きし、その内容を理解できる環境が整っているかどうかを事前に確認するためです。本記事の内容を参考にして、適切な形式のIT重説に関する同意書を準備しましょう。
IT重説実施に関する同意書を作成するケース
IT重説の実施に関する同意書を取得する必要があるのは、宅地建物取引業者および建築士事務所の開設者です。
具体的には、以下の業務に関してIT重説を実施する際に、同意書の作成および取得が必要となります。
<宅地建物取引業者>
① 宅地または建物の売買、交換または貸借
② ①の媒介または代理
<建築士事務所の開設者>
設計または工事監理の受託
宅地建物取引業者がIT重説実施に関する同意書を作成するケース
宅地建物取引業者は、以下の取引をするにあたって、物件を取得する人または借りようとしている人に対して重要事項説明を行う必要があります(宅地建物取引業法第35条1項)。
① 宅地または建物の売買、交換または貸借
② ①の媒介または代理
宅地建物取引業者の重要事項説明は、書面(=重要事項説明書)を交付したうえで行うのが原則ですが、事前に相手方の承諾を得ていれば、オンラインで重要事項説明を行うことも認められています(宅地建物取引業法第35条8項)。これがIT重説です。
IT重説の実施にあたっては、あらかじめ相手方に対して実施方法の種類および内容を示したうえで、書面などによる同意を得なければなりません(同法施行令第3条の3)。このとき、相手方に提出を求める書面などが、IT重説の実施に関する同意書にあたります。
建築士事務所の開設者が設計・工事監理を受託するとき
建築士事務所の開設者は、設計受託契約または工事監理受託契約を建築主と締結する際、建築士に重要事項説明をさせなければなりません。
建築士による重要事項説明も、書面(=重要事項説明書)を交付したうえで行うのが原則ですが、事前に相手方の承諾を得ていれば、IT重説を実施できます(建築士法第24条の7第3項、同法施行令第7条・第8条、同法施行規則第22条の2の3~第22条の2の5)。
IT重説実施に関する同意書のひな形
IT重説の実施に関する同意書のひな形は、以下のページからダウンロードできます。実際に同意書を作成する際の参考としてください。
※ひな形の文例と本記事で紹介する文例は、異なる場合があります。
IT重説実施に関する同意書に記載すべき内容
IT重説の実施に関する同意書には、主に以下の項目を記載します。
- IT重説の実施に同意する旨
- 相手方側のIT環境の確認
- 重要事項説明書の事前交付
- IT重説の日程
- IT重説開始時の状況確認
- 宅地建物取引士証または建築士免許証明書の提示
- IT重説の具体的な実施方法
IT重説の実施に同意する旨
(例)
(a)宅地建物取引士による重要事項説明の場合
私(以下「買主」といいます。)は、宅地建物取引業法第35条第1項に基づく重要事項説明に関し、ITを活用した方法で実施すること(以下「IT重説」といいます。)に同意します。また、下記の事項を確認しました。
(b)建築士による重要事項説明の場合
私(以下「建築主」といいます。)は、建築士法第24条の7第1項に基づく重要事項説明に関し、ITを活用した方法で実施すること(以下「IT重説」といいます。)に同意します。また、下記の事項を確認しました。
まずは、提出者がIT重説の実施に同意する旨、および確認事項について確認した旨を明確に記載します。
宅地建物取引士による重要事項説明の場合は買主や借主など、建築士による重要事項説明の場合は建築主が同意書の提出者です。
相手方側のIT環境の確認
(例)
<前日までの確認事項>
① 買主(建築主)において、IT重説を実施するために必要なIT環境(映像や音声について双方向にやりとりできる環境)が十分にあること。
IT重説の実施にあたっては、相手方側に事業者側の重要事項説明を見聞きできるIT環境が整っているかを確認しなければなりません。IT重説の実施に関する同意書にも、相手方側のIT環境の確認に関する事項を記載します。
具体的には、事業者がIT重説に利用するソフトウェアなどを、相手方が利用できるかを事前に確認する必要があります。また、電子書面が見やすい、画面の大きい端末の利用が推奨されます。
重要事項説明書の事前交付
(例)
<前日までの確認事項>
② 貴社(貴所)から事前に、重要事項説明書が郵送で交付されること。
IT重説に先立ち、相手方に対して重要事項説明書をあらかじめ交付する必要があります。IT重説の実施に関する同意書にも、重要事項説明書の事前交付の方法について記載しましょう。
重要事項説明書は、郵送などの方法で書面によって交付するか、電子書面で交付します。
電子書面で交付する場合は、相手方側で印刷できるようにしておくことと、改変されていないかどうかを確認できる措置を講じることが必要です。また、改変の有無をどのような方法で確認するのかについては、相手方に対して説明を行い、確実に理解してもらわなければなりません。
IT重説の日程
(例)
<前日までの確認事項>
③ IT重説は、事前に日時を調整したうえで実施すること。
IT重説の実施日程については、同意書を作成する段階で決めておくこともできますが、後日調整としても問題ありません。日程が確定している場合はその日程を、後日調整とする場合はその旨を、IT重説の実施に関する同意書に記載しましょう。
IT重説開始時の状況確認
(例)
<当日の確認事項など>
④ IT重説に際して、映像が視認できるか否か、双方向でのやりとりができるかどうかなど、双方が適切なIT環境下にあるか否かを事前に確認すること。
相手方側におけるIT環境を事前に確認するだけでなく、IT重説の当日においても、オンラインでのやりとりが可能な状況が整っていることを確認する必要があります。IT重説の実施に関する同意書にも、当日にIT環境などの状況確認を行う旨を明記しましょう。
IT重説の当日においては、実施前に以下の事項などを確認します。
- 相手方側の映像や音声を、宅地建物取引士(建築士)側の端末で確認できること
- 宅地建物取引士(建築士)側の映像や音声を、相手方側の端末で確認できること
- 相手方側に事前に送付している重要事項説明書および添付書類が、相手方側の手元にあること
機器トラブルなどの関係で、IT重説の実施に支障が生じている場合は、IT重説を中止しなければなりません。この場合は、支障が解消してからIT重説を再開するか、または対面での重要事項説明を行うなどの対応を検討します。
宅地建物取引士証または建築士免許証明書の提示
<当日の確認事項など>
(a)宅地建物取引士による重要事項説明の場合
⑤ 貴社所属宅地建物取引士において、IT重説の開始前に、テレビ会議などの画面上で、買主の本人確認、および宅地建物取引士証などを提示して、宅地建物取引士の資格の確認を行うこと。
(b)建築士による重要事項説明の場合
⑤ 貴所所属建築士において、IT重説の開始前に、テレビ会議などの画面上で、建築主の本人確認、および建築士免許証明書などを提示して、建築士の資格の確認を行うこと。
重要事項説明にあたっては、宅地建物取引士は宅地建物取引士証、建築士は建築士免許証明書を、それぞれ相手方に対して提示することが義務付けられています(宅地建物取引業法第35条4項、建築士法24条の7第2項)。
IT重説でも、相手方に対して宅地建物取引士証または建築士免許証明書を画面上で提示する必要があります。その際、相手方に氏名を読み上げてもらうなどの方法により、相手方が視認できていることを確認しましょう。
なお、宅地建物取引士証または建築士免許証明書は、個人情報保護の観点から、住所欄にシールを貼って隠したうえで提示しても差し支えありません。
IT重説の具体的な実施方法
<当日の確認事項など>
⑥ 前各項の確認を実施した後、貴社所属宅地建物取引士(貴所所属建築士)にて、テレビ会議などの画面上でIT重説を行うこと。
IT重説の具体的な方法を記載します。テレビ会議などの画面上でIT重説を行う旨を記載するのが一般的ですが、実施方法について特筆すべき事項がある場合は、その内容も同意書に記載しておきましょう。
IT重説実施に関する同意書を作成する際の注意点
IT重説を実施する際には、相手方がオンラインで映像や音声を受信できる状況にあるかを十分に確認することが大切です。また、宅地建物取引士証または建築士免許証明書の提示など、対面での重要事項説明と同様に遵守すべき手続きも存在します。
IT重説の実施にあたっては、国土交通省が公表している実施マニュアルが参考になるので、必要に応じてご参照ください。
参考:IT重説本格運用(平成29年度~)|国土交通省
※宅地建物取引士によるIT重説の実施マニュアル
参考:ITを活用した建築士法に基づく設計受託契約等に係る重要事項説明について|国土交通省
IT重説実施に関する同意を取得する方法
IT重説の実施に関する同意は、法令の規定に沿った方法で取得する必要があります。
具体的には、以下の4つの方法が認められています。
① 承諾する旨を記載した書面(紙)を受領する
② 承諾する旨が記載された電子メールなどを受信する
③ Webページ上で、重要事項説明書などの電子書面を提供する方法および重要事項説明書などの電子書面ファイルへの記録方式を示し、Webページ上で承諾を取得する
④ 承諾する旨を記録したCD-ROMやUSBメモリなどを受領する
IT重説の実施に関する同意書を紙で作成・取得する場合は①、電子データで作成・取得する場合は②~④のいずれかとなります。
②~④の方法による場合は、同意の有無をめぐる事後のトラブルを防止する観点から、電子データを書面(紙)に印刷できる形式で取得しなければなりません(例:PDF、Word、Excelなど)。
IT重説実施に関する同意書が返送されない場合はどうする?
IT重説の実施に関する同意書を送付したものの、相手方が返送してこないときは、電話やメールなどで作成の状況を確認しましょう。同意書の作成にあたって何らかの支障がある場合は、その支障を解消するために必要なフォローをすることが求められます。
相手方から同意書が返送されない場合は、IT重説を実施することができません。この場合は、IT重説の実施日程の変更や、対面での重要事項説明への切り替えなどを検討しましょう。
IT重説の実施時における個人情報の取り扱い
IT重説に関する同意書には、相手方の氏名や住所などの個人情報が記載されます。事業者がこれらの個人情報を取り扱うにあたっては、個人情報保護法を遵守しなければなりません。
また、IT重説の実施状況を録音・録画する場合は、相手方の顔などの情報の取得が個人情報の取得に該当します。
事業者は個人情報の取得に関して、あらかじめその利用目的を公表するか、または事後速やかに本人に対して通知または公表しなければなりません(個人情報保護法第21条1項)。
万が一、個人情報の漏えいなどが発生した場合は、個人情報保護委員会への報告および本人への通知が義務付けられる場合があります(同法26条)。
IT重説の実施状況の録音・録画に関しては、抵抗を感じる方もいます。
トラブル防止の観点から、録音・録画を行う際には、相手方から明示的な同意を得ることが望ましいです。具体的には、IT重説の実施に関する同意書において、録音・録画についても同意する旨を明記することが挙げられます。
IT重説の実施にあたっては、トラブル防止のため確実に同意書を取得しましょう
宅地建物取引士や建築士がIT重説を実施する際には、相手方から同意書を取得する必要があります。
相手方とのトラブルを予防するため、法令や国土交通省の実施マニュアルを踏まえたうえで、IT重説の実施に関する適切な同意書を準備しておきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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