• 作成日 : 2024年12月2日

委託契約と請負契約の違いとは?各契約の特徴や注意点をわかりやすく解説

「委託契約(業務委託契約)」は委託者が雇用関係にない受託者に対して業務を委託する契約で、「請負契約」は注文者が仕事の完成と引き換えに請負人へ報酬を支払う契約です。

委託契約と請負契約では、対象となる業務(仕事)の内容や性質に違いがあります。本記事では、委託契約と請負契約の違いについてわかりやすく解説します。

委託契約と請負契約の違いとは?

委託契約(業務委託契約)と請負契約は、いずれも当事者の一方が相手方に対して何らかの業務を委託し、相手方がそれを受託して業務を行うという内容の契約です。

ただし、委託契約(業務委託契約)によって委託される業務の内容は特に限定されないのに対して、請負契約によって委託される業務は成果物の納品が必要となるものに限られるという違いがあります。

委託契約(業務委託契約)とは

「委託契約」とは、委託者が雇用関係にない受託者に対して何らかの業務を委託し、受託者がこれを受ける内容の契約です。業務委託契約」と呼ばれることもあります(以降「業務委託契約」にて呼称を統一)。

請負契約とは

「請負契約」とは、請負人がある仕事を完成させることを約束し、注文者がその仕事の完成と引き換えに報酬を支払う契約です(民法632条)。

業務委託契約と請負契約の違い

業務委託契約と請負契約の主な違いは、委託される業務(仕事)の内容です。

請負契約の場合は、対象となる業務は成果物の納品が必要となるものに限られます。具体的には、建設工事やコンテンツ制作などが請負契約の対象です。

これに対して、業務委託契約の場合、委託される業務の内容は限定されていません。どのような業務であっても、幅広く業務委託契約の対象とすることができます。

コンサルティング業務のように、業務を行うことに対して報酬が支払われる場合は、請負契約ではなく、委任契約または準委任契約の対象です。

なお、「請負」については民法で定められていますが、「業務委託」という類型の契約については法で規定されてはいません。「業務委託契約」は実務上用いられている呼称に過ぎず、次の項目で解説するように、請負契約・委任契約・準委任契約の総称です。つまり、請負契約とは業務委託契約の一部といえます。

業務委託契約の種類|請負契約・委任契約・準委任契約の違い

業務委託契約は、請負契約・委任契約・準委任契約の3つに分類されます。

請負契約

成果物の納品を必要とする業務を委託するのは、請負契約にあたります(民法632条)。

たとえば、建設工事やコンテンツ制作などが請負契約の対象となる業務です。

請負契約では、受託者(請負人)が委託者(注文者)に対して報酬を請求できるのは、仕事を完成させた後になります。

請負契約にあたる業務委託契約を書面で締結する場合は、契約金額に応じて以下の金額の収入印紙を貼付しなければなりません。

契約金額貼付すべき収入印紙の額
1万円未満非課税
1万円以上100万円以下200円
100万円を超え200万円以下400円
200万円を超え300万円以下1,000円
300万円を超え500万円以下2,000円
500万円を超え1,000万円以下1万円
1,000万円を超え5,000万円以下2万円
5,000万円を超え1億円以下6万円
1億円を超え5億円以下10万円
5億円を超え10億円以下20万円
10億円を超え50億円以下40万円
50億円を超えるもの60万円
契約金額の記載のないもの200円

委任契約

特定の法律行為を委託する業務委託契約は、委任契約にあたります(民法643条)。

法律行為とは、意思表示を通して、法律上の効果(権利や義務を取得したり消滅させたりすること)を生じさせる行為のことです。

たとえば、弁護士への訴訟行為の依頼、司法書士への登記手続きの依頼、税理士への税務申告の依頼などは、「業務委託契約」という名称であっても、法律上は委任契約となります。

委任契約では、受託者(受任者)は業務遂行の結果にかかわらず、委託者(委任者)に対する報酬の請求が可能です。請負契約とは異なり、成果物の納品は必須ではありません。

委任契約の契約書には原則として、収入印紙を貼付する必要はありません。ただし、継続的取引の基本となる契約書(契約期間が3か月以内かつ更新の定めがないものを除く)を作成する場合は、4,000円の収入印紙を貼付する必要があります。

準委任契約

法律行為でない事務を委託する業務契約は、準委任契約にあたります(民法656条)。

たとえば、コンサルティング業務や自社オフィスによる常駐業務などは、準委任契約の対象となる業務です。

準委任契約には、民法の委任契約に関する規定が準用されるため、受託者(受任者)は業務遂行の結果にかかわらず、委託者(委任者)に対して報酬を請求できます。

委任契約と同じく、準委任契約についても、原則として収入印紙の貼付は不要です。ただし、継続的取引の基本となる契約書(契約期間が3か月以内かつ更新の定めがないものを除く)を作成する場合は、4,000円の収入印紙を貼付する必要があります。

【企業側】業務委託契約を締結するメリット・デメリット

業務委託契約は、企業が自社のために働く人材を確保することを目的として締結されるケースがほとんどです。

業務委託契約によって外部人材を活用することには、企業側にとってメリットとデメリットの両面があります。

企業が業務委託契約を締結するメリット

企業が業務委託によって外部人材を活用することの大きなメリットは、自社のニーズに応じて業務を発注できる点です。

労働者を雇用する場合は、自社の業務状況にかかわらず、一定以上の賃金を支払う必要があります。これに対して業務委託では、受託者の稼働時間や作業内容などに応じて報酬を支払えばよいので、無駄な人件費を抑えることができます。

また、外部の専門的人材やノウハウを活用できることも、企業が業務委託を行うメリットの一つです。自社だけでは対応が難しい専門的な業務についても、業務委託によって外部人材を活用すれば、効率的かつ適切に対応できる可能性が高くなります。

企業が業務委託契約を締結するデメリット

企業が労働者を雇用する代わりに、業務委託によって外部人材を活用することのデメリットとして挙げられるのが、社内にノウハウが蓄積しにくい点です。外部人材である受託者に業務を任せきりにすると、社内の人はその業務について十分に知見を深めることができません。

また、業務委託の委託者は受託者に対して、業務の進め方や時間配分などを指揮命令することができません。そのため、業務や成果物の品質確保、スケジュール管理などがうまくいかないおそれがあります。

業務の進め方や時間配分などを具体的に指示したい場合は、業務委託ではなく労働者として雇用しましょう。

【受託者側】業務委託契約で働くメリット・デメリット

近年では個人の働き方としても、企業に雇用されて労働者として働く形のほかに、フリーランスとして業務委託で働く形が注目されています。

とはいえ、個人が業務委託で働くことにも、やはりメリットとデメリットの両面があります。

業務委託契約で働くメリット

個人が業務委託で働くことの大きなメリットは、仕事の進め方を自由に決められる点です。委託者から指揮命令を受けることがないため、企業に雇用される場合と比べて、より自由な働き方ができるようになります。

また、仕事の方法を工夫して効率化すれば、労働者として働くよりも多くの収入を得られる可能性がある点も、業務委託で働くことのメリットといえるでしょう。

業務委託契約で働くデメリット

業務委託で働く場合は、労働者とは異なり固定給がありません。したがって、受注の内容や量などに応じて、毎月収入が変動します。

発注の量や時期などは委託者が決めるため、安定して受注できるとは限りません。極端に受注が減ると、収入が大幅に減少するおそれがあるので注意が必要です。

また、報酬額が作業時間ではなく成果によって決まる場合は、仕事の効率が悪いと過重労働になり、収益性が低くなってしまう点にも注意しましょう。

企業側が業務委託契約を締結する際の注意点

企業が業務委託契約を締結する際には、契約条件を明確に記載することが大切です。具体的には、以下のような事項を明確な文言によって定め、相手方とのトラブルの予防に努めましょう。

  • 委託する業務の内容
  • 発注および受注の手続き
  • 納品および検収の手続き
  • 報酬(額、計算方法、支払方法など)
  • 受託者が遵守すべき事項
  • 知的財産権の帰属
  • 再委託の可否
  • 契約の有効期間、更新手続き
  • 合意管轄

    など

業務委託契約の各種テンプレート

業務委託契約書や関連契約のテンプレートは、以下のページからダウンロードできます。実際に業務委託契約書を作成・締結する際の参考にしてください。

業務委託契約と請負契約の違いは、業務(仕事)の内容

業務委託契約と請負契約の主な違いは、委託できる業務(仕事)の内容です。業務委託契約は幅広い業務が対象となりますが、請負契約は成果物の納品を必要とする業務に限定されています。

業務委託契約は、請負契約・委任契約・準委任契約のいずれかに分類されます。契約書の名称にかかわらず、委託する業務(仕事)の内容を踏まえて、どの契約に該当するかを適切に判断しましょう。

また、トラブル防止の観点から、契約書の種類を問わず、契約条件を明確に記載することが大切です。当事者間で合意した契約条件を、疑義のない文言で契約書に記載しましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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