• 作成日 : 2023年12月1日

薬機法とは?概要や対象、規制内容を簡単に解説

薬機法とは、医薬品や医薬部外品、化粧品などの品質や有効性、安全性を確保するために、製造や販売、広告などに関する規則を定めた法律です。薬機法に違反すると、処罰の対象になり、社会的信用が失墜する可能性もあります。まずは、何が規制対象となっているかを理解しましょう。今回は、薬機法の対象や規制内容について、簡単に解説します。

薬機法とは

薬機法(やっきほう)とは、医薬品や医薬部外品、化粧品、医療機器などについて、承認や製造、販売、広告などに関するルールを細かく定めた法律です。品質や有効性、安全性を確保することを目的としています。医薬品等の製造や販売などに関わる以上、切っても切り離せない重要な法律です。

薬機法は、以前は薬事法と呼ばれていました。2014年に法令名が「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」と変更され、省略して薬機法と呼ばれています。

薬機法の対象

薬機法では、以下の5つを医薬品等と定義し、安全性や有効性を確保し、保健衛生上の危害を防ぐために必要な規制を設けています。

  • 医薬品
  • 医薬部外品
  • 化粧品
  • 医療機器
  • 再生医療等製品

また、体外診断用医薬品についても規制があり、薬機法の対象は幅広いことがわかるでしょう。

以下では、薬機法の対象とそれぞれの定義について紹介します。

医薬品

医薬品の定義は、以下のとおりです。(薬機法2条1項)

  1. 日本薬局方に収められている物
  2. 人または動物の疾病の診断・治療・予防を目的に使用する物であって、機械器具等でないもの
  3. 人または動物の身体の構造または機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であって、機械器具等でないもの

参考:e-Gov法令検索|昭和三十五年法律第百四十五号 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律

たとえば、医師の処方箋に基づいて処方される薬や、市販の風邪薬や頭痛薬などは、医薬品に該当します。

なお、2つ目と3つ目の定義で「機械器具等でないもの」と記されているように、医薬品としての使用目的を持つものであっても、それが機械器具に該当する場合は医療機器に分類されるのがポイントです。

医薬部外品

医薬部外品の定義は、以下のとおりです。(薬機法2条2項)

  1. 次のいずれかの目的のために使用される物であって機械器具等でないもの
    • 吐き気その他の不快感、口臭もしくは体臭の防止
    • あせも、ただれ等の防止
    • 脱毛の防止、育毛又は除毛
  2. 人または動物の保健のためにする、ネズミ、ハエ、蚊、ノミ、そのほかこれらに類する生物の防除の目的のために使用される物であって、機械器具等でないもの
  3. 医薬品の使用目的を持つ物のうち、厚生労働大臣が指定するもの(指定医薬部外品)

参考:e-Gov法令検索|昭和三十五年法律第百四十五号 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律

医薬部外品は、医薬品よりも人体に対する作用が緩やかなもののことを指します。

たとえば、育毛剤や制汗剤、殺虫剤などは、医薬部外品に該当します。

化粧品

化粧品の定義は、以下のとおりです(薬機法2条3項)

  1. 以下のいずれかの目的で使用されるもの
    • 人の身体を清潔にする、美化する、魅力を増す、容貌を変える
    • 皮膚もしくは毛髪を健やかに保つ
  2. 身体に塗擦、散布、その他これらに類似する方法で使用される
  3. 人体に対する作用が緩和なもの
    (ただし、医薬品としての使用目的を持つものや、医薬部外品は除く)

参考:e-Gov法令検索|昭和三十五年法律第百四十五号 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律

たとえば、シャンプーや石鹸、スキンケア用品、メイクアップ用品などは化粧品に該当します。

医療機器

医療機器の定義は、以下のいずれかの目的で使用されるもののうち、政令で定めるもののことです。(薬機法2条4項)

  • 人もしくは動物の疾病の診断、治療、予防
  • 人もしくは動物の身体の構造や機能に影響を及ぼす

参考:e-Gov法令検索|昭和三十五年法律第百四十五号 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律

たとえば、体温計や血圧計、メス、家庭用マッサージ機などは、医療機器に該当します。

体外診断用医薬品

体外診断用医薬品の定義は、以下のとおりです。(薬機法2条14項)

  • 専ら疾病の診断に使用されることが目的とされている医薬品のうち、人または動物の身体に直接使用されることのないもの

参考:e-Gov法令検索|昭和三十五年法律第百四十五号 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律

たとえば、検査で使用される試薬は、体外診断用医薬品に該当します。

再生医療等製品

再生医療等製品の定義は、以下のとおりです。(薬機法2条9項)

以下に掲げる医療または獣医療に使用されることが目的とされている物のうち、人または動物の細胞に培養その他の加工を施したもののことです。

  • 人や動物の身体の構造や機能の再建、修復、または形成
  • 人や動物の疾病の治療、予防
  • 人や動物の疾病の治療に使用されることが目的とされている物のうち、人や動物の細胞に導入され、これらの体内で発現する遺伝子を含有させたもの

参考:e-Gov法令検索|昭和三十五年法律第百四十五号 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律

たとえば、再生医療のために培養した皮膚や軟骨などは、再生医療等製品に該当します。

薬機法で規制されていること

薬機法では、主に以下のような事項が規制されています。

  • 医薬品等の製造・販売規制
  • 医薬品等の広告規制
  • 医薬品等の取扱規制

1点目について、以下のような事業を行う場合は、厚生労働大臣や都道府県知事の許可・登録を受ける必要があります。

  • 医薬品の製造販売
  • 薬局の開設
  • 医療機器の修理
  • 高度管理医療機器等の販売・貸与

2点目について、医薬品等について情報発信や広告宣伝を行う際は、薬機法の規制を遵守しなければなりません。消費者が間違った使い方をしたり、効果を過度に期待したりしないようにするためです。広告規制については、次の章で詳しく解説します。

3点目について、医薬品等を扱う事業者は、薬機法で定められたルールに基づいて医薬品等を取り扱う必要があります。具体的なポイントは、以下のとおりです。

  • 処方箋を持たない者に対して、原則処方箋医薬品を販売できない
  • 容器・被包上の表示や記載内容は、薬機法のルールに従う必要がある
  • 薬機法に違反している医薬品等の販売は禁止されている

このように、幅広い事項について細かくルールが定められているため、医薬品等を扱う場合は細心の注意を払いましょう。

事業者が気をつけるべきこと

薬機法について、事業者が気をつけるべきポイントは以下のとおりです。

  • 自社が扱っている製品が医薬品等に該当するかをチェックする
  • 広告の内容に注意する

薬機法は、適用される製品や対象者が幅広いため、知らぬ間に違反してしまう可能性があります。薬機法については、細かく理解することが大切です。

以下では、薬機法に違反しないよう、事業者が気をつけるべきポイントをそれぞれ解説します。

自社が扱っている製品が医薬品等に該当するかをチェックする

まずは、自社が扱っている製品が医薬品等に該当するかをチェックしましょう。

薬機法には、上記で紹介した以外にも対象が細かく定められています。自社製品に薬機法が適用されることを知らずに、違反してしまうリスクもゼロではありません。

自社が扱う製品が薬機法の対象になっていないかを細かくチェックすることが大切です。

広告の内容に注意する

薬機法では、特に広告規制に注意が必要です。広告については、以下のように禁止事項が定められています。

  • 虚偽・誇大広告等の禁止:医薬品等の効果や製造方法などに関する虚偽・誇大な広告や、医師が保証していると誤解されるような表現などはしてはならない
  • 特定疾病用医薬品等の広告の制限:がんや肉腫、白血病など特定疾病の治療薬については、一般人への広告が禁止されている
  • 承認前医薬品等の広告の禁止:承認を受けていない医薬品等の名称、製造方法、効能、効果、性能については、広告が禁止されている

たとえば、医薬品等の広告において、以下のような表現を使用することは禁じられています。

  • 「〇〇が全快する」
  • 「最先端の技術を使用」
  • 「必ず痩せる!」
  • 「副作用がない」

医薬品等が持つ効能・効果の範囲を超えた誇大な表現や最上級表現、安全性を保証する表現などは、使用しないようにしましょう。

また、広告規制の対象者は、事業者のみではありません。広告代理店やPRを依頼するインフルエンサー、外注のWebライターなど、誰にでも適用されます。社外の人間に広告宣伝を依頼する場合は、自社でガイドラインを定めて共有し、薬機法を遵守できるよう徹底しましょう。

参考:厚生労働省|医薬品等の広告規制について

薬機法に違反する具体的なケース

ここでは、薬機法違反で処罰を受けたケースを2つ紹介します。

1点目は、医薬品の承認を得ていない健康食品について、さも医薬品的な効果があるように宣伝して逮捕された事例です。第三者の体験談を装った記事風の広告で、゙医薬品的な効果があるように記載し、薬機法違反で逮捕されました。この事例は、広告主だけでなく広告代理店の社員も逮捕されたことで、注目を集めました。

2点目は、サプリメントのECサイトで、コロナに対する効能・効果を広告で標榜して書類送検された事例です。「新型コロナウイルス対策」「ウイルスの増殖を抑制する」などの文言を記載していました。

特に、広告規制に違反してしまうケースが多く見られるため、注意が必要です。

薬機法に違反したらどうなる?

薬機法に違反すると、厚生労働大臣または都道府県知事から行政処分が下される可能性があります。具体的には、医薬品等の廃棄・回収、業務停止、医薬品等の製造販売許可の取り消しなどの措置を受ける場合が多いです。

また、課徴金納付命令を受けて、違反広告を行っていた期間における医薬品等の対価の一部を課徴金として納付しなければならない場合もあります。

さらに、刑事罰が科される可能性もあるため、薬機法違反には注意が必要です。

2022年の薬機法改正のポイント

2022年、薬機法が改正されました。改正のポイントは以下のとおりです。

  • 緊急時において、新たな医薬品等を迅速に承認するための仕組みが整備された
  • 電子処方箋の仕組みが創設された

生命や健康に重大な影響を与える疾病や健康被害を防止するために必要な医薬品等については、医薬品等の有効性が推定された場合は、速やかに薬事承認を与えられるようになりました。承認審査を迅速化するため、医薬品等の検定や容器包装などについて、特例措置が講じられます。

また、電子処方箋の仕組みが創設され、処方箋をデジタルデータで運用できるようになりました。全国の医療機関や薬局で、薬剤情報や処方結果などの情報共有が可能になったのがポイントです。

参考:厚生労働省|令和4年の医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)等の一部改正について

まずは自社の製品が薬機法の対象か確認しよう

薬機法は、医薬品や医薬部外品、化粧品、医療機器などの製造や販売、広告などについて、細かくルールを定めた法律です。医薬品等を扱う事業者は、薬機法を正しく理解し、内容を遵守しなければなりません。特に、医薬品等の広告については禁止されている表現が複数存在するため、注意が必要です。

薬機法の規制対象は幅広いため、まずは自社の製品が薬機法の対象かを確認し、薬機法違反を防ぎましょう。


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