- 作成日 : 2024年11月7日
契約書の甲乙丙丁とは?読み方や使い方を解説
契約書によく出てくる「甲乙丙丁」という言葉、経理担当者であれば読み方や使い方をしっかりと理解しておきたいところです。本記事では、契約書における甲乙丙丁の表すものや具体的な契約書内での使用方法などを解説します。 契約書以外でも使用される言葉のため、しっかりと理解しておきましょう。
目次
契約書の甲乙丙丁(こうおつへいてい)とは?
甲乙丙丁(こうおつへいてい)とは、十干(じっかん)の順序のことです。しかし、契約書においては、当事者の呼び名や略称として使われます。契約書では、甲を契約相手に、乙を自社をとして表すことが多いです。
あくまで契約書の作成業務を効率化する方法の一つとして甲乙丙丁が使われているだけで、相手企業の名称をそのまま記載しても問題なく契約締結を行えます。
契約先が3社以上の場合に使用する
甲乙丙丁は、契約先の数によって使い分ける必要があります。
- 契約が相手と自社だけ:甲乙だけを使う
- 契約を3社間で行う場合:甲乙丙を使う
- 契約を4社間で行う場合:甲乙丙丁を使う
といったイメージです。契約に関わる企業が増えるごとに増やして、最大で10社間まで十干で企業名を表せます。
もともとは日にちを数えるための単位
甲乙丙丁とは、十干(じっかん)の順序を表し、日にちをカウントするための単位でした。古代中国で生まれ、10日間を一区切りにして、その10日間の1日1日に名前を割り付けたものです。
そのため、十干は甲乙丙丁のあとにも続きがあります。詳しくは次項で解説します。
甲乙丙丁の続きは戊己庚辛壬癸
十干には、 甲乙丙丁のあとにも十まで漢字が当てはめられています。十干は、次のとおりです。
- 甲(こう)
- 乙(おつ)
- 丙(へい)
- 丁(てい)
- 戊(ぼ)
- 己(き)
- 庚(こう)
- 辛(しん)
- 壬(じん)
- 癸(き)
上記のように合計10の漢字があります。一般的には、甲が第一とされ、乙、丙……辛、壬、癸の順番です。
甲乙丙丁の順序は?
甲乙丙丁には、順序は存在しません。甲乙は記号を意味するものであって、上下関係は本来ないと理解しておきましょう。
契約書においての甲乙表記の扱いに関しては、以下の記事を参考にしてください。
契約書での甲乙丙丁の使い方
法律上、当事者の略称について定めはないため、契約書で甲乙(丙丁)を使用することは必須ではありません。さらに、使い方についても細かな決まりがないのが実情です。
しかし、日本では甲乙(丙丁)を使うケースが多く見られるため、一般的ではない使い方をしてしまい、取引先の混乱を招くなどの事態は避けたいところです。
以下では、契約書における甲乙丙丁の一般的な使い方を紹介します。
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共同開発契約書
A社(以下「甲」という。)と、B社(以下「乙」という。)、C社(以下「丙」という。)及びDX社(以下「丁」という。)は、次の条項及び別表に従い、相互協力して共同開発を実施するものとし、共同開発契約(以下「本契約」という。)を締結する。
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四者協定
A社(以下「甲」という。)、B社(以下「乙」という。)、C社(以下「丙」という。)及びD社(以下「丁」という。)は、自治会がよりよい地域社会の醸成や住民の福祉向上に資するという基本的認識に立って、相互で協力や連携を図りながら以下の目的を推進するため、協定を締結する。
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契約書で甲乙丙丁を使用する場合の注意点
契約書で甲乙丙丁を使う際には、注意点があります。主な注意点は次の2つです。
- 主語が変わらないようにする
- 読み手を意識して文章を作成する
1つめの注意点が、契約書における主語が途中から別の会社に変わらないようにすることです。企業名の代わりに甲乙丙丁を使う場合、気をつけていないと主語が途中で変わってしまう恐れがあります。
3社・4社間となるとどれがどの企業だったのか、わからなくなる恐れが高まるため、文意を理解しながら記載するようにしましょう。
2つめの注意点は、読み手を意識した契約書作成を心がけるというものです。4社間など会社数が増えたり、契約内容も複雑だったりすると、契約内容を間違って理解してしまう恐れが増えます。契約後にこんなはずじゃなかったとならないように、整理されて理解しやすい文章にまとめましょう。
契約書以外で甲乙丙丁を使用するケース
契約書以外で甲乙丙丁を使用するケースについて解説します。契約書以外で甲乙丙丁が使用される主なケースは、次の5つです。
- 源泉徴収税額表の税区分
- 危険物取扱者の区分
- 工事区分
- 焼酎の区分
- 不動産登記簿の甲区欄、乙区欄
企業の法務担当者としては、それぞれの違いを正しく理解しておくことが重要です。詳しく見ていきましょう。
源泉徴収税額表の税区分
源泉徴収税額表の税区分においても、甲乙丙丁を使用します。源泉徴収税額表では給与所得について、月額表と日額表の2つがあり、従業員の給与の支払方法によってどちらを使用するか変わります。月額表と日額表で使用する税区分は以下のとおりです。
- 月額表:「甲欄」「乙欄」
- 日額表:「甲欄」「乙欄」「丙欄」
税区分の意味や月額表と日額表の違いなど、源泉徴収税額表における甲欄・乙欄・丙欄について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
危険物取扱者の区分
危険物取扱者の区分にも、甲種、乙種、丙種の3種類があります。危険物取扱者とは、消防法で定められた「危険物」を取り扱う際に必要な資格です。甲種、乙種、丙種では、取り扱いができる危険物の種類が異なります。
たとえば、甲種ではすべての危険物を取り扱え、乙種や丙種では、私見に合格した資格に該当する危険物のみ取り扱いが可能です。
危険物取扱者においては、甲乙丙の順番で資格取得の難易度や扱える危険物の種類が異なります。
工事区分
不動産業界の用語である工事区分においても、甲工事、乙工事、丙工事の3つが存在します。工事区分とは、誰が工事の責任を持つかを明確にするものです。
工事区分においても、甲乙丙丁は工事の種類を区別するために使用されます。
焼酎の区分
焼酎の区分でも甲乙が用いられます。焼酎には、甲類焼酎と乙類焼酎の2種類があり、それぞれの違いは製造法です。
- 甲類焼酎:連続式蒸溜機で製造され、アルコール度数36度未満のもの
- 乙類焼酎:単式蒸溜機で製造され、アルコール度数45度以下でウイスキー、ブランデー、ラム、ウォッカ、ジンなどに該当しないもの
焼酎においても甲と乙は、製造方法などの違いを表したものです。
不動産登記簿の甲区欄、乙区欄
不動産登記の権利部でも、甲乙が使用されます。
- 甲区:所有者の所有権に関する事項。所有者の住所・氏名・登記の目的・取得年月日と取得原因などを記録
- 乙区:所有権以外の権利に関する事項。抵当権や地上権など
契約書における甲乙丙丁の意味を正しく理解しよう
契約書における甲乙丙丁(こうおつへいてい)とは、企業名の略称を表すものです。契約が相手と自社だけであれば甲乙だけを使い、契約に関わる会社数が増えるにつれて、甲乙丙丁……と増やして使用します。
甲乙丙丁には順序がなく、あくまで契約書の作成業務を効率化する方法の一つとして使われているだけであることは理解しておきましょう。また、契約書で甲乙丙丁を使用する場合には、途中から主語が変わらないようにすることや読み手を意識して文章を作成することが重要です。
甲乙丙丁の意味を理解して、ミスのない契約書を作成できるようになりましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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