- 更新日 : 2024年8月30日
類似商号に対する警告書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
類似商号に対する警告書とは、自社の商号と類似した商号を無断で使用している者に対して、その使用の停止などを求める警告書です。侵害行為の内容や侵害に当たる理由を明示したうえで、速やかな使用停止を求める旨を記載しましょう。本記事では、類似商号に対する警告書の書き方やレビューのポイントを、文言の具体例を示しながら解説します。
目次
類似商号に対する警告書とは
類似商号に対する警告書とは、自社と類似した商号(会社名・屋号など)の無断使用の停止を求める警告書です。
何人も、不正の目的をもって、他の商人・会社と誤認されるおそれのある名称・商号を使用してはなりません(商法12条1項、会社法8条1項)。
上記の規定に違反する名称・商号の使用によって営業上の利益を侵害され、または侵害されるおそれがある商人・会社は、侵害行為の停止・予防を請求できます(商法12条2項、会社法8条2項)。類似商号に対する警告書は同規定に基づき、自社のものと紛らわしい商号を使用する相手方に対して、その使用の停止・予防を請求する書面です。
商号に関する詳細については、以下の記事を併せてご参照ください。
類似商号に対する警告書を作成するケース
類似商号に対する警告書を作成・送付するのは、自社と類似した商号(会社名・屋号など)が、不正な目的により無断で使用されていると思われる例を発見した場合です。具体的には、以下のようなケースにおいて類似商号に対する警告書を作成・送付します。
- 自社の商号は「株式会社○○」であるところ、「○○株式会社」と称する別の会社が、自社の有名商品と酷似した商品を販売しているのを発見した。
- 自社は「××」という屋号の店舗を出店しているところ、他社が「新××」という屋号の店舗を新規に出店しているのを発見した。「新××」のメニューは、自社の「××」で提供しているものと酷似していた。
類似商号に対する警告書のひな形
類似商号に対する警告書のテンプレートは、以下のページからダウンロードできます。実際に類似商号に対する警告書を作成する際の参考としてください。
※ひな形の文例と本記事で紹介する文例は、異なる場合があります。
類似商号に対する警告書に記載すべき内容
類似商号に対する警告書には、以下の事項などを記載しましょう。
①商号の表示
(例)当社は、○県〇市○町にて、平成〇年〇月〇日登記済みの「○○」という商号にて○○業を営んでおります。
②侵害行為の内容
(例)ところが、貴社は令和〇年〇月頃から、当社と同じ〇県〇市において、「○○」という商号にてやはり○○業を営まれています。貴社が当該商号の略称として用いている「〇」は、当社が創業当時から使用している略称と同じであるため、貴社の行為は会社法第8条違反に該当します。
③求める対応(差止めなど)の内容
(例)したがって、当社は貴社に対し、同法同条第2項の規定に基づき、直ちに上記商号の使用を中止するよう請求いたします。
④差止めなどが行われない場合の対応
(例)なお、本書面到達後○日以内に、貴社が本請求に対し何らの対応も行わない場合には、当社は貴社に対し、商号使用の差止め及び損害賠償を請求する訴訟を提起する所存であることをあらかじめ警告いたします。
類似商号に対する警告書を作成・送付する際の注意点
類似商号に対する警告書を作成・送付する際には、相手方の商号使用が自社に対する侵害に当たる旨を明示すべきです。特に、提供する商品・サービスの内容や、提供地域などの類似性を指摘して、相手方に不正な目的がある旨を示すことが大切になります。
また、類似商号に対する警告書の送付に当たっては、相手方へ確実に届いたことを確認できる方法を用いましょう。
例えば、追跡サービスを利用できる各種書留(一般書留・簡易書留など)、特定記録郵便、レターパックなどで送付する方法が考えられます。
参考:郵便追跡サービス|郵便局
また、少し費用が高くなるものの、配達証明付き内容証明郵便による送付も有力な方法です。相手方に警告書が配達されると、郵便局から配達証明が返送されます。配達証明は、相手方に類似商号に対する警告書が届いたことの証拠として利用可能です。
なお、電子メールや問い合わせフォームなどを利用して警告を伝えることも考えられます。ただし、相手方が確認したかどうかをチェックできないため、基本的には郵便で警告書を送付した方がよいでしょう。
類似商号に対する警告書を受け取った場合の対処法
類似商号に対する警告書を受け取った場合、相手方の警告が正当なものであるかどうかを直ちに検討しましょう。
具体的には、以下の3点について検討する必要があります。
- 問題となっている商号を使用し始めたのは、自社と相手方のどちらが先か
- 自社の商号と相手方の商号が、誤認混同されるおそれがあるほどに類似しているかどうか
- 類似商号を使用することについて、自社に不正な目的があったか否か
問題となっている商号を使用し始めたのは自社の方が後であり、かつ誤認混同のおそれと不正な目的がいずれも認められる場合は、自社の商号使用が商法または会社法に違反している可能性が高いです。この場合には、速やかに商号使用の停止などの対応を行いましょう。
一方、相手方の警告に正当な理由がない場合は、法的な根拠に基づいて反論しなければなりません。どのように反論すべきかについては、顧問弁護士などにアドバイスを求めましょう。
類似商号に対する警告書を速やかに送付して、被害を最小限に抑えましょう
他社による自社と類似した商号の無断使用を放置していると、売上の減少やブランドイメージの低下など、看過できない損害が発生するおそれがあります。
もし不正な目的による類似商号の無断使用を発見したら、速やかに類似商号に対する警告書を送付して、自社の損害を最小限に食い止めましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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