- 作成日 : 2024年4月5日
宅地建物取引業法とは?概要や事業者が注意したいポイントを解説
宅地建物取引業法とは、不動産取引を規制して不正行為を防止し、購入者の利益の保護を目的とした法律です。免許の取得の義務化や不動産広告の規制、報酬に関する規制などが記載されています。
本記事では、企業の法務担当者の方に向けて、宅地建物取引業法の概要や考え方、規制内容、事業者が注意するべきポイントをわかりやすく解説します。
目次
宅地建物取引業法とは
宅地建物取引業法は、宅地や建物の取引に関する法律であり、不動産業者による不正行為を防止し、購入者の利益を守ることを目的としています。広告や重要事項の隠蔽、契約内容の不明瞭化、価格操作や詐欺的な取引などを規制する内容です。
宅地建物取引業法は、2022年5月に改正されました。背景には、デジタル化の進歩やニーズの多様化への対応が挙げられます。また、取引の効率化と透明性の向上を目的としています。
具体的な改正内容として、書面の押印が廃止され、電磁的方法を用いた書面交付が認められました。これにより、従来の紙媒体に加え、USBメモリや電子メール、Webサイトからのダウンロードなど、さまざまな方法で重要な書類の授受ができるようになっています。
宅地建物取引業法の構成
宅地建物取引業法は、以下のような内容が規定されています。
- 免許
- 不動産広告
- 報酬額
まず、宅地建物取引業(宅建業)を営むためには、事業エリアに応じて都道府県知事、または国土交通大臣から免許を受ける必要があります。購入者が不動産取引で損害を被った場合に、供託所から保証金を受け取れるようにするためです。
不動産広告においては、建物の所在地や規模、性能など、事実と著しく異なる表示をしたり、過度に有利であることをアピールしたりする表示が禁止されています。誇大広告を規制するための規定です。
また、宅建業者が得られる報酬額についても上限が設けられており、取引価格によって以下のように報酬率が規制されています。
売買代金 | 報酬額の上限 |
---|---|
売買代金の200万円以下の金額 | 売買代金×5.5% |
売買代金が200万円超400万円以下の金額 | 売買代金×4.4% |
売買代金が400万円超の金額 | 売買代金×3.3% |
参考:国土交通省 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額
このように、宅地建物取引業法は、不動産業の公正な事業運営を認め、消費者保護を守るための重要な役割を担っています。
宅地建物取引業の対象となる事業者
宅地建物取引業法第2条第2項において、適用対象となる事業者が定義されています。具体的には、宅地または建物の売買や交換、代理業務、媒介業務を「業として」実施する者が規制の対象です。
例えば、土地や建物の売買契約の媒介を業とする不動産仲介業者や、賃貸物件の紹介業務を行う委託業者が該当します。
また、契約更新の事務や家賃の徴収業務のみを行う事業者については、宅建業法適用対象外とされています。
宅地建物取引業法で定められている規制
宅地建物取引業法には、以下のような規制が定められています。
- 免許制度
- 宅地建物取引士の設置
- 業務に対する規制
まず、免許制度が定められており、事業者は所在地域に応じて国土交通大臣、または都道府県知事から免許を取得することが必要です。 具体的には、複数都道府県にまたがる事業活動では国交省からの免許取得が求められます。一つの都道府県内のみの事業活動であれば、当該都道府県知事からの免許取得が義務付けられています。
また、宅地建物取引士の設置も必須です。 同取引士は、取引の相手方である買主や借主に対して、対象物件の権利関係や法的制限、取引条件などの重要事項を適切に説明しなければなりません。
事業者の業務行為自体にも一定の規制があります。宅地建物取引事業者は、仲介か代理のかといった取引形態の明示が求められます。
事業者がおさえておくべきポイント
事業者は、宅地建物取引業で規制されている内容に抵触しないように、注意が必要です。
宅地建物取引業法第48条では、代表者や役員であっても、宅建業に従事する者は「従業者証明書」を携帯する必要があると規定されています。
また、宅地建物取引業法第34条の2により、身内同士の不動産売買であっても媒介契約書の交付が必要です。
さらに、役員の変更があった場合には、変更があった日から30日以内の変更届の提出が求められます。
そのほか、消費税率が変更された場合、報酬額表の変更が義務付けられています。
このように、宅地建物取引業法においてはさまざまな規制があるため、事業者は違反しないように深く理解しておきましょう。
宅地建物取引業法を理解して、ミスのない取引につなげよう
宅地建物取引業法とは、不動産業者が不正な取引をしないようにするため、不動産購入者の利益を保護することを目的とした法律です。
免許の申請や広告の規制など、不動産の取引業に関する内容が定められています。
事業者が宅建業を行う際には、従業者証明書の携帯や、役員変更の際には変更届出書の提出などを行ってください。
宅地建物取引業法を理解して、ミスのないスムーズな取引を目指しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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