- 作成日 : 2024年11月26日
契約書作成を行政書士に依頼するメリットは?費用や業務範囲、選び方を解説
契約書が必要となった場合、コストを抑えながら契約書作成を依頼できる士業が行政書士です。一方、弁護士との業務範囲の違いにより、行政書士への依頼の際には注意すべき点もあります。
本記事では、契約書作成を行政書士に依頼する際の業務範囲や費用の相場、依頼時の注意点について詳しく解説します。
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目次
契約書作成を行政書士に依頼できる?
契約書の作成が必要となった場合、誰に頼むべきか悩むこともあるでしょう。その際、契約書作成業務をサービスとして代行できる行政書士ならば、気軽に相談可能です。
行政書士は法律に関する幅広い知識を有する専門家として、契約書の作成支援や内容確認を行い、法的リスクを軽減する役割を担います。手軽かつ低コストで専門的なサポートを提供する行政書士は、中小企業や個人事業主にとって心強い味方です。
契約書作成を行政書士に依頼するメリット
行政書士は法務の専門家として、契約書の作成や内容確認を行う業務を取り扱っています。
とくに、中小企業や個人事業主が利用する際には、法的な安心を得られるうえ、弁護士に依頼するよりも比較的費用を抑えられるのが特徴です。
以下で、契約書作成を行政書士へ依頼する3つのメリットを紹介します。
法令を遵守した契約書の作成ができる
行政書士は、法令に基づいた契約書の作成に精通しているため、依頼者が安心して利用できる契約書を提供します。その根拠となるのは、行政書士法において「権利義務に関する書類」の作成を独占業務とする専門家として認められているためです(行政書士法第1条の2、第19条)。
たとえば、行政書士は顧客の業務内容や取引内容を詳細にヒアリングし、それに適した契約条件を提案します。契約内容に応じた条項を明確に盛り込み、取引の範囲や内容に応じた法的表現を整えられます。そのため、法令に遵守した契約書の作成は行政書士にお任せするのが安心でしょう。
参考:e-Gov 行政書士法 第一条の二
参考:e-Gov 行政書士法 第十九条
契約によるトラブルを防止できる
行政書士に契約書作成を依頼すれば、相手先との取引によるトラブルを未然に防止できます。
なぜなら行政書士は、日常業務で使う一般的な契約書や簡易な取引契約書に精通しており、契約書のドラフト作成、内容のチェック、法的な観点からのアドバイスまで、専門家として提供できる資格を有しているためです。
たとえば、行政書士は過去の事例や法的な観点から、当事者双方の責任や義務範囲を明確に契約条項に盛り込みます。くわえて、契約書に記載する内容を明確化し、契約当事者間で認識相違が生じないようチェックを徹底します。
このように、行政書士が専門家の観点により事前に予防措置を講じることで、後のトラブル発生を未然に防ぐ役割を果たします。
弁護士に依頼するより費用を抑えられる
行政書士ならば、弁護士へ作成代行を依頼するよりも比較的安価に契約書の作成が可能です。行政書士への依頼は、契約書の基本的な作成やチェックを行う場合に適しており、これによって費用を抑えつつ、法律面のサポートを受けることが可能です。
一方、訴訟や交渉などの法的代理が必要なケースでは行政書士は対応できず、弁護士へ依頼する必要があります。それ以外の契約書作成には行政書士が十分なサポートを提供できるため、コストパフォーマンスに優れています。
行政書士による契約書作成の業務範囲
行政書士は法的に認められた専門知識をもち、契約書の作成をはじめとするさまざまな法務サポートを提供しています。しかし、弁護士の業務と異なり、対応できる範囲に制約があるため、どのような場合に行政書士が適しているのかを知ることが重要です。
ここでは、行政書士による契約書作成の業務範囲について解説します。
行政書士が対応できる契約書の種類
行政書士が作成可能な契約書は、一般的な取引契約や業務委託契約、売買契約、覚書などです。これらは主に、契約内容の整理や相手方への説明のための書類としての役割を果たすもので、法的なトラブルが発生しにくいといえます。
一方、法的に複雑な事案や紛争が想定される契約書、訴訟に関する書類については行政書士の業務外となり、弁護士への依頼が必要となるため注意が必要です。
契約内容の作成と文言の整備
行政書士の業務範囲には、契約内容を依頼者の意向に合わせて整理し、明確な文言で契約書を作成することが含まれます。契約書に含めるべき基本的な条項の作成や、必要に応じた細かな内容の追加も、法的知識を有する行政書士なら可能です。
たとえば、業務委託契約書や売買契約書などのビジネス上の取引において、不明瞭なポイントを排除して合意することで、取引の安全性を高めます。専門家目線による契約書作成は、後のトラブルを未然に防ぐのに効果的です。
一方、契約内容が複雑で法的リスクが高い場合、もしくは高度な法的解釈が必要な場合、行政書士では非弁行為となるおそれがあります。このような場合、必要に応じて弁護士へ相談しましょう。
リーガルチェックとアドバイス
行政書士は、専門家として契約書が法的に適切であるかを確認し、必要な場合には依頼者にアドバイスを提供することも可能です。たとえば、契約書の内容に関するリスクの指摘や、条項に不足がないかの確認を行うことで、依頼者が安心して契約を締結できるようサポートします。
ただし、相手方との交渉支援や、法的紛争のリスクが高い契約書に関しては、行政書士の権限外となる場合があります。行政書士と弁護士の役割を明確にし、ケースバイケースに応じて適切な専門家に依頼することが重要です。
契約書作成を行政書士に依頼する際の費用
契約書作成を行政書士に依頼する際の費用は、契約書の種類や依頼するサービスの内容に応じて異なります。
ここでは、行政書士に契約書作成を依頼する際の費用について紹介しましょう。
契約書作成の費用
契約書作成を行政書士に依頼する際の費用は、契約書の内容やボリュームに応じて異なります。一般的な個人間や企業間の契約書であれば、3万円から10万円程度が目安です。内容が複雑であるほど費用は高くなりますが、標準的な取引契約書や雇用契約書などは比較的安価で依頼できる傾向にあります。
料金体系の違いと注意点
行政書士の契約書作成費用には、依頼内容に応じて「固定料金制」と「時間制」の2種類の料金体系があるのが一般的です。とくに内容が複雑な場合や相談時間が多くかかる場合、時間制料金が必要となるケースもあるため注意が必要です。時間制料金の場合、1時間当たり数千円程度が目安とされており、事前に相談時間や費用を確認することが重要といえます。
契約書の作成代行を行政書士に依頼する流れ
本章では、実際に行政書士へ契約書作成を依頼する際の一般的な流れについて解説します。
依頼前の事前準備も必要となるため、ぜひ参考にしてください。
STEP1:依頼内容のヒアリング
最初に、依頼者が作成したい契約書の種類や目的、業務の内容について、行政書士が詳細にヒアリングを行います。ヒアリングを通じて行政書士は取引の背景や契約条件を正確に把握し、法的観点からどのような項目が必要かを判断します。
たとえば、業務委託契約や売買契約、秘密保持契約など、契約の種類に応じて盛り込むべき内容が異なるため、初回ヒアリングは重要です。依頼する側は、依頼内容を事前に整理して漏れなく行政書士に伝えることが重要です。
STEP2:契約書のドラフト作成
次のステップは、依頼者からのヒアリングをもとに、行政書士による契約書ドラフトの作成です。この段階では、取引の内容や依頼者のニーズに沿った条項を盛り込み、リスクを最小限に抑えられるよう工夫されます。
また、法律用語や表現が適切であるかも確認されるため、依頼者は専門知識に基づいた正確な契約書を手にできるでしょう。ドラフト作成後、依頼者に一度内容を確認してもらい、必要な修正点や追加要望があれば対応していきます。
STEP3:契約書内容の調整・修正
ドラフトの確認後、依頼者からのフィードバックをもとに、行政書士が必要な修正を行います。ここでは、依頼者の意図や条件に沿って文言の微調整を行い、合意内容が明確に表現されているかどうかを確認します。
また、相手方との交渉が発生する場合には、行政書士が法的観点からアドバイスを行い、依頼者が納得いく形で契約条件を整えるサポートが必要です。
STEP4:最終確認と契約書の完成
すべての修正が完了したら、契約書の内容を最終確認します。この段階では、依頼者および取引相手が合意した内容が正確に反映されているか、法的に問題のない形になっているかの確認が必要です。
依頼者の要望に応じて、署名欄や日付など、契約成立に必要な形式的な要素も含めた最終調整が行われます。最終確認が終われば、契約書の完成です。
STEP5:アフターフォロー
完成後の契約書についても、必要があれば行政書士がアフターフォローを提供します。たとえば、契約期間の延長や更新が必要になった場合、法改正に伴う契約内容の見直しが必要になった場合などには、再度の調整を依頼します。
こうしたアフターフォローを活用しながら契約書を常に最新の状態で維持することで、依頼者は安心して取引を継続できるでしょう。
契約書の作成代行を行政書士に依頼する際の選び方
契約書の作成代行を行政書士に依頼する際には、しっかりと情報収集を行い、信頼できる行政書士に依頼することが重要です。ここでは、信頼できる行政書士を選ぶための5つのポイントを解説します。
POINT1:専門知識と実績の有無
行政書士によって得意分野が異なるため、契約書の作成実績や、依頼したい契約書の種類に応じた専門知識を有しているか事前に確認しましょう。
また、過去の実績を具体的に教えてもらえるかも判断材料です。信頼性の高い行政書士は、必要に応じて自分の得意分野や過去の取引事例を明示し、依頼者が安心できる情報を提供してくれます。
POINT2:コミュニケーションと対応の丁寧さ
依頼者の要望を的確にくみ取るためには、行政書士との円滑なコミュニケーションが欠かせません。行政書士は法的な知識だけでなく、依頼者の立場で考え、わかりやすく説明するスキルも求められます。
実際に問い合わせをした際の対応の丁寧さや説明のわかりやすさを確認することで、長期的に信頼できるかどうかが判断しやすくなります。また、契約内容に関してわからない点や疑問が出てきた場合に、相談しやすい雰囲気であるかも重要なポイントです。
POINT3:サービスの範囲とサポート体制
行政書士に依頼する際は、どのようなサポートが含まれるのかを事前に確認しましょう。契約書の作成だけでなく、契約締結のアドバイス、相手方との交渉のサポート、アフターフォローなど、提供されるサービスの範囲を確認することで、費用対効果を見極められます。
契約書の作成後も相談できる体制が整っている行政書士であれば、より安心して依頼できるでしょう。
POINT4:費用の明確さとコストパフォーマンス
契約書作成の依頼前に見積りを提示してもらい、費用が明確であるかどうかを確認しましょう。費用が安ければ良いというわけではなく、サービス内容と費用のバランスが重要です。
また、追加料金が発生するケースや、修正対応にかかる費用についても事前に確認しておくと、依頼後に不明確なコストが生じることを防げます。複数の行政書士から見積りを取って比較することも、適切な費用の判断に役立ちます。
POINT5:信頼性や評判の確認
行政書士の信頼性を確かめるためには、口コミや評判も参考になります。インターネット上の口コミや実際にその行政書士に依頼した経験がある知人の意見など、他の利用者の声を聞くことで、信頼性やサービス内容に対する評価がわかります。
口コミには、良い点だけでなく改善点も記載されているため、総合的に評価しやすいでしょう。また、行政書士が所属する事務所の実績や認定資格の有無も、信頼性を判断する際の基準といえます。
契約書の作成代行は行政書士と弁護士、どちらが良いか
契約書の作成や確認を行う際、依頼先として行政書士と弁護士のどちらが適しているか悩むケースもあるでしょう。ここでは、行政書士と弁護士の違いを踏まえたうえで、契約書作成における選び方について解説します。
契約内容の複雑さやトラブル発生の可能性で選ぶ
行政書士は、契約書の作成業務を含むさまざまな許認可手続きを行うため、とくに手続き面での書類作成に精通しています。契約内容が定型的である場合や、トラブルの可能性が低い契約の場合は、行政書士に依頼すればコストを抑えながら適切な契約書を作成可能です。
一方、弁護士は、契約書の作成において、訴訟や争いの可能性を見据えた内容を盛り込めます。とくに紛争が起こりやすい契約や多額の金銭が絡む契約の場合には、将来のトラブルを見越したリスク管理が重要となるため、弁護士のサポートが有効です。
費用とサービス内容を比較する
一般的に、行政書士に依頼する場合は弁護士に比べて費用が抑えられる傾向にあります。契約書の作成内容が定型的で複雑でない場合や、契約内容が法律に基づいたものでとくに争点がない場合には、行政書士への依頼がコスト面で有利です。
弁護士に依頼する場合はコストが高くなりがちな一方、トラブルが発生した場合の代理人としても対応可能なため、法務リスク全般をカバーするサポートを受けられる点がメリットです。
費用のみ安ければ良いのではなく、提供されるサポートの範囲やアフターフォローの内容なども検討材料に含めましょう。
契約書のひな形・テンプレート
契約書作成を行政書士に依頼するには、まずは目的に合った契約書テンプレートが存在するかを探してみるのがおすすめです。
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シンプルな契約書作成なら行政書士の活用がおすすめ
契約内容が複雑でない場合や、コストを抑えたい場面では、行政書士を活用することが大変有効です。
とくに、中小企業や個人事業主などにとって、行政書士は身近な存在として法務リスクを気軽に相談できる相手先となるでしょう。
信頼できる行政書士に契約書作成を依頼することは、安心して業務に集中できる環境づくりを実現します。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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