- 更新日 : 2025年1月21日
景品表示法とは?禁止事項や制限、違反した場合について解説
ECサイトを開設・運営する人が増えています。中には会社員をしながら副業としてECサイトの運営を始めるか検討している方もいるでしょう。
ネットショップに限らず、お店で商品の販売の際に粗品や賞品などを付ける場合、注意すべき法律に「景品表示法」があります。この記事では、景品表示法の概要、制限や禁止事項、注意すべきポイントのほか、違反した場合の罰則などについて解説していきます。
目次
景品表示法とは
景品表示法は、正式には「不当景品類及び不当表示防止法」といいます(昭和37年法律第134号)。景品表示法は、一般消費者の利益を保護するとともに、過大景品による不健全な競争を防止するために景品類の最高額、総額等を規制する法律です。
オンラインショップや実店舗など何かしらのお店を運営する場合、粗品やおまけなどの景品をつけることで売上につなげたいというのは、ごく自然な発想です。しかし、過大な景品に惑わされた消費者が質のよくない商品や割高な商品やサービスを購入してしまい、不利益を被る可能性があります。
一方、事業者も過大景品による競争をエスカレートさせて商品やサービスの質の向上に力を入れなくなり、本末転倒になってしまうケースがあります。
景品表示法は、こうした悪循環を防ぐ目的で制定されています。景品表示法違反については、消費者庁が所管しています。
不当表示の禁止
景品表示法では、消費者に実際よりも著しく優良又は有利と誤認させる不当な表示を禁止しています。「表示」とは、顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品・サービスの品質、規格、その他の内容や価格等の取引条件について、消費者に知らせる広告や表示全般を意味しています。
具体的には、チラシ・パンフレット・カタログ、ダイレクトメール・ファクシミリ広告、新聞・雑誌・出版部、テレビ・ラジオのCM、ネット上の広告、メールなど広範に及びます。
景品表示法で禁止されている不当表示には、「優良誤認表示」「有利誤認表示」「その他誤認されるおそれのある表示」の3つの種類があります。
優良誤認表示の禁止
優良誤認表示(法5条1項1号)とは、商品・サービスの品質、規格その他の内容についての不当表示であり、以下のものが挙げられます。
【例】
- カシミヤ混用率が80%程度のセーターであるにもかかわらず、「カシミヤ100%」と表示したような場合
- 「この技術を用いた商品は日本で唯一、当社のものだけ」と表示しているものの、実際は他の競争業者でも同じ技術を用いた商品を販売している場合
なお、故意に偽って表示する場合だけでなく、誤って表示してしまった場合であっても、優良誤認表示に該当する場合は、景品表示法の規制対象となります。
また、優良誤認表示を効果的に規制するため、不実証広告規制が設けられています。消費者庁長官は、優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合には、期間を定めて事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができます。
この場合、事業者が求められた資料を期間内に提出ない場合や、提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合には、その表示は、措置命令との関係では不当表示とみなされ、課徴金納付命令との関係では不当表示と推定されます(法7条第2項、法8条第3項)。
有利誤認表示の禁止
有利誤認表示(法5条1項2号)とは、商品・サービスの価格その他取引条件についての不当表示のことであり、以下のものが挙げられます。
【例】
- 当選した先着100人だけが割安料金で契約できると表示していたところ、実際には、応募者全員を当選とし、全員に同じ料金で契約させていたような場合
- 「他社商品の半額です」と表示していながら、実際には、他社と同程度の料金にすぎなかったような場合
有利誤認表示でも、故意に偽って表示する場合だけでなく、誤って表示してしまった場合であっても、上記に該当する場合は、規制対象となります。
その他の禁止されている表示
その他の禁止されている表示(法5条1項3号)とは、商品・サービスの取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがあると認められ、総理大臣が指定する表示であり、以下の6つが挙げられます。
- 無果汁の清涼飲料水等についての表示
- 商品の原産国に関する不当な表示
- 消費者信用の融資費用に関する不当な表示
- 不動産のおとり広告に関する表示
- おとり広告に関する表示
- 有料老人ホームに関する不当な表示
景品類の制限や禁止
景品表示法における「景品類」とは、次の3つのいずれにも該当するものを指しています。
- 顧客を誘引するための手段であること
- 事業者が自己の供給する商品・サービスの取引に付随して提供すること
- 物品、金銭その他の経済上の利益であること
これらを踏まえて、どのような景品規制があるのかみていきましょう。
景品規制の種類
景品表示法に基づく景品規制には、次の3つがあり、景品類の最高額、総額などの規制によって一般消費者の利益を保護するとともに、過大景品による不健全な競争を防止しています。
① 一般懸賞に関するもの
商品・サービスの利用者に対し、くじなどの偶然性、特定行為の優劣などによって景品類を提供することを意味します。
具体的には、一部の商品だけに景品類を付けて、外観上それが判別できないケースやパズル・クイズなどの解答の正誤によって提供するケースなどが該当します。
懸賞による取引価額は、5,000円未満の場合で最高額は取引価額の20倍、5,000円以上の場合で10万円が最高額になっており、いずれの場合も総額は懸賞に係る売上予定総額の2%とされています。
② 共同懸賞に関するもの
商品・サービスの利用者に対し、一定の地域や業界の事業者が共同して景品類を提供することです。
具体的には、お中元や歳末セールの時期に商店街が実施するケースなどが該当します。
共同懸賞における景品類の限度額は、最高額
取引価額にかかわらず30万円、総額は懸賞に係る売上予定総額の3%とされています。
③ 総付景品に関するもの
懸賞ではなく、商品・サービスを利用したり、来店したりした人にもれなく景品類を提供することを意味します。
具体的には、商品・サービスの購入者全員に提供するケース、来店者全員に提供するケース、申込みまたは入店の先着順に提供するケースなどが該当します。
総付景品の限度額は、取引価額が1,000円未満の場合には最高額が200円、1,000円以上の場合は取引価額の10分の2とされています。
事業者が気をつけるべきポイント
不当表示等を未然に防止するため、事業者は、その規模や業態、取り扱う商品またはサービスの内容等に応じ、必要かつ適切な範囲で、「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の指針」(ガイドライン)に挙げられている具体的な措置を講ずる必要があります。
具体的には、次の7つの措置を講じなければなりません。
- 景品表示法の考え方の周知・啓発景品表示法に関する勉強会を定期的に開催することなどが該当します。
- 法令遵守の方針等の明確化法令遵守の方針を社内規程、行動規範として定めることなどが該当します。
- 表示等に関する情報の確認生産・製造・加工が仕様書・企画書と整合しているかどうか確認することなどが該当します。
- 表示等に関する情報の共有社内イントラネットや共有電子ファイルを利用して、関係従業員が表示等の根拠となる情報を閲覧できるようにしておくことなどが該当します。
- 表示等を管理するための担当者等(表示等管理担当者)を定めること会社のトップが表示等を管理している場合にトップを「表示等管理担当者」と定め、自ら表示等の内容を確認するケースなどが該当します。
- 表示等の根拠となる情報を事後的に確認するために必要な措置を採ること表示等の根拠となる情報を記録し、保存しておくことなどが該当します。
- 不当な表示等が明らかになった場合における迅速かつ適切な対応不当表示してしまったときに関係していた従業員に対して必要な教育・研修等を改めて行うことなどが該当します。
景品表示法に違反した場合のリスク
景品表示法に違反した場合、消費者庁や都道府県による措置命令等を受けることがあります。不当な表示や、過大な景品類の提供が行われている疑いがある場合、まず、消費者庁は、関連資料の収集、事業者への事情聴取などの調査を実施します。
調査の結果、違反行為が認められた場合は、消費者庁は、不当表示により一般消費者に与えた誤認の排除、再発防止策の実施、今後同様の違反行為をしないことなどを命ずる「措置命令」を行います。
また、事業者が不当表示をした場合、消費者庁から課徴金の納付を命じられる可能性があります。
景品表示法について知っておこう!
景品表示法の概要、制限や禁止事項、注意すべきポイントのほか、違反した場合の罰則などについて解説してきました。景品表示法を遵守することは、企業やショップのイメージを大切にする上でも非常に重要です。
ショップを運営し、景品等の提供を企画している場合は、景品表示法とともにガイドラインを確認しておきましょう。
よくある質問
景品表示法とはどのような法律ですか?
一般消費者の利益を保護するとともに、過大景品による不健全な競争を防止するために景品類の最高額、総額等を規制する法律です。詳しくはこちらをご覧ください。
景品表示法では、どのようなことが禁止・制限されていますか?
「不当表示の禁止」「景品類の制限及び禁止」などがあります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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