- 作成日 : 2024年9月3日
借家権譲渡契約書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
借家権譲渡契約書は、賃貸物件を借りている人が賃借権を第三者に譲渡する際に締結する契約書です。
この記事では借家権譲渡契約書の意味や書き方について、ひな形も交えて見ていきましょう。また、作成が必要となるケースや作成する際の注意点についてもご説明します。
目次
借家権譲渡契約とは
借家権譲渡契約とは、賃貸住宅の賃借人(賃貸物件の入居者)が第三者にその住宅の借家権を譲渡する際に作成する契約書です。借家権とは一戸建てやマンション、アパート、あるいは貸店舗やオフィスなどの賃貸物件の入居者に発生する権利です。賃借権を保有している賃借人は、賃貸人(物件を貸す人。大家さん)に家賃を支払う代わりに物件から不当に追い出されることなく物件を使用し続けることができます。
借家権譲渡契約書の作成が必要なケース
借家権譲渡契約書は前述の通り、賃借人が第三者に借家権を譲渡する際に締結します。例えば賃貸アパートや賃貸マンションに知り合いを入居させる場合、貸店舗やオフィスを他の経営者に引き継ぐ場合など、第三者に賃貸物件を使用させる際に、その賃借人と物件を使用する人が締結します。
なお、借家権を賃貸人に無断で第三者に譲渡したり又貸ししたりする行為は、民法上基本的には認められていません。
(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
第六百十二条 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。
出典:民法|E-GOV法令検索
賃借権を第三者に譲渡する場合は、必ず大家さんに事情を説明して事前の承諾を得ましょう。勝手に賃借権を譲渡すると賃貸契約を解除されるおそれがあるのに加え、トラブルが発生するリスクが大きくなります。
借家権譲渡契約書のひな形
借家権譲渡契約書の作成には法律の知識が必要となり、また文中では独特の表現や言い回しをするため、一般の方が一から作成するのは容易なことではありません。そこで、この記事ではひな形をご用意しました。ぜひこちらを参考に借家権譲渡契約書を作成してみましょう。
借家権譲渡契約書に記載すべき内容
ここからは借家権譲渡契約書に盛り込むべき内容について、項目ごとにご紹介します。ひな形をもとに説明していますので、ダウンロードして参照しながら記事を読み進めていただくと、より一層理解が深まるはずです。
契約者の氏名
まずは借家権を譲渡する人と譲受する人の氏名もしくは事業者名と、借家権譲渡契約を締結する日付を記載します。契約者の氏名は「甲」「乙」、借家権譲渡契約は「本契約」と言い換えます。
借家権の譲渡
賃借人が譲受側に対象となる借家権を譲渡する旨を記載します。「別紙建物賃貸借契約書(略)に係る借家権」という記載をし、賃貸借契約書を添付することで、どの建物の借家権を譲渡するかを明確にできます。
譲渡代金
借家権を譲渡するにあたって発生する対価の金額と支払い条件について記載します。「○○円」と具体的に明記しましょう。また、手付金の有無や残金を支払うタイミングについても記載します。
建物の占有の移転
借家権を譲渡するということは、物件に入居する人が変わることになります。いつまでに譲受側が建物を使えるようにするのか、あるいは賃貸人から承諾を得られなかった場合はどのように対応するのかについて記載します。
一般的に建物の占有が移転できなかった場合は契約を解除し、手付金の返還や損害金の支払いをしなければなりません。
借家権の譲受
譲受者が物件の建物賃貸借契約に基づいて賃貸人から借家権を譲受する旨を記載します。
公共料金の負担
賃借権を譲渡する場合はその物件の賃料や電気、ガス、水道料金などの公共料金についても支払者を変更しなければなりません。どのタイミングで変更するかについても、具体的な日付を明記して定めておきましょう。
契約解除
借家権譲渡契約を解除できる条件を記載します。一般的には相手方が契約違反行為をしたときなどを条件として定めます。
損害賠償
一方の当事者が契約違反行為をして、もう一方の当事者に損害を与えた場合の対応方法について記載します。例えば譲渡者が契約違反を犯した際には手付金の返却とそれと同額の損害賠償をする、譲受側が違反行為をした場合は手付金を没収するなどの措置を定めます。
合意管轄
契約に関して紛争が発生した場合に訴えを申し出る裁判所を記載します。
協議
契約に関する疑義が発生した場合、あるいは借家権譲渡契約書に記載されている取り決めでは解決が難しい場合に、お互いが誠実に話し合って解決を目指す旨を記載します。
署名押印欄
契約書の末尾に双方が契約書を保管する旨を記載し、契約の締結年月日、双方の署名・押印欄を設けます。ここに署名押印した時点で契約に同意したとみなされます。
借家権譲渡契約書を作成する際の注意点
最後に借家権譲渡契約書を作成する際、あるいは契約を締結する際の注意点について見ていきましょう。
事前に大家さんから承諾を得る
前述の通り、物件の無断転借や借家権の譲渡は民法612条にて規制されています。また、無断で第三者を入居させるとなると、大家さんの気分を害したり不安にさせたりして、トラブルにもつながりかねません。
借家権譲渡契約を締結する前には必ず大家さんと話し合って承諾を得ましょう。また、承諾に際しては口頭ではなく、必ず承諾書を作成して大家さんに署名をしてもらいましょう。
賃貸借契約の内容を譲受者に共有し、譲受側はしっかりと契約書に目を通す
借家権譲渡契約を締結する際には、譲受者に必ず物件の建物賃貸借契約書を共有しましょう。譲受者は入居後に知らず知らずのうちに賃貸借契約違反行為を行った結果、大家さんとトラブルに発展するおそれがあるため、しっかりと賃貸借契約の内容を把握しておくことが大切です。
トラブルを想定したうえで契約書を作成する
借家権の譲渡は契約者双方に加えて、大家さんや場合によっては他の入居者とのトラブルが発生するリスクがあります。例えば大家さんから承諾を得られなくなったなどトラブルが発生した際のことも見越して契約書を作成しましょう。
借家権を譲渡する場合はしっかりと当事者同士で話し合って借家権譲渡契約を締結しよう
借家権の譲渡はそもそも民法で規制がされている行為です。借家権を第三者に譲渡する場合は大家さん、譲受者と話し合ったうえで契約書をもって借家権譲渡契約を締結しましょう。
借家権譲渡契約書には譲渡代金や物件の占有の移転、公共料金の負担など、条件を細かく規定しておくことで、後々トラブルに発展するリスクを軽減できます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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