• 作成日 : 2022年2月15日

工事請負契約書とは?記載項目とテンプレートを紹介!

工事を発注(あるいは受注)する際は工事請負契約書を作成することになりますが、「工事請負契約書の記載内容がわからない」という人は多いでしょう。今回は、工事請負契約書のテンプレートを用いながら作成方法を解説します。

   

工事請負契約書とは?

工事請負契約書とは、工事を行う際に交わされる契約書のことです。法律上は請負契約となるため、当事者の一方が工事を完成することを約束し、もう一方が仕事の完成に対して報酬を支払うことを約束する契約ということになります。後日紛争が生じないよう、建設業法で書面の交付が義務付けられています。

請負契約の特徴は、目的が「仕事の完成」であることです。雇用契約は働くこと自体が重要な要素ですが、請負契約では仕事が完成すればプロセスは問われません。雨の日や予定より工事が早く進んだ場合は、休んでも構いません。

その代わり仕事が完成しない(工事が完了しない)場合は、基本的に報酬を受け取ることができません。

工事請負契約書に記載されている内容

工事請負契約書の内容は、当事者が自由に決めることができます。ごく簡単な契約書もあれば、かなり細かい内容まで記載する契約書もあります。工事内容や当事者の希望、単発の仕事か継続的な仕事かなどによって変わります。

継続的に取引する場合は、一般的に基本契約書で大まかな内容を定め、細かい内容は約款あるいは個別契約で定めます。それに対して1回限りの取引の場合は、個別契約書に細かく内容を書いて契約を締結するケースが多いです。

契約書のタイトルは「工事請負契約書」とし、「注文者○○○○(以下「甲」という。)と請負人○○○○(以下「乙」という。)は、次のとおり工事請負契約を締結する。」というように、請負契約を締結する旨の文言を記載します。

その後各条項を記載し、最後に日付を記入します。そして、当事者の住所と氏名を記入して押印をします。法人の場合は住所の欄には本店所在地を記入し、氏名の欄に法人名と代表者名を記入します。

建設業法では、16項目については必ず書面を作成して交付することを義務付けています。16項目の内容は、次の項目で解説します。

工事請負契約書の作成のポイント!テンプレート付き

書面による交付が必要な16項目は、以下のとおりです(建設業法19条1項各号)。ただし、⑤⑩⑬については、一定の行為の定めをするときのみ記載が必要になるため、特に定めない場合は記載する必要はありません。

  1. 工事内容
  2. 請負代金の額
  3. 工事着手の時期及び工事完成の時期
  4. 工事を施工しない日・時間帯
  5. 請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法
  6. 当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があつた場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
  7. 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
  8. 価格等(物価統制令(昭和 21 年勅令第 118 号)第2条に規定する価格等をいう。)の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
  9. 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
  10. 注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
  11. 注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
  12. 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
  13. 工事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
  14. 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
  15. 契約に関する紛争の解決方法
  16. その他国土交通省令で定める事項

特に1.工事内容、2.請負代金の額、3.工事着手の時期及び工事完成の時期は、極めて重要です。

工事内容を特定しなければ、何についての契約かがわかりません。また、請負契約は有償取引なので、請負代金の額を定める必要があります。さらに、工事がいつ完成するかは発注者にとって最も重要な内容なので、これも契約書に必ず含める必要があります。テンプレートで具体的に説明します。

第1条(工事の内容、時期等)
甲は乙に対し下記内容の工事を注文し、乙はこれを 完成させることを約定した。

1 工事の目的物は、別紙の設計仕様のとおり。

2 工 事 場 所:_____________________

3 工  期       令 和  年  月  日から

令 和  年  月  日まで

4  工事を施工しない日・時間帯:___________

5  請負代金額  金〇〇円

まず、第1条で発注者甲と請負人乙が、下記内容の工事を完成させることについて合意した内容を規定します。その下に「記」と記入して、工事内容を書きます。

このテンプレートでは、「1」と「2」が①工事内容、「3」が③工事着手の時期及び工事完成の時期、「5」が②請負代金の額になっています。

ここまで、工事請負契約書の重要事項について解説してきました。以下の工事請負契約書のテンプレートを参考にしてください。

工事請負契約書のテンプレートは、こちらからダウンロードできます

トラブルが発生した場合の対応について契約書でどのように定めるかについては、以下の項目別に解説します。

①工事が遅延した場合の違約金
②工事が延長した場合の規定
③追加工事代金についての規定
④騒音など近隣住民からのクレーム対応
⑤地中障害物を発見した場合の規定

① 工事が遅延した場合の違約金について明記する

請負人の工程管理によりますが、期日までに工事が完了しないことはよくあります。そのような場合に備えて、違約金の規定を明記しておきましょう。そうでないと、いつまで経っても工事が完了しない場合に注文者が不利益を被ります。違約金を定めておくことで、請負人の「期日までに終わらせよう」というモチベーションにつながります。

違約金は、以下のように定めます。違約金の額に決まりはなく、工事の規模によって変わります。ただし「1日につき金1億円」といった極端に高い金額を設定した場合は無効とされることがあるので、請負代金の1〜10%程度の合理的な範囲で定めましょう。

第11条(違約金)
乙が期日までに仕事を完成せず、目的物を引き渡すことができないときは、違約金として本工事完成まで1日につき金〇〇円を甲に支払う。

➁ 工事が延長した場合の規定について明記する

請負人の責任で工事が延長した場合、注文者は違約金の規定により違約金を請求すれば足りるので、別の規定を設ける必要はありません。問題となるのは、自然災害やテロなどの不可抗力によって工事が延長された場合です。

自然災害やテロなどの不可抗力によって工事が延長した場合、その責任を請負人に負わせるのは酷なので、一般的には請負人は責任を負わないことを規定します。そのうえで、自然災害や不可抗力があった事実を請負人から発注者に報告することを義務付けます。そうすることで、発注者側も工事の遅延への対応を考えることができます。具体的には、以下のように記載します。

第7条(履行遅滞の責任を負わない場合)
乙は、本契約上の義務の履行が、自然災害やテロなど不可抗力による事由により遅滞したときは、甲に対し履行遅滞の責を負わない。なお、乙は、当該事由が生じた場合、甲に対し、ただちに発生を報告する。

③ 追加工事代金についての規定について明記する

工事を発注した後で事情が変わったり、工事を進めていく過程で工事内容を変更したりすることもあります。そのような場合に請負代金を変更できないと困るので、あらかじめ「追加工事が発生した場合には、発注者から請負人に対して請負代金の変更を求めることができる」という内容を定めておきます。

具体的には、以下のように記載します。このテンプレートでは工事の追加の他に、予測できない急激な物価上昇の場合も請負代金の変更を求めることができると規定しています。今の日本ではなかなか想像できませんが、物価が急激に変化した場合は貨幣価値も変わるので、請負代金の変更を求めることができる旨を記載しておきましょう。

第8条(請負代金の変更)
甲は、予測できない急激な物価変動があった場合、工事の追加や変更があった場合には、請負代金の変更を乙に求めることができる。

④ 騒音など近隣住民からのクレーム対応について明記する

騒音など近隣住民からのクレーム対応については、一般的に請負契約書では規定しないため、今回のテンプレートには入れていません。

規定する場合は誰がクレームに対応するのかを明記し、クレーム対応で工期が遅れた場合はどうするかを定めておくとよいでしょう。具体的には、以下のような文言が考えられます。

第○条(クレーム対応)
近隣住民から騒音などに対しクレームがあった場合には、請負人において対応する。なお、クレームがあった場合には、すみやかに発注者に報告するものとする。クレーム対応によって工期が遅れた場合、発注者に報告をしていた場合には、違約金は発生しないものとする。

⑤ 地中障害物を発見した場合の規定について明記する

地中障害物が発見されると工事が中断し、場合によっては追加費用が発生することもあります。これについても規定しないケースが多いため、テンプレートには入れていません。問題が生じた場合は「協議して決める」という条項を入れるケースが多く、地中障害物を発見した場合も相談して解決するのが一般的です。

請負人は「地中障害物の撤去に費用がかかる場合は発注者に請求したい」と考えるでしょう。そのため、「地中障害物を発見し費用が発生する場合には、発注者の承諾を得なくても請負人は発注者に追加費用を請求できる」という規定を追加すべきであると解説しているものもあります。

地中障害物による追加費用を発注者が負担するとしても、撤去の方法や費用の見積りは発注者に確認する必要があります。そのため、「地中障害物を発見し費用が発生した場合には、発注者の承諾を得なくても請負人は発注者に追加費用を請求できる」という請負人に都合のよい規定にすべきとの見解もあります。しかし、実際は請負人に有利すぎる規定は発注者の同意を得にくいでしょう。その場合は、以下のような規定が考えられます。

第○条(地中障害物の発見)
地中障害物を発見し撤去等費用が発生する場合には、請負人は発注者に報告しなければならない。請負人は、追加費用を見積り、発注者の承諾を得なければ、発注者に追加費用を請求できない。

工事請負契約書にかかる印紙税について

工事請負契約書は課税文書なので、印紙の貼付が必要です。印紙を貼付したら、必ず消印を押す必要があります。消印とは、収入印紙を再度使えないようにハンコを押すことです。

契約書に印紙を貼らなかった場合は、貼付すべき印紙税額の3倍の過怠税が課されます。契約書に収入印紙を貼っていても消印を押していない場合は、印紙税額相当額の過怠税が課されるため注意が必要です。

請負契約書に貼付すべき印紙税額は、以下のとおりです。

記載された契約金額
税額
1万円未満のもの非課税
1万円以上100万円以下のもの
200円
100万円を超え200万円以下のもの400円
200万円を超え300万円以下のもの1,000円
300万円を超え500万円以下のもの2,000円
500万円を超え1,000万円以下のもの1万円
1,000万円を超え5000万円以下のもの2万円
5,000万円を超え1億円以下のもの6万円
1億円を超え5億円以下のもの10万円
5億円を超え10億円以下のもの20万円
10億円を超え50億円以下のもの40万円
50億円を超えるもの60万円
契約金額の記載のないもの200円

出典:国税庁「No.7102 請負に関する契約書

ただし、平成26年4月1日から令和4年3月31日までの間に作成する契約書については軽減措置があるため、印紙税額は以下のようになります。

記載された契約金額
税額
100万円を超え200万円以下のもの200円
200万円を超え300万円以下のもの500円
300万円を超え500万円以下のもの1千円
500万円を超え1,000万円以下のもの5千円
1,000万円を超え5000万円以下のもの1万円
5,000万円を超え1億円以下のもの3万円
1億円を超え5億円以下のもの6万円
5億円を超え10億円以下のもの16万円
10億円を超え50億円以下のもの32万円
50億円を超えるもの48万円

出典:国税庁「No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」

なお、工事請負契約書を電子化すれば印紙税はかかりません。

工事請負契約書を作成するときは専門家に相談しよう

今回は工事請負契約書の概要や工事請負契約書に記載されている内容、工事請負契約書の作成のポイント、工事請負契約書にかかる印紙税について解説しました。

契約書に記載する内容は基本的に自由で、当事者が合意すればよほどのことがない限り有効となります。そのためインターネット上には、請負人に有利になるような契約書の作成方法を紹介しているサイトもあります。

しかし、あまりにアンフェアな内容の契約書は無効とされることもあるため、注意が必要です。今回添付したテンプレートは当事者の一方が有利になるようなものではなく、偏りのない一般的なものですが、実務で実際に契約書を作成する際には、専門家に一度相談することをお勧めします。

よくある質問

工事請負契約書とは何ですか?

工事請負契約書とは、工事を行う際に交わされる契約書のことです。一般的な契約では必ずしも契約書を作成する義務はありませんが、請負契約の場合は建設業法で書面の交付義務があり、紛争解決の観点でも作成することをおすすめします。詳しくはこちらをご覧ください。

工事請負契約書に記載されている項目には何がありますか?

工事請負契約書にはタイトル、条項、日付、当事者の記名欄、押印欄があります。建設業法では、工事請負契約書で規定しなければならない16項目が定められています。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:福谷陽子(元弁護士、法律ライター)

弁護士時代は契約書作成やレビュー、不動産取引や債権回収、破産倒産、一般民事、家事事件など多種多様な事件を取り扱っていた。今はその経験を活かし、専門的な法律知識を一般ユーザーへわかりやすく解説する法律記事の作成に積極的に取り組んでいる。
各種サイトで法律記事を執筆監修。実績は年間1000件以上。ブログやYou Tubeなどによる情報発信にも熱心に取り組んでおりチャンネルを運営中。
元弁護士・法律ライター福谷陽子のblog
世捨て人mimi
元弁護士の世捨て猫🌟ぴりか(mimi)法律ライター

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(契約書のテンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談していただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

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