• 更新日 : 2024年8月30日

債権質権設定契約書とは?ひな形をもとに記載項目や作成時の注意点を解説

債権質権設定契約書とは、債権に対して「質権」を設定する契約書です。主に保険金請求権や売掛金債権などの債権を、借入債務の担保として提供する際に締結されます。本記事では債権質権設定契約書の書き方や規定すべき事項の具体例、作成・レビュー時のポイントなどを解説します。

債権質権設定契約書とは

債権質権設定契約書とは、債権に「質権」を設定する内容の契約書です。

「質権」とは、物について設定できる担保権の一種です。

被担保債権(=担保される債権)が不履行となった場合、債権者(質権者)は質権を実行し、最終的にはその競売等によって債権を回収できます。

質権は、債権に対しても設定可能です(=債権質)。質権者が債権質を実行すると、最終的には対象債権を自ら取り立てて、回収した金銭を被担保債権の弁済に充当できます。

債権質の設定に関する事項を定めるのが、質権設定者と質権者の間で締結される債権質権設定契約書です。

債権質権設定契約書を締結するケース

債権質権設定契約書を締結するのは、主に保険金請求権や売掛金債権などの債権を、借入債務の担保として提供すべき場合です。

貸付けを行う債権者は、債務者が借入金を期日通りに返せるかどうかについて審査を行います。債務者の信用力が不十分である場合、債権者は担保の提供を要求するのが一般的です。財産的価値のある担保を確保すれば、万が一借入金の返済が滞っても、担保実行によって債権を回収できます。

また、債務者にとっても、財産的価値のある担保を提供することにより、無担保よりも好条件で借り入れができるメリットがあります。

不動産や業務用機械などのほか、債権のうち支払いが確実であるものも担保に適しています。例えば、保険会社に対する保険金請求権や、継続的取引に関する安定した売掛債権などが、担保に適した債権の一例です。

債権に対して設定される担保権は、主に「質権」と「譲渡担保権」の2種類です。このうち質権の内容については、民法でルールが定められています。

質権は約定担保物権(=当事者の合意によって設定される担保権)であるため、債権質を設定する際には、質権設定者と質権者が債権質権設定契約書を締結します。

債権質権設定契約書のひな形

以下のページより、債権質権設定契約書のひな形をダウンロードできますので、ドラフト作成の参考にしてください。次の項目からは、同ひな形に沿って債権質権設定契約書の記載事項を解説します。

債権質権設定契約書に記載すべき内容

債権質権設定契約書に記載すべき主な事項としては、以下の例が挙げられます。

①被担保債権の表示②質権を設定する債権の表示

③対抗要件の具備

④質権の実行

⑤その他

被担保債権の表示

債権質によって担保される債権(=被担保債権)を特定するための情報を、契約などの発生原因によって記載します。

ひな形1条のように簡易的な記載とすることもありますが、債権の内容を詳細に記載することも考えられます。被担保債権の表示に関する記載例は、下記のひな形「別紙-担保債権の表示」をご参照ください。

質権を設定する債権の表示

質権を設定する債権を特定するための情報を、契約などの発生原因によって記載します(ひな形2条)。

債権の特定に必要な情報の項目は、「被担保債権の表示」と基本的に同様なので、上記のひな形「別紙-担保債権の表示」をご参照ください。

対抗要件の具備

債権に係る質権の存在を第三者に対抗するためには、以下のいずれかの対抗要件を具備する必要があります。

①確定日付のある証書による、第三債務者(=質権を設定した債権の債務者)に対する質権設定の通知(民法364条)②確定日付のある証書による、第三債務者による質権設定の承諾(同)

③質権設定登記(動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律4条)

質権設定に関するトラブルを防ぐため、第三債務者による質権設定の承諾(②)を得ることが望ましいですが、それが難しい場合は通知(①)で済ませることもあります。

どのような方法によって対抗要件を具備するのかを、債権質権設定契約書に明記しましょう(ひな形4条1項)。

質権の実行

質権の実行について、以下の事項などを定めます(ひな形5条)。

    • 債務不履行時(または期限の利益喪失時)における質権の実行方法(通知を不要とする旨、質権設定者は異議を述べない旨など)
    • 質権実行後の過不足の精算

など

その他

上記のほか、以下のような一般条項を定めることが多いです。

  • 反社会的勢力の排除
  • 誠実協議
  • 合意管轄(ひな形6条)

債権質権設定契約書の作成ポイント

債権質権設定契約書を作成する際には、被担保債権と質権を設定する債権を、それぞれ明確に特定することが大切です。同じ契約書において複数の債権が登場するので、混同しないように注意しましょう。

また、質権設定に関する対抗要件の具備や、質権の実行に関する条項を整備することも重要です。安定した形で質権を設定し、かつ債務不履行の発生時にはスムーズに実行できるようになっているかどうかを確認しましょう。

債権質権設定契約では、2つの債権の区別・特定に注意

債権質権設定契約では、被担保債権と質権を設定する債権という2つの債権が登場します。それぞれ、他の債権から区別できるように明確に特定しなければなりません。

債権質権設定契約書の条文において、2つの債権をそれぞれ明確に定義し、混同しないように全体の規定をチェックしましょう。


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