• 更新日 : 2024年11月29日

贈与契約書とは?作成するメリット・手順や書き方についてひな形をもとに解説

贈与契約書とは、無償で財産をあげる・もらうときに作成する契約書のことです。契約書がなくても贈与を行うことはできますが、トラブル予防や税務の観点からはこれを作成しておくことが望ましいとされています。

当記事でも贈与契約書を作成するメリットについて説明したのち、その作成方法などをひな形と併せて紹介していきます。

贈与契約書とは?

贈与契約書とは、「ある人が自分の財産を無償で相手に与えることを約束し、相手もそれを受け取ることを約束する契約」を記した契約書のことです。

簡単にいうと、プレゼントをあげる約束を書面にしたものと説明できます。例えば、祖父母が孫に教育資金を贈りたい場合や、親が子どもに結婚祝いとして家や土地を贈りたい場合などに作成されます。

贈与契約は口頭でも成立しますが、後々のトラブルを防ぐために書面に残しておくことが重要です。これを作成しておくことで贈与の事実を証明できるだけでなく、贈与する側と贈与される側の双方が贈与の内容について共通の認識を持つことができます。

なお、贈与契約書の作成はあくまで贈与契約を明確にするためのものであり、契約書を作成したからといって必ずしも贈与が法的に有効なものとなるわけではありません。有効といえるためには贈与契約の内容が法律に適合している必要があります。

贈与契約書を作成するメリットは?

贈与契約については民法に規定されており、次の通り「意思を表示」することや「受諾」することによって効力が生じます。

(贈与)
第五百四十九条 贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。

引用:e-Gov法令検索 民法第549条

そのため贈与契約の成立そのものに契約書は不要です。しかしながら、契約書の不存在にはいくつかのリスクがあり、その逆に契約書が作られていると以下に掲げるようなメリットがあります。

遺産分割でトラブルを回避しやすくなる

企業の経営者が、後継者となる特定の相続人に自社株を贈与するケースを考えてみましょう。口約束だけで贈与を行うと、経営者の死後、他の相続人から「生前贈与の事実を知らなかった」「不公平な遺産分割だ」といった主張をされ、相続争いに発展するリスクがあります。

しかし、贈与契約書を作成しておけば、贈与の事実や内容を明確に証明することができます。贈与契約書には、贈与する自社株の数、贈与の時期、贈与者と受贈者の情報などが具体的に記載されます。これにより、他の相続人との間で贈与の成立や内容について争いが起こるのを防ぎやすくなるだけでなく、後継者への円滑な事業承継を実現できる可能性が高まります。

また、企業が、個人から生前贈与(寄附)を受けるケースも考えられます。この場合も口約束だけで贈与を受けると、資産家の死後、その相続人から「寄附の事実を知らなかった」「遺言の内容と異なる」といった主張をされ、寄附の有効性について争われる可能性がありますが、贈与契約書を作成しておけば寄附の事実や内容、目的などを明確に証明できます。こうして相続人との間でトラブルが発生するリスクを抑制し、企業は安心して寄附を受けることができます。

一方的に贈与を取り消されなくなる

口約束だけで贈与を行うと、贈与後に関係が悪化した場合などに「やっぱり贈与を取り消したい」と主張されるリスクがあります。

本来、契約は口約束であろうと一方当事者が勝手に解除することはできません。しかしながら贈与契約においては次の規定の通り、書面によらなければ一方的な解除ができてしまいます。

(書面によらない贈与の解除)
第五百五十条 書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。

引用:e-Gov法令検索 民法第550条

他方で、贈与契約書を作成しておけば各当事者による一方的な解除は原則通りできません。そのため贈与契約書は贈与の成立を証明するだけでなく、贈与の内容を確定させる役割も果たすのです。

税務調査の対策ができる

贈与という行為にも税金の問題が絡んできます。

贈与税は相続税などと比べても税負担が割合大きな税であり、他方でその負担を軽減するための特例もいくつか設けられています。また、別の税金について節税効果を得るために贈与を行うケースもあります。

そこで贈与をする贈与者としての立場、贈与を受ける受贈者としての立場、いずれにしても税務調査に際して贈与の内容をチェックされる可能性があります。この時、贈与の事実を証明するために贈与契約書が役立ちます。

不動産の名義変更がスムーズにできる

不動産の贈与が行われる場合、所有権の移転に伴う不動産登記が必要となります。

登記申請にあたっては所有権が移転したことの証明資料が求められるところ、贈与契約書があればこれを提出することで容易に証明することができます。

逆に、贈与契約書がなければ贈与の事実を証明するためにあらためて作成をしたり、別のさまざまな書類をそろえたりしないといけなくなります。

贈与契約書を作成する手順・流れは?

贈与契約書を作成する時は、次の流れに沿って進めていくとよいでしょう。

  1. 贈与の内容を協議する
    財産をあげる人・もらう人で贈与する財産や方法、時期、方法などについて具体的に話し合う。
    不動産などの高額な財産が対象となる時は税金面についても考慮する。
  2. 贈与についての合意を得る
    贈与の場合でも一般の契約と同様に双方の合意があって初めて成立する。
  3. 贈与の詳細を契約書に取りまとめる
    合意した内容を詳細に文書にまとめていく。
    必ずしも書面(紙)である必要はなく、電子文書として作成する方法もある。
  4. 贈与の実行
    契約内容に基づいて実際に贈与を実行する。
    現金なら手渡しや銀行振込、不動産なら所有権移転登記を行う、など。

契約書の具体的な書き方や記載事項、ひな形については後述します。

無料でダウンロードできる贈与契約書のひな形

贈与契約書は公的な書類ではありませんので、当事者間で作成する必要があります。役所で渡してくれるものではありませんし、当然に相手方が作成してくれるものでもありません。

ただ、契約書作成の手助けとなるひな形がこちらから無料ダウンロードできますので、そのため贈与を行う時はぜひご利用いただければと思います。相手方が契約書を渡してきた時もサインをする前に内容を精査する必要があります。その際の参考資料としてもお使いいただけます。

贈与契約書の書き方・記入事項は?

贈与契約書には、少なくとも下表の内容を盛り込みましょう。

贈与契約書の記載事項詳細
贈与についての合意贈与に関して双方が納得し、「合意した」という旨を明記する。

一般的には契約書の前文にて「…次の通り合意した」や「…贈与契約を締結する」などと簡潔に契約内容を記載する。

贈与者・受贈者の表示贈与者と受贈者がそれぞれ誰なのか、氏名および住所を正確に記載して表示する。
贈与財産の詳細贈与する財産の種別や数量・金額などを具体的に記載する。

例えば「現金 1,000,000円」や「〇〇株式会社の株式 100株」など。

贈与の方法どのように贈与を実行するのかを明記する。

銀行口座への振込やその時期なども具体的に記す。

当事者の署名・捺印全当事者が契約書に署名・捺印する。

実印でなければ無効ということでもないが、実印による捺印が望ましい。

契約書の作り方に決まりはなく、どのような様式であっても上記重要事項がはっきりと記載されていれば問題はありません。ただし文言の解釈に不明瞭な箇所があるとトラブルになる可能性もありますので、特に大きな財産のやり取りがある時は専門家の助言も受けることが大事といえます。

贈与契約書を作成するときの注意点は?

贈与契約書を作る際には、法律や税務、さまざまな観点から注意を払う必要があります。ここでは特に重要と考えられるポイントを4つに分けて解説していきます。

110万円以下の生前贈与でも贈与契約書を作成する

年間110万円までの贈与であれば贈与税がかからないため、贈与契約書の作成は不要だと考える方もいるかもしれません。しかし、贈与税の有無に関わらず贈与契約書は作成しておくべきです。

贈与者・受贈者の利害関係者から贈与の事実を疑われたり、贈与の条件について争いが生じたりする可能性がありますし、契約書がなければ税務調査の際にその事実を証明するのが難しくなってしまいます。

贈与財産の評価額を調べておく

贈与の対象が現金であれば「○○万円の贈与」という部分については明らかです。そのため非課税で贈与できるのかどうか、いくらの贈与税額になるのかも計算しやすいです。

一方、土地や建物などの不動産、上場株式や非上場株式などの有価証券、その他骨董品や貴金属などの動産についてはまず計算の基礎となる評価額を把握しておかないといけません。それぞれ次のように評価方法が異なるため税理士に相談するなどして正確に計算を進める必要があるでしょう。

  • 不動産の場合・・・固定資産税評価額、路線価、実勢価格などを参考に算定する。
  • 株式の場合・・・上場株式であれば市場価格、非上場株式であれば会社の財務状況などを考慮して算定する。
  • 動産の場合・・・美術品や骨董品など、高額な動産は専門家による鑑定評価を行う。

贈与契約書を交わす前には贈与財産について調査し、「〇〇円」という情報を明らかにしておきましょう。

赤ちゃんへの贈与でも親が贈与契約書を作成する

赤ちゃん相手でも贈与契約を交わすことは可能です。ただし赤ちゃんなどの未成年者については契約を成立させるための意思表示が単独でできないため、法定代理人(親権者など)による意思表示と契約書作成の手続きを進めましょう。

なお、受贈者が赤ちゃんの場合は、契約書の署名欄には父母などの法定代理人が代筆を行います。

※両親などの親権者がいないときは未成年後見人が対応。

贈与契約書の種類によっては収入印紙が必要

契約書などの重要文書を作成するとき、印紙税が発生することがあります。基本的には契約の目的物や契約金額の大きさをもとに印紙税の大きさも確定するのですが、贈与契約においては原則として非課税。不動産の贈与においては印紙税の課税を受けますが、それでも200円の税負担しかかかりません。

※不動産の価額を契約書に記載したときは当該金額に応じて変動するため要注意。

書面(紙)で契約書を作成したときは200円分の印紙を貼付し、消印をしましょう。

他方、不動産の贈与であっても電子契約書(電子データ)として成立したときは印紙税が不要です。

贈与契約書を作成して利害関係者との争いや税務調査に備えよう

贈与契約書は法的に必須とされていませんが、作成していないと契約の相手方から突然契約解除を主張される危険性がありますし、その他利害関係者との間で贈与の有無について争いが生じトラブルが長期化する危険性も高まってしまいます。

さらに、税務調査を受けた際に贈与財産について調べられ贈与があったことの証明を求められても、契約書がなければ対応するのが困難です。

こうした問題に対処するためにも、贈与契約書は作成しておきましょう。ここで解説した通り、何を贈与したのか、誰と誰が契約を交わしたのかなど重要事項については漏れのないように気を付けてください。


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