• 作成日 : 2024年3月29日

2021年4月施行の高年齢者雇用安定法改正とは?概要や事業者の対応を解説

2021年4月施行の高年齢者雇用安定法改正とは?概要や事業者の対応を解説

高年齢者雇用安定法とは、高齢者が活躍できる環境整備を図る法律です。少子高齢化の進行と高齢人材ニーズの高まりに伴い、2021年4月に改正されました。改正により、70歳までの就業機会の確保が努力義務となりました。

この記事では、高年齢者雇用安定法改正について、ポイントや企業に求められる対応、関連する助成金制度について解説します。

高年齢者雇用安定法改正とは?

「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(以下、高年齢者雇用安定法)」とは、高齢者が活躍できる環境を整備し、雇用の安定を図る法律です。1971年に「中高年齢者雇用促進法」が制定され、1986年に高年齢者雇用安定法となりました。

そして、少子高齢化の急速な発展に伴い、2021年4月に改正法が施行されました。

以下では、高年齢者雇用安定法の概要と改正の背景について解説します。

高年齢者雇用安定法とは?

高年齢者雇用安定法とは、高齢者が活躍できる環境整備を図る法律です。

少子高齢化の進行により人口が減少する中で、経済社会の活力を維持するためには、年齢に関わりなく誰もが能力を発揮できる環境を整えることが必要です。

高年齢者雇用安定法では、具体的に以下のような内容が義務として定められています。

  • 60歳未満の定年禁止
  • 65歳までの雇用確保措置

60歳未満の定年禁止とは、事業主が定年を定める場合、60歳以上にしなければならないというものです。

定年を65歳未満に定めている事業主は、65歳までの雇用確保措置として以下のいずれかを講じる必要があります。

  • 定年を65歳までに引き上げる
  • 定年制を廃止する
  • 65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)を導入する

これらは義務であり、従わない場合は勧告書の発出や企業名の公表といった罰則が科せられる可能性があります。

参考:厚生労働省 高年齢者雇用安定法改正の概要

高年齢者雇用安定法改正の背景

2021年4月、高年齢者雇用安定法の一部が改正されました。その背景には、少子高齢化の急速な発展があります。

内閣府の「令和5年版高齢社会白書」によると、2022年の総人口に占める65歳以上の割合は29.0%でした。15~64歳の人口は総人口の59.4%であり、2070年には約4人に1人が75歳以上になると推計されています。

このように、少子高齢化により生産年齢人口が減少している昨今、多くの企業が人手不足問題を抱えています。経済社会を維持するためには、働く意欲がある高年齢者が能力を十分に発揮できるよう、環境整備を進めることが必要です。

参考:内閣府 令和5年版高齢社会白書(全体版)

高年齢者雇用安定法改正(2021年4月1日施行)のポイント

2021年4月1日施行の改正高年齢者雇用安定法では、70歳までの就業機会の確保が努力義務として新たに定められました。

以下では、改正のポイントと努力義務の対象となる事業主について解説します。

70歳までの就業機会の確保

高年齢者雇用安定法改正では、従来の65歳までの雇用確保措置に加え、65歳から70歳までの就業機会を確保するための措置が求められます。

具体的には、以下のいずれかの措置を講じることが努力義務として定められました。

  1. 定年を70歳までに引き上げる
  2. 定年制を廃止する
  3. 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)を導入する(特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものを含む)
  4. 高年齢者が希望する場合、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度を導入する
  5. 高年齢者が希望する場合、70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度を導入する
    a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
    b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

参考:厚生労働省 高年齢者雇用安定法改正の概要

上記1〜3を雇用による措置、4・5を創業支援等措置と呼びます。

これらは努力義務であるため、基準を設けて対象者を限定することも可能です。その際は、労使間で十分に協議することが求められます。また、特定の高年齢者を排除するための基準や、労働関係の法令や公序良俗に反する内容は認められません。

努力義務の対象となる事業主

努力義務の対象となる事業主は、以下のとおりです。

  • 定年を65歳以上70歳未満に定めている事業主
  • 継続雇用制度(70歳以上まで引き続き雇用する制度を除く)を導入している事業主

今回の改正は、70歳までの定年年齢引き上げを義務付けるものではありません。しかし、上記に該当する事業主は、70歳までの方に就業機会を提供できるよう、積極的に取り組むことが求められます。

高年齢者雇用安定法改正で企業に求められる対応は?

高年齢者雇用安定法改正に対して、企業はどのように対応すればよいのでしょうか。ここでは、企業が高年齢者雇用安定法改正に対応するためにやるべき5つのことを解説します。

  • 労使間の協議
  • 創業支援等措置の実施計画の作成
  • 過半数労働組合等からの同意
  • 就業規則の変更
  • 高年齢者への研修・教育・訓練

労使間の協議

企業は、就業機会の確保措置として定められている5つのうちどの措置を講じるか、労使間で協議して決定する必要があります。高年齢者の希望をヒアリングし、十分に尊重したうえで措置を選択しましょう。

なお、いずれか1つの措置を選ぶだけではなく、複数の措置を組み合わせて70歳までの就業機会を確保することも可能です。

創業支援等措置の実施計画の作成

創業支援等措置を講じる場合は、実施計画を作成する必要があります。

実施計画には、以下の内容を記載しましょう。

  • 高年齢者就業確保措置のうち、創業支援等措置を講じる理由
  • 高年齢者が従事する業務の内容
  • 高年齢者に支払う金銭
  • 契約を締結する頻度
  • 契約に係る納品
  • 契約の変更
  • 契約の終了・解除理由
  • 諸経費の取り扱い
  • 安全および衛生
  • 災害補償および業務外の傷病扶助
  • 社会貢献事業を実施する団体について
  • そのほか、創業支援等措置の対象となるすべての労働者に適用される事項

計画は、後述のとおり過半数労働組合等から同意を得た後、従業員に周知する必要があります。

過半数労働組合等からの同意

就業機会を確保するための措置のうち、4・5の創業支援等措置のみを講じる場合は、実施に関する計画について過半数労働組合等から同意を得なければなりません。

過半数労働組合とは、労働者の過半数を代表する労働組合がある場合にはその労働組合、ない場合は労働者の過半数を代表する者のことです。

また、以下についても、過半数労働組合等からの同意が望ましいとされています。

  • 雇用による措置と創業支援等措置の双方を実施する場合の実施計画
  • 基準を設けて措置の対象者を限定する場合の基準の内容

就業規則の変更

定年を変更したり雇用や就業確保措置を新設したりする場合は、就業規則の変更が必要です。

特に、常時10人以上の従業員を使用する事業主については、就業規則を変更した後所轄の労働基準監督署長に届け出なければなりません。

高年齢者への研修・教育・訓練

高年齢者が定年前とは異なる業務に従事する場合は、新しい業務に関する研修や教育、訓練を実施しましょう。

特に、雇用による措置を講じる場合は、安全衛生教育を行う必要があります。

安全衛生教育とは、従業員が行う業務の安全や衛生についての知識を与え、労働災害を防止するために実施される教育のことです。従業員の安全意識の向上や、職場の安全対策の効果を高めるために重要です。

もちろん、創業支援等措置のみを講じる場合も、安全衛生教育を実施することが望ましいとされています。

高年齢者雇用安定法に関連する助成金

65歳以上への定年引き上げや高年齢者の雇用管理制度の整備などを行う場合は、「65歳超雇用推進助成金」制度を利用できる可能性があります。高年齢者が活躍できる環境整備を進めるためにも、積極的に活用しましょう。

この助成金には、以下3つのコースがあります。

コース対象となる事業主支給額
65歳超継続雇用促進コース65歳以上への定年引き上げ、定年の廃止、 希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入、他社による継続雇用制度の導入のいずれかを実施した事業主措置の内容や年齢の引き上げ幅などに応じて異なる
高年齢者評価制度等雇用管理改善コース高年齢者向けの雇用管理制度の整備等に関する措置を講じた事業主支給対象経費の額に以下の助成率を乗じた額
中小企業事業主:60%
中小企業事業主以外:45%
高年齢者無期雇用転換コース50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用に転換させた事業主対象者1人につき以下の金額
中小企業:48万円
中小企業以外:38万円

各コース支給要件が細かく定められています。支給要件や手続きなどの詳細については、各都道府県に設置されている都道府県支部高齢・障害者業務課(東京支部、大阪支部については高齢・障害者窓口サービス課)に問い合わせましょう。

詳しくは以下をご覧ください。

参考:厚生労働省 令和5年度65歳超雇用推進助成金のご案内

高年齢者雇用安定法改正に対応して環境整備を進めよう

2021年4月に高年齢者雇用安定法が改正され、65歳から70歳までの就業機会確保措置が努力義務となりました。対象は、定年を65歳以上70歳未満に定めている事業主と継続雇用制度を導入している事業主です。

企業には、労使間の協議や同意、実施計画の作成、就業規則の変更、高年齢者への研修の実施などが求められます。改正のポイントを正しく理解したうえで、高齢者が活躍できるような環境整備を進めましょう。

改正の概要や創業支援等措置の実施に関する計画の記載方法、関係条文などについては、厚生労働省の以下のページをご覧ください。

参考:厚生労働省 高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事