- 作成日 : 2024年12月25日
SNS利用規約とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
SNS利用規約とは、SNSの利用者全員に適用されるルールを定めた規約です。事業者がSNS利用規約を作成する際には、利用者の遵守事項や免責事項などを適切に記載しましょう。本記事では、SNS利用規約の書き方や注意点などを、条文の具体例を示しながら解説します。
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目次
SNS利用規約とは
SNS利用規約とは、SNSの利用に関するルールを定めるため、運営事業者が作成する規約です。
SNS利用規約をあらかじめ顧客に対して表示しておけば、規約全体が運営事業者と利用者の間で適用されることになります。不特定多数の利用者を統一的なルールによって管理できる点が、SNS利用規約を作成することのメリットです。
SNS利用規約を作成するケース
SNS利用規約は、SNSや関連するサービスを運営する事業者が作成します。
SNSの利用者は、きわめて多数におよぶことが想定されます。不特定多数の利用者を適切に管理するためには、SNS利用規約の作成が必要不可欠です。
SNS利用規約のひな形
SNS利用規約のひな形は、以下のページからダウンロードできます。実際にSNS利用規約を作成する際の参考としてください。
※ひな形の文例と本記事で紹介する文例は、異なる場合があります。
SNS利用規約に記載すべき内容
SNS利用規約には、主に以下の項目を記載します。
- サービスの内容
- 利用者が利用規約に同意する旨
- 利用者の禁止事項
- 利用規約の変更手続き
- 個人情報の取り扱いなど
- 知的財産権の帰属
- 免責事項
- サービスの停止
- 準拠法、合意管轄
サービスの内容
○○株式会社(以下「当社」という。)は、当社が運営するソーシャル・ネットワーキング・サービス(以下「本SNS」という。)および本SNS上に展開する当社のサービス(以下「本サービス」という。)の利用について、以下の通り利用規約(以下「本規約」という。)を定める。
第1条
本規約は、本SNSおよび本サービスを利用する者(以下「利用者」という。)に適用される。
2 略
SNS利用規約が適用されるサービスの種類を明記します。「本SNS」や「本サービス」などの用語を使う場合は、どのサービスを指すのかを明確に定義しましょう。
利用者が利用規約に同意する旨
第1条
略
2 利用者は、本規約の各条項に同意したものとみなされる。
SNS利用規約を適用するためには、運営事業者が利用者に対して、SNS利用規約を契約内容としてあらかじめ表示しなければなりません(民法第548条の2第1項第2号)。
SNS利用規約の中で、利用者が各条項に同意したものとみなす旨を明記しましょう。
また、SNS利用規約を表示する際の画面上においても、規約への同意が必須であることを分かりやすい形で示しましょう。
利用者の禁止事項
第2条
利用者は、以下の行為をしてはならない。
⑴ 当社または第三者の財産、権利もしくはプライバシーなどを侵害する行為、またはそのおそれのある行為
⑵ 当社または第三者に不利益もしくは損害を与える行為、またはそのおそれのある行為
⑶ 当社または第三者の名誉もしくは信用を毀損する行為、またはそのおそれのある行為
⑷ 公序良俗に反する行為、またはそのおそれのある行為
⑸ 犯罪行為、またはそれに関連する行為
⑹ 当社のサービスに関連して、反社会的勢力に対して直接または間接に利益を供与する行為
⑺ 本SNSまたは本サービスの運営を妨げる行為
⑻ 本SNSまたは本サービスにおける、政治活動、選挙活動、宗教活動またはこれらに類似する行為
⑼ その他、当社が不適当と判断する行為
2 利用者が、前条の行為または本規約に違反する行為によって当社に損害を与えた場合には、当社は、当該利用者に対して、当該行為の差止めおよび当社の被った損害の賠償を請求することができるものとする。
SNSの利用に関して、利用者がしてはならない行為を明記します。
利用者に対して禁止すべき主な行為としては、運営事業者や第三者に対する権利侵害、公序良俗違反、犯罪、反社会的勢力への利益供与、政治活動や選挙活動、宗教活動などが挙げられます。
利用者が禁止事項に違反した場合は、差止めや損害賠償を請求できる旨も明記しておきましょう。
利用規約の変更手続き
第3条
当社は、次の各号のいずれかに該当する場合、利用者の承諾を得ることなく、本規約の内容を変更すること、および本規約に新たな内容を追加することができるものとする。
⑴ 本規約の変更が、利用者の一般の利益に適合するとき。
⑵ 本規約の変更が、契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、変更の内容その他の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき。
2 前項の規定に基づく本規約の変更は、変更後の本規約の内容を、当社ウェブサイト(URL:○○○)上に表示する方法で周知し、相当な期間を経過した日から適用されるものとする。
運営事業者は、民法第548条の4の規定を根拠として、個々の利用者と合意することなく、SNS利用規約の内容を変更することができます。
SNS利用規約の変更においては、民法第548条の4の規定内容に沿って、手続きを定めましょう。上記の条文例(第3条)は、⑴が民法第548条の4第1項、⑵が第2項の内容をそれぞれ反映したものです。
個人情報の取り扱いなど
第4条
当社は、利用者の設定上、全てのユーザーに公開している情報へのアクセスを行うほか、必要に応じて限定公開または非公開の情報にもアクセスすることがある。
2 利用者は、本SNSおよび本サービスの利用に関して、当社ウェブサイト上に記載するプライバシーポリシーに同意したものとみなされる。
3 本SNSおよび本サービスの利用に関して、当社が取得した利用者の個人情報については、前項のプライバシーポリシーおよび個人情報保護法などの法令に則り、適正に取り扱うものとする。
SNSの運営および管理にあたっては、利用者が投稿している情報に対して、運営事業者がアクセスする必要性が生じることがあります。SNS利用規約では、運営事業者が投稿へアクセスすることがある旨を明記しましょう。
個人情報その他のプライベートな情報については、プライバシーポリシーや個人情報保護法などの法令に従って取り扱うと定めておきます。
知的財産権の帰属
第5条
利用者が本SNSまたは本サービスを通じて掲載した情報に係る著作権(著作権法第27条および第28条に規定する権利を含む。)その他一切の知的財産権は、全て当社に帰属する。
SNS上に投稿される文章・画像・動画・音声などには、著作権その他の知的財産権が発生することがあります。
運営事業者としては、利用者や第三者とのトラブルを避けるため、SNSに掲載された情報の知的財産権をすべて自社に帰属させることが望ましいです。SNS利用規約において、その旨を明記しておきましょう。
なお、著作権法第27条(翻訳権、翻案権等)および第28条(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)に規定する権利については、明記しなければ投稿者に留保されたものと推定されるので(同法61条2項)、必ず運営事業者に帰属すると明記しましょう。
免責事項
第6条
当社は、本SNSおよび本サービスに事実上または法律上の瑕疵がないことを保証しない。
2 当社は、本SNSおよび本サービスの利用により、利用者間で生じたトラブルに関しては、当社に故意または重過失がある場合でなければ、一切の責任を負わない。
3 当社の責めに帰すべき事由によって、本SNSまたは本サービスに関して利用者に損害が生じた場合であっても、当社に故意または重過失がある場合でなければ、当社は損害賠償責任を負わない。
SNSの利用に関して何らかのトラブルや損害が発生しても、運営事業者は原則として責任を負わない旨を明記しましょう。
ただし、運営事業者の損害賠償の責任全部を免除する条項や、故意または重大な過失がある運営事業者の責任を一部でも免除する条項は無効です(消費者契約法第8条)。
特に、故意または重大な過失がある場合については、免責事項の対象外であることを忘れずに記載しておきましょう。
サービスの停止
第7条
当社は、以下の事由が生じた場合、本SNSまたは本サービスの全部または一部を停止することができる。
⑴ 定期的または緊急に、本SNSまたは本サービスを提供するためのシステムの保守または点検を行う場合
⑵ 火災、停電、天災地変などの非常事態により、本SNSまたは本サービスの提供が不能となった場合
⑶ その他、当社がやむを得ないと判断した場合
SNSの利用に支障を生じさせる不可抗力的な事象が発生した場合には、運営事業者の判断でサービスを停止できる旨を明記しておきましょう。
準拠法・合意管轄
第8条
本規約は、日本法に準拠し、同法に従い解釈されるものとする。
第9条
利用者と当社との間で本規約に関して生じた紛争については、○○地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
SNSの利用者は、海外からアクセスすることも想定されます。SNS利用規約の解釈については、日本法が適用されることを明記しましょう。
また、利用者との間でトラブルが発生する場合に備えて、訴訟を提起する第一審の専属的合意管轄裁判所を定めておく必要があります。運営事業者の本店所在地の地方裁判所を指定するのが一般的です。
SNS利用規約を作成する際の注意点
SNS利用規約を作成する際には、特に不当条項規制(民法第548条の2第2項に基づく)に注意が必要です。
不当条項とは、利用者の権利を制限し、または利用者の義務を加重する条項であって、信義則に反して利用者の利益を一方的に害すると認められる条項をいいます。
不当条項は、あらかじめ表示していても合意をしなかったものとみなされるため、運営事業者はその効力を主張することはできません。
SNS利用規約の一部が不当条項として無効になると、運営事業者にとって予期せぬトラブルが生じるおそれがあります。SNS利用規約を作成する際には、利用者にとって一方的に不利益な条項が含まれていないか慎重にチェックしましょう。
SNS利用規約とコミュニティガイドラインの違い
SNSの運営事業者は、SNS利用規約のほかに「コミュニティガイドライン」を作成することがあります。
コミュニティガイドラインとは、SNSへの投稿に関して、利用者に遵守を求める事項を定めたものです。具体例として、推奨する投稿や禁止する投稿、削除に関するポリシーなどがコミュニティガイドラインに含まれます。
SNS利用規約は契約内容の一部となり、運営事業者と利用者を相互に拘束します。
これに対して、コミュニティガイドラインの位置付けはサイトによって異なります。SNS利用規約と同等の効力が認められるケースや、単なる紳士協定に過ぎないケースなどまちまちです。
コミュニティガイドラインの位置付けについては、内容や表示の方法などを具体的に検討したうえで判断する必要があります。
SNS利用規約に法的効力はある?
SNS利用規約は、以下のいずれかに該当する場合には、その全体が契約内容の一部として運営事業者と利用者を相互に拘束します(民法第548条の2第1項)。
- 運営事業者と利用者の間で、SNS利用規約を契約の内容とする旨を合意したとき
- 運営事業者があらかじめ、SNS利用規約を契約の内容とする旨を利用者に表示していたとき
ただし、以下の条項は無効となる点に注意が必要です。
- 公序良俗に反する条項(民法第90条)
- 法律上の強行規定に反する条項(民法第90条)
- 利用者の権利を制限し、または利用者の義務を加重する条項であって、信義則に反して利用者の利益を一方的に害すると認められる条項(民法第548条の2第2項)
SNS利用規約の作成について相談できる専門家は?
SNS利用規約の作成については、弁護士や行政書士に相談できます。
規約の内容について細かくアドバイスを受けたい場合は、弁護士に相談しましょう。企業法務の経験が豊富な弁護士に相談すれば、自社サービスの仕様やSNS特有のトラブルなどを踏まえて、利用規約に定めるべき項目を具体的に提案してもらえるはずです。
一方、行政書士にSNS利用規約の作成を依頼する場合の費用は、弁護士に依頼する費用に比べると若干安い傾向にあります。
ただし、行政書士は弁護士と異なり、高度な法律的判断が含まれる相談を受けることができません。SNS利用規約の作成に関しても、弁護士に比べると相談できる範囲が限られます。
予算やニーズに応じて、弁護士と行政書士を使い分けましょう。
利用者とのトラブルを防ぐため、SNS利用規約を適切に作成しましょう
SNSの運営事業者にとってSNS利用規約の作成は、不特定多数の利用者を統一的なルールによって管理するために必要不可欠なことです。
SNS利用規約に定めるべき項目は、自社サービスの仕様やSNS特有のトラブルなどを踏まえて検討する必要があります。弁護士や行政書士に相談しながら、適切な内容でSNS利用規約を作成しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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