• 作成日 : 2022年4月1日

無体財産権とは?債権との違いも解説!

無体財産権とは?債権との違いも解説!

「知的財産権」と聞くと、特許権や著作権を思い浮かべる方が多いでしょう。

一方で、「無体財産権」という言葉を似たような意味で使っている記事も散見します。

「知的財産権」と「無体財産権」は何が違うのでしょうか。

この記事では無体財産権とは何か、どのような権利が対象となっているのか、知的財産権や債権との違いについても解説します。

無体財産権とは?知的財産権とは違うの?

「知的財産権」と「無体財産権」は同じ意味で使われることも少なくありませんが、よりポピュラーなのは知的財産権でしょう。

知的財産権は、知的な創作活動によって創り出された発明や芸術作品などに関し、その創作者を保護するために与えられるさまざまな権利の総称です。知的財産権は、その種類ごとに文化や産業の発展を目的とした特別法があります。

知的財産権における「財産」には特許や著作、商標などがありますが、不動産や現金、車などの目に見える財産と違って、形がありません。目に見える財産を「有体財産」と呼びますが、それと対比するために「知的財産」の別名が「無体財産」となっているのです。

したがって、基本的には「無体財産権=知的財産権」と考えてよいでしょう。

ただし、印紙税法上の「無体財産権」は特許権、実用新案権、商標権、意匠権、回路配置利用権、育成者権、商号、著作権の8種類のみであり、ノウハウ等これら以外の知的財産権の譲渡に関する契約書を作成したとしても、印紙税法の課税文書には該当しません。

本記事のテーマから逸れますが、会社などの賃借対照表の「固定資産」は有形固定資産無形固定資産に分かれています。無体財産権は当然無形固定資産に含まれますが、漁業権や借地権なども無形固定資産に該当します。これらの権利も形がありませんが、無体財産権とは呼ばれません。次章でその理由を説明します。

債権と無体財産権はどう違う?

債権とは、ある者が別の者に対して給付や作為など一定の行為を請求することができる権利のことです。行為を請求できる側が債権者で、義務を負う側が債務者です。

例えば、売買契約は商品を渡す義務と受け取る権利、その商品の価額を支払う義務と受け取る権利が存在するため、売り手も買い手の双方が債権・債務を有します。一方、交通事故の被害者が加害者に請求する損害賠償請求では、通常は被害者が債権者、加害者が債務者となります。

債権は、形ある「物」を直接支配する所有権などの物権と違い、給付という「行為」を求める権利です。
また、債権は財産に関する権利でもあります。であれば債権も「無体財産権」に含まれるとも考えられそうです。

しかし、債権は「人」に対する請求権の総称であり、人の創作活動の結果を保護の対象とする知的財産権とは性質が異なります。債権は他者との関係性において認められる相対的な権利ですが、財産権は他者との関係性によるものではなく、絶対的な権利といえます。また、知的財産権の目的は社会における産業の発達や文化の発展の促進ですが、債権は人の生活利益の安定獲得を目的としており、方向性がまったく違います。そのため、「無体財産権=知的財産権」と考えられており、債権は無体財産権に含まれないのです。

無体財産権の特徴

無体財産権の特徴は、形のない「情報」に財産的価値を認めるところにあります。誰かが発明した画期的な商品を無断でコピーして利用したり、利益を得たりすることが自由にできるような社会では、誰しも創作活動を行う意欲がなくなるでしょう。科学も経済も文化も、知的創作活動が盛んであるからこそ発達していくものです。 そのため、知的創作の結果生み出された情報を保護し、創作者を守る必要があるのです。

無体財産権の対象となるもの


無体財産権の主な対象には、経済産業省特許庁所管の「産業財産権(特許権、実用新案権、意匠権、商標権)」と、文部科学省文化庁所管の著作権があります。

産業財産権は特許庁に出願登録しなければ付与されませんが、著作権は著作物の創作と同時に著作者に発生するものであり、登録することもできますが権利取得の要件にはなっていません。

これらの法規定があるもの以外にも、前述の印紙税法上無体財産権となる権利や、ノウハウ、トレードシークレットなども無体財産権の対象です。ノウハウやトレードシークレットは、不正競争防止法によって保護されています。

無体財産権によって保証される権利

特許権などの産業財産権が持つ権利の代表は「絶対的独占権」です
これは、権利者のみが業(事業のこと。営利目的でない事業も含む)としてその権利内容を実施でき、先に出願登録していれば、たとえ他者が自分で開発、創作したものであっても排除できる権利です。他人の無断実施を排除できる独占権によって、自身の権利が侵害された場合に侵害者に対して差止や廃棄、損害賠償の請求などが可能になります。

著作権にも独占権はありますが、他人が独自に創作したものには及ばない「相対的独占権」です。自分の著作物と似通っていると著作者が主張しても、その作品がその作品が自身の著作物をもとに作成され、かつ表現が類似していること(依拠性)が証明できなければ、権利の侵害とは認められません。

無体財産権は知的活動の創作物を保護するもの

かつては「無体財産権」という用語もよく使われていましたが、現在は「知的財産権」のほうが一般的です。

どちらを用いるにしても、その意味と目的は「知的な創作活動の結果である無体の情報に財産としての法的権利を与え、保護するもの」ということをしっかり覚えておきましょう。

よくある質問

無体財産権とは何ですか?

知的創作活動によって創り出された発明や芸術作品などに関し、その創作者を保護するために与えられるさまざまな権利の総称です。知的財産権とも呼ばれます。詳しくはこちらをご覧ください。

債権と無体財産権はどう違うのですか?

どちらも形のない権利ですが、債権は「人」に対して「行為」を請求する権利です。無体財産権は、「創作活動の結果」に対して原則出願登録することで「付与」される財産権です。詳しくはこちらをご覧ください。


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