• 作成日 : 2022年5月20日

保証契約とは?基本的なルールやリスク、最新の民法改正について分かりやすく解説!

保証契約は、主となる債務が弁済できない場合に備えて締結される契約です。連帯保証契約や根保証契約と呼ばれる類型があり、それぞれに独自のルールが設けられています。近年は民法改正により、保証契約に関するルールが変更されました。
そこでこの記事では、保証契約に関するルールの改正内容を把握できるように情報をまとめ、保証契約のリスクについても言及します。

保証契約とは?

そもそも保証契約とは何でしょうか。保証契約の基本的なルールや、実務上よく使われる保証契約の種類について説明します。
保証契約

保証契約の基本的なルール

借金の返済などの債務を負っている主債務者がおり、その者が債務の履行をしない場合、代わりに支払うことを約束するのが保証契約です。

保証人は原則として、主たる債務者が履行しない場合に初めて自身の保証債務を履行します。
債権者から請求を受けても、「まずは主債務者に請求してください」という催告の抗弁や、「まずは主債務者の財産に執行してください」という検索の抗弁を行い、履行を拒むことができます。

根保証契約とは

保証契約には、いくつか種類があります。

その一つである根保証契約は、「特定の債務」を担保する基本的な保証契約と違い、「一定範囲内に属する不特定の債務」を目的とします。保証契約締結時点で発生する債務が具体的に特定できない場合によく用いられます。

例えば、ある企業が取引先と継続的な売買取引を交わす場合において、当該取引から発生する債務を広く保証するという根保証契約があります。
その他、介護施設への入居時の入居費用や施設内事故の賠償金に関して家族等が行う保証や、アパートの賃貸借における賃料等を含む保証もあります。

根保証契約は、保証人が責任を負う期限の定めがあるものとそうでないものに分けることができ、保証人が個人なのか法人なのかによって分けることもできます。同じ根保証契約という類型でも、分類によってリスクの大きさや適用されるルールが変わります。

連帯保証契約とは

連帯保証契約は、主債務者と保証人が連帯責任を負う保証契約です。
単なる保証契約とは異なり、保証人は二次的責任を負うだけでは済みません。債権者からの請求に関して主債務者と同列に扱われ、催告の抗弁や検索の抗弁によって履行を拒むこともできません。

催告の抗弁に関しては、債権者は主債務者に一度催告を行うだけで済むため、一時的な延期にしかなりません。これに対して検索の抗弁が使えないことは、リスクが大きいといえます。検索の抗弁を行えば、保証人は債権者が主債務者の財産に執行するまで履行を拒めるからです。

連帯保証契約ではこれらの抗弁ができませんが、実務上用いられるケースは多いです。保証人になる人は、特に「連帯責任」の有無を確認することが大切です。

保証契約のリスクは?

保証人は、主債務者が負う債務と同等の責任を負います。場合によっては多額の借金を肩代わりすることになり、それによって保証人の自宅や土地が差し押さえられたり、売却されたり、給与・預貯金を差し押さえられたりすることもあります。最終的に生活が破綻し、自己破産を選択するしかない状況に追い込まれるおそれがあるのです。

主債務者との信頼関係によって保証契約を頼まれ、あまり深く考えずに契約してしまうケースも少なくありません。

保証契約に関わる最新の民法改正の内容は?

保証契約には大きなリスクが伴いますが、そもそも保証人になる人が安易に契約してしまうという問題もあります。
そこで、近年の民法改正では保証人保護を目的としたいくつかの規定が整備されました。ここからは、改正のポイントを解説します。

極度額の定め

最初に紹介するのは、根保証契約に関する新しいルールです。

法改正前から、個人の根保証契約の安全性を確保するために「主たる債務に貸金等の債務が含まれている場合」は、極度額を定めなければ契約が無効になると定められていました。
極度額は保証人が負う責任の範囲ともいえ、極度額を定めた上で締結された根保証契約でなければ無効とされていたのです(個人が保証人になる場合に限られることに留意)。

しかし、保証人が責任を負うことになるのは貸金に関する債務に限りません。実際、賃貸借に関する保証では未払い賃料や原状回復費用が多額になることがあります。

そのため民法が改正され、債務の内容を限定することなく、極度額を定めなければ広く根保証契約は無効になる旨が定められたのです。
極度額の定めに関しても当然当事者間の合意が必要であり、書面(または電磁的記録)でその内容を定める必要があります。

公正証書による保証債務履行意思の確認

主債務が「事業のため」の貸金等債務である場合は、根保証契約でなくとも多額になるケースが多いです。
そこで、保証人になろうとする者に軽率な契約締結をさせないよう、契約成立のためには「公正証書による意思確認」を必要とする規定が設けられました。

この規定のポイントは以下のとおりです。

  1. 保証人になろうとする者が個人であること
  2. 保証対象が、事業資金の借入等であること
  3. 契約締結の前1ヵ月以内に、保証の意思がある旨を記載した公正証書を作成すること

公正証書の作成は、公証人の面前で行います。公証人に対する口授、公証人による筆記、読み聞かせ、署名押印など作成の方法も細かく定められており、安易な契約締結の予防が図られています。

個人が契約する場合でも、同規定が適用されないケースがあります。
例えば、個人といっても主債務者である法人の代表などが保証人になる場合は、リスクや経営状況等を把握した上で保証契約を締結することになるため、適用されません。役員や大株主についても同様です。むしろ、このような者にまで同様の義務を課すと、資金調達を阻害するおそれがあります。

また、主たる債務者が個人事業主である場合は、その事業主の共同経営者や当該事業に現に従事する配偶者についても適用されません。同様に

保証人への情報提供義務

保証人のリスクを抑えるためには、主債務等に関する情報を提供することが大切です。
そこで改正民法では、以下の3つの情報提供に関する規定が設けられました。

(1)契約締結のための情報提供(2)主債務の履行状況に関する情報提供(3)期限の利益に関する情報提供
提供する内容1.主債務者の財産と収支状況
2.主債務以外に負担する債務の有無とその額、履行状況
3.主債務のために提供し、または提供しようとする他の担保
主債務に関する元本、利息、違約金、損害賠償などの不履行の有無、残額、弁済期が到来しているものの額主債務者が期限の利益を喪失したこと
保証人の条件1.個人
2.委託を受けている
委託を受けている個人
主債務の条件事業のための債務なしなし
タイミング保証を委託する時
(保証契約締結前)
保証人から請求を受けた時債権者が、主債務者の期限の利益の喪失を知った時から2ヵ月以内
義務を負う者主債務者債権者債権者

(1)「契約締結のための情報提供」の規定については、個人に対して保証人になるよう委託する時であって、主債務が事業のために負担するものである場合に適用されます。
主たる債務者は、事前に一定の情報を提供しなければなりません。
また、主債務者による情報提供がなされていない(または虚偽説明があった)ことにより誤認して保証契約の申し込みをした場合、この事実を債権者が知るか、知ることができたのであれば、保証人は保証契約を取り消すことができます。

(2)の「主債務の履行状況に関する情報提供」は、保証人(法人も含む)が履行状況を把握し、リスクを回避する機会を与えるための規定です。
主債務者が債務不履行になっているにも関わらず、長期的に保証人がその事実を知らずにいると、遅延損害金が膨れ上がるおそれがあります。そのため「委託を受けた」保証人に限り、債権者に対して情報を提供するよう請求することができます。具体的には、主債務の残額や不履行の有無、期限を過ぎているものの額などの情報です。これらは主債務者の信用に関わる情報であるため、委託を受けた者だけに限定されています。
債権者がこの義務を履行しない場合は、債務不履行として保証契約の解除や損害賠償の請求ができる可能性があります。

(3)の「期限の利益に関する情報提供」は(2)と同様に、保証人の知らないところで遅延損害金が膨れ上がるのを防ぐための規定です。ただし、(2)と異なり、こちらは実際に期限の利益が失われた(失期)後の話で、提供される情報も限定的です。そのため、委託を受けている者でなくてもこの情報を受ける権利を持ちます。
保証人が個人の場合、債権者は主債務者が期限の利益を喪失したことを知った時から2ヵ月以内に保証人へ通知をしなければなりません。通知するまではその間の遅延損害金を請求できませんし、通知を怠ったことによって増えた遅延損害金も請求できません。
ただし、通知を怠ったとしても期限の利益の喪失がなかったことになるわけではありません。そのため、通知がなされていない場合でも、保証人は残債務について履行に応じる必要があります。

保証契約のルールやリスクはしっかりと把握しよう

保証契約に関しては、情報提供の規定や根保証契約の成立要件等について、保証人の保護を目的とした法改正が行われました。しかし、保証人になることのリスクがなくなったわけではありません。
保証契約の締結にあたっては考えられるリスクだけでなく、主債務者の資力なども調べた上で判断することが大切です。

よくある質問

保証契約とはどのような契約内容ですか?

保証契約は、主債務者が債務の弁済を行わない場合に、保証人が債務の履行義務を負うという内容の契約です。詳しくはこちらをご覧ください。

保証契約に関してどのような法改正があったのですか?

個人が締結する根保証契約に関して極度額の定めが必要になり、保証人に対する情報提供義務の規定が設けられるなど、主に保証人の保護を目的とした変更がありました。詳しくはこちらをご覧ください。


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