• 作成日 : 2024年10月3日

リーガルチェックをAIで行うと違法になる?注意点について解説

リーガルチェックとは、締結前の契約書などをあらかじめ法律的な観点からチェックする作業のことです。近年ではAIによるリーガルチェックサービスが登場し、違法かどうかの議論が交わされましたが、法務省からは弁護士が利用・レビューを行うことで適法な利用となることが示されました。本記事ではAIの利用も含めた、リーガルチェックの概要について解説いたします。

リーガルチェックとは?

リーガルチェックとは、契約書などの書類の内容を、法律の専門家や社内の法務担当者に確認してもらう作業のことです。契約書の内容が違法な内容となっていないか、または自社が不利益を被るような内容となっていないかなどのチェックを行い、問題があれば修正や取引先などに変更の提案を行います。

リーガルチェックを行わなかったために後から法的な問題が発生すると、代金の不払いや認識の相違から来るクレームなど、トラブルに発展する可能性もあるため重要な作業といえるでしょう。

また、リーガルチェックのもう一つの効果といえるのが、契約内容を精査することで社内の担当者などがより深くその内容に対して理解が進む点です。取引に際して発生するリスクをあらかじめ把握することにも繋がります。このように、リーガルチェックは未然にトラブルを防止しビジネスを円滑に進める上で必要不可欠な作業です。

リーガルチェックの詳細については、以下の記事もご参照ください。

リーガルチェックはなぜ重要か

リーガルチェックが重要とされる理由はいくつもあります。ここではおもな理由を解説します。

取引の当事者間の認識を擦り合わせられる

リーガルチェックを実施する過程で不明な点が出てきた場合、必ず相手方の担当者に確認を行うようにしましょう。このとき必要になってくるのは、曖昧な文言や表現があった際は、双方に理解できるようコミュニケーションをとり、契約内容を明確にすることです。

契約書に記載される文言は一つ一つが契約上の意味や効力を持つため、曖昧な表記があると、後々トラブルに発展する可能性があります。

リーガルチェックでは、作業を通じて文言の意味に対してチェックの意識が働き、双方の理解の行き違いや誤解の防止に繋がるため、重要な役割を担うといえるでしょう。

取引の実態に即した契約書作成に繋がる

リーガルチェックを実行することで、取引の実態に即した契約書の作成にも繋がります。

契約書の作成の際にはゼロから新規に契約書を作成するのではなく、あらかじめ存在する契約書ひな型を用いて契約書を作成することが一般的です。

しかし、契約は取引先やその時々の状況で多様に変化するため、契約書ひな型をただ利用するだけでは、取引の実態に合わせた契約書作成に繋がらないことがあります。分かりやすい例を挙げると、取引先によって異なる支払や納品の条件などがこれに該当します。

このように、細かな部分で実務や取引のフローに支障を来す可能性があるため、リーガルチェックを通じて、取引の実態に合わせた契約書を作成することが必要不可欠です。

AIを用いた契約書チェックは違法の可能性がある

近年、急速に発展するAIによる契約書チェック(リーガルチェック)ですが、一部では違法となる可能性も指摘されています。きっかけは、2022年6月にとある企業がグレーゾーン解消制度を利用し、法務省へAIによる契約書のチェックの違法性を確認したことです。この際の法務省の回答は「弁護士と弁護士法人が業務で補助的に使う場合でなければ違反の可能性が否定できない」というもので、法に抵触する場合もあることが示されました。

具体的には、AIによるリーガルチェックは、弁護士法第72条に定められている非弁行為の禁止に抵触する可能性があるということです。非弁行為とは、弁護士以外の者が報酬目的で弁護士のみに認められている業務をすることを指します。

弁護士法72条の内容は、以下の通りです。

“弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求など行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に定めがある場合は、この限りでない。”

引用:法令リード 弁護士法 第72条

上記の内容を簡潔にまとめると「報酬を得る目的」で、「法律事件などを対象」に「法律事務を行うことを業とする」ことは認められず、非弁行為としてみなされてしまうということになります。

取り扱う案件について

報酬を得る目的で案件を取り扱った場合、その種類などに応じて非弁行為に該当するかが問われることとなります。条文では「訴訟事件」「非訟事件」「審査請求」「再調査の請求」「再審査請求等行政庁に対する不服申立事件」「その他一般の法律事件」のいずれかを、法律事務として取扱い、または周旋することです。

法律事務とは、法律上の効果を発生・変更させる事項の処理のことを指します。例えば、法律相談のほか、代理人としての活動や契約書作成を行うことが法律事務に該当します。

一方、周旋とは、簡単に言えば紹介行為のことです。弁護士に依頼者候補を紹介することなどが法律事務の周旋に該当します。

報酬を得る目的について

具体的に非弁行為となる事件や事務については前項でお伝えした通りですが、前提として報酬を受ける目的でそれらの業務を行った場合についてのみ、非弁行為に該当するとされています。裏を返すと、報酬を受けなければ非弁行為とはみなされません。

なお、この場合の報酬とは、金銭に限定されるものではなく、金銭以外の形式であっても何らかの利益を得て、法律相談を行っていると報酬目的とみなされます。

AIによる契約書チェックが非弁行為に該当する理由

契約書作成や内容の精査などは、法律事務のうち弁護士法72条に定める「鑑定」に該当する可能性があります。その場合、本来であればその業務は弁護士が行うべき事項です。「AIによる契約書チェック」というサービスの提供者が報酬を受け、鑑定行為を行うとみなされた場合、非弁行為に抵触することとなってしまいます。

上記の理由などにより、2022年6月の法務省の回答では「AIによるリーガルチェックなどが非弁行為となる可能性」が否定されてはいませんでした。

一方で契約書チェックが、個別の事案における具体的な契約内容を精査するのではなく、一般的な契約書としての性質を備えているかどうかのチェックに留まるのであれば、「鑑定」には該当しないという意見もありました。いずれにせよ、AIによる契約書チェックが非弁行為に該当するかについては、2022年の時点では、結論の出ていないグレーゾーンの領域でした。

最終的には有資格者がレビューを行う必要がある

2022年6月の時点では、企業がAIによるリーガルチェックを利用した場合は非弁行為に該当し違法となる可能性が指摘されていました。ですが、その後の2023年8月に法務省がその見解を発表したガイドライン(以下「同ガイドライン」)では、有資格者である弁護士が利用し、弁護士自身がレビューを行う場合には違法性がないことが解説されました。具体的に違法とならないとされているケースは、以下の2パターンです。

  1. AIによるリーガルチェックサービスを、弁護士(弁護士法人含む)に提供し、提供を受けた弁護士が自ら契約書をチェックし適宜修正する形でサービスを利用する場合
  2. AIによるリーガルチェックサービスを一般企業に提供する場合であっても、その企業の役員である弁護士が①の方法と同じ方法でサービスを利用する場合

なお、同ガイドラインはAIによるリーガルチェックサービスが非弁行為とならないための一般論を示したものにとどまり、具体的な事象について個別の判断をしたものではありません。そのため、リーガルチェックを利用した弁護士への依頼に関しては、事前に依頼先の弁護士と相談をした上で実施するようにしましょう。

AIによるリーガルチェックの流れ

AIによるリーガルチェックは各社とも導入検討段階の部分が多いため、具体的な流れやフローについてはこれから確立される領域といえますが、法務省のガイドラインを引用し例を挙げると以下のようになります。

  1. リーガルチェック依頼する弁護士に、AIリーガルチェックのサービスのアカウントや権限を共有
  2. 依頼を受けた弁護士が、AIリーガルチェックのサービスを用いて契約書内容をチェック
  3. AIによるリーガルチェックの結果を受けて、審査対象の契約書などを弁護士自らがレビューし、適宜修正する
  4. 修正が完了した契約書を、依頼主である企業に共有する

現在、AIによるリーガルチェックサービスを提供する事業者でも、法に抵触しないようサービス内容の修正など試行錯誤し対応していくことが予想されますが、同ガイドラインに従うのであれば上記のような形となります。

参考:法務省  AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第 72 条との関係について

リーガルチェックは誰に依頼するのがよい?

ーガルチェックの依頼先は、主として「社内の法務担当者」か「弁護士」の2つが候補に挙げられます。自社の状況に応じて最適な依頼先を選定しましょう。

社内の法務担当者に依頼する

社内でリーガルチェックを行う場合、通常は法務担当者に対応を依頼します。この場合のメリットは、費用がかからない点です。ただし、時期によっては社内の担当者も多忙でリーガルチェックが完了するまでに時間がかかる場合もあります。社内の色んな部署から依頼が集中すると、契約書チェックにも予想以上に時間を要することがあるため、緊急案件でない限りは日程に余裕をもって依頼するように心がけましょう。

なお、依頼先の法務担当者が取引の実情や目的を把握していないケースもあるため、依頼する際には取引の概要や目的などを伝えて、自社が被る可能性のあるリスクなどについて事前に話し合いをすることが重要です。

弁護士に依頼する

社内の法務担当者以外では、弁護士にリーガルチェックを依頼することも選択肢の一つです。弁護士に依頼するメリットとしては、実態に即した契約書のチェックを受けられることや、より専門的かつ詳細な視点で契約書をチェックしてもらえる点が挙げられます。

最新の法改正や判例に基づいてリーガルチェックを実行するのは、企業の担当者だけでは難しい場合もあります。法律の専門家の弁護士であれば、法律の中でもその弁護士の専門領域について最新情報にキャッチアップし、より適切なリーガルチェックを受けることも可能です。また、商慣習についても幅広い知識と経験を持つ企業法務に強い弁護士であれば、取引に応じた最適な契約書を提案してもらうことできます。

それ以外のメリットとして、万が一取引先とトラブルが発生した場合でも、あらかじめリーガルチェックを依頼した弁護士であれば、取引内容や背景も把握しているため、迅速かつ心強い対応が期待できます。

なお、弁護士に依頼する場合のデメリットは、社内の担当者と比べ費用がかかる点です。契約内容やどの弁護士に依頼するかによって上下しますが、相場は1件あたり5~15万円程度と言われています。売買契約書や請負契約書のように、定型的な取引で契約書の内容も一般的なものであれば、相場は5万円程度です。

逆に、業務委託契約書や取引基本契約書のように契約内容が複雑で、リーガルチェックの際に会社の事業内容を理解することが必要になる場合などは、10~15万円程度かかることもあります。

リーガルチェックが必要な契約書の例

契約書には様々な種類がありますが、ここではいくつかの代表的な種類の契約書と、作成時に注意が必要なポイントをいくつかお伝えいたします。新規で契約締結が必要となった場合など、参考にしてください。

業務委託契約書

業務委託契約とは、一定の業務を、自社以外の業者や専門家に任せる契約のことです。発注する側は、金銭などの対価を支払い特定の業務を依頼します。一方、受注した側は、依頼された業務を提供することで、対価を受け取ります。

依頼する業務と、支払われる「報酬」の2つが、契約の根幹となるため、この2つを発注・受注側のそれぞれの当事者にとって明確とすることがポイントです。

なお、業務委託契約にはOEM契約やコンサルティング契約、システム開発委託契約など、非常に幅広い種類の契約があります。それぞれ内容が異なり、気をつけるべきポイントも変化するため、個別にリーガルチェックを受けてリスクを洗い出すことが必要です。

例えば、中でも問題が起こりやすい契約として挙げられるのは業務委託契約です。業務委託契約では、コアとなる業務は明確でもその周辺業務が曖昧となることが多いためです。どの範囲が委託する業務なのか、発注者と受注者の間の認識に食い違いが生まれる可能性があるため、注意して見ておくとよいでしょう。

秘密保持契約書(NDA)

秘密保持契約書(NDA)とは、取引のため互いの秘密情報を相手に開示する際に、相手に対方に当該情報の目的外使用や第三者への開示・漏洩などを禁じるために締結する契約書のことです。

秘密保持契約書の締結は、自社の利益を守ることだけではなく、顧客を守ることや、自社が秘密情報を厳格に管理する会社であることを示すという意味合いもあります。秘密保持契約書のポイントはいくつかありますが、

まずは秘密情報の範囲を定めることが重要です。よくあるのは、「相手に開示した技術上又は営業上の情報その他一切の情報」などと広く定める場合と、「相手に開示した技術上又は営業上の情報であって、秘密である旨を明示した情報」などと範囲を限定する場合の2パターンです。

自社が開示する秘密の方が多い場合は、広く定める前者のパターンが望ましいといえます。状況に応じて使い分けましょう。

その他のポイントとしては、開示された秘密事項の取扱方法についてです。利用目的や利用できる人の範囲などを定めておきます。また、取引が終わった際の秘密情報の取り扱いについても記載する必要があります。取引終了後は秘密情報を返還又は廃棄したりすることを定めたり、取引終了後も秘密保持義務は一定期間存続させるなど、大事な情報が外部に流出したり悪用されることのないように最大限注意を払いましょう。

金銭消費貸借契約書

金銭消費契約書とは、お金を借りて受け取ったことによって成立する契約です。締結の際には、「甲は乙に対し、100,000円を貸し付け、Bはこれを借り受けた」などの書き方で、貸借の内容が明確になるように定める必要があります。

主に貸主側のポイントとなりますが、重要なポイントとしては返済方法をあらかじめ定めておくことが挙げられます。返済方法には大きく分けて一括弁済と分割弁済の2つがありますが、そのいずれに対しても返済期限を定めておくようにしましょう。

また、分割弁済であっても返済が遅れた場合には、一括弁済を求めることができるようにしておくことも必要です。そのほか、利息や連帯保証人などを定める場合も契約書に記載する必要がありますので、適宜、リーガルチェックを担当した法務担当者や弁護士などからアドバイスを受けて契約書を作成することが求められます。

売買契約書

売買契約書とは、名前の通り、売主・買主間で商品やサービスなどの売買取引を行う際に作成する契約書のことです。なお、法律では売買契約にあたって契約書の作成は義務づけられてはいません。売主と買主の合意があれば、口頭での約束であっても、売買契約は成立してしまいます。

ただし、口頭だけでは、万が一トラブルが発生した場合、契約の内容を確認したり証明する方法がなくなったりする場合もあります。契約内容を事前に明らかにしてトラブルを未然に防ぎリスクを最小限にするためにも、企業間の取引では、売買契約書を作成することが一般的です。

売買契約には、物品売買だけでなく、不動産売買や株式・債権の売買など多種多様な種類があり、それぞれにポイントが異なります。多くの場合に共通する代表的なポイントとして挙げられるのは「所有権の移転時期」「契約不適合責任」などです。

「所有権の移転時期」とは、文字通り、商品の所有権が売主から買主に移る時期のことです。一般的には、売主から買主に商品を引き渡したときや、買主から売主に代金を支払ったときのいずれかが定められます。「契約不適合責任」とは、品物違いや数量不足など商品に不備があった場合に、売主が買主に対して負う責任のことです。契約不適合があったとき、どのように対処するかを定めておきましょう。

ライセンス契約書

ライセンス契約書とは、使用許諾契約とも呼ばれるもので、知的財産権で保護されている特許・意匠(デザイン)・著作物などの使用を許諾する(または許諾を受ける)ための契約です。ライセンス契約の内容に不備があると、許諾する側(ライセンサー)は、正当なライセンス料を受け取ることができないなどの不利益を被ります。

また、許諾を受ける側(ライセンシー)は、ライセンスが不要となった後もライセンス料を支払い続けなければならないなどの不利益が発生することも考えられます。このように、ライセンス契約書は自社の利益を守るためにも非常に重要な位置付けの契約書です。

リーガルチェックを実施する上では、ライセンサーとライセンシーでそれぞれに異なるポイントに気をつける必要があります。

まず、ライセンサー側のポイントとして挙げられるのは、「独占の範囲」や「解約条項」です。独占的なライセンス契約の場合、ライセンサー側は、独占の範囲を定めて特定の利用目的での独占を認めるなど、その範囲を限定しておく工夫が求められます。また、解約条項については一定期間ライセンス事業を行わない場合は契約を解除できるように定めておくなど、自社に不都合が生じないように定めるとよいでしょう。

次に、ライセンシー側のポイントについてですが、「契約終了後の取り扱い」が挙げられます。例えば、ライセンス契約の終了と同時にライセンス商品の販売ができなくなる契約を締結していたとします。その状態でライセンシーが在庫を抱えていた場合は、それらの在庫を契約終了後は販売できず大きな不利益を被ってしまうこととなります。

賃貸借契約書

賃貸借契約書とは、ご存知の方も多いと思いますが、アパートやマンションなどの賃貸物件を借りるための契約書のことです。内容は不動産会社、大家または物件によって異なります。

チェックすべきポイントは多岐に渡りますが、ここでは貸主の視点から「違約金」「利用目的違反」を挙げて解説します。上記の条項をしっかりと設けることで、事前にトラブルを防いだり、入居者と実際にトラブルになったときに対処したりすることが可能になるためです。

違約金の条項では、契約成立後に入居をキャンセルされた場合や、ペットの飼育を禁止している物件で無断飼育が発覚した場合について、あらかじめ違約金を請求する旨を定めていれば、違反した入居者などに金銭を請求することが可能です。違約金条項の中に、しっかりと入居者に遵守してほしい内容が網羅されているか、入念にチェックするようにしましょう。

次に利用目的違反として、物件が予定外の目的で使われた場合に備えて、利用目的違反の条項を不足なく盛り込んでおきましょう。賃借人が予定外の用途で物件を使用した場合に、契約を解除できるようにするためです。

なお、あらかじめ定めた利用目的違反に抵触した場合でも、必ずしも解除できるというわけではありません。賃貸借契約を解除するためには、解除事由に加えて、信頼関係が破壊された、といえる事由がなければ有効とならないためです。過去の裁判例において、以下のようなケースに当てはまった際、信頼関係が破壊されるほどの利用目的違反として、契約解除が認められた例があります。

  1. 賃借人が、無断で(シェアハウス利用目的として)転貸していた
  2. ペット禁止物件で、賃借人が賃貸人の要請を無視し、動物の飼育を継続していた
  3. マンションに入居中の賃借人が、隣人に嫌がらせするなどして、立ち退きを余儀なくさせた
  4. アパートで賃借人が受忍限度を超える騒音を発生させていた

リーガルチェックを実施する流れ

ここではリーガルチェックを実施するための流れを説明します。企業やケースによって、依頼する流れや方法は異なるかもしれませんが、この解説を参考に、自社に合ったフローを考える手助けとして下さい。

①契約書を用意

最初に、契約書を自社で作成するなどして用意します。何度も行われている定型的な取引であれば、社内でひな形を準備している場合もあります。まずは、社内ですでにひな形が存在するかを確認するとよいでしょう。なお、取引先から契約書を提示されることもありますが、その場合はその契約書に対してリーガルチェックを実施することとなります。

②契約書の内容を確認

①で用意した契約書に対して、自分自身の目で内容の確認を行います。法務担当者または弁護士に依頼する場合でも、取引の担当者はできる限り契約書の内容は把握しておく必要があります。それは、自分自身で内容の確認を行っておくことで、リーガルチェック担当者とのスムーズな打ち合わせが可能となるためです。実態に即した契約書を作成することができれば、のちのトラブル防止にも繋げることができます。

③リーガルチェックを依頼

②までの作業が完了したら、社内の法務担当者や弁護士にリーガルチェックを依頼します。

なお、弁護士に依頼する依頼する場合でも、取引に関する情報や社内の事情などをできる限り共有しておきましょう。正確な情報や背景を共有しないと、専門家でも正確に判断できないことがあるためです。

また、社内の担当者やあらかじめ契約のある顧問弁護士などに依頼する場合についてですが、その方達が自社の状況やビジネスに理解がある方であっても、詳細については省略せずに、しっかり伝えるよう心がけましょう。一見、定型的な取引や契約に見えても、実際には通常の取引からの変更点や初めて取引する取引先で相応の注意が必要な場合があるためです。

ヒアリング対応

リーガルチェックを実施した方から、依頼した契約書及び取引の詳細に関して担当部署や担当者へヒアリングが行われることがあります。この際には、リーガルチェックを実施する担当者の疑問が解消するよう、面倒くさがらずに入念にコミュニケーションを取りましょう。何度かお伝えしたとおり、正確な情報の共有が適切なリーガルチェックに繋がり、リスクの解消の鍵となるためです。

④フィードバックを反映

リーガルチェックが完了したら、次は法務担当者や弁護士からのフィードバックの段階です。フィードバックの内容を確認し、契約書に反映したら、その契約書を取引先に提示して交渉に移ります。

なお、リーガルチェックのフィードバックを受けた際は、修正が加えられた箇所に対して、なぜその修正が必要なのかを担当者に確認しておくことがスムーズな交渉のポイントです。取引先から背景の確認があった際に迅速に対応できるためです。

また、反映後の契約書を提示した際にも取引先から修正の交渉が持ちかけられる場合があります。その場合は、取引先からの交渉内容の詳細や背景を確認した上で、再度、リーガルチェックを担当した方へ相談し、一つずつ契約の落とし所を見つけていきます。

⑤契約書の締結

④の工程を完了し、無事に取引先からの合意が得られたら契約を締結に移ります。フィードバックや修正箇所を反映し清書しますが、この際には表記揺れや誤字脱字がないかなどの確認もしておきましょう。

なお、実際の契約締結の際には、紙の書面を作成して署名捺印(または記名押印)を行う方法のほか、電子契約として電子署名を用いる方法が近年で一般的になってきました。どの方法で契約を締結するかについても取引先に確認し、電子契約の場合は社内で対応可能かなどを確認した上で、契約に臨みましょう。

AIのリーガルチェックを利用し、効率的な業務を

今回は、リーガルチェックの概要から、近年話題となっているAIのリーガルチェックの課題や利用方法などについて解説しました。リーガルチェックはリスクを把握・回避しながらビジネスを展開するために必要不可欠なものであると同時に、それなりの時間や費用のかかる作業といえます。

一方で、リーガルチェックを効率化するAIによるサービスは各社が提供を開始してからあまり月日が立っていないということもあり、適法性や運用面で検証の余地の多い領域です。企業の中でも、AIによるリーガルチェックの推進を検討している方は、本記事を参考に、少しでも試行錯誤のお役に立てていただければ何よりです。


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