- 更新日 : 2025年6月23日
債務免除証書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
債務免除とは、債権者が債務者に対して、借金の返済義務などを免除することを指します。そして債務免除証書は、この債務免除の事実を書面化した文書です。
本記事では債務免除証書を作成する事業者向けに、この文書のひな形を用いて具体例とともに記載内容や注意点を解説していきます。作成のポイントをここでおさえておきましょう。
目次
債務免除とは
債務免除とは、債務者が債権者から、借金の返済義務などの債務について全額または一部を免除してもらうことを指します。
債権者が一方的に債務を消滅させる行為であり、債務者にとっては経済的な負担を軽減できるメリットがあります。これに対し債権者は本来回収できるはずの債権を失うことになるため、一見デメリットしかないように思えます。
しかし、債権回収が困難な場合には債務免除によって債権を資産として計上することなく損金としての処理が可能となるのです。そのため債権者にも税務上のメリットがある行為といえます。
債務免除の定義
「債務免除」という言葉で法律上の定義が置かれているわけではありませんが、その効力については民法第519条に規定が置かれています。
第五百十九条 債権者が債務者に対して債務を免除する意思を表示したときは、その債権は、消滅する。
この、債権を消滅させる行為を債務免除といえるでしょう。
また、いずれも厳格な定義は置かれていませんが、免除の範囲に着目して「全額免除」「一部免除」と呼ぶこともあれば、免除のタイミングや条件などに着目して「即時免除」「条件付免除」と呼ぶこともあります。
債務免除と債権放棄の違い
「債務免除」と似た言葉に「債権放棄」があります。
民法上の表現に沿った場合は「免除」という言葉を使うことが多いものの、一般的には「放棄」という表現もよく使われています。
どちらも法的には同じ意味であり特に区別して理解する必要はありませんが、債権者目線だと「債権放棄」、債務者目線だと「債務免除」といえるでしょう。
債務免除証書とは
債務免除証書とは、債権者が債務者に対して債務の免除を行う意思表示を明確に示すための書面です。それと同時に、債務者側が当該債務について免除をしてもらえたことを証明するための書面としても機能します。
債務免除は口頭でも有効ですが、後々のトラブルを避けるために、書面として残しておくことが重要となります。
債務免除は口頭でも有効
債務免除の方法は法律で規定されておらず、口頭での意思表示であっても有効です。
しかし、口頭だけでの免除は避けるべきです。後々「言った、言わない」の水掛け論に発展するリスクがありますし、税務署など外部の者にその事実を証明するのが難しくなってしまいます。
債務免除証書を公正証書で作成すべき理由
債務免除をめぐるトラブルを極力避けたいのであれば、公正証書化をおすすめします。
公正証書とは公証人が作成する公文書であり、法的に高い信頼性がある文書として作成できます。
法律の実務家、例えば弁護士や裁判官、検察官をやっていた方などが公証人となりますので、形式的な不備などが発生しにくいのが公正証書作成の大きなメリットです。
債務免除証書を作成するケース
債務免除をするとき、「債務の額が高額なケース」や「貸倒れとして損金に算入したいケース」では債務免除証書を作成しておきましょう。
未回収の債権の額が大きいときは、万が一債務免除が無効になってしまったときの影響が少なくありません。そのため、もしもの場合に備えて書面を作成しておくことが望ましいのです。
また、実務上多いのは「債務者の負担が大きいから助けてあげよう」というより「回収が困難になってしまったから債権を放棄して損金算入したい」というケースでしょう。損金算入の要件として書面化が必須ではありませんが、税務署から指摘をされても困ることのないよう形に残しておくことが大事です。
債務免除証書と債務免除通知書の違い
「債務免除証書」というものは債務免除の意思表示を書面化したものであり、表題が「債務免除通知書」であっても「債権放棄通知書」とされていても内容に差はありません。
そもそも債務免除は債権者側による一方的な意思表示で設立するものですし、債務者側の同意を必要としません。そこで契約書のように双方の署名捺印などをすることなく、通知書としてこれを出しても何ら問題はありません。
債務免除証書のひな形
損金算入などの目的で、もし債権者の立場で債務免除をするのなら、次のひな形を使って債務免除証書を作成しておくとよいでしょう。
決まった形式はありませんが、ひな形を使えば骨格部分について考える必要がなく、当事者や債務に関する表示を調整するだけで簡単に完成させられます。
債務免除証書に記載すべき内容
上記URLからダウンロードできるひな形を参照しつつ、債務免除証書に記載すべき内容をまとめます。
債務免除証書に記載すべき内容と書き方 | |
---|---|
表題 |
|
債務者の特定 |
|
免除の意思表示 |
|
債務の特定 |
|
債務免除の日付 |
|
債権者の特定 |
|
債務免除証書を作成する際の注意点
文書自体はシンプルなものですが、誰が・誰に対し・どの債務を免除するのか、が必ず読み取れるようにしておきましょう。
そして、損金算入を目的としているのであれば「なぜ債務を免除することになったのか」という理由の部分についても記載します。
法律上の要件ではありませんが、債務の免除をする事業者がその免除額を法人税法の損金として算入するときは、①債務者の債務超過が相当期間継続しており弁済を受けることが難しいと認められる、②書面で債務免除の通知をした、の2点が重要と考えられています。
そこで税務の観点からは、書面化はもちろん、その書面上に「貴社の債務超過の状態が相当期間継続し、回収が困難と判断しましたので・・・」などと記しておいた方がよいでしょう。
また、書面を送付したことが証明できるように、内容証明郵便で送付することも忘れないようにしましょう。
税務上の取り扱いに留意して債務免除証書を作成しよう
債務免除それ自体に複雑な手続きは必要なく、債権者側の一方的な意思表示によって成立させられます。そして債務者側のメリットは大きく、有効・無効をめぐって相手方とトラブルになることも考えにくいです。
ただ、債権者側は未回収分を損金として処理できる関係から、税務署が指摘をしてくる可能性はあります。そこで債務免除証書を作成してその事実について書面化しておくことが必要となります。
税務上の取り扱いに関しては国税庁ホームページでも言及されていますので、こちらも参照しつつ債務免除を行うとよいでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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