• 作成日 : 2024年5月2日

免責的債務引受契約書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説

免責的債務引受契約書とは、「新債務者を定めるとともに旧債務者の責任を免除するときの契約」において交わされるものです。要は債務者を変更するときの契約書で、事業譲渡を行う際などに作成業務が発生します。

当記事ではこの契約書の書き方やレビューのポイントを解説していますので、免責的債務引受を行う企業の方は参考にしてください。

免責的債務引受契約とは

免責的債務引受契約とは、ある債務者を免責するとともに、当該人物の負っていた債務を別の新債務者に引き受けさせる契約のことです。民法でも次のように効力を定めています。

免責的債務引受の引受人は債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担し、債務者は自己の債務を免れる。

引用:e-Gov法令検索 民法第472条第1項

債務の内容や債権者はそのままに、債務者を変更するときにこの契約が交わされます。元の債務者からすれば、責任を免れることができますのでリスクはありません。しかし引受を行う新債務者はそれまでなかった責任を肩代わりすることになりますので当然リスクがあります。

また、債権者にとってもリスクはあります。債務が履行されるなら免責的債務引受をしようが結果に変わりはありませんが、新しい債務者に資力がなければ債権回収ができなくなってしまうリスクが高くなってしまうのです。

そこで免責的債務引受は債務者の一存でできるものではなく、引受人と債権者による合意が欠かせません。

免責的債務引受契約を結ぶケース

免責的債務引受契約を結ぶのは「債務者を変更したいケース」です。事業者の場合だと、「事業譲渡によって債務を他社に引き継がせたいケース」が挙げられます。

事業譲渡とはM&Aの1種で、企業の事業のみの売却を意味しています。事業を譲渡する企業、譲受する企業の契約で事業譲渡は実現できるのですが、このとき勝手に債務が譲渡されるわけではありません。

債権者の同意を得て、免責的債務引受契約によって譲渡する必要があります。

個人においては、相続財産に債務が含まれている場面で免責的債務引受が行われることがあります。債務は法定相続分に従い各相続人に帰属するのが原則であり、特定の人物が債務を引き受けたことを債権者に対抗するには免責的債務引受の契約が必要です。

法人に相続が起こることはなく、破産をしても代表者が債務を肩代わりする必要はありません。しかし事業者が個人事業主だと事業用財産とともに債務も相続人に承継されてしまいますので、免責的債務引受契約が必要になることもあります。

免責的債務引受契約書のひな形

免責的債務引受契約書のひな形はこちらのページからダウンロードできます。契約書を作成するときの参考にしていただければと思います。

免責的債務引受契約書に記載すべき内容

免責的債務引受契約書を作成するときは、少なくとも次の内容については触れておくべきです。

  • 債務の特定
  • 債務の引受と免責
  • 債務の履行方法
  • 連帯保証

最低限定めるべきルールについて、以下で解説をしていきます。

債務の特定

免責的債務引受を行うには、引受の対象となる債務の特定が欠かせません次のように、免責的債務引受についての債権者の承諾と債務の特定を契約書内でしておきましょう。

第1条 丙は、乙が甲に対して負う下記債務につき、乙のために免責的に債務を引き受け、履行することを約し、甲はこれを承諾した。

甲乙間の令和〇年〇月〇日付金銭消費貸借契約に基づく金●万円(弁済期:令和〇年〇月〇日)

なお、免責的債務引受契約書には少なくとも3者登場しますので、当事者の記載を誤らないように注意してください。当記事における条文例では、債権者を「甲」、原債務者(元の債務者)を「乙」、引受人を「丙」としています。

債務の引受と免責

この契約書で求める効力を明記します。似た契約に「併存的債務引受契約」というものもありますが、こちらでは引受人が登場するものの債務者の免責が行われません。表題に「免責的債務引受契約」と記載するだけでなく、免責される旨の明記は忘れずにしておきましょう。

第2条 丙は、甲に対し、前条の債務を履行しなければならない
第3条 甲は、第1条の乙の甲に対する債務につき、乙に対し、その全てを免責する。

この例における第2条では引受人が債務の履行義務を負う旨、第3条においては債務者の責任がなくなる旨を定めています。

債務の履行方法

通常、免責的債務引受では債務の内容を変更することなく引受人へと引き継がれますが、変更がない場合でもその旨を強調しておいた方が無難です。

以下のように弁済方法や弁済期などが既定通り引き継がれることを契約書に記しておきましょう。

第4条 丙が甲に対して履行する本件債務の弁済方法、及び弁済期その他の権利義務は、原契約書の既定どおりとし、変更はないものとする。

連帯保証

もし原契約に保証人がいるときは、その保証をどうするのかについても検討する必要があります。的債務引受にあたり債権者の承諾が必要とされているのと同じように、保証を引き継ぐにも保証人の承諾が必要です。

そして承諾が得られたときは、契約書にも次のように保証に関する規定を置いておきましょう。

第〇条 連帯保証人丁は、今後、丙が引き受けた債務を連帯して保証する。

免責的債務引受契約書の作成ポイント

免責的債務引受契約書を作成するときは、「原債務の記載」と「連帯保証人による事前の承諾」に注意してください。

混乱するおそれがなければ上の例文のように簡単な記載でも問題ありませんが、契約関係が複雑なときは次のように詳細に債務の情報を示すようにしましょう。

元本 金〇〇円
利息 年〇〇%
弁済期 令和〇年〇月〇日
遅延損害金 年〇〇%

また、債務者の変更に伴うリスクは債権者同様連帯保証人にも及ぶことから、民法でも承諾を要することが規定されています。保証人や担保の設定がされているときは、契約書の作成に取り掛かる前に承諾を得ておきましょう。そのうえで「保証する」旨の記載をしないと効力は生じません。

債務者変更に伴うリスクには注意しよう

免責的債務引受契約を交わすとき、債務者目線だと利益が大きいですが、その他の関係者がリスクを負うこともあります。そこで債権者側あるいは連帯保証人側に立つときは、引受人の経済力などをよく審査した方がよいです。

一方で引受人となる場合は、契約が締結される前に債務の内容をしっかりと把握しておくことが大事です。事業譲渡などで債務を引き受けた結果、思わぬトラブルに巻き込まれるおそれもありますので、専門家も活用して契約や債務者に対する調査を進めておきましょう。


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