• 作成日 : 2025年1月29日

毀損(きそん)とは? 意味や棄損・破損との違い、罰則などを解説

毀損とは、「壊す」という意味です。物だけでなく「名誉」「信用」といった無形の行為にも使用します。特に、「名誉毀損」「信用毀損」などは法律でよく使われる言葉です。

本記事では、初めに毀損の基本的な意味や類似の言葉との違い、用例などを紹介します。そして、法律上の毀損行為について民事・刑事の両面から解説し、毀損行為が認められた場合の罰則についても説明します。

毀損とは

「毀損」とは、物を壊すこと・傷つけることを意味します。無形物にも使用できるため、幅広く使われる言葉といえるでしょう。また、法律用語としてもよく使われ、似た言葉に「破損」「棄損」などがあります。

以下では、毀損の意味や例文、言い換え表記、英語表記などについて紹介します。

毀損の意味・読み方

毀損(きそん)は、物を壊すことや傷つけることだけでなく、名誉や信用といった無形のものを損なう、傷つける行為も指します。

「毀」という漢字自体に、「壊れる・破れる」「そしる・けなす」といった意味があります。よって、毀損以外にも「毀棄」「毀傷」「損壊」などと表現することも可能です。悪口を言うことを「毀誉」「謗毀」などと表現することもできます。

毀損の言い換え・例文

毀損は他の言葉に言い換えると「損じる」「打ち壊す」「破壊」「取り壊す」「傷つける」「傷める」などの表現になります。

例えば「名誉を毀損された」は「名誉を傷つけられた」と言い換えることが可能です。他には「ブランドイメージの毀損」を「ブランドイメージの破壊」などと言い換えることもできます。

話し言葉の場合は「毀損」というよりも「壊れた」「傷ついた」などと表現する方が相手に伝わりやすい場合もあります。

毀損の英語表記

毀損の英語表記には「damage」「injury」などがあります。

「damage」は物や人の感情の損傷という意味、「injury」は事故などによる損傷、損害を表現したいときに使われます。

また、名誉毀損は英語で「defamation」「libel」「slander」と表記可能です。「defamation」は中傷、「libel」は文章による名誉毀損、中傷文、「slander」は口頭による中傷、悪口、名誉毀損という意味を表します。

棄損と毀損の違い

毀損と同じく「きそん」と読む言葉に「棄損」があります。この2つに違いは特になく、どちらも「物を壊す」「損なう」の意味で使えます。

なぜ同じ意味なのに表記が2つあるかというと、常用漢字に「毀」の字がない時代があり、「棄」が代用字として使われたからです。現在は「毀」も常用漢字になったため「毀損」と「棄損」の両方が存在します。

ただし、法律用語として「名誉毀損」「信用毀損」を使う場合は「毀損」を使うため注意が必要です。

破損と毀損の違い

毀損と類似の言葉に「破損」があります。破損にも「物が壊れる・壊す・傷つく・傷つける」という意味があります。

毀損も破損も、どちらも同じような意味で使えますが、「破損」の場合は、有形物が壊れた、壊されたときにしか使われません。例えば「自転車のパーツが壊れた」ことを表現する場合は「毀損した」よりも「自転車のパーツが破損した」という場合が多いでしょう。

一方で、人の名誉・感情といった無形物を傷つけたときには、破損は使われず、毀損を用います。

また、毀損の方が少し堅い印象を与える表現であるともいえます。

棄損行為とは

毀損は、法律を扱う場面でよく使われる言葉です。そこで、法律で規定された毀損の代表例である「名誉毀損」「信用毀損」の2つについて解説します。

名誉毀損

名誉毀損とは、公然と事実を摘示し、人の社会的評価を傷つける言動のことです。刑法と民法の両方に規定があり、条件さえ充足すれば刑事上の罪(刑法230条)に問うことも、民事上の賠償責任(民法723条)を負わせることもできます。

名誉毀損の例には、インターネットやSNSでの誹謗中傷、街宣活動や講演・演説、マスメディアでの誹謗中傷などが挙げられます。発言者の単なる感想や意見、社会的評価を傷つける程度とは認められない発言、事実の摘示がない言動などは名誉毀損とは認められない可能性が高いといえます。

刑法上の名誉毀損罪に問えなくても、民事上の慰謝料請求や損害賠償請求であれば認められることもあります。

信用毀損

信用毀損とは、営業活動などに関する経済的な信用を傷つける行為のことです。刑法では、虚偽の風説を流布して人の信用を傷つけた場合を処罰対象としています(刑法233条)。

具体例としては「特定の企業について倒産間近であるという情報を流す行為」「特定の店舗の商品やサービスについてデマを流す行為」「通販サイトで虚偽の口コミ(低評価)をする行為」などが挙げられます。

ここでいう「信用」は、実際に信用が低下した事実は必要なく、信用を低下させるおそれがある状態が作り出されている程度で良いとするのが一般的な考え方です。

棄損行為に該当した場合の罰則

法律上の毀損行為に該当した場合、民事上の損害賠償請求や刑罰の対象となったりする可能性があります。

以下では、毀損行為に該当した場合について、民事責任と刑事責任に分けて説明します。

棄損行為の民事責任

毀損行為について民事上の責任が認められた場合、被害者に対して損害賠償や慰謝料を支払う義務が発生します。

民法723条は、他人の物や名誉・信用などを毀損した人は、被害者に対して不法行為にもとづく損害賠償責任を負うと定めています。損害賠償額は毀損行為の内容や態様などにより異なりますが、原則として、被害者が受けた損害の実額です。

また、裁判所が被害者の名誉を回復するのに適当な処分を命ずることもできます。例えば、新聞やインターネット上への謝罪広告の掲載などです。

棄損行為の責任

刑法上の毀損行為の罪として、名誉毀損罪と信用毀損罪の罰則について説明します。名誉毀損罪が成立すると、3年以下の懲役、禁錮、50万円以下の罰金のいずれかが科されます(刑法230条1項)。

信用毀損罪の場合は3年以下の懲役、50万円以下の罰金のいずれかです(刑法233条)。

刑法上の毀損行為の罪には、他にも「死体損壊罪」(刑法190条、3年以下の懲役)、「器物損壊等罪」(刑法261条、3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料)があります。

毀損行為に関するトラブルを避けるための注意点

日常生活やビジネスのあらゆる場面で、いつ毀損行為の加害者・被害者になるかわかりません。そこで、毀損行為に関するトラブルに巻き込まれないよう注意する必要があります。

以下では、2つの注意すべきポイントについて解説します。

契約書に損害賠償条項を記載しておく

日常における財産の取引やビジネスの場面では、契約書に損害賠償条項を記載した上で契約を交わすようにしましょう。なぜなら、損害が発生した場合の責任について明文化しておかないと、あとで責任の取り方について意見がまとまらず、最悪の場合訴訟に発展しかねないためです。

どのような毀損行為が、どのような状況・態様で行われると損害賠償が発生するのか。誰が、誰に対して損害賠償責任を負うのか。

これら損害賠償条項を契約締結段階で明確に文書に残すようにします。

ネットやSNSの公然性を意識し、投稿内容に気をつける

主に名誉毀損や信用毀損において大切なポイントは、インターネットやSNS上での書き込みを行う際に、世界中の人々が閲覧可能であることを意識することです。

口コミやSNS上における悪口や低評価の投稿など、書き込みする側は個人の意見として軽い気持ちで書き込んだとしても、それが大勢の人に閲覧され、瞬く間に拡散される可能性があります。場合によっては慰謝料や損害賠償請求の対象となる可能性、また、あまりに悪質な場合は刑事罰の対象となる可能性もあるのです。

したがって、インターネットやSNS上では人の名誉を毀損するような内容は書き込まないよう意識しましょう。

毀損行為は賠償や刑罰の対象になるため注意

毀損には「壊す」「傷つける」という意味があり、物にも無形の行為にも使えます。また、法律上の行為に使われることが多い言葉です。

「毀損」も「棄損」も同じ意味ですが、法律用語として使う場合は「毀損」を使います。法律上の毀損には「名誉毀損」「信用毀損」などがあります。

名誉毀損や信用毀損に当たる行為をすると、民事上の賠償責任を負ったり、刑事上の罪に問われたりする場合もあるため注意しましょう。もし、自身が名誉毀損や信用毀損の被害に遭った場合は、加害者に対し、慰謝料請求などをしたり、刑事責任を追及したりできる可能性があるため、専門家に相談するなどして適切に対応しましょう。


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