• 更新日 : 2022年8月17日

示談書とは?書き方やテンプレート、効力についてわかりやすく解説

示談書とは?書き方やテンプレート、効力についてわかりやすく解説

示談(じだん)という言葉は「揉め事があったが示談にした」のように、トラブルに関する何らかの解決方法を示す際によく使われます。とはいえ、「示談とは何か」「どんな時に使い、法的にどんな効力があるのか」と聞かれると意外と答えられないものです。
ここでは、「示談」の定義や示談書の書き方、効力、交通事故など実際の場面で使えるテンプレートを紹介します。

示談(じだん)とは?示談書とはどんな書類?

示談とは、当事者間に生じた何らかのトラブルについて、裁判をせずに解決するための話し合いや、話し合いの結果合意した内容を指します。示談書とは、当事者間の合意内容を書き留めた書類のことです。
「和解書」や「合意書」も、上記の内容が書かれている書類であれば示談書といえます。
ただし、「和解」は「裁判上の和解(民事訴訟法第267条)」のように裁判においても用いられる言葉なので、裁判を通さない合意であることを示すために、法律用語ではない「示談」が用いられることがあります。

示談書に効力はあるの?

示談は、法律上「和解契約」に分類されます。契約は相対する当事者間における意思表示の合致により成立するものですが、示談書はその内容を記載した書類に他なりません。したがって、示談書には契約書として法的効力があります。
示談書で約束した内容が守られず裁判になった場合は、内容について合意があったことを証明する証拠書類となるのです。

「示談書」と「公正証書」の違いは?

「示談書」は通常の契約書同様、特に決められた形式はなく、記載されている内容について当事者が納得していることがわかれば(通常当事者の署名捺印で推定します)有効です。極端な話、チラシの裏紙で作成してもかまいません。
一方で「公正証書」は、当事者が公証役場において公証人の前で本人確認を行った上で、定められた様式に則って公証人が作成した書類に署名捺印することで完成する公文書です。
公正証書は書類そのものを「債務名義」として強制執行の申し立てができますが、単なる示談書には強制執行力がありません。示談書を証拠として裁判を申し立て、勝訴することで得られる判決文によらなければ、強制執行が行われないのです。
書かれている内容に当事者が納得した上で署名捺印したことを公証人が証明する公正証書は、いざという時に示談書よりもはるかに記載内容の実現性が高いといえます。そのため、当事者に「示談の内容をしっかり守らねば」と思わせる効果も期待できるのです。
ただし、公正証書に強制執行力を持たせるためには「この公正証書によって強制執行をすることができる」という文言を入れなければなりません(これを強制執行認諾条項といいます)。

示談書の書き方・例文

では、実際の示談書の書き方について見ていきましょう。
一般的な示談書に記載すべき事項は以下のとおりですが、事案によって多少増減することがあります。

    • タイトル(「示談書」)
    • 当事者の特定(氏名や生年月日などの記載)
      示談書内に何度も当事者名が出てくる場合は「甲」「乙」などとすることが多いです。
    • 本示談書を作成するに至った事実内容
      例えば交通事故であれば場所や日時、状況、怪我の程度などを記載します。
    • 上記の事実に対する示談金の内容
      合意した示談金額、支払い方法(一括か分割か、振込先)、支払期限などを記載します。
    • その他の示談内容
      謝罪を行うかどうか、また免責事項や守秘義務などがあれば記載します。
      名誉棄損の場合など、謝罪広告を行うことを約することもあります。
    • 不履行や遅滞に関する取り決め(期限の利益喪失や遅延損害金など)
    • 本示談書以外の請求は一切しないという取り決め
      いわゆる「清算条項」です。例えば交通事故で重篤な後遺症の恐れがある場合、この条項については双方が慎重に話し合っておくべきです。
    • 最後に本示談が成立した日を書き、当事者がそれぞれ署名捺印します。

    示談書

    〇〇(以下「甲」とする)と△△(以下「乙」とする)は、本日当事者間にて以下のとおり合意した。

    第1条
    甲と乙は以下の事実があったことを認める。
    第2条
    甲は、乙に対し金〇〇〇円の支払義務があることを認める。
    支払方法は✕✕とする。
    第3条
    遅延損害金は年利5%とする。
    第4条
    甲乙は、本示談書の作成により、本証書に定めるほか、なんらの債権債務が存在せず、本示談書に定めるほか、互いに金銭その他の請求をしないことを相互に確認する。

    合意日
    令和〇年〇月〇〇日


    住所 〇〇
    氏名 〇〇   印


    住所 △△

    示談書のテンプレート

    一般的な示談書のテンプレートです。こちらを雛形として、状況に応じて内容を書き加えてください。

    一般的な示談書のテンプレートは下記のページからダウンロードできます。

    ケースごとに記載する示談書の書き方

    示談書に記載すべき項目は、個々の事実内容や事情によって変わります。
    ここでは示談書を作成することが比較的多い、交通事故及び不倫のケースにおける具体的な書き方を説明します。

    交通事故の示談書の書き方例・テンプレート

    交通事故で加害者が任意自動車保険に加入していれば、被害者との示談交渉は原則保険会社が行います。交渉がまとまれば、保険会社が独自の雛形で示談書を作成して被害者に提示します。被害者は、内容に齟齬がないか確認してから署名捺印します。
    加害者が保険に加入していない場合や、事情があって保険を使いたくない場合は双方で示談書を作成します。記載項目は以下のとおりです。実際の書き方は、テンプレートを参照してください。

    交通事故の示談書のテンプレートは下記のページからダウンロードできます。

    ①事故当事者(所有者の氏名・車両登録番号)

    まずは当事者を特定します。加害者の氏名と車両登録番号、被害者の氏名を記載します。
    生年月日まで記載することもあります。当事者同士が以下の内容について合意したことが前提なので、それを最初に記載します。

    ②事故発生日時

    示談書の事実記載で重要なのは、誰が見ても示談の対象を明確に特定できることです。
    交通事故は発生日時によって特定できるので、「〇年〇月〇日、午後〇時〇分頃」と詳細に記しましょう。

    ③事故発生場所

    ①同様、できる限り詳しく書きましょう。

    ④事故内容

    加害者と被害者が、それぞれどのような状況で当該事故が発生したのかを記載します。

    ⑤支払金額

    被害者が被った損害の内容や過失相殺などを考慮して、具体的な示談金額を記します。
    支払い方法については、例えば毎月の分割であれば毎回の支払額と支払日、支払先、何年間の分割か、支払いが滞った場合の措置などを細かく決めます。これらは、示談書で最も重要な項目といえます。

    ⑥示談の条件

    清算条項など、一定条件のもとに当該示談が成立することがあれば記載します。

    ⑦署名・捺印

    最後に示談成立日を記し、双方が署名捺印します
    氏名を予め印刷したものでも示談書としては有効ですが、自筆で住所・氏名を書くことで双方が示談内容を吟味し納得したことの証となり、証拠能力が増します。

    不倫の示談書の書き方例・テンプレート

    保険会社の代理交渉が一般的な交通事故と違い、不倫の示談書の書き方は雛形のようなものがありませんが、書くべき内容は基本的に交通事故の示談書と同じと考えてよいでしょう。

    不倫の示談書テンプレート

    不倫の示談書テンプレート

    ①当事者の特定

    交通事故の場合と同様に、まず当事者間が示談書の内容に合意していることを記します。
    なお、テンプレートでは不倫相手との示談ですが、配偶者も含めた三当事者間の示談も可能です。

    ②不貞行為(不倫)の事実

    不倫が始まったきっかけや期間、先方から嫌がらせを受けた場合はその内容など、慰謝料に影響する事実を記載します。
    ただし、克明に記さず「〇年間不貞行為をしていた事実を認め、真摯に謝罪する」といった書き方でも、当事者が納得していれば問題ありません。

    ③慰謝料についての詳細

    不倫行為をした側が慰謝料の支払い義務を認める旨と、金額・支払い方法を記載します。

    ④誓約事項

    配偶者と婚姻関係を続ける場合は、「以後不倫相手とは一切連絡を取らない」といった内容を記すケースが多いです。

    ⑤誓約事項に違反した際のペナルティ

    先方が慰謝料を分割で支払っている間に支払いが滞った場合には、期限の利益を喪失する、または金額が上乗せされるなど、当事者間が合意したペナルティを記載します。

    ⑥求償権の放棄

    求償権は、示談書を不倫相手との間で作成する場合に必要となる項目です。
    不倫は単独でできる行為でなく、自身の配偶者と不倫相手が共同で行う「共同不法行為」であり、損害賠償責任も二人が共同で負います(民法第719条)。共同不法行為者のうち1名が全額を賠償した場合、賠償者は他の共同不法行為者に本来その者が支払うべき額を請求できます。これを求償権といいますが(民法第442条参照)、不倫相手に求償権を放棄してもらう旨が合意に至れば記載できます。

    ⑦守秘義務

    他者への口外に加え、ネットなどへの書きこみなどを一切禁じておくことが大切です。万が一に備えて、守秘義務違反に対するペナルティ(違約金など)も書いておくとよいでしょう。

    ⑧清算条項

    当事者間に、本示談書の内容以外の債権債務が存在しないことを約します。

    最後に示談成立日を記載し、当事者の署名捺印を行います。

    必要な示談書の部数は?

    示談書は契約書の一種ですから、他の契約書と同じく当事者がそれぞれまったく同じものを保管しておく必要があります。したがって、当事者が2名であれば2通、3名であれば3通作成します。
    公正証書で作成する場合は、一般的には原本を公証人が保管し、当事者には正本と謄本が渡され、強制執行力のある正本を債権者(被害者)が保管します。正本の複数交付については、正当な事由がある場合のみ認められます。

    示談書のサイズや枚数

    示談書のサイズに決まりはありませんが、一般的なサイズはA4でしょう。枚数は何枚でもかまいません。ただし、複数枚になる場合は念のため割印をしておいたほうがよいでしょう。
    公正証書の場合は、枚数が1枚増えるごと費用が加算されるので注意が必要です。

    示談書は自分で作成することができる

    以上のように、内容について意思表示の合致(合意)さえあれば、示談書は当事者同士で作成しても問題ありません。ただし、早く終わらせたいからといって、慌てて示談にすることはおすすめしません。専門家の意見を聞き、自分が納得した上で示談に臨むようにしましょう。

よくある質問

示談書とは?

当事者間に生じた何らかのトラブルを解決するための話し合いの結果、合意した内容を書き留めた書類のことです。 詳しくはこちらをご覧ください。

示談書を公正証書で作るメリットは?

公正証書があれば、相手が支払いを実行しない場合に裁判をしなくてもすぐに相手の財産に対する強制執行が可能です。 詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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