• 作成日 : 2022年2月9日

電子契約の導入が自治体で加速!?地方自治法施行規則の改正とは

令和3年1月、地方自治体(地方公共団体)の電子契約締結に際して要求される措置を定める地方自治法施行規則が改正され、電子証明書が不要になりました。電子証明書が障害となり、印紙を付した契約書を取り交わしていた民間企業は、クラウド型電子署名等だけで地方自治体と契約を締結できるようになったのです。今回は、その概要を解説します。

自治体の電子契約導入が注目されている背景

地方自治法施行規則の改正により、地方自治体との電子契約締結にあたって電子証明書を併せて送信する必要がなくなったため、民間企業が地方自治体と電子契約を締結するハードルが低くなりました。改正の内容を見ていきましょう。

地方自治法施行規則の改正

地方自治法234条5項は、地方自治体が電子契約を締結する際、相手方により改変なく作成されたことを確実に示すことができるものとして、総務省令で定める措置が講じられなければならない旨を定めています。

総務省令で定める措置の具体的な内容については、地方自治法施行規則12条の4の2で定められています。この条文について令和3年1月29日に第2項が削除され、第1項のみが残されるという改正が公布・施行されました。

改正前の地方自治法施行規則

改正前の地方自治法施行規則は、地方自治法234条5項の総務省令で定める措置として、その12条の4の2第1項で一定の電子署名とする旨を定め、その第2項では第1項の電子署名を行った者を確認するために必要な事項を証する電子証明書を電子署名に併せて送信する必要がある旨を定めていました。

電子証明書は、「地方公共団体情報システム機構(J-LIS)」の発行するもの(総務省関係法令に係る情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律施行規則2条2項2号イ。職責証明書含む)か、主務大臣から認定を受けた事業者(認定認証事業者)が作成したもの(同号ロ)、あるいは登記官が作成したもの(同号ハ)である必要があり、民間企業にとってハードルの高いものでした。

参考:地方自治法施行規則の一部を改正する省令等の公布及び施行に伴う電子契約における電子署名及び電子証明書等に関する留意事項についての総務省自治行政局行政課長通知|総務省

改正後の地方自治法施行規則

上記のような内容であった地方自治法施行規則12条の4の2は、令和3年1月29日の改正により、第2項が削除され、第1項のみが残されることになりました。これにより一定の電子署名さえあれば、第2項で要求されていた電子証明書を併せて送信するという手続きを踏まなくても、電子契約を締結することができることになります。

総務省は「今般の商取引一般の慣習の現状に鑑み」、このような改正がなされたと説明しています。

地方自治体の電子契約が変わるポイント

地方自治法施行規則が改正されたことで、条文上は「電子証明書を併せて送信すること」が不要となりましたが、このことが地方自治体との「電子契約」の締結に与える影響について見ていきます。

地方自治法施行規則改正前の電子契約について

地方自治法施行規則改正前の電子契約は、一定の電子証明書を併せて送信する必要がありました。電子証明書を併せて送信しなくてはならかったということは、地方自治体との電子契約においては「当事者署名型」の電子契約しか利用できず、「事業者署名型(立会人型)」の電子契約を利用できなかったということです。

「当事者署名型」の電子契約は、契約当事者がそれぞれ電子文書に各当事者の電子署名を行うものです。一方で「事業者署名型」の電子契約では、契約当事者が作成した電子文書について、電子契約サービス提供事業者が自身の署名鍵で電子署名を行います。

「事業者署名型」の電子契約で電子証明書を付するとすれば、契約当事者ではなく電子契約サービス提供事業者の電子証明書となるため、地方自治法234条5項の要件を満たせなかったのです。

地方自治法施行規則改正後の電子契約について

地方自治法施行規則改正によって電子証明書を要求する第2項が削除されたことから、民間企業には地方自治体との間で「当事者署名型」の電子契約のみならず、「事業者署名型」の電子契約を締結する道も開かれたことになります。

改正前は本人性の確度・非改変性が高いとされる一定のレベルの電子証明書が求められていたことから、改正後はJ-LISや認定認証事業者、登記官でなくとも、一定の事業者が電子証明書を付して「当事者署名型」の電子契約を締結することも認められる可能性があります。

ただし、「電子署名」としての適格(本人性の確度・非改変性)を満たすものであるかどうか(電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律施行規則2条、電子署名及び認証業務に関する法律2条1項)は、事業者が提供するサービスごとに問題になり得ます。
電子契約 自治体③

クラウド型電子署名も利用可能に

クラウド型電子署名は、ローカル署名との対比として使われる用語です。ローカル署名は当事者署名型の一種で、契約当事者がUSBメモリやICカードなどに格納された電子証明書を利用して電子署名を行うことを指します。

クラウド型電子署名は、当事者署名型のうち「リモート署名」と呼ばれる方法と事業者署名型を含むものであり、クラウド技術を使って電子契約を締結するものです。「リモート署名」とは、あらかじめ発行しておいた各契約当事者の電子証明書及び秘密鍵をクラウド上に保管して、その契約当事者がクラウド上のサービスにアクセスして電子署名を行う方法のことです。

令和3年1月29日の地方自治法施行規則改正により、地方自治体は事業者署名型の電子契約や一定の者以外による当事者署名型の電子契約を締結できるようになったことから、クラウド型電子署名を用いた電子契約の締結も可能になりました。

自治体の電子契約サービス導入には、マネーフォワード クラウド契約がオススメ

クラウド型電子署名であり、かつリモート署名を採用するマネーフォワードクラウド契約を使うことで、契約相手が遠隔地にいる場合でもクラウドを用いて電子契約を締結できます。

また、これまで地方自治体はLGPKIに対応した電子契約サービスしか使えませんでしたが、令和3年1月29日の地方自治法施行規則改正により、電子署名・電子証明書がある電子契約サービスであれば自治体でも選択可能になっています。マネーフォワード クラウド契約もその点に対応していますので、選択肢の一つとしてご検討してみてはいかがでしょうか。

よくある質問

自治体で電子契約導入が注目されているのはなぜですか?

令和3年1月29日に地方自治法施行規則が改正され、電子証明書を併せて送信する必要がなくなり、一定の「当事者署名型」の電子契約以外の類型の電子契約を地方自治体と締結する道が開かれたためです。詳しくはこちらをご覧ください。

地方自治法施行規則の改正後、自治体での電子契約はどう変わりますか?

電子契約の締結に際して要求されていた一定の電子証明書の添付が不要となり、「事業者署名型(立会人型)」ないしクラウド型電子署名を利用した電子契約を締結する道が開かれました。詳しくはこちらをご覧ください。


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