- 更新日 : 2025年1月31日
フリーランス新法で契約書の見直しが必要に!確認事項や対応方法を解説
フリーランス新法の施行により、契約書の見直しが求められるようになります。
本記事では、フリーランス新法の概要に触れつつ業務委託契約書の見直しが必要な理由や、取引先の条件など確認すべき事項、新法に対応した契約書を作成するための具体的なポイントを解説します。
目次
フリーランス新法の概要
フリーランス新法は、フリーランスの就業環境改善を目的とした法律であり、従業員を使用しない個人事業主または一人で運営している法人(特定受託事業者)が受託者となり、特定業務委託事業者(従業員を使用する法人、個人事業主、役員が2人以上いる法人)が委託者となって業務を委託する場合の取引が対象です。
本法は、下請法と違って資本金の大小にかかわらず、ほとんどの発注事業者に適用されます。ただし、委託者がフリーランス(従業員を使用しない個人事業主、法人等)である場合や単なる商品の売買や消費者からの委託は対象外です。
主な規定として、取引条件の明示義務や報酬の支払期日設定、ハラスメント防止体制の整備などがあり、継続的な業務委託の場合は7つの禁止事項が定められています。
施行は2024年11月、違反した場合は行政指導や勧告、公表などの措置が取られることもあるため注意が必要です。フリーランスと取引のある企業は、法律の内容を理解し、適切な対応が求められます。
フリーランス新法で業務委託契約書の見直しが必要になる
フリーランス新法の施行に伴い、業務委託契約書の見直しが必要です。この法律は、「取引の適正化」と「就業環境の整備」を目的としています。
取引の適正化では、取引条件の明示と期日における報酬支払が義務付けられました。また、受領拒否や報酬の減額、買いたたきなど7つの行為が禁止されています。
就業環境の整備については、募集情報の的確な表示や育児介護との両立への配慮が求められます。さらに、ハラスメント対策に関する体制整備も義務化されました。
これらの要件を満たすため、現行の契約書を見直し、必要な条項を追加または修正する必要があります。
取引先の従業員人数や契約内容を把握しなければならない
フリーランス新法の適用対象を正確に把握することは、企業にとって重要な課題です。この法律は、従業員を使用しない個人事業主や、代表者以外に役員がおらず従業員も雇用していない法人を「特定受託事業者」として保護するため、取引先がこの定義に該当するかどうかを確認する必要があります。
まず、取引先の従業員数や役員構成を調査し、特定受託事業者に該当するかどうかを判断しなければなりません。また、継続的な業務委託関係にある場合は、その取引期間も確認が必要です。
契約書の見直しが不要な場合
フリーランス新法が施行された後でも、すべての業務委託契約書が見直しを要するわけではありません。
見直しが不要となる場合として、まず、従業員を雇用している個人事業主や法人との契約が挙げられます。このような事業者は、フリーランス新法の対象外です。
また、フリーランスではない大企業や中堅企業との契約についても、見直しの必要はありません。
さらに、業務委託取引以外の物品売買契約なども、新法の適用外となるため、契約書の見直しは不要です。
フリーランス新法に対応した契約書を作成するために必要な記載事項
フリーランス新法に対応するためには、契約書に業務委託の取引条件を詳細に記載することが求められます。以下では、新法に対応した契約書作成に必要な記載事項について解説します。
書面等による取引条件の明示
フリーランスに業務を委託した際は、速やかに取引条件を文書または電子的手段で明確に提示する必要があります。取引条件の明示義務(第3条)に基づくものです。
- 業務委託事業者および特定受託事業者の名称
発注者とフリーランス双方の名称を明記する必要があります。ニックネームやビジネスネームでも問題ありませんが、商号や氏名、または番号や記号など、業務委託事業者と特定受託事業者が識別できる情報を記載しなければなりません。 - 業務委託をした日
発注者とフリーランスが業務委託の契約に合意した日付を記載します。 - 特定受託事業者の給付の内容
フリーランスに依頼する業務の詳細を記載します。提供内容については、品目・品種・数量(回数)・規格・仕様を明確に示さなければなりません。
また、知的財産権がかかわる場合、業務委託の目的を超えてその権利を譲渡や許諾する場合は、その範囲も具体的に記載することが求められます。 - 給付を受領または役務の提供を受ける期日
納品の期限や作業日時を明記します。 - 給付を受領または役務の提供を受ける場所
納品場所や作業の実施場所を記載します。 - 給付の内容について検査する場合は 、検査を完了する期日
検査を行う場合に記載します。 - 報酬の額および支払期日
フリーランスの知的財産権を譲渡・許諾する際は、その対価を報酬に含める必要があります。また、業務に必要な経費を発注側が負担する場合には、報酬額にそれらの経費も含めた総額がわかるように明確に記載しなければなりません。支払期日は、明確な支払日を設定することが求められます。 - 現金以外の方法で報酬
現金以外の方法で支払う場合に記載
報酬支払期日の設定・期日内の支払
フリーランス新法に従い、業務委託契約書には報酬の支払期日をはっきりと記載することが求められます。
発注事業者は、業務完了後60日以内のうち、できるだけ早い支払日を設定し、その期日までに報酬を支払わなければなりません。「○月○日支払」や「毎月○日締め、翌月○日支払」のように具体的に記載することが重要です。
また、再委託の場合は、「再委託であること」「元委託者の名称」「元委託業務の対価の支払期日」を明示することにより、元委託者の支払日から30日以内の支払期日にできます。
禁止行為(1ヶ月以上の業務委託の場合)
フリーランス新法では、1ヶ月以上の業務委託契約を結ぶフリーランスと発注事業者の間におけるルールが明確にされました。
発注事業者には7つの禁止行為が定められており、たとえフリーランスが同意していたとしても、これらの行為は法律に抵触する可能性があるため、注意が必要です。
- 理由なく受領を拒むこと
- 理由なく報酬を減額すること
- 理由なく返品を行うこと
- 市場の適正価格よりも著しく低い報酬額を定めること
- 正当な理由なく物の購入や役務の利用を強制すること
- 金銭、役務など経済上の利益を提供させること
- 理由なく内容を変更する、またはやり直しさせること
これらの点を念頭に入れて、これまでの契約書を見直してみましょう。
中途解除等
フリーランス新法に基づき、発注事業者は6ヶ月以上の業務委託契約を解除または更新しない場合、契約終了の30日前までに予告しなければなりません。
例外として、災害や再委託で元受の契約が解除された場合、短期契約、フリーランスの過失が原因などの場合は予告が免除されます。
予告後、フリーランスが解除理由を請求した際には、例外事由を除き速やかに理由を開示しなければなりません。
育児介護等とハラスメント対策
フリーランス新法では、特定業務委託事業者にハラスメント相談体制の整備と育児・介護との両立への配慮が義務付けられています。
契約書への明記は必須とはされていませんが、相談窓口を明確化することで、特定受託事業者とのトラブルを未然に防げるため、契約書に明記することをお勧めします。
参考:内閣官房 ここからはじめるフリーランス・事業者間取引適正化等法
フリーランス新法に対応した契約書を作成する際のポイント
契約書の作成にあたっては、以下の点に留意しましょう。
契約内容の明示義務
フリーランス新法に従い、契約書には業務内容・報酬額・支払期日・支払方法などを明確に記載する必要があります。既存の契約書を見直す際は、これらの項目が具体的に記載されているかを確認しましょう。
契約内容が曖昧であると誤解を招く可能性があるため、明確な記載が重要です。契約書の内容を明示することで双方の理解を一致させ、トラブルを未然に防げます。
報酬の支払
フリーランス新法では、物品等を受領した日から60日以内に報酬を支払うことが義務付けられています。この規定に基づき、契約書の支払条件を見直す必要があります。
「○月○日支払」や「毎月○日締め、翌月○日支払」のように具体的な日付が明示されているかを確認しましょう。
再委託の場合は、元委託者の支払日から30日以内での支払期日設定が可能です。この際、再委託である旨や元委託者の名称、元委託業務の対価の支払期日も明記しなければなりません。
禁止行為
1ヶ月以上の継続的な業務委託の場合、受領拒否・報酬の減額・返品・買いたたきなど7つの行為が禁止されます。
これら7つの行為は、たとえフリーランスが同意していたとしても法律に抵触するおそれがあるため、注意が必要です。
契約書の見直しにあたっては、各条項がこれらの禁止行為に抵触していないかを慎重に確認しましょう。
契約解除・不更新の予告
フリーランス新法に基づき、6ヶ月以上の継続的な業務委託契約では、解除または不更新時に30日前までの予告が義務付けられます。既存の契約書を見直す際は、この点に抵触する条項がないかどうかをチェックしましょう。
適切な予告期間を設けることで、フリーランスは次の仕事を探す時間的余裕が得られます。一方、発注者側も円滑な業務移行を図れるメリットがあります。双方にとって有益な規定であることを理解し、契約書に反映させましょう。
ハラスメント防止と育児・介護への配慮
フリーランス新法の施行に伴い、業務委託事業者には新たな責務が生じました。その中でも特筆すべきは、ハラスメント防止措置と育児・介護への配慮義務です。
育児・介護への配慮義務については、6ヶ月以上の継続的な業務委託契約の場合に義務化されるため、契約書作成時には慎重に検討しましょう。
こうした配慮は、長期的には業務委託事業者とフリーランスの良好な関係構築につながり、双方にとってメリットをもたらすことでしょう。
フリーランス新法は電子契約でも対応可能
フリーランス新法では、契約内容の明示を電子的方法で行うことも認められています。これにより、電子契約書の利用が可能となり、業務効率化やペーパーレス化が可能です。
電子契約の方法としては、メールの本文に明示事項を記載する以外にも、ウェブページのURLを記載したり、PDFファイルを添付したりすることもできます。
ただし、SNSなどを利用する場合は、メッセージが削除されるリスクもあるため、スクリーンショットなどで内容を保存しておくようにしましょう。
また、電子帳簿保存法の観点から、電子契約書は改ざん防止措置を施すとともに閲覧可能な状態で保存し、検索機能を確保することが求められます。
フリーランス新法を見据えて契約書の内容を見直そう
フリーランス新法の施行に伴い、業務委託契約書の見直しは避けられません。この法律は、フリーランスの権利を保護し、公正な取引環境の整備を目的としています。
契約書には、業務内容や報酬、支払期日などの重要事項を明確に記載する必要があります。また、電子契約も認められているため、デジタル化にも対応可能です。
この機会を活用してフリーランスとの関係をより良いものに発展させ、法律の要件を満たすだけでなく双方にとって有益な契約内容となるようにしていきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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