• 作成日 : 2023年12月15日

契約の変更に関する条項とは?契約書の変更方法や覚書の書き方を解説

契約の変更に関する条項とは?契約書の変更方法や覚書の書き方を解説

契約の変更に関する条項とは、契約締結後に契約を変更する必要が生じた際などに適用される条件や手続きを規定する条項のことです。あらかじめ条項を定めておくことで、契約後に変更を加えるときにトラブルを回避しやすくなります。具体的な書き方や例文、締結済みの契約内容を変更する方法について解説します。また、覚書に活用できるテンプレートも紹介するので、ぜひご活用ください。

契約の変更に関する条項とは?

契約の変更に関する条項とは、契約締結後に契約を変更する必要が生じた際などに適用される条件や手続きについて規定する条項のことです。

契約の変更に関する条項を定めることで、変更条件が明確になり、契約変更方法を限定できます。実際のところ、契約変更は口頭でも可能です。しかし、契約の変更に関する条項で「契約変更の手続きは書面に限定する」と規定しておけば、書面以外の方法を排除できます。

また、契約の変更に関する条項を定めることで、相手の不利益が想定されるケースにおいても契約変更が実現しやすくなります。

吟味を重ねて契約書を作成しても、見落としがあったり、法律や時世が変わったりすることで、不具合が生じるかもしれません。万が一に備えるためにも、適宜契約を変更できるように契約の変更に関する条項を定めておきましょう。

契約内容を変更する際の法的な規則

契約を変更するときは、以下の原則のもとで行なわれます。

  • 当事者全員の合意が必要
  • 口頭や書面(覚書)でも成立する
  • 契約変更の効力は過去にさかのぼるものではない

変更した契約が無効とならないためにも、原則を押さえておくことが必要です。各原則について解説します。

当事者全員の合意が必要

契約締結は当事者全員の合意が必要ですが、契約変更も同様で、当事者全員の合意が求められます。後述しますが、契約の変更に関する条項においても、第一項で「当事者全員の合意により契約を変更する」と記載することが一般的です。

ただし、定型約款の変更による契約変更については、当事者全員の合意は不要です。定型約款とは一定の要件を満たす約款のことで、電気供給約款やガス供給約款のように不特定多数に対して同じ契約を締結するときに用いられます。定型約款においては、変更内容が相手にとって利益となる場合、または必要性があり変更内容の相当性を満たすものである場合であれば、契約者の合意を得ずして変更できます。

口頭や書面(覚書)でも成立する

契約を変更する方法については、法律上は特に決まりがありません。そのため、文書を作成しなくても、口頭や覚書、メールでも契約内容の変更が可能です。

しかし、口頭で契約内容を変更すると、後で「言った・言わない」のトラブルに発展する可能性があります。トラブル回避のためにも、とりわけビジネス関連の契約書を変更するときは、書面を用いるほうがよいでしょう。契約の変更に関する条項においても、変更方法を書面のみと指定することが一般的です。

契約変更の効力は過去にさかのぼるものではない

契約変更が成立したときは、変更を定めた時点から将来に向かって効力が発生します。過去にはさかのぼらないため、万が一、過去に契約後の内容と相反する出来事があっても、ペナルティは問われません。

たとえば、契約変更により月額料金を値上げした場合、効力が発生するとした日時よりも前の利用に関しては、変更前の料金が適用されます。

契約の変更に関する条項は基本的に設定すべき

契約を取り巻く情勢や法律が変わり、契約変更を余儀なくされることがあります。どのような契約においても変更が想定されるため、基本的にはすべての契約において、契約の変更に関する条項を定めておくことが必要です。

また、前章で紹介した原則(当事者全員の合意が必要、変更方法は不問、効力は過去にさかのぼらない)のいずれかの原則に従わないで契約を変更する必要があるときも、契約の変更に関する条項を定めることが必要です。たとえば、次のようなときは、契約の変更に関する条項を定めておきましょう。

  • 書面でのみ契約を変更したい
  • 当事者の合意なしに契約を変更したい

契約の変更に関する条項の例文

契約の変更に関する条項は、特に文言は決まっていません。しかし、必要事項を網羅していないときには、希望する形での契約変更を実現できない可能性があります。パターンに分けて例文を紹介するので、ぜひ参考にしてください。

標準的な例文

契約の変更に対して特に制限を設けないときは、契約当事者全員の合意が必要な旨と、書面による変更に制限する旨のみ記します。契約書に記載する際は、以下の文言を参考ください。

第〇条(契約の変更)本契約の条項は、当事者全員による書面での合意により変更可能とする。

約款変更について定めるときの例文

約款を変更する場合に備えて条項を作成するときは、一方的な通知により変更が可能な旨を記載しておくことが必要です。ただし、契約当事者が約款変更に気付かないことがないよう、周知する方法についても定めておきましょう。

第〇条(契約の変更)

1. 本契約の条項は、当事者全員による書面での合意により変更可能とする。

2. 前項にかかわらず、民法第548条の4第1項により、甲は約款を変更することで本契約の内容の変更が可能とする。甲は変更を実施する旨と効力発生時期、変更後の内容を、書面送付により乙に対して周知する。

締結済みの契約内容を変更する方法

変更した契約書は、すべて書き換える必要はありません。変更内容が少ない場合は一部変更、全面的に変更する場合は全部変更とし、契約当事者が確認しやすいように記載してください。各例を紹介します。

一部変更

契約書の特定の条項のみ変更するときは、以下のように一部変更として記載します。

なお、既存の条項を変更する場合は「例1」、既存の条項を削除するときは「例2」、新規条項を追加するときは「例3」を参照してください。変更や削除、追加が多く、複雑になりそうなときは、次に紹介する全部変更を利用するほうがよいかもしれません。

〇〇株式会社(以下「甲」とする)と△△株式会社(以下「乙」とする)は、甲及び乙の間の〇年〇月〇日付〇〇契約書(以下「原契約」とする)に関して、以下の通り、一部変更契約書を締結する。一部変更契約書で用いる用語は、別途新たに定義する場合を除き、原契約の定義のままの意味を持つ。

第1条(原契約の変更)

【例1:変更】

原契約第〇条を以下のように変更する。

(変更前)

(変更後)

【例2:削除】

原契約第〇条第〇項を削除する。

【例3:追加】

原契約第〇条として、以下の条文を追加する。

第〇条……

全部変更

契約内容をすべて、あるいは大部分を変更する場合は、以下のように全部変更として記載してください。この場合は、変更しない条項についても、すべて再度記載しなくてはいけません。

〇〇株式会社(以下「甲」とする)と△△株式会社(以下「乙」とする)は、甲及び乙の間の〇年〇月〇日付〇〇契約書(以下「原契約」とする)に関して、以下の通り、全面変更契約書を締結する。

第1条(定義)……

第2条……

契約の変更に伴う覚書のテンプレート/ひな形

契約変更によるトラブルを回避するためにも、変更する内容についてはすべて書面で残しておくことが大切です。

書面で契約を変更する場合は、覚書も有効です。契約の変更に伴う覚書に活用できる無料テンプレートを紹介します。ぜひダウンロードして、ご利用ください。

契約の変更に伴う覚書の書き方

契約の変更を書面で残すときには、次の覚書を参考にして変更内容が明らかになるようにしておきましょう。また、覚書は変更だけではなく、削除や追加においても使用できます。

契約変更に関する覚書

〇〇株式会社(以下、「甲」とする)と△△株式会社(以下、「乙」とする)は、甲乙間の20○○年〇月〇日付契約(以下、「原契約」という。)に関して、下記の通り合意した。

第1条(委託料の変更)
原契約第〇条に定める委託料「月額〇万円(消費税別)」を「月額△万円(消費税別)」に変更する。

第2条(変更の効力発生日)
前条の委託料の変更は〇年〇月分の業務より適用される。

第3条(原契約の適用)
本覚書以外の事項は原契約を適用する。

以上

覚書は契約書ではないため、変更事項のみピックアップして記載します。ただし、変更事項により影響が生じると思われる項目については、抜け漏れなく書き留めておくようにしましょう。

たとえば、上記の例では委託料のみ変更しますが、変更が適用される時期や委託料以外の契約内容についても記載することで、契約当事者間で誤解のない内容に仕上がります。

契約締結時には変更についても文章化しておこう

関連する法律や時世などが変化することで、契約を変更しなくてはいけない状況になることがあります。契約を締結するときは、あらかじめ変更方法についても定めておきましょう。

また、契約変更は口頭でも可能ですが、文章で変更について定めることでトラブルを回避できます。覚書を活用するなどして、お互いに誤解なく利用できるようにしておきましょう。


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