- 更新日 : 2024年8月30日
ホームページ制作に関わる契約 とは?委託や請負、保守契約書をひな形つきで解説
Web制作会社がホームページ(Webサイト)の作成依頼を受ける際は、契約書を交わすのが一般的です。ホームページの保守・管理業務を請け負う契約でも、同様に契約書を作成するでしょう。
今回はホームページ制作に関わる契約書の種類や内容、注意すべきポイントについて説明します。テンプレートも用意したので、ぜひ活用してください。
■「ホームページ制作業務委託契約書」のテンプレート/ひな形はこちら
■保守まで含む場合のテンプレート/ひな形はこちら
目次
ホームページ制作(Webサイト制作)に関わる契約書にはどんなものがある?
ホームページ制作の依頼を受ける際は、一般的に「業務委託契約書」「請負契約書」「保守業務委託契約書」などを作成します。
契約の名称 | 契約の目的 |
---|---|
業務委託契約 | ホームページ制作を外部業者に委託する |
請負契約 | 外部業者がホームページの完成を約束する |
保守業務委託契約 | ホームページの保守業務を外部業者に委託する |
業務委託契約とは、企業などがある業務を外部に委託する際に締結する契約のことです。いわゆる「外注」として、ホームページ制作を請け負うケースなどで締結します。
請負契約書も同様に、外部の業者に業務を委託する際に作成し、締結するものです。請負契約は、請け負った側が仕事を完遂することを目的とした契約です。ホームページ制作の場合は、ホームページが完成することで報酬が発生します。
第六百三十二条 請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
引用:民法|e-Gov法令検索
業務委託契約は、請負契約や委任契約、準委任契約の総称です。そのため、「請負契約書=業務委託契約書」といえます。
すでに存在するホームページを保守・管理する場合は「保守業務委託契約」を締結しますが、これも業務委託契約の一種です。
ホームページ(Webサイト制作)の契約書テンプレート
ホームページ制作を委託する際の業務委託契約書や請負契約書、あるいはホームページの保守・管理を委託する際の保守業務委託契約書は、いずれも注意点を押さえたうえで作成し、さまざまな項目を盛り込む必要があります。
特に、はじめて契約書を作成する方や慣れていない方は、どのように書いたらよいのか分からず、戸惑うかもしれません。そこで、ホームページ(Webサイト制作)の契約書のテンプレートを用意しましたので、こちらを参考に作成してみましょう。
ホームページ制作業務委託契約書のテンプレートは下記のページからダウンロードできます。請負契約書に関してもこちらのテンプレートと内容はほぼ同じです。
ホームページを制作後に保守管理まで委託する場合は、以下のテンプレートが参考になります。
業務委託・請負契約書に記入する基本項目
では、ホームページ制作を請け負う際はどのような内容を契約書に盛り込めばよいのでしょうか。業務委託契約書・請負契約書に記載する項目について見ていきましょう。
委託・請負する範囲
まず、委託・請負業務の内容や範囲について記載します。ホームページの制作と納品が完了したら契約を完遂とするのか、その後の保守まで請け負うのか、といったことを明記します。
ホームページ制作・保守では、さまざまな作業が発生します。ドメインの取得はどうするか、サーバーの契約は誰がするのか、セキュリティの対応も含めるのか、ページはどこまで作るのか(ホームページのみなのか、ブログなども作成するのかなど)といったことを明確にしておかないと、後でトラブルになることがあります。
再委託の可否
バナーの制作をデザイナーに外注する、ホームページに載せる文章の作成をライターに依頼するなど、業務の一部を外部に委託するホームページ制作会社やWeb制作会社は少なくありません。
基本的に請負契約では再委託ができますが、委託した側は受託したホームページ制作会社がすべての業務を行っていると考えるのが普通です。
再委託していることが分かった場合は「孫請けに丸投げしている」と捉えられてトラブルになる可能性もあるので、再委託の可否や方法についても契約書に盛り込んでおきましょう。
検収に関する取り決め
検収とは、納品されたものが発注した内容(数量、仕様、品質など)に合致しているかどうかを確認したうえで納品物を受け取ることです。検収の基準や期間を定めていないと、納品をしたにも関わらず検収を引き延ばされたり、検収不合格とされたりして報酬が支払われないというトラブルが発生するリスクがあります。
発注者側が期待する品質・仕様の納品物を納期どおりに納めてもらうためにも、双方で検収に関する取り決めをしっかり定めて、契約書に明記しておくことが大切です。
契約不適合責任
契約不適合責任とは、受託者(ホームページ制作会社)が委託者(ホームページ制作を発注した側)に対して負う責任のことです。納品されたものが契約の内容(種類、品質、数量など)に適合していなかった場合、委託者は契約に適合したものを引き渡すよう求めることができる「追完請求権」、代金の減額を求めることができる「代金減額請求権」、納品されたものによって発生した損害を補償することを求めることができる「損害賠償請求権」、契約を取り消すことを求めることができる「契約解除権」を行使することができます。
ただし、「どのような場合にどういった内容の契約不適合責任を問えるのか」を明確にしておかないと、やはり後々トラブルになる可能性があります。
著作権
著作権とは、著作物を創作した著作者に与えられる権利のことです。著作者が著作物を独占的に利用できる権利であり、著作者以外の者はこれを侵す行為(無断で複製したり改変したりすること)を行うことはできません。なお、著作権は第三者に譲渡することができます。
ホームページの場合は制作した会社が著作権を持つことになりますが、それではクライアントが修正や更新を行うことができません。そこで、著作者であるホームページ制作会社がクライアントに著作権を譲渡する旨を契約書に明記しておけば、このような問題を解決することができます。
損害賠償
前述の通り、受託者が契約内容に合致しないものを納品した場合は契約不適合責任を負うことになり、委託者は損害賠償請求などができます。納品時に契約内容に適合したものであっても、「ホームページを作ったのに効果が出ていない」「思ったよりも集客できていない」といった理由で損害賠償を請求されるケースもあります。
賠償の対象や上限額といった損害賠償に関する項目を盛り込むことで、そのようなトラブルを防ぐことができます。「効果を保証するものではない」という内容を記載するのも有効です。
ホームページ制作・保守契約書
ホームページ制作・保守契約書の場合は、制作の部分については上記の業務委託・請負契約書と同様です。
- 委託・請負する範囲
- 再委託の可否
- 検収に関する取り決め
- 契約不適合責任
- 著作権
- 損害賠償
上記の内容に加え以下の項目を盛り込みましょう。
保守業務の内容と委託料
ホームページ制作・保守契約書の場合、ホームページ制作の業務内容や委託料とは別の項目で保守業務の内容と委託料を明らかにしましょう。
委託料(月額)と支払い方法、手数料の負担者について明記します。併せて保守業務の内容についても記載しましょう。
保守業務の有効期間
保守業務の契約がいつまで有効になるのかも明らかにしておくことが重要です。
「本制作業務完了日から〇年間とする」というように具体的に明記しましょう。また、保守契約の更新や有効期間中の解約についても記載します。
保守業務の再委託
保守業務を受託者側が外部に再委託(外注)できるかどうかを明らかにします。
「本保守業務の全部または一部を第三者に再委託することができない」もしくは「書面またはメールによる承諾を得た場合に限り、本業務の全部または一部を第三者に再委託することができる」というように記載しましょう。
ホームページ作成に特異な契約書の項目
ここまで紹介したものは、他業種においても業務委託契約書や請負契約書に盛り込まれる基本的な項目です。ここからは、ホームページ作成ならではの契約書の項目について解説します。以下のような内容も契約書に盛り込んでおくことで、クライアントと認識のすり合わせができるため、トラブルの防止につながります。
仕様の詳細
ホームページの作成でトラブルになりやすいのが、仕様です。レイアウトやデザイン、ページ数、コンテンツの文字数、内容など、仕様面でクライアントと認識のズレが生じることはよくあります。
これらの内容を仕様書としてまとめ、業務委託契約書や請負契約書の業務内容の項目に「別途確定する仕様書に準じる」といった記載をすることで、トラブルを防止できます。
仕様書は住宅に置き換えると設計図であり、これがないと制作がスムーズに進まなくなります。契約書と併せて、仕様書もしっかり作成しましょう。
対応ブラウザの詳細
ホームページは、ブラウザによって見え方が異なります。例えば、クライアントが古いパソコンやスマートフォン、あるいは特殊なブラウザでホームページを閲覧した場合は「見られない」「レイアウトが崩れている」といったクレームが発生することがあります。
世の中には多くのブラウザがあり、同じブラウザでもバージョンによって見え方は変わります。とはいえ、ホームページをすべてのブラウザに完璧に対応させるのは、現実的ではありません。契約書に対応ブラウザを明記しておけば、非対応ブラウザで閲覧した場合にクレームやトラブルが発生するのを防ぐことができます。
契約書の修正を行う場合はどうする?
契約書を修正・訂正する、あるいは条項を追加するなど、何らかの変更を加える場合は、契約締結前であればパソコンで書き換えるだけで済みます。契約後は軽微な修正(誤字・脱字など)であれば訂正印や捨印による修正が可能です。
契約締結後に契約書の条項を追加する場合は、変更契約書を締結します。「どの契約書を修正するか」「元の契約書のどこを修正するのか」「どのような内容に変更するのか」「変更後の効力発生日」などを記載します。
契約を締結した後に内容を変更する場合は、手間がかかります。何度も修正や変更を求めると、信用が失墜するおそれもあります。しっかり事情を説明し、変更の契約に応じてもらえるよう交渉しましょう。
ホームページ制作を請ける前にはしっかりと契約書で認識をすり合わせましょう
ホームページは完成するまで形が見えないため、完成後に制作側とクライアントの認識のズレが明らかになるケースが多々あります。制作者側は事前に打ち合わせを行った内容に沿ってホームページを作成したのにも関わらずクレームを受けることになり、クライアント側は満足いくものが納品されないことになるため、双方が損害を被ります。
後々のトラブルを防ぎ、制作者・クライアントの双方が満足できる取引にするためにも、業務委託契約書・請負契約書で契約を締結し、事前に認識をしっかりすり合わせておきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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