• 作成日 : 2022年11月11日

法定代理人とは?権限から任意代理人との違いまで解説

法定代理人とは?権限から任意代理人との違いまで解説

法定代理人とは、本人の意思によらずに法律に規定された法定代理権に基づき本人を代理する者です。これは、契約を締結する際に関わってくる大事な制度の一つです。今回は、法定代理人の権限や任意代理との違いについてわかりやすくご説明します。

法定代理人とは?

まず、法定代理人の種類をご紹介します。法定代理人の種類については、基本的に民法でそのルールが定められています。

親権者

本人が未成年者の場合、婚姻関係にある父母は親権者として当然に法定代理人になります(民法818条、824条参照)。父母が離婚したときは、協議または裁判手続を経て片方が親権者となります。

未成年後見人

未成年者については、多くの場合は親権者が法定代理人となります。しかし、両親がすでに他界しているなどして親権者がいないときは、未成年後見人が選任されることになります(民法838条1号)。

後見制度は、本来は判断能力が低下した成人を想定した制度ですが、未成年者に関する後見の必要性から、未成年後見人に関しても規定されています。

成年後見人

判断能力が低下し自分で財産を管理することが難しくなった人の保護を目的に作られた制度が成年後見です(民法838条2号)。かつて使われていた差別的な響きのネーミングを変更するとともに、本人の自己決定権の尊重や利便性向上も図られています。

成年後見に加え、同様の法定代理として保佐と補助があります。これらは、後見よりも法定代理人の権限が狭くなります。法定代理人の権限の大きさでいうと、後見>保佐>補助のイメージです。

法定代理人に認められる権限

次に、法定代理人に認められる権限をご説明します。基本的に、法定代理人には広範な代理権が与えられています。

親権者・未成年後見人

原則として、財産上の行為について代理権が認められます(民法824条本文)。

親権者は、未成年者が当事者となる売買やアパートの賃借等の法律行為を代理して行えます(民法5条、824条、859条参照)。また、未成年者が勝手に行った売買や賃貸借などの法律行為を追認することも、取り消すこともできます(民法5条、120条、122条)。

親権者の代理権は広く、明らかに親として失格と認められない限り(「親権者に子を代理する権限を授与した法の趣旨に著しく反すると認められる特段の事情がない限り」)、代理権の濫用には当たりません(最判平成4年12月10日)。

成年後見人

成年後見人は、成年被後見人の法律行為の代理(民法859条1項)、追認、取消の権限をもちます。
親権者や未成年後見人の場合と異なり、成年被後見人が単独で行った法律行為に同意する権限はありません。

保佐人

保佐人は、原則として被保佐人の法律行為の代理権をもちませんが、裁判所の審判を経れば、特定の法律行為につき代理権を有することになります(876条の4第1項)。

保佐人は被保佐人の法律行為につき同意権、取消権、追認権をもちますが、被保佐人の日常生活に関する行為(日用品の購入など)については、同意権を有しません(13条1項柱書但書、9条但書)。

補助人

補助人は、原則として被補助人の法律行為の代理権をもちませんが、裁判所の審判を経れば、特定の法律行為につき代理権を有することになります(876条の9)。

原則として同意権も有しませんが、これも裁判所の審判を経れば、特定の法律行為につき代理権を有することになります(17条1項)。

法定代理人が必要なケースとは?

法定代理人は、未成年者や精神上の障害を負っている者など本人が十分な判断能力を有していないケースに必要になります。法律上、十分な判断能力を有していない者は制限行為能力者と呼ばれ、制限行為能力者が行った法律行為は原則として無効になります(民法3条の2)。

親権者であれば当然に、後見人等であれば裁判所による選任を経て、法定代理人としての地位を有することになります。このように、法定代理人は、本人の意思に関係なく、法律に基づいて代理人が選任される点に特徴があります。

法定代理人であることを証明するのに必要な書類は?

次に、行政・司法に関する手続や、民間サービスを利用する際に、法定代理人であることを証明するのに必要な書類をご紹介します。

親権者

親権者の場合、戸籍謄本または住民票が法定代理人であることを証明する書類になります。発行から6ヶ月以内のものが必要になることが多いです。
いずれも原本を要求されるケースがほとんどですので、手続やサービスを利用する度に取得する必要があります。

親権者以外(後見人、保佐人、補助人)

被後見人等の戸籍には、プライバシー保護の観点から後見を受けている旨は記載されません。そこで、法務局が管理する登記事項証明書を取得し、後見人等であることを証明します。

法定代理人と任意代理人の違い

法定代理人と対をなす概念に、任意代理人があります。法定代理人と任意代理人の違いには次のようなものがあります。

本人の意思による選任かどうか

任意代理は、当事者の合意に基づき代理人が選任されます。
これに対し、法定代理は、本人の意思(後見人をつけるか、誰を後見人にするか)に関係なく、法律に基づいて法定代理人がつきます。誰を選任するかについても、基本的には裁判所が判断します。

代理権の範囲

任意代理人の代理権の範囲は、当事者間の合意により決まります。広い代理権とするのも、狭い代理権とするのも当事者の自由ですから、ニーズに応じたカスタマイズが可能です。
これに対し、法定代理人の代理権の範囲は、親権者も後見人等のいずれも、代理権の範囲は法律によって定められています。

復代理人を選任できる

本人を代理するのが代理人であり、さらに代理人に付与された権限の全部または一部を行うことを選任された者を復代理人といいます。復代理人も代理人同様、本人を代理する立場にあります。

任意代理の場合、本人の許可を得たときまたはやむを得ない事由があるときを除き、復代理人を選任することはできません(104条)。

これに対し、法定代理人は、自己の責任でいつでも復代理人を選任できます(105条本文)。法定代理人は自己の意思で代理人に就任したわけではないので、この点に配慮した仕組みとなっています。当然ですが、選任した復代理人の行為については法定代理人も責任を負います。

終了するタイミング

任意代理は、委任した事務が完了すればそこで終了します(111条2項)。
これに対し、法定代理は、本人または代理人が死亡した場合や、代理人が破産手続の開始を決定、または後見開始の審判を受けた場合に終了となります(111条1項)。親権者の場合は、子が成人したら終了します。

後見人が後見事務を続けられなくなり、家庭裁判所から正当な事由があると認められた場合は、後見人辞任となります。

法定代理人は本人を保護する重要な制度

法定代理制度は、選任事由や代理権が法定されている制度です。法定代理人は、判断能力が不十分な本人を保護する重要な役割を果たすことが期待されています。任意代理との違いも意識しつつ、適切に業務を進めましょう。

よくある質問

法定代理人とはなんですか?

未成年者や判断能力が不十分な人の保護を目的として、法律に基づき選任され、代理権や取消権などを行使する者です。詳しくはこちらをご覧ください。

法定代理人はどのようなケースで必要になりますか?

本人が未成年者の場合や、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある場合などに必要になります。詳しくはこちらをご覧ください。


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