• 作成日 : 2022年6月17日

努力義務とは?強制力の違いや罰則について解説

努力義務とは?強制力の違いや罰則について解説

法律には「必ず行わなければならない」、または「行ってはならない」、すなわち「義務」だけが書かれていると思われがちですが、それだけではありません。例えば、努力義務規定のように「~するよう努めなければならない」などと、曖昧な表現で規定されるものもあります。ここでは法律で規定されている努力義務がどのようなものなのか、事例を交えて解説します。

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努力義務規定とは

努力義務は、法律の条文において「~するよう努めなければならない」「~努めるものとする」などと規定される内容を指す言葉で、このような規定を努力義務規定といいます。では、実際に法律にはどのように書かれているのでしょうか。ここでは条文例や努力義務に違反した場合の罰則、似ている言葉との違いについて解説します。

努力義務規定の条文例

努力義務規定は、企業にとって重要な法律の一つである労働基準法にも存在します。例えば、労働基準法第1条には以下のように書かれています。

労働条件の原則
第一条 労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。
② この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。

引用:労働基準法|e-Gov法令検索

この労働基準法第1条第2項の後半に書かれているのが、努力義務です。具体的には「その(労働条件の)向上を図るように努めなければならない」と規定された部分が努力義務となります。

努力義務は違反しても罰則はない

努力義務に法的拘束力はないため、違反したとしても罰則は科されません。ただし、これは努力義務規定に違反しても構わないという意味ではありません。別のリスクが考えられるためです。例えば努力義務に反した結果、それを理由に損害賠償を請求されたケースもあります。

義務、努力義務、配慮義務の違い

努力義務と似ている言葉に「義務」と「配慮義務」があります。これらの違いについて見ていきましょう。
義務の場合、法令では「~しなければならない」「~してはならない」などのように規定されます。そのとおりに従う必要があり、違反した場合は罰則が科されることもあります。
配慮義務は、「~配慮をするものとする」「~配慮するものとする」などのように規定されます。努力義務と同様に、配慮がない場合は損害賠償を請求される可能性があります。
努力義務規定や配慮義務規定だからといって、おろそかにしてよいわけではありません。努力義務規定や配慮義務規定であっても損害賠償請求の根拠となる可能性があるほか、将来的には義務規定に改正される場合もあるからです。

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努力義務が課されている事例

では、実際に努力義務はどのような法令で課されているのでしょうか。ここでは、3つの努力義務を紹介します。

新型コロナワクチン予防接種の努力義務

予防接種法第9条の規定が適用されます。予防接種法第9条は以下のとおりです。

予防接種を受ける努力義務
第九条 第五条第一項の規定による予防接種であってA類疾病に係るもの又は第六条第一項の規定による予防接種の対象者は、定期の予防接種であってA類疾病に係るもの又は臨時の予防接種(同条第三項に係るものを除く。)を受けるよう努めなければならない。
2 前項の対象者が十六歳未満の者又は成年被後見人であるときは、その保護者は、その者に定期の予防接種であってA類疾病に係るもの又は臨時の予防接種(第六条第三項に係るものを除く。)を受けさせるため必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

引用:予防接種法|e-Gov法令検索

このように、新型コロナワクチン予防接種については「予防接種を受けるよう努めなければならない」と書かれています。したがって、新型コロナワクチン予防接種は義務ではなく努力義務であり、自分で接種するかどうかを決められます。

高齢者マークの貼り付けの努力義務

70歳以上の人が普通自動車を運転する際、高齢者マーク(高齢運転者標識)をつけることはよく知られています。高齢者マークをつける義務については、道路交通法第71条の5第3項で以下のように定められています。

第八十五条第一項若しくは第二項又は第八十六条第一項若しくは第二項の規定により普通自動車を運転することができる免許(以下「普通自動車対応免許」という。)を受けた者で七十五歳以上のものは、内閣府令で定めるところにより普通自動車の前面及び後面に内閣府令で定める様式の標識を付けないで普通自動車を運転してはならない。

引用:道路交通法|e-Gov法令検索

75歳以上の人が高齢者マークをつけることが義務規定として記されています。一方、道路交通法附則第22条第1項では、70~74歳の人については努力義務とする旨が規定されています。

第七十一条の五第三項の規定は、当分の間、適用しない。この場合において、同条第四項中「七十歳以上七十五歳未満」とあるのは、「七十歳以上」とする。

引用:道路交通法|e-Gov法令検索

このように、現在70~74歳の人が高齢者マークをつけることは努力義務となっています。今後法改正によって道路交通法附則第22条第1項が削除された場合は、努力義務から義務になります。義務になった場合は、対象となる人(70歳以上の人)が高齢者マークをつけずに普通自動車を運転すると、高齢運転者標識表示義務違反となります。

70歳までの雇用の努力義務

2021年4月に施行された改正「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)」には、65歳から70歳までの就業機会の確保を努力義務とする規定があります。したがって、企業は以下のいずれかの措置を講ずるよう努めなくてはなりません。

  • 定年を70歳まで引き上げ
  • 定年制の廃止
  • 70歳までの継続雇用制度の導入
  • 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
  • 70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入(社会貢献事業など)

努力義務規定に反しても罰則はないが注意点も

努力義務規定とは、法令などで「~するよう努めなければならない」「~努めるものとする」などと規定される内容のことです。義務ではなく、違反したとしても罰則は科せられません。一方で努力義務を怠った場合は、努力義務違反として損害賠償を請求されることもあります。また、将来的には努力義務規定が義務規定に変わることもあるため、言葉どおり規定の内容を守るよう努めることが大切です。

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よくある質問

努力義務とは何ですか?

法令などで「~するよう努めなければならない」「~努めるものとする」などと規定される内容のこと(努力義務規定)です。努力義務規定に違反したとしても、罰則はありません。詳しくはこちらをご覧ください。

努力義務が課されている事例について教えてください。

労働基準法における「労働条件の向上を図る」や、道路交通法における「70歳以上の人が運転する際につける高齢者マーク」、高年齢者雇用安定法における「70歳までの就労機会確保」などが努力義務です。 詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:福谷陽子(元弁護士、法律ライター)

弁護士時代は契約書作成やレビュー、不動産取引や債権回収、破産倒産、一般民事、家事事件など多種多様な事件を取り扱っていた。今はその経験を活かし、専門的な法律知識を一般ユーザーへわかりやすく解説する法律記事の作成に積極的に取り組んでいる。
各種サイトで法律記事を執筆監修。実績は年間1000件以上。ブログやYou Tubeなどによる情報発信にも熱心に取り組んでおりチャンネルを運営中。
元弁護士・法律ライター福谷陽子のblog
世捨て人mimi
元弁護士の世捨て猫🌟ぴりか(mimi)法律ライター

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