- 作成日 : 2025年1月17日
電子契約サービスを乗り換える方法・流れは?注意すべきポイントも解説
電子契約サービスの選択肢が増える中で、より自社に適したサービスへの乗り換えを検討する企業が増えています。電子契約サービスの乗り換えには、適切な手順と注意点の把握が不可欠です。
本記事では、電子契約サービスを乗り換える方法や流れ、注意するべきポイントなどについて、実務的な観点から詳しく解説します。
目次
電子契約サービスを乗り換える方法・流れ
電子契約サービスを乗り換える際には、以下の手順にしたがって進めましょう。
- 電子契約サービスの乗り換え目的を明確化する
- 社内のルールを確認して乗り換えの許可を得る
- 現在利用しているサービスの契約期間を確認する
- 現在利用しているサービスの契約書データをダウンロードする
- 新しい電子契約サービスを選定する
- 新しい電子契約サービスの初期設定を行う
- 新しい電子契約サービスへデータ移行を行う
- 新しい電子契約サービスの使い方を社内に周知する
- 以前の電子契約サービスを解約する
手順を誤ると、一時的に電子契約が締結できなくなるなどのリスクが生じる可能性があります。
1. 電子契約サービスの乗り換え目的を明確化する
はじめに、現状のサービスの課題や不満点を洗い出し、新しいサービスに求める要件を明確にしましょう。コスト削減や機能の充実、操作性の向上など、さまざまな点が挙げられる場合は優先順位を検討します。
この際、実際にシステムを利用している現場のニーズを把握することが大切ですが、経営層の意向や会社の中長期的な戦略との整合性も求められます。
2. 社内のルールを確認して乗り換えの許可を得る
一般的に電子契約サービスの乗り換えには、社内の承認プロセスが必要です。情報システム部門、法務部門、経理部門など、関係する部署との調整を行い、必要な決裁を得るための準備を進めましょう。
特に、情報セキュリティポリシーやコンプライアンス上の要件を満たしているか、慎重に確認する必要があります。
3. 現在利用しているサービスの契約期間を確認する
既存の電子契約サービスの更新のタイミングを確認し、更新時期に合わせた乗り換えを検討します。必要以上のシステム利用料の二重払いなどのコスト増を避けるために重要なポイントです。
ただし、空白期間ができて電子契約ができなくなるリスクが生じかねない場合などは業務への影響を考慮し、1ヶ月程度の重複期間を設けることも検討しましょう。
4. 現在利用しているサービスの契約書データをダウンロードする
電子契約サービスとの契約が終了した後は既存の契約データの閲覧やダウンロードができなくなるため、すべての契約書データをダウンロードしましょう。
早めに対応し、漏れがないようにチェックしたうえで厳重なセキュリティ管理の下保管します。
5. 新しい電子契約サービスを選定する
複数のサービスを比較検討し、自社のニーズに最適なものを選びます。電子帳簿保存法など最新の法令に対応しているかはもちろん、システム導入やデータ移行のサポート体制、セキュリティ機能の充実度なども視野に入れて検討しましょう。
導入コスト、運用コストも確認します。また、無料トライアル期間やフリープランを設けているサービスもあるため、可能であれば使い勝手などを一度試してみることをおすすめします。
6. 新しい電子契約サービスの初期設定を行う
選定したサービスの契約を行い、必要な初期設定を行います。ユーザー管理や権限、社内規定に合わせた設定などをもれなく実施しましょう。電子契約の移行サポートや導入サポートが付帯しているサービスであれば、活用するとよりスムーズな移行が可能になります。
このタイミングで、必要に応じて新サービスについてのマニュアルなど社内規定の変更なども行います。
7. 新しい電子契約サービスへデータ移行を行う
旧サービスからダウンロードしておいた契約書データを、新サービスへ移行します。データの整合性を確認しながら慎重に作業を進めましょう。
契約書のメタデータ(契約日、契約当事者、契約期間など)も正しく移行されているか確認が必要です。また、過去の契約履歴や署名情報なども可能な限り移行し、監査対応などに支障が出ないようにします。データ移行後はサンプリング検証を行い、正しく移行されているか確認することが重要です。
8. 新しい電子契約サービスの使い方を社内に周知する
新サービス導入を周知し、操作方法や運用ルールについて、社内への説明会や研修を実施しましょう。マニュアルを制作していれば必要な部署に共有します。
サポートでシステムの操作方法などの研修を実施してもらえるケースもあるため、サポート付きのプランであれば一度確認してみるといいでしょう。
9. 以前の電子契約サービスを解約する
新サービスの導入が終わり、問題なく運用できていることが確認できたら旧サービスを解約します。解約前には、あらためて契約データの取りこぼしがないかなどを確認しておきましょう。
電子契約サービスの乗り換えが必要なタイミング
使用しているサービスに満足しており、何の問題もなくコストも適正であれば、特に電子サービスを乗り換える必要はありません。ただし、不足している機能がある、使い勝手に不満があるなどそのシステムに課題がある場合は、乗り換えを検討することをおすすめします。
以下で、電子契約サービスの乗り換えを検討するべきケースを紹介します。
- 電子契約サービスの料金が高すぎる場合
- 必要な機能がそろっていない場合
- 操作性に問題がある場合
- セキュリティ面に不安がある場合
- 電子帳簿保存法に対応していない場合
- サポート体制に満足していない場合
電子契約サービスの料金が高すぎる場合
固定費用や従量課金による月額料金が予算を圧迫している状況は、乗り換えを検討する理由になります。特に、登録ユーザー数の増加に伴う従量課金の増加や、保管文書数の制限による追加料金の発生など、長期的なコスト増加が見込まれる場合は、早めの見直しが必要です。
契約数が多い場合は、従量課金がないサービスを検討するといいでしょう。
必要な機能がそろっていない場合
業務の効率化や自動化に必要な機能が不足している場合も、乗り換えが視野に入ってきます。テンプレート機能の不足、承認ワークフローの柔軟性の欠如、APIによる他システムとの連携機能の制限などが挙げられるでしょう。
また、導入当初は問題がなくてもビジネスの成長に伴って新たに必要となった機能が不足してくるケースもあります。
操作性に問題がある場合
ユーザーインターフェースが直感的でない、操作手順が複雑で時間がかかる、画面遷移が多いなど、日常的な使用に支障がある場合は、業務効率に大きな影響を与えます。
特に、契約書の作成や修正、承認プロセスなど、頻繁に行う作業での使いづらさは効率を悪化させ、電子システム導入のメリットが薄れる要因になりかねません。
セキュリティ面に不安がある場合
電子契約は重要な情報が多く含まれ、機密性の高いものもあるためセキュリティは非常に重要です。
こまめなシステムアップデートがあるなど、セキュリティ対策を重視しているシステムを選ぶことで情報漏洩のリスクなどを抑えられます。
電子帳簿保存法に対応していない場合
電子帳簿保存法は、2022年1月に改正され、2024年1月1日より電子取引のデータ保存が完全義務化されました。
また検索についての保存要件も定められています。電子契約書も「電子帳簿」に該当する電子帳簿保存法の対象書類であるため、電子契約システムは電子帳簿保存法に対応したものである必要があります。
サポート体制に満足していない場合
サービスによって、サポート体制には差があります。サポート面に不満を感じるのであれば、
オンラインでの問い合わせだけではなく電話対応も可能である、レクチャーサービスがあるなど、求めるサポートを用意しているサービスに乗り換えるとよいでしょう。
電子契約サービスの乗り換えで注意すべきポイント
電子契約サービスを乗り換える際には、以下の4つのチェックポイントを押さえておきましょう。
- 無料トライアルやフリープランがあるか
- 導入時からサポートを受けられるか
- データの移行がスムーズにできるか
- 電子帳簿保存法に簡単に対応できるか
無料トライアルやフリープランがあるか
サービスの乗り換えには、手間もコストもかかります。せっかく乗り換えたのにあまり意味がなかった、ということにならないよう、新しいサービスへの移行前に実際の使用感や操作性を確認しておきましょう。
無料トライアル期間やフリープランがあるサービスであれば、余分なコストをかけずにミスマッチを防げます。
導入時からサポートを受けられるか
データの移行方法や初期設定の手順、運用フローの構築など、導入時に手厚いサポートを受けられるかどうかも確認しておきましょう。特にIT関連に弱い企業の場合、導入サポートの有無は重要度が高いといえます。
また、導入後の問い合わせ対応や、カスタマイズ要望への柔軟な対応が可能かどうかも併せて確認しておくといいでしょう。
データの移行がスムーズにできるか
電子契約サービスの乗り換えで注意するべき作業は、旧サービスからのデータの移行です。
システムの統合性などを確認し、既存の契約書がそのまま使用できるものがベストではありますが、難しい場合は移行作業のサポートが受けられるサービスを選ぶことでデータ消失などのリスクを抑えられます。
電子帳簿保存法に簡単に対応できるか
これから電子契約サービスを乗り換えるのであれば、電子帳簿保存法への適応は必須です。新しいサービスが法令要件を満たしているか、特に検索機能や保存要件について詳細に確認しましょう。また、将来の法改正にも柔軟に対応できるカスタマイズ性があるかどうかも重要な検討ポイントです。
マネーフォワード クラウド契約への乗り換え事例
不動産業を営む株式会社ドリームスカイ名古屋様は、それまで使用している電子契約システムが業務に適していないと感じており、操作性の悪さや高額なランニングコストが問題となっていました。
契約書の管理が煩雑で、属人化が進んでいたことでリソースの浪費が発生し、効率的な運用が妨げられていました。そこで「マネーフォワード クラウド契約」の導入を検討し、実際に乗り換えを決断。
操作性とコスト面の課題を解消
同社が注目したのは、マネーフォワード クラウド契約の直感的で使いやすいインターフェースです。契約業務に携わるすべての社員が簡単に操作できるようになり、ミスが大幅に減少しました。また、従来システムに比べてコストパフォーマンスが良く、ランニングコストを削減することにも成功しました。
業務効率化とリモート環境への適応
マネーフォワード クラウド契約は契約書の一括管理機能を備えています。情報をスムーズに検索・管理できるようになったため、業務フローが簡略化されました。さらに、クラウドベースのシステムであるため、リモートワーク下でもスムーズに契約業務が進められるようになり、全体的な生産性向上も実現しました。
マネーフォワード クラウド契約への乗り換えは、コスト削減と業務効率化の両面で大きな成果をもたらしました。特に不動産業界における契約業務の効率化において、同社の事例は多くの企業の参考になるでしょう。
電子契約サービスの乗り換えで業務改革を実現しよう
電子契約サービスの乗り換えは、入念な準備とシステムの選定が成功のカギといえます。現状の課題を明確にし、データ移行や社内周知、法令対応などの重要なポイントを押さえることで、スムーズな移行が可能になるでしょう。
適切なサービスを選択することで、コスト削減と業務効率化の両立を実現できます。自社に適した電子契約サービスへの乗り換えを通じて、契約業務の改革を目指しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
契約の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
電子契約のメリット・デメリットは?導入が進まない理由や関連する法律もわかりやすく解説
電子契約には多くのメリットがありますが、いくつかのデメリットも把握しておく必要があります。デメリットを理解していないと、導入の途中で問題が発生した場合に対処できなかったり、紙の契約からの変更に不満を持つ関係者を説得できなかったりと、トラブル…
詳しくみる電子契約のコストはいくら?費用の相場や内訳、安くする方法
企業の総務などの担当者にとって、契約書の管理とコスト削減は重要な課題です。近年、電子契約が普及し、印紙代や郵送代を削減できることから、多くの企業がその導入を検討しています。しかし、電子契約にも導入費用や利用料金が発生し、利用するサービスによ…
詳しくみる電子契約サービスのAPI連携とは?メリットや選び方を分かりやすく解説
ここ数年、契約業務のデジタル化が急速に進み、紙の契約書から電子契約への移行が進んでいます。その中でも、API連携による電子契約サービスの導入は、業務の効率化やコスト削減を実現する強力な手段となっています。 本記事では、電子契約サービスのAP…
詳しくみる不動産売買の電子契約の流れは?事例やデメリット、電子化できない書類も解説
不動産取引においても電子契約が全面的に解禁されたため、不動産売買においても電子契約が可能です。ただし、電子化できない書類もあるため注意が必要です。 本記事では、不動産売買の電子契約の流れや電子化できる書類・できない書類、電子化するメリット・…
詳しくみるデジタル署名とは?仕組みとメリットをわかりやすく解説!
デジタル署名とは、書面上の署名と同等のセキュリティ性を担保するために用いられる公開鍵暗号技術の一種を指し、電子契約サービスなどに活用されています。この記事では、デジタル署名の仕組みやメリット、デメリットを解説します。 デジタル署名とは?法的…
詳しくみる電子契約の無権代理とは?メール認証のリスクや対策を解説
電子契約の普及に伴い、無権代理のリスクが注目されています。特に、メール認証による契約では、相手が実際に契約権限を持っているか確認が難しく、不正契約やなりすましが発生する可能性があります。担当者としては、これらのリスクを正しく理解し、適切な対…
詳しくみる