• 作成日 : 2024年1月12日

自動車使用貸借契約書とは?ひな形をもとに書き方や項目を解説

自動車使用貸借契約書とは?ひな形をもとに書き方や項目を解説

自動車使用貸借契約は、個人や法人に自己所有の自動車を無償で貸す際に締結する契約です。自動車使用貸借契約書は、双方合意の上で自動車を無償で貸与するために締結します。

本記事では、自動車使用貸借契約書の概要や記載すべき項目や書き方を、ひな形をもとに解説します。自動車使用貸借契約書を作成する際は、本記事をご活用ください。

自動車使用貸借契約書とは?

自動車使用貸借契約は、自己所有の自動車を他者に無償で貸与する際に締結します。貸与する相手は、家族であったり会社であったりとさまざまです。自動車を貸与する側である所有者を「貸主」、自動車を借りる側を「借主」と呼びます。

自動車使用貸借契約書は、自動車を無償で貸与する条件に関して、双方の合意を得るための書面です。契約書には、無償で貸与することはもちろん、貸与期間や契約解除に関する規定、自動車に損害を与えた場合に誰が修繕義務を負うのかなどについて記載する必要があります。

自動車賃貸借契約との違い

自動車使用貸借契約と似た契約に「自動車賃貸借契約」があります。自動車使用貸借契約と自動車賃貸借契約の大きな違いは、賃料の有無です。

自動車使用貸借契約は、前述のとおり無償で自動車を貸す契約となります。貸主に対して、借主が自動車の賃料を支払うことはありません。

一方、自動車賃貸借契約は、借主が貸主に賃料を支払うことで自動車を借りる契約です。賃料の支払がない場合や滞納した場合は、貸主から契約を解除される場合があります。

一般的な使用貸借契約との関係

使用貸借契約とは、貸主が無償で借主に物品を貸与する契約です。対象物が自動車に限定されている自動車使用貸借契約も、使用貸借契約に含まれます。

自動車使用貸借契約と一般的な使用貸借契約の共通点は、無償で物品を貸し出し、借りた物品そのものを返却することです。自動車使用貸借契約では、借りた自動車をそのまま返却します。

では、使用貸借契約がもつ法律上の義務を見てみましょう。使用貸借契約では、以下のように貸主の義務が軽減されています。自動車使用貸借契約でも同様です。

  • 貸主は対象の物品を修繕する義務を負わない
  • 貸主は一定期間の経過がなくても契約解除の手続を取れる
  • 借主の死亡によって契約が終了する

自動車使用貸借契約が交わされるケース

自動車使用貸借契約は、以下のような場面で締結されます。

  • 社長や従業員が企業に対して車両を貸与する
  • 企業が従業員に車両を貸与する
  • 車の買い替え時や車検時に代替車両を提供する
  • 自治体が個人や法人に車両を貸与する

社長や従業員が企業に車を貸与する代表例は、個人事業主が法人成りした場合です。個人事業主時代に自分の名義で購入、使用していた車を法人成り後の会社(企業)で使用する際に、社長や従業員から自動車を借りる手続として、自動車使用貸借契約が締結されます。

代替車両とは、いわゆる「代車」です。車を買い替える際は、新車が届くまで代車を借りる場合があります。そこで、自動車使用貸借契約を締結します。また、車検で代車に乗る場合も、自動車使用貸借契約を締結する場合があります。

自治体が業務のために個人や法人に車両を貸与する場合も、自動車使用貸借契約の対象です。地域の除雪を委託した団体に除雪車を貸与する場合や、福祉施設の送迎や廃棄物運搬業務を委託した場合に、業務に必要な車両を貸与するケースなどが該当します。

自動車使用貸借契約書のひな形、テンプレート

以下のページより、自動車使用賃貸契約書のひな形をダウンロードできます。自動車使用賃貸契約書を作成する際にご活用ください。

自動車使用貸借契約書に記載すべき内容

ここからは、ひな形をもとに、自動車使用貸借契約書に記載すべき内容を解説します。前掲のひな形では、貸主を「甲」、借主を「乙」と定義しています。

契約の対象物、内容

本文に入る前に、本契約の対象車両について明記します。対象車両の車名、年式、登録番号、車台番号を記載しましょう。

次に、契約の内容を記載します。自動車使用貸借契約の場合は、「本件車両を乙に無償にて貸与すること」と「乙は本件車両を本契約終了後に返還すること」を約束して自動車の貸借を行う旨を記載しましょう。

契約期間

契約期間の記載や、期限満了前の解約に関する規定も忘れてはいけません。民法では、期限前に貸主から申し出があれば期限前の解約が認められています。

しかし、突然の契約解除の申し入れに対して、借主がすぐ対処できるとは限りません。スムーズに契約を終了するためにも、貸主が期限前に契約を解除する際は何ヶ月前までに伝えるべきかを規定しておきましょう。

車両の使用目的と使用方法

当該車両の使用目的や使用方法についても、規定が必須です。当該車両の用途に応じて「自己使用のみ」「商用のみ」など規定しましょう。

借主は、車両を使用する際は法律に従うこと、善良なる管理者の注意義務(善管注意義務)に従うことも記載します。

車両の必要費用および損害の負担者

この項目では、車両の保管や現状維持費用の負担者を規定します。これら費用の負担者は、借主です。ETC車載器やドライブレコーダーのように、運転に必要な設備を車両につけた場合も、借主が費用を負担します。

法律では、自動車税のような各種税金を「公租公課」と呼びます。本契約期間中の公租公課を貸主と借主のどちらが負担するかについても明記しておきます。

本契約の対象車両を運転している最中に事故が起こった場合や、紛失や盗難による損害を受けた場合の賠償責任はすべて借主にある旨も忘れずに記載しましょう。

使用借権の譲渡および転貸

「使用借権」とは、本件車両を借りる権利です。「転貸」とはいわゆる又貸しになります。

使用借権の譲渡や転貸を許してしまうと、借主が車両を貸した相手が事故や損害を発生させた場合に、トラブルとなりかねません。トラブルを未然に防ぐためにも、使用借権の譲渡や転貸は禁止しておきましょう。

規定違反の場合

借主が本契約書の規定に違反した場合は、貸主から契約を解除できることを明記します。貸主は、契約解除の際に借主に対して車両の返還請求ができる旨も明記しましょう。

契約終了時の規定

契約終了時は、どのように車両を返却するのかを記載します。

「契約終了時」とは、期間満了、契約解除を問いません。借主が車両の返還に応じない場合、貸主は売主に対して損害賠償請求ができることも記載しておきましょう。

反社会的勢力の排除

契約書には、反社会的勢力を排除する事項も必須です。借主、貸主ともに反社会的勢力と関わらないこと、もしも関わっていた場合は予告なく契約解除できることを記載します。

脅迫や暴力行為、偽計または威力を用いて業務を妨害した場合や、信用を毀損した場合も、契約解除可能としましょう。

契約に定めがない事項や紛争の解決方法

契約書に書かれていない問題が発生した場合、双方の協議で解決することを記載します。協議で解決せず紛争になった場合は、裁判となります。万が一裁判となった場合に備えて、第一審の管轄裁判所も指定しておきましょう。

自動車使用貸借契約書の作成ポイント

自動車使用貸借契約書を作成する際に、気をつけるべきポイントを解説します。主なポイントは、無償であることと貸与期限、費用の負担者が誰であるかの記載、収入印紙の有無です。

無償での貸与期限を明記する

自動車使用貸借契約は、無償で自動車を貸与します。トラブルを防ぐためにも、契約書に「無償で貸与する」ことを明記しましょう。ひな形では、1条と2条が該当します。

自動車使用貸借契約書では、いつまで無料で貸与するのか、貸与期間についての規定も必須です。本件車両はいつまで無料で貸す/借りられるのか、貸与期限を明記しましょう。あわせて、契約期間満了前の解約は許されるのか、許す場合はいつまでに借主に告げなければいけないのかも記載します。

自動車使用にかかる費用の負担者を明確に

自動車使用貸借契約では、自動車の使用にかかる費用の負担者を明確にすることも大切です。ひな形の3条~5条が該当します。

貸主から見ると、無料で貸した車を壊されて修繕費を支払うのは、いわば「余計な出費」です。貸主の利益を保護するために、契約中に車が壊れた場合や損害が発生した場合は借主が費用を負担する旨を定めておきましょう。

同様に、借主が便宜を図るために車両に装置をつけた場合や、契約中に車両にかかった各種費用も借主負担となることを明記します。

収入印紙は必要?

自動車使用貸借契約書には、収入印紙の貼付は不要です。

収入印紙が必要な契約書は、印紙税法別表第一にて20種類定められています。自動車使用貸借契約書に代表される賃借契約書は、別表第一に定められた契約書に含まれません。

したがって、自動車使用貸借契約書は印紙税の課税対象ではないため、収入印紙の貼付は不要となります。

参考:印紙税法 | e-Gov法令検索

自動車使用貸借契約書には借主負担分が多いことを明記する

自動車使用貸借契約書は、無償で自動車を貸与する使用貸借契約を締結する際に交わす書類です。自動車使用貸借契約は、通常の使用貸借契約と同様に貸主の義務が軽減され、借主が負担する義務が多くなっています。

この点について借主と共通認識を持ち、トラブルを未然に防ぐためには、契約書にも契約終了時の規定や費用負担者を明記することが大切です。

この他にも、自動車使用貸借契約書に記載しておきたい内容は複数あります。本記事で紹介したひな形を参考に、貸主、借主双方が納得できる契約書を作成しましょう。


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