• 作成日 : 2024年1月12日

一時使用目的建物賃貸借契約書とは?ひな形をもとに書き方や項目を解説

一般的に建物を借りる契約では、住居やオフィスを長く安定して利用できるように、借地借家法によって借り手側が保護されています。しかし現実には、工事や催事のために一時的に建物を使用したい場合もあるでしょう。この記事では、そうした場合に締結される一時使用目的建物賃貸借契約と、契約書の書き方のポイントについて説明します。

一時使用目的建物賃貸借契約書とは?

一時使用目的建物賃貸借契約とは、建物の利用目的が明らかに一時的な使用である場合に締結される賃貸借契約のことです。建物を利用する際には、一般的に賃貸借契約を締結することになります。とくに建物に関する賃貸借契約では、通常、借地借家法の適用を受けてその最低契約期間が法定されています。

しかし、住居やオフィスとして長期的に建物を利用するだけではなく、場合によっては建て替えに伴う仮住居や、工事の際の事務所利用として、一時的に建物を利用することもあります。とくに、仮住居や工事のための事務所利用などにおいては、最低契約期間よりも短く利用することが想定されます。そのため、通常の賃貸借契約とは別個の独立した条項を設けて、建物の利用が「一時使用目的」である旨を明記して、契約を締結するのです。

一時使用目的建物賃貸借契約書が交わされるケース

一般的に、一時使用目的建物賃貸借契約が締結される場合には、利用目的と建物の種類・設備・構造、賃貸期間がポイントとされます。

これらのポイントから、一時使用目的建物賃貸借契約が実際に締結される具体例としては以下のようなケースが挙げられます。

  • 正式な本店が決まるまでの暫定的なオフィスや店舗として利用する場合
  • 選挙期間中のみ選挙事務所として建物を利用する場合
  • 工事やイベント・展示会などの催事が終了するまでの臨時事務所として利用する場合
  • 家を建て替える際に仮住居を用意して生活するという場合

このほか、区画整理などの公的プロジェクトが予定されている場合にも、一時使用目的が認められる可能性があります。区画整理などが予定されている場合には、長期間利用が不可能であることが明らかな上で建物や土地を借りることになるため、客観的に長期間利用が想定されていないといえます。

一時使用の賃貸借契約は借地借家法の対象ではない

通常、建物賃貸借契約については、借地借家法の適用があります。借地借家法は、貸主に一方的に有利な契約にならぬよう借主を保護するなど、貸主と借主の立場上のパワーバランスを考慮して定められている法律です。

例えば、貸主側の勝手な都合によって借主が建物から短期間で追い出されることのないように、貸主は解約の申入れを6ヶ月以上前にしなければならず、かつ正当な事由がなければすることができません(借地借家法27条、28条)。さらに借主保護の観点から、期間を1年未満とする建物の賃貸借は期間の定めのないものとみなされます(借地借家法29条1項)。

しかし、建物利用の目的が始めから一時使用目的ならば、短期間の契約でも借主に不都合はありません。他方で、このような場合にまで通常の建物賃貸借契約を締結すると、借主が心変わりして「長期間利用したい」と考えた場合に、借地借家法の適用によっていつまでも利用できてしまうという事態も生じ得ます。

このような事態を避けるために、あらかじめ一時使用目的であることが明らかな場合には通常とは異なる契約形態をとるのです。

一時使用目的建物賃貸借契約の締結に当たっては、客観的に一時使用目的であることが明らかにされていることが重要であるため、以下の3点を押さえておく必要があります。

  • 独立の条項を設けて「一時使用目的」である旨を明記すること
  • 契約更新規定を設けないこと
  • 敷金を低額にする、もしくは設けないこと

一時使用目的建物賃貸借契約書のひな形、テンプレート

一時使用目的建物賃貸借契約書を作成する際には、通常の建物賃貸借契約書とは異なる配慮が必要となります。そのため、ひな形やテンプレートを利用するのが便利です。

以下のページからひな形をダウンロードできるのでご活用ください。

一時使用目的建物賃貸借契約書に記載すべき内容

それでは、一時使用目的賃貸借契約には、どのような項目を設け、具体的に何を記載しておくべきでしょうか。以下では、一時使用目的賃貸借契約として契約書に記載が必要な項目について解説します。

対象となる建物の明示

賃貸借契約の対象となる建物を明示します。

同じ敷地内・施設内に複数の物件があった場合、賃貸借契約の対象範囲が不明瞭になる恐れがあります。物件名や所在地はもちろんのこと、家屋番号、構造、床面積など、どの建物のどの部分かを明確にしておきましょう。

一時使用目的

一時使用目的賃貸借契約書に記載すべき項目として、最も重要なのはこの契約が「一時使用目的」であるということです。

仮に契約当事者同士で契約内容について争いになった場合には、「短期間に限って賃貸借を存続させるという合意について、客観的・合理的な理由が存在するか否か」によって一時使用目的か否かが決まります。そのため、独立した条項を設けて本契約が「一時使用目的」であると明記した上で、より具体的にどのような事業・催事に利用するのかなどについても記載すると良いでしょう。

契約期間

一時使用目的賃貸借契約については、利用期間が短期間であることが前提となります。使用目的賃貸借契約の場合、期間を1年未満とする建物の賃貸借は期間の定めのないものとみなされるとする借地借家法第29条は適用されません(借地借家法第40条)。そのため、通常の賃貸借契約に比べて比較的短期間となる1年以内の契約期間を具体的に記載します。

さらに、特段の事情がない限り契約更新をしないことが原則である旨記載することも重要です。なんらかの事情により契約更新の必要性が生じる可能性が想定される場合、契約更新の条件や期間を定めておくと良いでしょう。

賃料以外の項目

一時使用目的賃貸借契約について、金銭のやり取りで重要なのが敷金等の扱いです。

敷金は建物使用に際して生じた汚損等の修繕にも充てられることになり、敷金が高額であればあるほど、長期間の使用を目的としていると推測されます。そのため、一時使用目的賃貸借契約に際しては、敷金等の賃料以外の金銭については少額に設定する、もしくは授受を行わない旨の記載をしておくことが重要になります。

付属物の取り扱い

建物賃貸借契約については、その契約期間中に借主が設置したものについては、契約終了後に回収し原状を回復させる必要があります。一時使用目的賃貸借契約の場合には、短期間における催事などが特定されているので、その点を明記した上で付属物を撤去する旨などについて記載しておくことが重要です。

また、契約終了後も明け渡しの完了がなかった場合の遅延損害金も明確にしておきましょう。

反社会的勢力の排除

貸主・借主双方ともに反社会勢力との関わりをもたないことと、反社会的勢力と関わりをもっていた場合は催告なく契約を解除できることを記載します。

定めのない事項および特約

本契約書に記載がない問題が生じた場合は、貸主と借主が都度協議して解決することを記載します。

管轄裁判所

貸主と借主の間で紛争が起こり裁判となった場合、本契約対象である建物の所在地を管轄する地方裁判所を第一審の裁判所に指定します。

一時使用目的建物賃貸借契約書の作成ポイント

一時使用目的建物賃貸借契約書の作成に当たってはいくつかのポイントがあります。

以下に記載するポイントは、作成する側は作成時に、受け取る側は契約締結時にしっかりと記載があるかを確認することが重要です。

客観的に見て「一時使用目的」と判断できるか

一時使用目的賃貸借契約の場合には、借地借家法が適用されません(借地借家法第40条)。

しかし、それはあくまで客観的・合理的な理由にもとづいて一時使用目的の合意があると判断される場合です。判断に際して重要なのは契約書の内容から「一時使用目的」であることが読み取れるかどうかです。そのため契約書には、契約書名のみならず、通常の賃貸借契約とは別に独立した項目を設ける形で「一時使用目的」であることを明記することや、「一時使用目的」であることを担保できる条件を設定しているかが重要となります。

収入印紙は必要

不動産に関する契約については収入印紙の貼付が必要となる場合があります。

もっとも、建物賃貸借契約の場合、ビルの賃貸借契約などの契約金額が大きくなるもの以外は、収入印紙の貼付は必要ありません。一時使用目的賃貸借契約の場合には、その契約金額は相対的に少額となることが想定されるので、貼付は必要とならないことが多いでしょう。

一時使用目的賃貸借契約書には短期間使用の旨を明示

工事やイベント・展示会などの催事が終了するまでの臨時事務所として利用する場合には、契約当初より短期間の建物使用が明らかなため、一時使用目的建物賃貸借契約を締結します。

同契約を締結することにより、借地借家法の適用がなくなり、契約期間を1年以内の短期間にできます。もっとも、契約期間等について争いになる場合に備えて契約書を作成する必要があるため、独立の条項を設けるなどして「一時使用目的」であることを明確にしておくことが重要です。

通常の建物賃貸借契約とは別に、一時使用目的建物賃貸借契約のためのひな形を用意しておくと良いでしょう。


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