- 作成日 : 2023年8月18日
特許権とは?効力や取得方法を解説
これまでになかった大きな発明に成功すれば、事業者として大きなアドバンテージを得られます。しかしせっかくの発明も他社にマネをされてしまっては優位に立つことができません。重要な発明については、特許権の取得を検討しましょう。
本記事では、特許権の効力や取得方法などを解説します。
特許権とは
「特許権」とは、発明(=自然法則を利用した技術的思想の創作)を独占的に実施できる権利のことです。知的財産権の1つとして知られています。知的財産権には、文学・学術・美術・音楽に関する「著作権」や、デザインに関する「意匠権」、事業上使用するマークに関する「商標権」などがあります。
発明は「特許権」および「実用新案権」で保護されています。高度な発明を対象とするのが特許権、比較的簡易な発明を対象とするのが「実用新案権」です。特許権の方が手厚い保護を受けられる反面、実用新案権よりも厳しい審査が行われます。
なお、発明には①物の発明、②方法の発明、③物の生産方法の発明の
3種類があります。
- 物の発明
装置や組成物、化学物質、プログラムなど、時間的な要素を含まない物の発明。 - 方法の発明
情報の処理方法、検査方法など、時間的要素を含む手順等の発明。 - 物を生産する方法の発明
方法の発明の一種。材料や処理過程、生産物という要素を含み、その方法を使用することで生産物を生じる発明。化学物質の合成方法や食品の製造方法など。
特許権の効力
特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有します(特許法第68条)。
「業として」とは、「事業として」という意味です。そのため特許権が認められた発明であっても、その権利の主張ができるのは事業として行う場面に限られます。私生活で趣味を楽しむために当該発明を実施しても、特許権の侵害には当たりません。
発明の「実施」とは、物の発明についてはその物の生産・使用・譲渡・貸し渡し・輸出入など、方法の発明についてはその方法の使用を意味します。物を生産する方法の発明については、その方法により生産した物の生産・使用・譲渡・貸し渡し・輸出入などが実施に当たります。
積極的効力
発明を業として実施する行為は、特許権者および特許権者から実施権の設定を受けた者のみに認められます。特許権者は発明を独占的に実施することも、第三者に対して実施権を設定してライセンス料を得ることも可能です。
実施権とはライセンスのことであり、実施権を持てば特許権者以外でも発明の実施が認められる。詳しくは下記記事で紹介しています。
特許権者が発明を独占的に実施できる効力は「積極的効力」と呼ばれています。
消極的効力
特許権者は積極的効力として特許発明を業として独占的に実施する権利を持ちます。にもかかわらず、実施権を設定されていない第三者が無断で特許発明を実施する可能性もあります。そこで特許権者には、第三者による特許発明の無断実施を排斥する権利も認められています。
これは特許権の「消極的効力」と呼ばれます。自社の特許発明を他社が無断で実施している場合、その実施の差し止めや損害賠償を請求できるほか、侵害者の刑事告訴も可能です。
特許権を取得する方法
発明をした本人であっても、自動的に特許権が付与されるわけではありません。特許法に従い、特許出願をして特許権の登録を受ける必要があります。
特許権を取得するまでの手順は以下のとおりです。
- 事前調査
- 特許出願
- 出願審査請求
- 特許料の納付と特許権の登録
それぞれの手順を詳しく見ていきましょう。
事前調査
まずは先行技術調査を行う必要があります。特許として登録を受けようとする発明がすでに特許として登録されていないかどうか、あるいは似た発明が登録されていないかどうかをチェックします。
特許出願を行う際には、事前調査の段階から弁理士などの専門家に相談することが推奨されます。弁理士などに依頼すれば、特許権の取得に関する見通しについてアドバイスを受けられるほか、出願書類の作成なども代わりに対応してもらえます。
特許出願
調査の結果、問題がないことが分かれば、特許出願に向けた書類作成等の準備を進めていきます。出願書類については特許庁のWebサイトからフォーマットをダウンロードすることができます。
特許出願の際には、願書や明細書、特許請求の範囲、要約書、図面などの作成・提出が必要です。弁理士などのサポートを受けて、各書類を作成しましょう。
出願書類一式が揃えば、出願手数料14,000円を納付して特許庁に提出します。費用は、特許印紙(収入印紙と異なるもの)を購入し、これを願書に貼付することで納付します。
提出後は特許庁で「方式審査」が行われます。この時点では必要書類がそろっているかどうか、手数料が納付されているかどうかなど、形式的な点が審査されます。
出願審査請求
方式審査をクリアしても、その後自動的に出願内容の審査(=実体審査)に移行するわけではありません。実体審査を行ってもらうためには、特許庁長官に対して出願審査請求を行う必要があります。
出願審査請求の際には、審査料として「138,000円+請求項の数×4,000円」を納付します。
実体審査では、産業上の利用可能性・新規性・進歩性など、発明の内容が特許要件を満たしているかどうかを審査します。特許要件を満たしていれば特許査定が、満たしていなければ拒絶査定が行われます。
特許料の納付と特許権の登録
特許査定が行われた場合は、特許庁に特許料を納付します。特許料は毎年発生し、1年目から3年目までのは「4,300円+請求項の数×300円」で、それ以降は年数に応じて増えていきます。
特許料の納付後、特許庁が設定の登録を行うことでようやく特許権が発生し、特許権を主張することが可能になります。
特許権が消滅する4つのケース
特許権は取得後永久に存続するものではありません。特許権が消滅するケースは主に4つあります。
1つ目は「特許料を納めなかった」場合です。特許権を維持するには毎年特許料の納付が必須で、翌年の特許料を納めないとき、特許権は消滅します。
2つ目は「特許権を放棄した」場合です。特許権者が特許権を放棄した場合、その特許権は消滅します。
3つ目は「特許無効審判が確定した場合」です。利害関係人が特許要件(新規性・進歩性など)を満たしていないこと理由に「その特許は無効だ」と主張し、審判で無効が確定すると、特許権は初めからなかったこととなります。
4つ目は「存続期間が満了した場合」です。特許権の存続期間は、特許出願の日から20年間と法定されています。特許出願のタイミングが起算点になっていることに留意しましょう。特許権の設定登録がなされた日から20年間ではありません。
※医薬品や農薬に関する発明であれば、5年を限度に延長をすることも可能。
自社の発明は特許権の登録で保護しよう
自社が最初に生み出した発明でも、特許権が与えられなければ発明に基づく権利を主張することはできません。特許法に基づく権利や手続きなどをよく理解し、特許出願をするかどうか検討しましょう。
特許権が得られれば、他社に対する競争優位を確保でき、発明の内容次第では大きな利益を得られる可能性があります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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