• 作成日 : 2024年3月18日

英文契約のルールは?基本的な構成やサイン前の注意点を解説

英文契約書を作成する際には、日本の契約書との違いを意識しつつ、定めるべき事項を漏れなく記載することが大切です。本記事では英文契約書について、日本の契約書との違いや基本的な構成、よく使われる表現、締結時の注意点などを解説します。

英文契約とは?

英文契約書とは、英語で記載された契約書をいいます。日本の企業でも、海外の取引先と契約を締結する際には、英文契約書を作成するのが一般的です。

英文契約書と日本の契約書の違い

英文契約書は、和文契約書(=日本語で書かれた契約書)に比べて細かい事項まで詳しく定めることが多いため、分量が多くなりやすい傾向にあります。欧米圏はいわゆる「契約社会」であり、裁判などにおいては契約で定められた事項が重視されるためです。

また、英文契約書の基本的な構成には、和文契約書と異なる部分が一部含まれています。さらに、和文契約書では通常見られないような表現も、英文契約書では用いられることがあります。

英文契約書の基本的な構成

英文契約書の基本的な構成は、以下の通りです。

  1. 表題(タイトル)
  2. 前文
  3. 本文
  4. 後文・署名欄
  5. 別紙

表題(タイトル)

英文契約書の冒頭には、表題(タイトル)を記載します。大まかな契約内容が一目で想像できるように、分かりやすい表題を付けましょう。

  • 売買契約書:Sale and Purchase Agreement
  • 金銭消費貸借契約書:Loan Agreement
  • 業務委託契約書:Outsourcing Agreement または Service Agreement
  • 秘密保持契約書:Non-disclosure Agreement

など

前文

表題の直後には前文を記載します。前文に記載すべき事項は、一例として以下の通りです。

  • 当事者の氏名(名称)
  • 当事者が予定している取引の内容
  • 契約締結日
  • 本文の内容にて契約を締結する旨

など

さらに英文契約書の前文では、契約に至った経緯を記載する例がよく見られます。英米法において契約の成立に必要とされている「約因」(=対価、consideration)が何かを明らかにするためです。

契約に至った経緯については、”WHEREAS” “NOW, THEREFORE”を用いて以下のように記載します。

WHEREAS:
(契約に至った経緯)
NOW, THEREFORE, in consideration of mutual agreement specified in this Agreement, the parties agree to the following:

本文

前文に続いて、本文を記載します。本文の位置づけは和文契約書と同じで、当事者間で合意した事項を漏れなく記載することになります。

本文に記載すべき事項は、取引の内容や当事者間の契約交渉次第で異なります。そのため各当事者において、本文の内容を精査しなければなりません。

後文・署名欄

本文に続いて、後文を記載します。後文に記載する事項は、以下の通りです。

  • 契約書作成の目的
  • 契約書の通数
  • 作成者
  • 契約締結の方法(記名押印、署名捺印、サインなど)
  • 保管者

例)IN WITNESS WHEREOF, two copy of this Agreement has been prepared, which each party shall execute by affixing name and seal or signing and retain a copy.

訳)本契約の締結を証するため、本書2通を作成し、各当事者が記名押印またはサインを行ったうえで、1通ずつを保管する。

署名欄には和文契約書と同じく、当事者の住所および氏名または名称を記載します。法人の場合は、代表者の役職と氏名も記載しましょう。

英文契約書は、和文契約書と同様に記名押印や署名捺印によって締結するケースもありますが、サインのみとするケースも多いです。英文契約書へのサインの方法については、後述します。

別紙

本文で記載することが適当でない細目的事項については、別紙にまとめて記載することもあります。

別紙を添付する場合は、本文の条項の中で別紙を参照(reference)することになります。referenceが漏れたりずれたりしていないかをよく確認しましょう。

例)…provided in Appendix 1.
訳)別紙1で定められているように…

英文契約書でよく使われる言葉の表現

英文契約書では、和文契約書とは異なる独特の言い回しが用いられることがあります。

特に以下の表現は英文契約書において頻出なので、読んですぐ理解できるように慣れておきましょう。

英語の表現意味
according to…~に従って
as of…~の時点で
amend (amendment)変更する(変更)
execute (execution)締結する(締結)
herein, hereof, hereunderこの契約書において
on behalf of…~を代理(代表)して
party当事者
shall…~するものとする(義務)
provided in…(stipulated in…)~に定められている
provided that…~の場合には
provided that, however…ただし~の場合には(例外)

英文契約書へのサイン(署名)前に確認すべきこと

英文契約書を締結する際には、取引の内容が契約条項において正しく表現されていることを確認する必要があります。目的物や業務の内容、対価などの基本的な情報に加えて、取引の過程で発生する対応の手順やルールなどについても、必要な情報を漏れなく記載しましょう。

また、自社にとって不利益な条項のうち、不合理なものについては修正を求めるべきです。自社が不当に重い義務を負う条項、相手方に過大な権利を与える条項、民法などの法律の規定に比べて自社に不利益な条項などは見逃さずにチェックし、理由を付して修正を提案しましょう。

英文契約書へのサイン(署名)の書き方

英文契約書へのサインは、署名欄に行うのが一般的です。例えば以下の例では、”By:”と記載された部分の右側にサインを行います。

Sample Co.,Ltd.
By:(サイン)
Name:Taro Sato
Title:President
Date:January 31, 2024

サインは英字で記載することが多いですが、漢字などで記載しても構いません。ボールペンや万年筆など、消せない筆記用具を用いてサインを行いましょう。

英文契約書へのサインの方法については、以下の記事を併せてご参照ください。

基本を押さえて英文契約書を適切にレビューしましょう

英文契約書は分量が多く、和文契約書にはない独特の言い回しが用いられることもあるため、法務担当者であっても読みこなすのは大変です。

しかし、取引の内容を適切に表現する、自社にとって不当に不利益な条項は修正を求めるなどの基本的なポイントは、和文でも英文でも変わりません。取引の内容と自社の立場を踏まえたうえで、英文契約書のレビューを適切に行いましょう。


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